スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、19年後のロンドンで懐かしいみんなに再会です。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。
Nineteen Years Later
その年の秋は突然やって来ました。
くっきりと黄金色に晴れた9月1日の朝、人とクルマがクモの巣のように行き来する混雑した道路をぴょこぴょこと横断して、すすけた巨大な駅ヘ向かう家族がいます。両親が押す2台のトロリーのてっぺんには大きな鳥カゴ。中ではバタバタと怒ったようにふくろうが暴れています。泣きそうな顔の赤毛の女の子がパパの腕をつかみ、お兄ちゃんたちの後ろを歩いています。
「すぐだよ」ハリーはその少女に言いました。
「2ねんなんてまてないー!いますぐいきたいのー!」リリーちゃんはごきげん斜めです。
人込みをよけてジグザグに歩きながら9番線と10番線の間の壁に向かう家族の不思議な持ち物"ふくろう"を、通行人がじろじろ見ています。
「やだよ!スリザリンになんかはいらない!」
前を行くアルバスの声が聞こえます。そうそう、クルマの中から口論は始まってたんだっけ。
「ジェームズ!もうやめなさい」ジニーが言いました。
「入る"かも"って言っただけじゃん」ジェームズは弟を見てニヤニヤしてますが、お、ママが睨んでる、黙ってよっと。
壁まで来ました。ジェームズはちょっと生意気そうに弟を振り返ってから、ママが押していたトロリーを押して走り出しました。そして、消えました。
「てがみかいてくれるでしょ?」お兄ちゃんがいなくなるとすぐ、アルバスは両親にそう聞きます。
「なんなら毎日書こっか?」答えるのはジニー。
「まいにちじゃなくてもいいけど。ジェームズがいってた、みんなつきに1かいくらいてがみもらってるって」
「あら、ジェームズには去年、週に3通書いたけど」
「おまえのお兄ちゃんは冗談言うのが好きなんだ。信じすぎちゃだめぽ」口を挟むのはハリーです。
トロリーを押して走り出す。アルバスは一瞬びくっとしましたが、ほらね、ちゃんと通れた。
9と3/4番線、白い蒸気をもくもくと吹き上げて、真っ赤な汽車が待っています。
ジェームズお兄ちゃんはもうどこかに行っちゃった。見つかるかなぁ。
濃い雲の中にいるようで、人々の顔はよく見えません。が、不自然に大きな声が聞こえてきました。あ、パーシーの声だ。箒のレギュレーションについてアナウンスしてます。おシゴトっすね。
「アル、そこにみんないるわよ」ジニーが別の家族を見つけました。
「ハーイ!」アルバスはちょっと安心したように駆けて行きます。近づくと顔が見えました。ローズちゃんが、すでに真新しいホグワーツの制服を着て、アルバスを笑顔で迎えます。ピカピカの1年生さん同士です。
「駐車できた?」ハリーにそう尋ねるのはロンです。「ぼくはちゃんとできたけど。ハーちんさ、ぼくがマグルのクルマの免許とれるって信じてなかったんだ。ひどくね?教官さんに魔法かけてズルしたんじゃねーか、だってさー」
「んなこと言ってないじゃんか。受かるって信じてたよ」慌てて取り繕うハーちん。
「ま、実際、魔法は使ったんだけど」ハーに聞こえない声でハリーにささやくロンちん。「横のミラー見るの忘れてさ、でもほら、そこんとこは"Supersensory Charm"でなんとか、ねぇ」
アルバスのふくろうと荷物を列車に積んでプラットフォームに降りると、リリーと、ローズの弟ヒューゴが大コーフンで話しています、ホグワーツに入学したら自分たちはいったいどの寮に入るんだろうって。
「おまえもしグリフィンドールに入れなかったら、うちの子じゃねーぞ。あ、いや、まー、気にすんな」
「ロンちんってば、そーゆーこと言うんじゃないの!」んもー、パパさんになってもハーに叱られ続けるロンちんです。
まだ時間のあるリリーとヒューゴは笑っていますが、もう組み分けが目の前に迫っているアルバスとローズはドキドキっすね。
少し離れたところに立ってる3人家族を見つけました。黒いコートのボタンを襟までしっかりとめたドラコ、奥さんと息子さん。アルバスがパパ似なのと同じくらいに、ドラコんちの1年生もパパ似です。
ドラコは、トリオとジニーが自分を見ているのに気がつきました。そっけない素振りで頷き、背中を向けます。
