さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、きわめて重要な面会に参加します。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。ハリポタ辞典のもくじは
こちらです。
グリップフックはまだグリフィンドールの剣を握りしめています。つっけんどんに怒っているような、好奇心が入り交じったような、そんな表情です。土色の肌、細くて長い指、黒い目。ハウスエルフよりもほんの少しだけ背が高く、人間よりもずっとでっかい頭。素足が汚れています。フラーが靴を脱がせたんすね。
「起こしてごめんなさい。えっと、覚えてないかもしれないけど・・・」
「覚えてる。おまえが初めてグリンゴッツに来た日のことなら、覚えてる。私がおまえを金庫室に案内した。ハリー・ポッター、おまえはゴブリンの間でも有名だ」
ハリーとグリップフックは見つめ合います。そう、相手はゴブリン、仲良くするんじゃなくて"取り引き"をしないとね。
「おまえは、あのエルフを埋葬した。私はそれを窓から見ていた。おまえは変わってる。ハリー・ポッター、あんたは変わり者だ。自分の手で墓穴を掘るなんて」グリップフックの口調は、思いがけないほどに意地悪な感じ。マグルみたいにスコップで掘ったからバカにされたのかと思いました。
「それに、おまえはゴブリンをたすけた。私を、救ってくれた。おまえは変な魔法使いだよ」
読者にはちゃんとわかります。魔法に頼らずエルフを埋葬したハリーを、自分を救った魔法使いを、グリップフックは彼なりに評価してくれてるんですね。でもこーゆーときのハリーさんは鈍い(笑)。
「えっとね、とにかく、たすけてほしいんだ。ぼくら、グリンゴッツの金庫室に入りたいの」
額の傷跡が痛い。目を閉じると、また見えます。見慣れた、懐かしいお城が。
「グリンゴッツに押し入るぅー?無理、それは無理だ!」グリップフックもびっくりの、まさかの強盗予告。
「不可能じゃない、過去にあったじゃんか」ロンがハリーの味方をします。
「そうだよ。ぼくが初めてあなたに会った日、7年前のぼくの誕生日だよ」
「それは違う。あのときあの金庫は空だった。だからプロテクションは最小限だった」
「ぼくらが入りたい金庫は空っぽじゃないけど、えっとね、レストレンジ家のやつなの」
ロンとハーもびっくり。
「不可能だ、絶対無理。If you seek beneath our floors, a treasure that was never yours...(地面の下まで探しても、宝は決しておまえのモノにはならない)」
「Thief, you have been warned, beware.(泥棒よ、警告したぞ、気をつけろ)でしょ、わかってるよ。どろぼうするんじゃないんだ。信じてよ」
グリップフックはハリーを観察しています。そしてこう言います。「銀行に押し入っといて盗まない、そんな魔法使いがいるとすれば、おまえしかおらんね、ハリー・ポッター。ゴブリンもエルフも、今夜あんたが見せてくれたようなリスペクトを"杖を持つ者"から受けたことはない。"杖を持つ権利"はずっと前からゴブリンと魔法使いの間で争われてきた。杖の秘密を他種族と共有することを、魔法使いどもは拒んだ!ゴブリンが魔力を発展させる道を断ってしまったんだ!」
「ゴブリンって杖がなくても魔法使えんじゃん。それに、ヒミツ持ってるのだって同じ。剣とか鎧とかさ、ヒミツの精練方法で作ってんじゃんか」と余計なことを言うロン(笑)。「まぁまぁまぁ、それはどーでもいいじゃない。魔法使い対ゴブリンとか、そーゆー話じゃなくってさ」とグリップフックをなだめたいハリーさん。
「ふん!問題はまさにそれだ!ダークロードが再び台頭してきた。グリンゴッツは新政府の支配下に落ち、ハウスエルフが殺される。なのにおまえら魔法使いどもはあいかわらず無駄に威張ってばかり!"杖を持つ者"の中には抵抗してやろうっちゅー骨のあるヤツはおらんのか!」
「あたしたちがいるわ!」
来たぁーっ!ハーちん、かっこええ!
