サッカーって、ちゃんと整えた芝の上でやるもんだったんですよ。田んぼみたいなとこじゃなくて。
オレゲールの髭は尋常じゃない
バルサとチェルシーのこれまでの紆余曲折を知らない人が見たらつまんない試合かもしれんね、打ち合いにはならなかったから。それでも、バルサの軌跡を知っている人々にとっては、少し特別な、感動的な試合だったんじゃないかと思う。
時系列を追って書くのはやめよう。そのかわり、何が特別だったのか、どれほど美しかったのかを書きたい。成熟について書きたい。
まずは、ヘンリク・ラーションとロニーの素晴らしさに触れてから。
ヘンリク・ラーション、バルサに来たばっかりのころクラシコで怪我して、いきなり長期離脱を余儀なくされたヘンリク、契約延長してくれたクラブに、一所懸命に恩を返している。もうすぐバルサを去る彼は、冷静に、最善を尽くして、彼にできうるかぎりの置き土産を、チームに残していこうとしている。感動ですね、泣けてきますね、これほどの人はいないっす。神から授かった、他の誰も持っていないずば抜けた得点感覚で、短い時間に奇跡のように美しいゴールを量産し、ピンチを救い、試合の流れを一気にバルサに引き寄せる。この人が、なんと今日は
っちゅーか、そうかと思うとシュートを狙っている。ものすごいがんばりを見せてます。
ロナウジーニョ、おそらくチームでただひとり、かろうじて守備を免責されているロニ子。彼は楽しそうだった。笑っていた。けれど楽しいゴールではなくて、激しさだけのゴールを決めた。あんな姿はめずらしい。最高の、彼の人生でも、バルサの歴史においても、サッカー界すべてにおいても最高のゴールだったぞ。ロニーがあんな凄まじい勢いで相手DFに激突して行くなんて、気迫というか、殺気というか、とんでもない力がほとばしっているのがわかる。後半78分、一瞬のできごとだったよー。エトーからボールを受け取ると、ドリブル突破でゴールに向かい、ランパードを振り切り、疫病神テリーをはじき飛ばして、ギャラスとリッキーに囲まれてもなお、ツェフがそこにいないかのように、完璧に狙ったゴラッソを目を閉じて決めた。まるで軸がブレない。デコかと思うような(笑)ものすごい強さ。あのボディバランスは何なんだ、あの集中力の爆発は何なんだ。そしてみるみる天使の笑顔になる。彼がサッカーを選んだのではない、サッカーが彼を選んだ。まさにそーゆー人っすね。
とにかく、これで完全勝利っす!バルサ・フットボールの哲学と戦略が、美しく勝利した。スタンフォード・ブリッジの田んぼで勝って、カンプ・ノウでも勝った(←事実上)。しかも、チェルシーにサッカーさせませんでした。
バルサは、守り抜いた。たしかにそう言えなくはない。だってボール支配率が51%だもん。
「ここまで守備ができるんだ!」チームは明らかにそう言っていたと思う。それは、努力し、弱点を克服し、去年よりもまた強く成長したことの証だと思う。
ゲームは静かにゆっくりと始まったし、打ち合いにはならなかった。でも、守備的だったかと聞かれれば、返事はノーである。なぜなら、バルサは始終、敵陣にいたから。バルサの守備はただの守備ではない。つまり、ボールを奪い取ることを目的とする超攻撃的な守備を、今日もまた、迷うことなく展開した。しかも全員で。
バルサ・フットボールの最大のアドバンテージは集団としての組織力と、その力の上でこそ発揮される個人技や独創性や意外性。つまり、バルサはチームであって、ロニーのチームでもデコのチームでもプジョルのチームでもなく、全員がDFなんである。もちろんいちばんのド根性男はプジョルだし、冷静にミスなく守備をやってのけるラファも光り輝いているが、全員が相手の足下に飛び込み、体を張って戦っている。みんな涙の出るような献身的な守備をやる。今日筆頭にあがるのはヘンリクだけど。
ずっと培ってきた、ボール支配、素早いプレス、コンパクト・スペースでワンタッチのパス回しによる攻撃、個人技としての独創性、集団としての創造性、コンビネーションが生む意外性、驚き。ここに"フィールドプレーヤー全員による、ボールの奪取を目的とする点で攻撃的な、徹底した守備"が完璧なかたちで加わった。素晴らしい!
ひしひしと伝わってくる、勝ちたいという圧倒的な気持ちが。
勝つという戦略を貫いた。冷徹なほどの美しさを貫いた。
そして、今日のゲームにミスはなかった。"勝つという戦略"は、勝ちに行っても(結果を求めても)なお美しいゲームができるんだという、ライカー・バルサの成熟の証である。
チェルシーは得意なはずのサイド攻撃ができませんでした。カウンターという反復パターンしか有さない組織は、もう勝つことができない。しかも、バルサの誰であれ、ボールを持つと、チェルシーの選手はそれを奪い取ることができんね。バルサの選手の足下に入って来られない、近寄ることもできない。パスコースを潰そうとするのが精いっぱいで、どーしょーもないと、パウロ・フェレイラあたりはロニーに抱きついたりしちょる(笑)。
時間の経過とともにミスが増えて、ボール取られるばっかでパスがつながらなくなってました。
チェルシーにチャンスは何回あったかな、37分のロッベンの左足と、62分のエルナンの飛び出し・・・くらいかな。全部でシュートは4本。
"バルサにも守備ができる"ということがモウリーニョの誤算だったかどうかは知ったこっちゃないが、試合が終盤になるころにはモウの野郎も負けを認めたようなちょっといい顔してました(笑)。どうせまた後で減らず口たたくんだろうけど。
試合終了間際、チェルシーがPKで1-1に追いついた。
でもあれは判定ミスだね。テリーはオフサイドだし、ジオはボールにいってるし、逆にテリーがジオの左ふくらはぎを後ろから蹴ってる。あんなの絶対PKじゃない。
残念というか、心配なのはレオの左足なんでござる。前半23分、怪我でヘンリクと交代。それまでのレオは、ロニーのワンタッチのヒールパスを受けてシュートしたりして1st.leg同様大活躍だったし、欧州1をめぐるこの大舞台で、なんと楽しそうに笑ってプレーしてたのだ、コドモが!
す、すごい、あんたは今から大将だぁ!とほとんど畏怖の念を抱いて見とれていたさるおとしては、もっと見ていたかったし、怪我してどっか痛いのもかわいそうだし、とにかく残念。守備といえば、レオもものすごい運動量で守備から得点まで、すべてにおいて神童ぶりを惜しみなく発揮する子だぞ。
ライカーに抱かれたいかどうかはよくわからんが(笑)、レオを抱いてみたいと思いましたね。ドラマみたいな感動のシーンでしたよ。
バルサは結局交代のカードをこの1枚しか使わなかったねー。
そう言えばモッタちゃんはあいかわらず、リハビリの国との国境にいますね。今日もマケレレの膝蹴りがケツに入って涙流して痛がってました。
サッカーの神様は、1年前と同じ組み合わせを選んだ。バルセロニスタのさるおとしては、思ったことがあります。
神様は、「あーじゃなかった」そう思ったんじゃないか。だから、おまえらもう一度やってみろと、そう思ったんじゃないか。
今年、バルサはチャンピオンズを獲る。美しく、獲りに行く。必ず。
1st.legの激闘のもようはこちらです。
心ゆくまでさるお、もんち!