2008年01月30日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 35

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、不思議な場所で、懐かしいあの人と本当の会話をしましょう。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

35:King's Cross

うつ伏せに横たわり、目を閉じたまま静けさに耳を澄ませる。
周囲には、誰もいません。
長いことたって、いや、あるいは一瞬の後、ハリーは間違いなく自分が"存在"していると感じました。だって、何かの上に横になってるこの感じ、間違いないもん。
目を開けてみます。見えるぞ。とりあえず、少なくとも目はついてます。
白い霧に包まれ、白い床の上に横になっている。床は温かくも冷たくもなく、ただそこに存在している、不思議な感じです。
ハリーは起き上がってみます。そして自分の身体を見ようとすると、そこに身体が見えました。なんかしらんけど、誰もいないからべつにええけど、裸んぼじゃーん!
顔を触ってみる。メガネもありません。
そのとき、何もないどこかから、耳障りな音が聞こえてきました。何かが、もぞもぞともがきながら、床を叩く小さな音です。それはとても哀れな音、静かな泣き声の混ざった、聞きたくない音でした。
素っ裸なのがなんだか恥ずかしくなりました。着るモノがあればいいのに。すると少し離れた何もない床の上に、ローブがありました。柔らかく清潔で温かいそのローブを羽織り、ハリーは立ち上がって辺りを見回します。
ここはRoRなのかな?
見上げると、巨大な半球のガラスの円天井が、はるか頭上で日の光にきらめいています。なんだか宮殿みたいなところです。
その聞きたくない哀れな音以外、何の音もしません。
明るくて、とても大きな場所。ホグワーツの大広間より大きい。そこに、ただひとり。この嫌な音を除いて。と思ったら、見えました、その音を出しているモノが。
それは、小さな裸のコドモ。生皮を剥がれ、床に丸くうずくまるようにしてベンチの下にいるコドモです。喘ぐように呼吸しています。
傷を負った瀕死の小さなコドモなのに、なんだか近寄るのが怖い。ちょっとずつ近づいてみたものの、手を伸ばすことができません。
「たすけられん」
唐突に声がしました。
はっと振り向くと、アルバス・ダンブルドアが、ミッドナイトブルーのマント姿でこちらに歩いて来ます。無傷の両腕を大きく広げています。「ハリー、すばらしい少年、勇気ある者よ。少し歩こ」不快な音から遠ざかるように、ダンブルドアは、そこにはなかった2脚の椅子へと歩きます。銀色の長い髪と髭、半月型のメガネの奥の心を貫く青い瞳、ちょっと曲がった鼻、ハリーが知っているダンブルドアです。
「死んじゃったんじゃなかったの?」
「そうだよ」
「じゃ、ぼくも死んだの?」
「あぁ」ダンブルドアはとても優しく微笑んでいます。「そこが問題だ、そうだろう?けど、私はそうは思っていない」
「死んでない?」
「そのとおり」
「でも・・・」ハリーは戸惑いながら額の傷跡に触れます。あれれ、傷がないみたい。「ぼく、死んだはずなんだ。自分のこと守ろうとしなくて、あいつにぼくのこと殺させたんだ」
「それですべてが違ってくる」
光りのように、炎のように、見たことがないほど充実した幸福を、ダンブルドアは身体中から発散しています。
「説明してよ」
「もうきみにはわかってるはずだが」
「ぼくはあいつにぼくを殺させた」
「そうだね」
「それでぼくの中にあった彼の魂のかけらが・・・消えた?」
「それだ!彼が自分で破壊した。きみの魂は傷ひとつない、これですっかりきみ自身になったんだよ、ハリー」
「それじゃ・・・」ハリーは肩越しに、耳障りな音を出し続けるあの震える小さな生き物を見ました。
「あれは何?」
「私たちには救うことのできない何か」