「あたしたちが抵抗してる!あたしだってゴブリンやエルフと同じくらい狙われてるんよ!あたしなんかね、"穢れた血"なんだからっ!」
「自分で言うな」ロン、渾身のツッコミ。
「何よ!マッドブラッドで結構。誇りに思うくらいだわ!今じゃあたしの方があなたより指名手配の上位なんなんだから、グリップフック!だからまるほい邸であいつらが拷問相手に選らんだの、あたしだったんじゃん!」
ハーは自分の首を見せます。そこには、ベラ姐に切りつけられた血のネックレスが、今も深紅のまま残っています。えーん、ハーちんも満身創痍。
「ドビーを自由にしたのは他でもないハリーなの!あたしら、長いことエルフ解放活動をしてるんだから!あたしら、ヘビ男を倒したいって、あなたよりずっと強く思ってるんだからね!」
"Society for the Promotion of Elfish Welfare"、通称SPEW、ロンちん立場無し(笑)。
グリップフックは、ハリーを見るのと同じような、興味深そうな顔でハーを見つめます。「金庫の剣は贋作、こっちがホンモノ。なのにレストレンジの金庫で何を探す?」そしてトリオを見て考え込みます。「あんたらは若すぎる、そして戦う相手が多すぎる・・・ちょっと考えさせてくれ」
もう休むと言うグリップフックの手から、ハリーはグリフィンドールの剣をそっと取り上げました。グリップフックは抵抗しません。わかってくれたような気もするし、やっぱり魔法使いを見るゴブリンの目には敵意が込められているような気もするし・・・。
「ハリー、あなたが考えてること、あたしが思ってることと同じかな?」
「うん。あねごの取り乱しようって、そーゆーことじゃん?ぼくらが金庫に入ったって思って、そこにはきっと見られちゃいけないモノがあって、盗まれたりなんかしたら、ヘビ男に怒られるんだよ」
「でもさ、ぼくらが捜し回ってたのって、ヘビ男ゆかりの地だったじゃん?」
額の傷跡が痛いけど我慢して、オリバンダーさんと話す前に、ロンとハーにわかってもらわなきゃ。
「ヘビ男ってマグル界で育って、魔法界の遺産なんかなかったからさ、学校入るときにダイアゴン横丁行って、初めて銀行見たわけじゃん。そしたらさ、ぼくもそーだったけどさ、こりゃすげーって驚くわけよ。ほんで、カギ持ってる人いいなって、カギ持ってたら魔法界の一員って感じだよなって、思ったんだと思う。ヘビ男ってあねごの旦那さん信頼してて、ヘビ男が失脚した後もちゃんと自分を探してくれたの、あの夫婦だけなんだよね。ただ、あねごにホークラックスの秘密はしゃべってない。ドラコのとーちゃんに日記のこと言わなかったのと同じだよ。でも、金庫にちょっとモノ置かせて、とかは言ったと思う。ハグリッドが言ってたもん、ホグワーツを除けば、いちばん安全な場所はグリンゴッツだって」
今ではヘビ男のことがよくわかるようになったハリーさん、本当は、ダンブルドアのことをもっと理解できてたらなぁ。
次にトリオはオリバンダーさんに会います。
痩せこけて、弱々しく疲れ切ったオリバンダーさん。くぼんだ眼窩の銀色の瞳がずいぶん大きく見えます。
「オリバンダーさん、休んでるのに邪魔してごめんなさい。ぼくら、たすけてほしいんだ」
「キミたちは私らを救ってくれた。私は自分があの場所で朽ち果てる運命だとあきらめていた。どれほど感謝しているか、言葉には表せない。どんなことでも手伝わせてもらうよ」
ハリーにはわかっています。ヘビ男を食い止める時間はもうほとんど残されていません。傷跡が痛い。なんだか焦ってきます。でも、先にグリップフックと話すって言ったとき、もう決断したことなんだ。
首に掛けたハグリッドのポーチから折れた杖を取り出します。
「オリバンダーさん、これ、なおせる?」
「ヒイラギ、フェニックスの尾羽、11インチ、美しくしなやかな杖・・・えっと、残念、なおせない。こんなんなっちゃうと、どーにもならん」
想定内ですが、やっぱりちょっとがっかり。ハリーはポーチに杖をしまいます。オリバンダーさんはそれをじっと見ています。
ハリーはまるほい邸で奪ってきた2本の杖をポケットから出します。
「この2本はどう思う?ぼくが使えるかな」
「クルミ、ドラゴン、しっかりした杖だ。12と3/4インチ、これはベラトリクス・レストレンジのものだった。こっちはサンザシとユニコーン、ちょうど10インチ、適度な弾力がある。ドラコ・マルフォイ君のものだった」
「"だった"?」
「きみが取り上げたのなら、おそらくもうきみのものだろう。取り上げ方にもよるし、杖が決めることだが。杖は持ち主を選び、ときに、持ち主を変える。勝ち取られた杖は、その勝者を新たな持ち主として選ぶものだ。杖の所有権は、繊細な法則に支配されているが、力で奪い取った杖は、たいてい新しい主人に頭を垂れる」
