さるおです。
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ネタばれ記事です。ネタばれコメントも大歓迎です。これから映画をご覧になる方はコメント欄にも気をつけてねー。
最後にね、爆弾発言があるYO!
ドラマ『Like Father, Like Daughter.』
さるお的に『SAW III』は素晴らしい秀作です。SAWシリーズの世界観は、トリックとどんでん返しと凄惨な世直しが主軸の"怖い映画"ではない、というところが大前提です。SAWの全体像は、神の視点を持つ男と人々のドラマです。
えっと、基本的に、残念ながら『SAW II』のダーレン作の部分については語るべきものがないので語らないですが、いや、もしかしたら、単に拷問デパートを訪れたいだけならあれもおもしろかったかもしんない(笑)。そして今回の拷問博覧会も(笑)。
しかーし、本当のSAWワールドのすごい仕掛けや狂気なら『SAW』に勝るものはなく、あるいは『SAW II』最後の騙され感のほうがよっぽどすごいと思います。ほんと、『SAW』はパンチ効いてたよ、見事に1点に収束していく、美しいクライマックスの美しい作品でした。
『SAW III』に驚きはあったかというと、これはもうぜんぜんないですね。
リン先生とジェフが夫婦かもしれないぞ、というのは、リンのロッカーの扉に貼ってあったmommy宛のコドモの絵でいきなり想像できてしまう。古い絵じゃありません。そしてリンはその絵を"子を亡くした親"の目で観たりしない。だからリンが今も母親だろうということは推測できる。なのにリンの家族は描かれません。代わりに不倫が描かれる。つまり"家庭を顧みない母親"なのが一目瞭然。一方でジェフも、息子を亡くして長いこと復讐のことばかり考えているっちゅーことしか描かれません。家族のことが描かれない。
リンのだんなが出てこなくて、ジェフの奥さんも出てこない、ということは、いかにも"実は夫婦だった!"感じがします。ということで、やっと画面に娘が出てきても、「あー、ジョンが言っていた"コドモの命に責任のある人物に復讐する機会"っちゅーのは、事故死した息子のことじゃなくて、娘かー、もう拉致ったのかー、で、責任のある人物っちゅーのは自分(ジョン)のことか、うまいな」と思ってしまう。
そして、『SAW』の舞台裏、ブタマスクがアマンダだとか、学芸会の準備みたいで楽しそうだなとか、何か注射してジョンは長いことじーっと寝てたのかとか、あるいは『SAW II』の釣り人はアマンダだなとか、そのへんもすでにわかっていたことなので、ここにも驚きはない。
アマンダのゲームだった!っちゅーのも、ちょこちょことジョンがセリフで言っちゃってるので、これも驚かないっす。「ルールに従え」とかね、言っちゃってっから。
ということで、びっくらこけないんだよ。
それでも『SAW III』は素晴らしい。トリックとどんでん返しの映画ではなく、神の視点を持つ男と人々の差、神の視点を持つ男と神の視点を愛した弟子の極限の"摩擦"を描いたからです。
『SAW』以前、ジョンは絶望の淵から、格別の爽快感を抱いて甦った。
ANIMATED COMIC "SAW rebirth"によれば、かつてはジョン自身もダメダメ人間でした。いつだって"明日があるさ〜(There was always tomorrow.)と思っている。で、
(たぶん奥さんの)ジル(JILL)に捨てられ、末期ガンで本当に明日がなくなって、やっと学んだ、生きるということの本当の意味と価値、そして感謝を。
そして、自分を神格化して裁きの神になる。かつて自分が味わったように、人々に試練を与え、血を流させ、悔い改めよと言って裁いてまわるのをライフワークにするわけです。ホスピス映画です。余命わずかでもうたすからない、だから残された限りある時間をどう過ごすか、末期ガン患者(と場合によってはその家族)は選択をせまられる。残された時間を、ジョンの場合は裁きと救済に使うわけですね。
そして、裁いても裁いても悔い改めない敗者を見続け、人の世はあのバスルームのように腐っていると、怒りに震えている。
そこに勝者が現れる。骨のあるヤツがいるじゃねーか!ジョンはそう驚いたに違いない。で、その女性はジョンの元にやってきます。そうなると、ジョンにとっても彼女は一筋の希望の光となるわけです。自分にはもう時間がないけど、もしかすっと彼女なら、神の御技を引き継げるかもしれないぞ。で、トレーニング開始。アマンダは立派に後継者になれそうだった。ただひとつの重大な欠点を除き、言うことをよく聞くいい弟子だったんだろうと思う。ジョンは、アマンダを愛していただろうと思います。ただひとつの重大な欠点は、アマンダが企画するゲームには勝算がないこと。っちゅーことはアマンダはただの人殺し。ジョン企画のゲームにも生存者がいると殺して歩いてしまう(実際は殺していないですが)。
アマンダが愛したものは、復讐。彼女が愛したのは、自分を救った恩人ジョンの神性であり、支配そのものだった。師匠の哲学を引き継いだのではなくて、師匠の"狂気"に依存し続けた。