「もしヴォルデモートがAKを使ったなら、なんでぼく生きてるの?今回は誰も身代わりになってくれてないのに」
「それもきみにはわかってる。よく考えて、欲望と残虐さに溺れた彼が、自分でも気づかぬうちに何をしてきたか、思い出してごらん」
考えようとするハリー、なぜか答えがすぐにわかります。「・・・ぼくの血をとった」
「それだ。彼はきみの血を使って肉体を復活させた。きみの血が彼の血管を流れている。リリーの守護がきみらふたりの中を流れているんだよ、ハリー。彼は、彼の命ときみの命を自分で結びつけてしまった」
「彼が生きている限り、ぼくも生きるってこと?でもぼく、両方とも死ななきゃならないのかと思ってた。でもこれって、同じこと言ってるのかな?」
ハリーはまたあの小さな生き物を見ます。「ほんとにたすけられない?」なんだか気になってますね。
「ハリー、きみは7つ目のホークラックスだった。作るはずではなかった、7つ目。彼の魂は不安定になりすぎていて限界だったのに、きみの両親を殺しきみも殺そうとしたら、不安定だから割れちゃった。彼はあの家に肉体だけを置いて逃げ出したつもりでいたが、それ以上のモノを置いてきてしまったんだ。彼の魂の破片は、殺すはずだったきみに、生き延びたきみの中に封印された。彼はまったく学習しない。ハウスエルフや、童話や、愛、忠誠、そして無垢であること、そーゆーのものを軽んじて、何も理解しない。何もだ。それらは、彼がまったく及ばないほどの強力な力を、"魔法"などが及ばない強大な力を持っているのに。彼はきみの血を使えば強くなれると思ったが、彼がリリーの犠牲と守護を生かしている。リリーの犠牲はきみらふたりの守護になった」
「はじめからわかってたの?」
「いやいや、推測していただけ。私の推測はけっこう当たるけどね」ダンブルドアは嬉しそうに微笑んでいます。しばらく黙ってそこに座り、長い時間が経ったような、時間は経っていないような、で、あのコドモは震えながら泣き続けています。
「ぼくの杖は、なんでやつの借り物の杖(ルシウスの)をやっつけたのかな?」
「確かなことは言えないが」
「じゃ推測してよ」
ハリーの言葉に、ダンブルドアは笑いました。今のハリーは遠慮なくずけずけと命令口調ですね、トムぐらいに。
「きみとヴォルデモート卿は、まだ誰も知らない魔法の国をともに旅してきた。私も知らない前人未到の領域だから、憶測だよ。ヴォルデモート卿は復活に際して、きみとの繋がりをより強固にしてしまった。魂の一部をきみにあずけている上に、きみの血まで使ったから。もしも彼が"犠牲"というもののとんでもない魔力を理解していたなら、きみの血は使わなかっただろう、触りたくもなかったはずだ。ま、それが理解できるくらいなら、彼は"ヴォルデモート卿"などにはならなかったし、殺人など犯さなかっただろうけど・・・。で、絆の深いその相手に、まずは兄弟杖で攻撃した。そしたら兄弟杖ならではのあの現象が現れた。最も恐怖を感じたのは、きみではなく彼のほうだよ、ハリー。きみは死を覚悟した、ヴォルデモート卿には決してできないことだ。きみの勇気が勝ち、きみの杖が勝った。それを杖は知っているんだ。所有者に起きたことに、杖は共鳴する。きみの杖は、ヴォルデモート卿の力と資質を吸収し、敵として記憶したわけ。だからきみの杖はヴォルデモート卿が現れたのを認識すると、ヴォルデモート卿の力と資質で反撃する。きみの杖は、今では、きみの類いまれな勇敢さとヴォルデモート卿の恐るべきスキルの両方を兼ね備えている。誰かに杖を借りたって無駄だ」
「そんなに強い杖なのに、ハーに折られちゃったよ」
「杖は"ヴォルデモート卿を"敵と見なすんだ。"ヴォルデモート卿にだけ"めっぽう強い」
ハリーは考え込みます、長い間、あるいはほんの数秒。ここでは時の流れがどうもおかしい。
「あいつは先生の杖でぼくを殺した」
「"殺し損ねた"が正しい。きみにもきみが死んでないってわかるだろう?きみの苦難を過小評価するわけじゃない。大変な思いをした、それはわかっているよ」