なるほどー、杖を研究し伝承する者(杖職人)はこーゆー原理を知ってるんですね。
「たとえ杖に選ばれなくても、もちろん使うことくらいはできる。でも本当の力を最大限に発揮するには、杖と持ち主は強く結ばれていなければならない。杖と持ち主、お互いが経験を積み重ね、杖は魔法使いから学び、魔法使いは杖から学ぶ。そーゆーもんなんだよ」
ロンもオリバンダーさんに杖を見せます。
「チェスナッツ、ドラゴン、9と1/2インチ、私が誘拐されてすぐにピーター・ペティグリューのために作らされた脆弱な杖だ。きみが勝ち取ったのであれば、きみの言うことを聞く」
「その法則ってすべての杖に当てはまるの?」
「私はそう考えてるよ、ミスター・ポッター」
「ってことは、必ずしも前の持ち主を殺さなくても、奪いさえすれば新しい所有者になれるってこと?」
「・・・なんておそろしいことを・・・"殺し"など必要ではない」
「でも、伝説は?ある杖が、複数かもしれないけど、手から手へ、殺人によって受け継がれてきた、そーでしょ?」
ドキドキする質問です。額の傷跡もめちゃめちゃ痛い。ヘビ男は、ついに動こうとしている。
「・・・その杖は、1本だけだ」
オリバンダーさん、青ざめてます。何か、とても怖れている。
「そしてその杖を、ヘビ男は欲しがった」
「・・・なぜだ・・・なぜそれを知った?」
「ヘビ男はまずあなたから、兄弟杖の弱点を克服する方法を聞き出そうとした」
「私は・・・私は・・・拷問されて、知ってることを話すしかなかった、わかってくれ」
「わかってます。それはわかってる。で、あなたは誰かに杖を借りればいいっておしえた。けれどそれはうまくいかなかった。ぼくの杖は、その"借り物"もやっつけた。どーしてなのか、理由はわかりますか?」
ハリーがあまりにも知りすぎているので、オリバンダーさんびっくりです。ほとんど怖がって、震えながら、わからないと言います。
「ヘビ男は、ぼくの杖が"借り物"もやっつけたからすごく怒って、伝説の杖のことをあなたに聞いたんでしょ?」
「・・・なぜそれを知っている?・・・ヘビ卿は私の知識のすべてを欲しがった。"Deathstick"(死の杖)とか"Wand of Destiny"(運命の杖)とか"The Elder Wand"(ニワトコの杖)とか、いろいろ呼び名のあるその杖について」
これには、信じてなかったハーちんがびっくり。
「ヘビ卿はかつて、私が作った杖に満足していた。イチイ、フェニックスの尾羽、13と1/2インチ。兄弟杖のあの現象に出会うまでは。今はより力強な杖を探している、それを使えば、おまえを倒せると思っている」
「でも、どうせもう兄弟杖は存在しないって気づかれちゃう。"
Priori Incantatem"・・・ハーちんの杖、まるほいんちに置いてきちゃったもん、調べられたらバレちゃうよ、ハーちんの杖がぼくのを破壊して、その後修理しようとしたって」
またしても罪悪感に駆られるハーです。
「ヘビ卿は、おまえを倒すためだけにニワトコの杖を探しているわけではない、ミスター・ポッター。その杖の所有者になれば、本当の意味で無敵だと信じているんだ。しかし、ニワトコの杖の所有者は、常に襲撃を怖れるようになる、そーゆー運命だ。ま、それがヘビ卿の持ち物になったら、実際問題、太刀打ちできないだろうけど」
ハリーは突然思い出します、初めてオリバンダーさんに会ったとき、あんまり好きになれないなって思ったんだっけ。そしてそれは今も変わらない、"わるもんがニワトコの杖の所有者になったら"という考えを嫌悪しながら、同時に魅了されているように見えるんですね。強力すぎるその杖をわるもんが所有したら大変、でも研究する立場から見れば、たしかに魅力的な杖です。
「ニワトコの杖を受け継ぐために、必ずしも殺人が条件かどうかはわからない。しかし歴史は血塗られている。あまりに魅力的なために魔法使いたちが殺人も厭わないほどに追い求めた結果というだけかもしれないが・・・」
「オリバンダーさん、ヘビ男に、グレゴロヴィッチが今のニワトコの杖の持ち主だっておしえたんでしょ?」
オリバンダーさん、驚愕のあまり顔面蒼白をとーりこして真っ青っす。
額の傷跡が焼ける。目を閉じると、まだ暗い(ここより北に位置するので)ホグズミードのメインストリートが見えます。
「遠い昔、噂が流れた。ニワトコの杖をグレゴロヴィッチが持っていると。私は、噂を流したのがグレゴロヴィッチ本人だと思っている。ニワトコの杖を調べつくした職人が作る杖となれば、バカ売れまちがいないしだから」