実際、アマンダと他の多くの被験者では、背景が違います。健康で正常なミドルクラスの男性(healthy, sane, middle-class male)ポールや、病気だと言いながら"元気そう"なマークや、社会的地位のしっかりした外科医と、アマンダは違う。ヤク中で、自傷行為ばかりしているだめなアマンダ。彼女は社会から脱落し、すでに地獄を生きている。誰かのせいで、こうなってしまった。誰かのせいで、クスリと出会い、溺れてしまった。地獄に突き落とされたアマンダが、今度は薬物投与された他人の体を切り刻む試練をくぐり抜け、生きる意味をみつける。生きる意味、これはもう復讐しかないわけです。自分を地獄に突き落とした人物へ、そして社会への復讐。アマンダ、かわいそうだ。
ここに深い溝があるわけっすね。ジョンが行う神の御技は救済の行為だったが、アマンダのそれは復讐という自己の解放だったわけです。
ということで、ジョンはアマンダに卒業試験を課している。苛酷なゲームの根底に流れる、"生かす"ということの意味を教えようとする。
で、リンちゃんと、いちゃつきまくり(笑)でまさかの大挑発。
それを見て、アマンダは怒っちゃう。これまですべて言うこと聞いてきたのに!信じてついてきたのに!何でもやったのにぃーっ!私の愛はどうなるんだと、ものすごい怒る。
You're right John, I am not like you. I am a murderer!
あなたの言うとおりよジョン、私はあなたとは違う。どうせ私は人殺しよ!
ドラマ『Like Father, Like Daughter.』すね、なんだか親子の会話っす。お父さんの言うとおりよ、でもお父さんとは違うの!どうせ私なんておちこぼれよ!
親の期待に応えられないコドモのセリフだ。まるで反抗期。
いや、SAWではみんながこうなんだ。人は、結局変わることができない。
で、その結果予想外のクライマックスが訪れ、ジョンも泣いちゃった。残念だったんだな、悔しかったんだな、哀しかったんだな。ジョンは自分と、アマンダを含めた人々とのギャップをついに知り、泣いちゃうわけです。誰も、この高さまで、自分のところまで、登ってきてくれない。"人は結局は変わらない"、ついにそれを飲み込んで、ジョンはアマンダを赦します。いいんだよ、そう言います。人は弱い。それを赦す。
極限のラブストーリーっすねー。
他の親子(ローレンス・ゴードンとダイアナ&アリソン、エリック・マシューズとダニエル)と同じなのかもしれません。命を懸けたけれども、たすけられない、すれ違う、親子のラブストーリー。
裁けば、人は変わるのか。
教えれば、人は変われるのか。
血を流せば、人は理解するのか。
神(ジグソウ)の要求に人は応えられるのか。
人は、人を信じ、人を赦せるのか。
こーゆーことがテーマっすね。アマンダは、信じ、赦すことができなかった。
逃げられない、動けない、たすかる方法がない、そういう絶望ではなく、今度は"人に対する"失望に、映画はたどり着きました。
最後のジョンの笑顔、おっかなかったっす。
「人間よ、おまえもどうせ理解しない。変われない人間よ、愚か者め」、そういう、呪うような笑顔っす。怖い。『SAW III』でいちばん怖いシーンです。さるお、トビン・ベルがどんどん好きになっていくYO(笑)!
さて、完全解読マニュアル3の最後になりました。続き(完全解読マニュアル4)はたぶん、DVDが出てからっすね。
ということで、ものすごいことを書きます。
その前に【エリック・マシューズのその後】について
「エリック・マシューズに何をした?」
ジョンがアマンダに聞きます。すると、アマンダとエリックの肉弾戦の映像が流れます。でもこれは、答えになっていません。観客が観た映像からわかるアマンダの答えは、「エリック・マシューズにキックした」です。答えになってない(笑)。
ジョンはこの件を、アマンダがアダムを窒息死させたことと同等に扱っている。ということは、本当は質問するまでもなく、ジョンは答えを知っています。アマンダがエリックを殺害したと、知っている。ということは、あの映像の続きがあるわけだね。
映像の最後は、エリックもへろへろ。でもとにかく生きてます。「You're not Jigsaw, bitch!(おまえなんかジグソウじゃねーずらぁーっ!)」と傷つくことを言われたアマンダも怒って振り返りますが、こちらも顔半分が血だらけでへろへろ。
つまり、回想シーンが終わってから、エリックが死亡するまでに、もっとはるかに壮絶に痛い、何かがあった。そしてエリックは死んだと思います。
この、アマンダvs.エリックの第2ラウンドで映画1本撮れるかなと(笑)、そーゆー意味で、また回想シーンの最後の時点で死んでない、という意味で、さるおは"エリックが生きている"と言っています。エリックがすっかり元気になって活躍するとは思ってません。
では
ものすごいこと2つ、いきます。とりあえず、ぶっ飛んでるのは承知で、言い切ってみます(笑)。
1つめ
1作目『SAW』のDVD持ってる方は、もう1度観てください。記憶しているかどうかじゃなくて、もう1度観てこそ気がつくことがあります。借りてきてでも観てくださいと言いたいところっすけど、外れてるかもしんねーし(弱気)、さるお捨て身の爆弾予想ですから、レンタル代返せって言われると土下座するしかないので、えーっと、借りてきてまで観ないでください、くれぐれも(笑)。
アダムが覚醒します。すると、ローレンス・ゴードンが先に目覚めていて、電気もつけずにすっかり落ちついている。
おかしくないですか?