「ところでさ、ここって気持ちいい。ここどこ?」
「それは私がきみに聞こうと思ってたんだ。ここはどこだい?」
ダンブルドアに聞かれるまでわかりませんでした。けど、急にわかったぞ。
「キングスクロス駅みたい。すごくキレイで、誰もいないし、列車もないけど」
「キングスクロス駅か!なるほど、きみの世界に属する場所だね」
ハリーにはどーゆー意味かわかりません。でももっと他の質問が浮かんできました。
「ですりーはろうず」
ダンブルドアの笑顔が消えます。ダンブルドアは老人ではなく、いたずらをして捕まったコドモのような表情になりました。
「許してくれるかい?真実を語らなかった私を許すことができるかい?ハリー、私はただ怖かったんだ、私が失敗したように、きみが失敗するのが。私と同じ過ちを犯してほしくなかった。いや、きみは私より良い人間だと知っていたのに。許しておくれ」
ハリーはびっくりします。だって、ダンブルドアの知的な青い目には涙がいっぱい。
「死神の秘宝、向こう見ずな人間の夢、危険で、愚か者を惹きつける。私は愚かだった。きみが知っているとおりの愚か者だ。もうきみに隠し事はない。・・・死の支配者だ、ハリー、死の支配者!私は死を克服する道を求めた。私はこれでもヴォルデモートよりマシだろうか?」
「あなたはあいつなんかと違うよ!人殺しなんかしないもん。はろうずはホークラックスとは違うもん」今までぶっきらぼうな命令口調でなんだか怒っていたハリーですが、こうしてダンブルドアを目の前に、怒っているのもなんだか変だと思い始めました。
あの奇妙なコドモは泣き続けています。でも、もう振り向きません。
「グリンデルバルドも探してたの?」
ダンブルドアは頷きました。「同じ夢を見た2人の聡明で傲慢な少年たち。私たちは秘宝に夢中になったよ。彼はゴドリックズホロウに来たがった、Ignotus Peverellの墓があるからね」
「じゃ、ほんとなの?だんご三兄弟の話も?」
「もちろん。人気のない道で死神に会った、というより、あれほどの魔力を持ったモノを作ることができる天賦の才を持っただんご三兄弟はキケンな存在だった、という意味だろうがね。・・・透明マントは、きみも知っているとおり、父から子へ、母から娘へ、Ignotusと同じくゴドリックズホロウに生まれたIgnotusの子孫へと代々受け継がれた」
「それぼくのこと?」
「そうだよ」ダンブルドアはまた少し微笑みます。「なぜあれを私があずかっていたのか疑問に思うだろうが、ジェームズが死ぬ少し前、彼は私に透明マントを見せてくれた。あのときやっと、彼が学校でこっそりいたずらばかりできたわけがわかったよ!私は、自分が見ているモノが信じられなかった。バカな夢はずっと昔にあきらめたというのに、逆らうことができなかった。よく見たくて、触ってみたくて、借りたんだ。いにしえの、なのにほころびひとつない完璧なマントだった。・・・そしてきみのパパさんは死に、私は2つ目の秘宝を手に入れた。・・・私は、自分を軽蔑している」ダンブルドアはハリーの目を見るのがやっとです。
「ぼくは軽蔑なんてしてないよ」
「軽蔑されるのがあたりまえだ。・・・きみは私の妹のことを知った。マグルたちが何をして、妹がどうなったか。私のパパさんは復讐を果たし、代償を払ってアズカバンで死んだ。私のママさんは自分の人生を捨てて妹のためにすべてを捧げた」
そして冷たく言いました。「あろうことか、私はそれに腹を立てたんだ」
ハリーの肩越しに、ダンブルドアは遠くを見やります。「私は才能に溢れていた。私は聡明だった。家から逃げ出して、輝きたかった。栄光をつかみたかった」
ダンブルドアは年老いた表情に戻っています。「でも、誤解しないでほしい。私は彼らを愛していた。ただ、自己チューだったんだ。ハリー、私の知る限りもっとも他人を尊重することのできるきみとは比べ物にならないほど、私ははるかに自己チューだった。私のママさんが死んで、傷ついた妹と強情な弟の面倒を見なければならなくなって、村に戻ったよ。怒り、苦々しいと思いながら。家に縛られるなんて浪費だと思ってね。そして・・・彼が来た」
