スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ラストチャンスを狙いましょう。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。
36:The Flaw In The Plan
森の香りの中、ハリーはうつ伏せに地面に倒れていました。メガネのちょうつがいの下あたり、頬のところに、冷たく固い地面を感じます。倒れた衝撃でメガネがはずれかかってます。こめかみには切り傷ができているようです。身体のあちこちが痛いし、AKの当たったところはなんだかものすごいパンチを食らったみたい。杖とマントが胸の下にあるのを感じます。
ハリーは、おかしな恰好で倒れたまま目も開かず、じっと動きませんでした。
ガキをやっつけたぞ、という歓声が聞こえてくるかと思ったのに、様子が変だ。足音と囁き声しか聞こえません。
「卿・・・卿・・・」
それはベラ姐さんの声。愛する者に囁きかけるような声音です。どしたのかな?
ハリーはほんの1ミリだけ、薄目を開けてみます。
あれれ?ヴォルディが立ち上がったところです。いったん近寄ろうとしたDEたちが後ずさりしています。ヴォルディのそばに膝をつき離れようとしないのはベラ姐のみ。
今のは何だろう?DEたちはおっさんを覗き込んでました。AKの瞬間、何かが起こって、ヴォルディもずっこけたのかな?
まるで、二人そろって気を失い二人そろって目覚めたみたいです。冷たいヴォルディの声がこう言うのが聞こえます。「なんともないんや」
きっとベラ姐さんが起き上がるヴォルディをたすけようと手を差し伸べたんですね。
「ガキは死んだか?」
誰も答えないし、誰もハリーに近づこうとしません。全員がハリーを見つめている気配はします。
指先ひとつ動かさないように。瞼がぴくぴくしないように。
「おまえ、見てこいや」
目を閉じたままのハリーには、近づいてくるのが誰なのかわかりません。じっとしているしかないけれど、このままじゃ生きてるってバレちゃう。
やわらかな手が、ハリーの顔に触れました。瞼を上げたり、身体を触って心臓の鼓動を確認したりしています。
女の人だ。
長い髪がハリーの頬を撫でます。彼女にはわかったはず、ハリーの心臓が動いていることが。
「ドラコは生きている?城にいる?」
やっと聞こえる程度の囁き声。彼女の唇はハリーの耳のすぐそばです。長い髪が彼女の唇の動きを隠しています。
「うん」
ハリーもほとんど聞こえないほどの囁きを返しました。
「死んでいます!」
立ち上がったナルシッサ・マルフォイは、はっきりした口調で告げました。
今度こそ、勝利の叫びが聞こえます。赤と銀の閃光が、花火のように空に打ち上げられます。
ナルシッサがドラコを探しに城に入る方法はただひとつ、勝者としてヴォルディに付き従って行く以外にありません。彼女には、ヴォルディが勝とうが負けようが、もうどーでもいいんだよね。
「ハリー・ポッターを殺したでー。この手でやってやったわー!見てみい、Crucio!」
ハリーは身構えます。
ところが、痛みはやってきません。代わりに、ハリーは宙に浮き、地面に投げ出され、また宙に浮き、これを3度繰り返す。メガネがどっかにぶっ飛んじゃいましたが、ぐったりと死体を演じ続けます。
DEたちの笑い声はどんどん大きくなります。
「よっしゃ、城に行こか。やつらのヒーローがこのザマやと見せつけるんや。・・・あ、おまえがぴったりやな。小さなお友達を運んでやれや、ハグリッド。メガネもかけさせてやらんと、誰だかわからへんとおもろないで」
誰かの手が落ちたメガネを拾い上げハリーにかけさせました。とても優しく、震える大きな手がハリーを抱き上げます。大粒の涙が降ってくる。
「行こか」
ヴォルディの声に従い、ハグリッドが歩き始めました。ほんとは、泣きじゃくるハグリッドに「ぼく生きてるよ」と言ってあげたいハリーですが、今は我慢です。木々を抜け、城に向かいます。
「ベイン!」
ハグリッドの大声に思わずまた薄目を開けてみると、たくさんのケンタウロスがヴォルディたちの行列を見ています。
「嬉しいか?これで満足か?戦いもしない憶病者ども、ハリー・ポッターが死んで満足かよ?」
ハグリッドがケンタウロスの群れにむかって、泣きながら怒っているんすね。
「止まれや」
ヴォルディの声でハグリッドが立ち止まります。呪文で操られているんですね。
森を抜け、ついに校庭に出ました。
校庭にはディメンターが飛び回り、異常な寒さです。でも今のハリーはだいじょうぶ。生き延びたという事実が、ハリーの中で燃えながらハリーを守ってくれています。ジェームズの牡鹿が、まだハリーの中にいるみたい。
ヴォルディの気配がハリーの横を通りすぎ、あの不自然に響く大きな声で話し始めました。