で、アダムが起きるとすぐに、電気のスイッチがみつかります。
おかしくないですか?
ぶっ飛んでいるようですが、よく考えてみてください。
ローレンス・ゴードンのゲームの準備で、ジョンが自分に注射を打って横になってますが、あの注射は誰が準備したのか?『SAW III』のこのシーンでは、アダムを運んできたアマンダとジョンの作業ばかりクローズアップされてました。
わざと電気をつけずにいたように見えます。中央の死体を"知っている"ように見えます。いちばんさりげなくないのは
引き戸を押したところです。
ほかにもたくさんね、不自然に見えます。
もうさるおちゃん、思い切って書いちゃう。ローレンス・ゴードンは共犯者だった。1作目の時点で。それどころか、最初から共犯だった。
ではなぜ、自分が共犯のゲームで足を切ることになったのか?あるいは、足を切らなければならないとわかっていてなぜゲームに参加したのか?
アマンダのゲームもゴードンが手伝っている。"your dead cell mate"と呼ばれたおじさんにクスリを過剰投与したのはゴードンです。"繰り返しを多用する"SAWの法則に従えば、このおじさんがうす目を開けるシーンは、ゴードンがインターンに病状説明するときジョンがうす目を開けているシーンとそっくりです。
たとえば、たとえばですよ。アマンダがHe helped me.と言うのを聞いて、ゴードンもHelp me.と言ってみたことがある。で、じゃプレイヤーになってみるかい?と言われる。で、ゴードンは、「自分は仕掛け人だからだいじょうぶ、アダムをひっかければいいんだ」と思って参加してみると、アダムに妻子の写真を見せられるシーンで、「オレかよ!」と。で急速に焦りまくり追いつめられて足切り。
どうすかね。
ここまで来たらもう、暴走ついでに、"ペンライトの忘れ物"ね、あれは本当にゴードンの忘れ物。ゴードンはペンライトを持って、カミソリワイヤーの地下室に来る用事があった。そうです、外科医の得意な、皮膚を切るシゴトをしに。プレイヤーの皮膚からジグソウピースを切り取るのはゴードンのシゴトだった。
どうすかね。
2つめ
リンって、痩せてるようで、そうでもなかったですね。ちょっとおなかがぽっこり出てる。歩き回るシーンとかで、そう見えましたよね。
さて、リンが撃たれて死にそうです。救急車を呼ぶ?4分?あー、病院近いんだね。4分で救命士が来るのかー。
ジョンのテープをもう1度聞きましょう。
I am the person responsible for the loss of your child. I am the only person who knows... where your DAUGHTER is. She only has a limited supply of air, Jeff... and if you want to get her back, you'll have to play a game.
私はおまえの娘の行方に責任がある人物だ。おまえの娘の居場所は私しか知らない。彼女がいる場所は空気がなくなる。娘をたすけたければゲームをしろ。
!!!
娘の命の鍵となる人物はジョン?え?ジョンが握ってるのはリンの命じゃなかったっけ?
でもリンは撃たれちゃったんです。
で、空気がなくなる?くうきがなくなるぅーっ?
"もうひとり"女の子がいるのか!あの病室に、すでにいるのか!リンが撃たれて、空気の供給が断たれる状態で!
病院までは4分。
!!!
どうしよう!リンのおなかを裂いて、動ける外科医がいれば、この廃工場の病室の設備で、女の子の命は救えるかも。
誰も長女を拉致っていない。普通のカギ穴のついたドアがある部屋で、膝をかかえていたようにみえた長女、あれは空気のなくなる部屋なんかではない。
ただし、この推理には欠点がありますね。わかってます、おなかの子は、ジェフの娘じゃないかも。うーん・・・
心ゆくまでさるお、もんち!