ダンブルドアはハリーの目をまっすぐ見つめます。
「グリンデルバルト。彼の考えていることがどれほど素晴らしく思えたか、想像もつかないだろう。我々魔法使いが勝利し、マグルは従属する。グリンデルバルドと私、栄光に満ちた若き革命の指導者。もちろん私には疑念もあった。自分の良心を、すべては偉大なる善のためだと意味のない言葉でごまかした。私は、心の奥の奥のほうで、グリンデルバルトが何者かを、はたして知っていただろうか?あぁ、おそらく私は気づいていた。でも、そのことに目をつぶった。もしも計画が達成されるなら、私の夢が叶うから。・・・ほんとはね、計画の中心にあったのは、死神の秘宝だったんだ。それらはどれだけ彼を魅了しただろう、私たちふたりを、どれほど虜にしただろう!権力の頂点に我々を導く無敵の杖、そして甦りの石、彼にとって石は・・・私はそれを知らないと自分を欺き続けたが・・・彼にとって石は、Inferiの軍隊を意味した。私にとっては、両親を呼び戻し、私の肩の荷を下ろすための道具だった。あとは透明マント。私たちはふたりともマントを使わなくても自分を見えないようにするのがうまかったから、マントのことはあまり議論しなかったけど、でも私はそれを、アリアナを隠すのにちょうどいいなどと考えていた。とにかく、3つ集めることに意味があった。そーすれば、死を克服できる。本当の意味で"無敵"になれる。・・・無敵の、死の支配者、グリンデルバルド&ダンブルドア!・・・一夏の狂気、一夏の残酷な夢、ただふたりの残された家族を、私は無視したんだ。・・・夏が終わり、あの弟によって現実が戻ってきた。私は、彼が私に真実を怒鳴りつけるのを聞きたくなかった。口論は大喧嘩になり、グリンデルバルトは歯止めが効かなくなった。その凶暴性に密かに気づいていたのに、知らんぷりをしていた。そしてアリアナは・・・ママさんが人生をなげうってすべてを捧げたあのアリアナは・・・死んで床に倒れていた」
ダンブルドアは泣き始めます。ハリーはダンブルドアの手を取り、あ、ダンブルドアに触ることができたぞ、強く握りしめます。
「グリンデルバルドは逃げた。そんな気はしていた。権力の頂点へ向かう計画と、マグルを痛めつける陰謀と、死神の秘宝への夢を手に、忽然と姿を消してしまった。私は妹を埋葬し、この取り返しのつかない罪と重い後悔を背負って生きると決めた。・・・年月が流れ、あるとき彼の噂を聞いた。とんでもなく強力な杖を手に入れたと。その頃の私は大臣の職を何度か薦められていた。でも決してそれを受け入れなかったよ。権力構造の中で私などが信頼されるはずがない」
「そんなことない!ファッジやスクリムジャーよりずっといい大臣になったはずじゃん!」
「そうだろうか。私はすでに若い頃に証明してしまった、"力"こそが私の弱点だと。権力など欲しない者が上に立つべきなんだ、真のリーダーシップを持つきみのようにね。私にはホグワーツが合っていた。良い教師にはなれたと思う」
「良いどころか、いちばんだってば」
「きみは優しい子だ、ハリー。でも私が学校で授業をやってる間に、グリンデルバルドは軍隊を組織してしまったよ。彼は私を怖れていると聞いたが、いやたしかにそうだったろうが、本当は私が彼を怖れていたんだ、彼が私を怖れる以上に。死の恐怖ではない。彼の魔力でもない。私たちはほぼ互角、いや、実際は私のほうが強かったと思う。力比べではなく、私が怖れたのは真実だった。誰が妹を殺してしまったのか、もう知る術もないけど。・・・きみは私を憶病者と思うだろう。そのとおりだな。彼は私が何を怖れているかを知っていた。私は彼と会うことを拒んだ。これ以上遅らせるのはさすがに恥だと思うまで遅らせ続けた。その間に人々は死に、彼は止められない勢いだった。私はするべきことをしなければならなくなった。きみが知っているとおり、私は勝って杖を奪った」