「ハリー・ポッターが死んだでー。おまえらがこいつのために命を落としているときにな、こいつは自分の命が惜しくて逃げようとしたんや、そして殺された。おまえらのヒーローは死んだんや。その証拠に遺体を運んできた。戦いは終わりや。おまえらは半数を失い、今ではDEの数がおまえらを上回っとる。まだ抵抗する者は、男も女もコドモも、皆殺しや。一家全員、皆殺しや。城から出て跪け。そうすれば許してやる。私に加わり、私と共に、新しい世界をつくるんや」
ハリーがまた薄目を開けると、プロテクションを外されたナギニちゃんを肩に乗せたヴォルディの背中がすぐ目の前です。
でも、後ろにずらりと並んだDEたちに気づかれずに杖を出して仕留めるなんて不可能。空は明るくなろうとしています。
一団はまた少し前進し、城の真っ正面で立ち止まりました。
「ハリー・・・ハリー・・・」ハグリッドは泣き続けています。
ヴォルディとハリーを抱いたハグリッドを中央に、DEたちは横一列に並んで立っています。
閉じた瞼の向こうで、城の正面玄関が開き、明かりが漏れました。
「No!」
これほど悲痛な叫び声を、マクゴナガル先生がこんな叫び方をするなんて、思ったこともなかった。
それを笑ってる女が近くにいます。ベラ姐ですね。
また一瞬だけ薄目を開ける。自分たちを征服した者と対面し、ハリーが死んだという事実と向き合うために、城の正面玄関から次々に人が出てくるのが見えます。
「No!」
「No!」
「Harry! HARRY!」
ロンが、ハーが、ジニーが、マクゴナガル先生の叫びよりさらに大きな声を絞り出し、絶叫しているのが聞こえます。他の生き残ったみんなも、DEたちに罵声を浴びせ始めました。抵抗し続ける気持ちなんですね。
彼らの絶叫が引き金のように、ハリーを突き動かします。「ぼく生きてる」って言いたいな。
「静かにせーやー!」
明るい閃光とともに、皆静まり返ります。これも魔法ですね。
「もう終わりなんや!ハグリッド、ガキを降ろせ。帰してやるんや」
ハリーは地面に横たえられました。隣ではヴォルディが行ったり来たりしながら話し始めます。「ハリー・ポッターは死んだ!こいつはただのガキや。自分のためにおまえらに犠牲を強いたガキや!」
「ハリーはおまえをぶっとばーすっ!」
叫んだのはロンです。ヴォルディの呪文を破ったんですね。他のみんなも呪文を破り、ロンに続いて叫び出します。
ぼかん!
だまらっしゃいの2発目です。
「こいつは逃げ出そうとして殺されたんやで。こいつは自分だけたすかろうと・・・」
明るい光りがヴォルディを遮りました。誰かが、再び呪文を破り、なんとヴォルディに反撃したんです。その人物が杖を奪われ地面に倒れるのが、薄目の向こうに見えます。奪った杖を投げ捨て、ヴォルディさんは笑ってますよ。
「こいつは誰や?抵抗するとどーなるか、見せしめに立候補してくれたよい子は誰くん?」
あ、ベラ姐さんが嬉しそう。「ネビル・ロングボトムです、ドクロベー様!カロウ兄妹をてこずらせた、オーラーのガキよ!」
「あーん、覚えとるわー」
ネビルは立ち上がりました。杖も失い、守るモノもなく、味方とヴォルディの間(no-man's-land)に。
「勇気ある少年くん、おまえ、純血やろ?」
ネビルは空のこぶしを強く握りしめ、力いっぱい叫びます。
「だからどーした!」
「きみは勇気あるなぁ。しかも純血や。素晴らしいDEをたくさん生むやろう、ネビル・ロングボトム。我々にはきみのような血筋が必要なんや」
「地獄の炎が凍ったら仲間に入ってやるさ!」
負けないネビルはこう言い放ちます。そして叫ぶ。"Dumbledore's Army!"
呪文を破り、みんながネビルに応え、歓声が沸き起こります。
「よろしい」
この優しい言い方はキケン。
「それがおまえの選択なら、しかたないな。おまえの頭に、これを」
ヴォルディが杖を振る。ネビルは動けなくなり、一瞬後にホグワーツの窓のひとつが割れました。窓からは1羽の鳥が飛んできて、ヴォルディの手に止まりました、と思ったら、鳥じゃなくてソーティングハットだ。
「こんな帽子、もう要らへん。ホグワーツはスリザリン1色でええやろ、ネビル・ロングボトム」
ヴォルディはソーティングハットをネビルの頭にかぶせました。帽子はネビルの目のあたりまですっぽりと覆っています。
背後で仲間たちがネビルをたすけようと動きます。DEたちは一瞬で杖を抜きました。杖は"Dumbledore's Army"のひとりひとりをぴたりと狙っています。
「逆らう愚か者がどーなるか。見せてやろうやないの、ネビル君」
ヴォルディが再び杖を振り、ソーティングハットは炎に包まれました。
【メモ】
ヴォルディもずっこけてたんですね。
ヴォルディとベラの関係、愛はないはずだけど、どんな感じなんでしょうか。
誰よりも早く絶叫を響かせたミネルバ。涙出ました。彼女はほんとにほんとにハリーを、グリフィンドールの受け持ちの生徒を、未来のあるコドモたちを、心底愛しているとてもよい先生。ハリーさん、マクゴナガル先生もおまえの家族だよ。
心ゆくまでさるお、もんち!