「オリバンダーさん、最後にもう1つだけ。"ですりーはろうず"って知ってますか?」
あれれ?オリバンダーさんはきょとんとしています。ハリーはその表情を見て、演技じゃないと考えます。「どうもありがとう。もう休んで、オリバンダーさん」
ふたりとの面会は終わりです。ダイニングキッチンでは、ビル、フラー、ルナ、ディーンが紅茶を前に座っています。そして顔を上げてハリーを見る。
ハリーはうなずき返しただけで、そのまま庭へ出ました。ドビーが眠っている赤土のお墓までやってくると、ロンとハーに向き直ります。
頭がかなーり痛い。押し寄せるイメージから心を閉ざすのに一苦労です。もう、とても疲れたよなぁ。でも、あと少し。ほんの少し、激痛に耐えて、ロンとハーに説明しなきゃ。
「ずっと昔、グレゴロヴィッチがニワトコの杖を持ってた。だからヘビ男はグレゴロヴィッチを捜してた。でも、居場所を突き止めたときにはもう、グレゴロヴィッチは何も持ってなかった。グリンデルバルドに盗まれたんだよ。グレゴロヴィッチが所有者だってことをどーやってグリンデルバルドが知ったのかはわからないけど。噂を流したりしたんなら、知るの簡単だっただろうし」
ホグスミードを抜け、ホグワーツの校門に立つヘビ男が見える。
「グリンデルバルドは自分が無敵になるためにその杖を使った。そしてグリンデルバルドが頂点に立ったとき、ダンブルドアにはわかったんだ、彼を止められるのは自分しかいないって。ほんでグリンデルバルドと決闘してやっつけて、ニワトコの杖を奪ったんだよ」
「ダンブルドアがニワトコの杖を持ってたってこと?ほんなら今どこにあんの?」とロン。
「ホグワーツ」
ハリーさん、そろそろ体力の限界っす。
「んじゃ早く行かなきゃ!ハリー、今すぐ行って、ヘビ男より先にみつけなきゃ!」
「もう間に合わない。ヘビ男は今ホグワーツに着いたよ」
ハリーさん、倒れそうですよ。
「ハリー!いつから知ってたんだよ、なんで時間を無駄にしたんだ!なんでグリップフックと先に話したんだってば!ほんとはもっと早く行けたんじゃんか!今からだってさ、行こうよ!」ロンの声、ほとんど怒ってます。
「違う。ハーちんが言ったとーりなんだよ。ダンブルドアは杖の取り合いを望んでない。彼はぼくに、ホークラックスを見つけろって、それがダンブルドアの求めたことなんだ」
ハリーさん、とうとう芝生に膝をついてしまいました。
「ほんなこと言ったって、無敵の杖じゃんよー!」
地平線の彼方から、朝陽が昇る。湖に向かって、すべるように進んで行くぜ。横にいるのはスネイプだぜ。
「ほなまたあとで、城でなー。今はひとりになりたいねん」
スネイプさんは頭を下げて踵を返します。黒いマントがなびいている。
ゆっくり歩く。スネイプの姿はもうありません。Disillusionment Charmを使うと、自分にも自分の姿が見えなくなりました。そして湖のほとりを歩き続ける。愛すべき城が見えます。最初に手にした王国、ホグワーツ。
湖のほとりの白い大理石の墓が、懐かしい風景を無駄に汚している。この墓石を破壊して、それを手に入れる。その最後の偉大な所業に、イチイの杖はなんとふさわしいことか。
墓石が真っ二つに割れる。中には、生きているときと変わらず、背が高く痩せた遺体が布で覆われています。埋葬布がするりとほどける。半透明の、青白い顔。眼鏡も生前のようにかけられています。ざまーみろだ、ダンブルドアをあざ笑うっちゅーのはいと愉しーや。
胸の上で組まれた両手、そこに、それは固く握られていた。
老いぼれた愚かなじじぃや、大理石やとか自らの死で、あの杖を隠せるとでも思ったんか、あほんだら。
蜘蛛のような手が、その杖を無理矢理奪い取る。
杖の先からスパークがほとばしり、最後の所有者の亡き骸に降り注ぎました。杖は、新しい持ち主に仕える準備を整えたのです。
【メモ】
If you seek beneath our floors, a treasure that was never yours. Thief, you have been warned, beware. Of finding more than treasure there.
床の下まで探しても、宝は決しておまえのモノにはならない。泥棒よ、警告したぞ、気をつけろ。おまえは宝より恐ろしいモノを見つけることになる。
この懐かしい文章。"more than treasure"(宝以上のモノ)はもちろん地下に潜むドラゴンのことです。が、『DH』ではいったい何を指すことになるのかな。
心ゆくまでさるお、もんち!