長い沈黙の中でハリーは考えます。誰がアリアナを殺したかを、ダンブルドアは知ったのだろうか。でもそんなことかまわないや。ダンブルドアもきっと話したくないだろうし。ハリーにはとうとうわかりました、ダンブルドアがthe Mirror of Erisedを覗いたときに何が映るのか。あのとき。なぜダンブルドアには、ハリーのことがわかったのか。もう耳障りな泣き声など気になりません。
「グリンデルバルドはヴォルデモートから杖を守ろうとしたよ」
ダンブルドアは、涙の滴が落ちた自分の膝を見つめ、頬を濡らしたまま頷きました。
「Nurmengardの独房で、彼はついに深く後悔したと聞いている。それが本当だといいね。彼には自分がしたことが恐ろしく恥ずかしいことだと理解してほしい。ヴォルデモートに嘘をついたのは、その後悔のためだろう、彼が秘宝を手に入れるのを防ごうと・・・」
「あるいはあなたのお墓が荒らされるのを防ごうと」ハリーが付け足します。
「それから長いこと経って私はうち捨てられたゴーント家から復活の石をみつけた。彼とは別の理由で、秘宝の中で私がもっとも欲したモノだ。私は片手を失った。それがホークラックスだということも、呪われているだろうということも、忘れていた。私は指輪をはめ、すぐにアリアナの気配がした。ママさんも、パパさんも来てくれた。私は彼らに謝り続けた。・・・私はそのような愚か者だ、ハリー。この人生を生きてもなお、私は学ばなかったんだ。私は秘宝を持つにふさわしくないということを、最後にまた証明してしまった。これが私なんだよ」
「家族に会いたいのって、フツーじゃん。悪いことじゃないよ」
「おそらく、秘宝を集めることができる者は100万人にひとりだ、ハリー。私は、ニワトコの杖には認められた。それを持っていることを威張らないし、その道具を殺しに用いたりしない。私はそれを欲で奪ったのではなく人々を救うために手に入れた、だから杖は私がそれを使うことを許してくれた。だが透明マントは、無駄な興味で手に入れてしまった。だから本当の持ち主であるきみに働いたようには、私には働いてくれなかった。そして石は、きみのときのように犠牲を赦すのではなく、私は平和に過ごしている彼らをいたずらに引きずり戻しただけだった。・・・私ではない。きみこそが、秘宝を持つにふさわしい」
ダンブルドアはハリーの手を優しく叩き、微笑みかけています。ハリーはもうダンブルドアのことを怒っていません。
「なんでこんなに難しくしたの?」
ダンブルドアの笑顔が震えています。
「私はね、グランジャーさんがきみを少しだけ遅らせてくれると思ったんだ。きみの善良な心が、秘宝を求める情熱に支配されしまうのが怖かったんだよ。私のように、ふさわしくないときにふさわしくない理由で、それらを手にしてしまうのを怖れた。正しい心で安全に手に入れてほしくてね。きみは本当の、死神の克服者。ホンモノは決してそれから逃げたりしない。ホンモノは死を受け入れ、死よりももっとつらいことはこの世にこそあると理解する」
「ヴォルデモートははろうずのこと知らないの?」
「知らないんじゃないかな?あの石の価値に気づかずホークラックスにしちゃったし。でもハリー、もし知っていたとしても、あまり興味は持たなかったかもしれない。彼も透明マントは必要ないし、黄泉の国から取り戻したい人なんているはずもない。彼は死を怖れただけだ。誰のことも愛しはしなかった」
「杖はほしがると思った?」
「きみの杖がリトルハングルトンの墓地でヴォルデモートに打ち勝ったとき、いずれあの杖を手に入れようとするだろうと思ったよ。最初彼は、きみがとんでもなく高度な魔法で自分を負かしたと思った。ところがオリバンダーさんを拉致ってみたら兄弟杖だと聞かされ、これですべて説明がつくと考えた。ところが借り物はまたきみに負けた。ヴォルデモートは、きみの杖をそれほどまでに強くするきみの資質について、きみだけが授かり自分が持たない力とは何かと自問するかわりに、最強の杖を追ったんだ。それさえ手に入れれば、ただひとつの弱点を克服できるぜ無敵だぜ、と信じてね。かわいそうなセヴルス・・・」
「あなたの死がスネイプと一緒に計画されたなら、ほんとは彼にニワトコの杖の最後の所有者になってほしかったんじゃ?」
「そう思ったが・・・そのとおりにはならなかったね」
長い時間、ハリーとダンブルドアはそこに黙って座っていました。あの奇妙な生き物はもぞもぞ動き喘ぎ続けています。

次に起きることが、静かにゆっくりと、優しく降り積もる雪のように、ハリーの中に積もりました。
「ぼく、戻るんだよね?」
「きみ次第だよ」
「選べるの?」
「もちろん」ダンブルドアがハリーを見つめて微笑んでいます。「ここはキングスクロスなんでしょ?もしきみが戻らないと決めたら、きみは、列車に乗れる」
「どこに向かうの?」
「この先へ」
ハリーはしばらくの間黙ります。
「ヴォルデモートはニワトコの杖を手に入れたんだ」
「たしかに、ヴォルデモートは杖を"手に持ってる"」
「それでもぼくは戻るべき?」
「もし戻るなら、きみにはすべてを終わらせるチャンスがもう1度あると思うよ。確かなことは言えないが、少なくとも私にはわかっていることがある。ハリー、彼と違って、またここに来るのは怖くないだろう」
ハリーは、生皮を剥がれ丸くなって泣き続ける裸のコドモを見ます。
「死者に情をかけるな。ハリー、生きている者にこそ慈しみを持つんだ。特に、愛なしに生きる者に。戻れば、傷つく魂を、引き裂かれる家族を、減らすことができる。そこに価値を見出すなら、今しばらくのさよならだね」
ハリーは頷きます。温かく明るく平和なこの場所を去るのは嫌だけど、また苦痛と恐怖と喪失の世界に向かうことになるけれど、森に向かうときほど難しくはありません。
ハリーは立ち上がりました。ダンブルドアも立ち上がりました。長い瞬間、互いを見つめ合います。
「最後にもうひとつだけおしえて。これは現実?それともぼくの頭の中で起きてるのかな?」
ダンブルドアがきらきらと微笑みます。その声は、大きく、力強く、耳の中で響きます。再び白い霧がすべてを覆い始めます。「もちろんきみの頭の中だよ、ハリー、でも、なぜそれが現実じゃないと言い切れる?」

【メモ】

「説明しろ」ととんでもなく失礼な命令口調のハリーさん、あんたはやっぱりトム・リドルにそっくりです。ヴォルディの"部分"が消えても、ハリーのトム癖は健在。ハリーを完全無欠にしないところが深いっすねー。

生皮を剥がれたこのかわいそうな裸のコドモ、これはヴォルディの限界まで損なわれた魂の姿っすね。
無傷の魂を持ったままのハリーは、メガネも要らないし傷跡も消えて、まっさらな状態。
ふたりの魂が、三途の川(limbo)にやってきたわけです。

さるおが泣いたのは「きみは列車に乗れる」「どこに向かうの?」「この先へ」のところっすね。
さるおのイメージではホグワーツ特急、スカーレットに輝く力強い蒸気機関車です。
そっかー、列車というのはいつだって、"知らない世界に運んでくれる"乗り物なんだなぁ。『PS』でハリーは魔法使いだと知らされ、まだ知らない魔法の国に、冒険の世界に、真っ赤な汽車で第一歩を踏み出したわけです。
今度は、この世を終えたあとの、次の冒険の旅へ、列車に乗って出かけることができる。ハリーには乗る資格があるよということです。死んでもいいんだよと言ってくれている。優しいですね。
そしてその列車はハリーをどこへ連れて行くのか?
答えはとてもシンプルに"On,"でした。さるおはこれを、前へ進むんだと、先にある世界に行くんだと、次の冒険の舞台へ連れて行ってくれるんだ、と解釈しましたよ。
あーん、もう、ハリポタって素晴らしい。
ダンブルドアはキングスクロス駅を"きみの世界に属する場所"(your party)だと言いました。それぞれが、"その人の世界"から旅立つわけですね。ダンブルドアはどこを通って冒険の旅に出かけたのかなぁ。

心ゆくまでさるお、もんち


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