「ちっこいサソリ野郎めー。ロージー、期末試験は毎回あいつに勝てよー。おまえ、母ちゃん譲りの頭脳でよかったなぁ」
「あのねロンちん、学校始まる前からそんなケンカんなるようなこと言わなくたっていいじゃんか!」本当に、どこまでも、叱られ続けるロンちん。
「あ、うん、まぁ、そうね。えっと、つまり、ヤツと仲良くなりすぎるな、ロージー。純血とケッコンでもすることになったら、じいちゃんだって許さねぇ」
そこへジェームズが大コーフンで現れました。自分の荷物は自分で積んだみたいです。「ねぇねぇ!テディがいる!今会ったよ。何してたと思う?Victoireといちゃいちゃしてた!」
反応の薄いオトナにがっくし。「テディだってば!テディ・ルーピン!Victoireとチュッチュチュッチュしてたぁ!いとこのVictoireと!だからさ、テディにさ、それ何してんのって聞いたらさ・・・」
「邪魔したのー?」ジニーが呆れてますよ。「ロンみたいな子ね・・・」
「そしたらさ、Victoireを見送りに来たんだって。で、あっち行けって」
「ケッコンしたらステキじゃん?そしたらテディもうちの家族だし」気の早い祝福はリリーから。
「めし食ったりとか、テディはしょっちゅううちに来てんじゃん。もう家族だよ。一緒に住もうって誘おうかー」提案はハリーから。
「いいね、それ!ぼくテディと同じ部屋でいいよ」ジェームズはずいぶんテディになついてますね。
「だめ。おまえはアルと同じ部屋なの」ハリーは長男をたしなめながら、かつてはFabian Prewettのものだった古い金時計を見ます。もう出発する時間ですね。
「ネビルによろしく」ジニーはジェームズをハグしながら言いました。
「そんなの無理だよ、学校に行ったら"先生"だもん。薬草学で温室に行って、よろしくって言ったら変だ」
ジェームズは列車に乗り込む前にアルバスにキック(笑)。「あとでな、アル。セストラルに気をつけろ」両親に手を振ると友達を探して走って行きました。
「みえないんでしょ?そーいったじゃーん!」
お兄ちゃんの背中に叫ぶちょっぴり怖がりの弟にハリーは言います。「セストラルは怖くないよ。優しい生き物なんだ。それに、馬車には乗らない、1年生はボートだから」
「クリスマスにね」ジニーがアルバスにキスを贈ります。
「ハグリッドにお茶呼ばれてんの、忘れるなよ。ピーヴスはほっとけ。ケンカはすんな。あと、ジェームズに負けるなよー」ハリーからはありったけの"注意事項"のプレゼント。
「パパ、スリザリンだったらどぼちよう」アルバスはハリーだけに聞こえるように囁きました。
出発の今が、"怖れ"に立ち向かって1歩を踏み出させる絶好の時だとハリーにはわかっています。ハリーはアルバスの目線より低くなるように屈み込み、次男の目を覗き込みました。3人のコドモたちのなかでただひとりリリーの瞳を受け継いだ、次男の明るい緑色の瞳。そしてアルバスだけに聞こえるように、いや、ほんとはジニーには聞こえているんですが、男同士の内緒話を彼女は聞こえないふりしてくれているんですね。
「アルバス・セヴルス、きみの名前はホグワーツのふたりの校長先生からとった。ひとりはスリザリンの先生だった人だ。その彼は、パパが知っている人の中でいちばん勇敢な人なんだよ。スリザリンには優秀な子が多い。だからスリザリンでもいいんだよ。でももしきみが嫌なら、スリザリンよりグリフィンドールに入れてって、選べばいい。ソーティングハットはきみの望みを尊重してくれるから」
「まじで?」
「パパはそーした」
アルバスは不思議そうな顔つきで列車に乗り込み、ジニーがドアを閉めました。どの窓からもコドモたちが顔をのぞかせています。あれ、汽車に中のコドモたちも、プラットフォームの家族も、なぜかこっちを見ている。
「なんでみんな見てるのー?」
ローズと一緒に窓から顔を出し、アルバスが聞きました。
「気にすんな。ぼくだよ、みんなぼくを見てるの。セレブだから」と答えたのはやっぱりロンちん。
アルバス、ローズ、ヒューゴ、そしてリリーも笑っています。
ホグワーツ特急はゆっくりと動き出しました。ハリーは汽車に歩調を合わせてプラットフォームを歩きます。アルバスの顔の不安は消えました。学校が楽しみになってきたんだな。ハリーは微笑んで手を振り続けますが、ほんとは勇気を振り絞ってるのはパパのほう、次男が遠ざかって行くのはドキドキです。
ホグワーツ特急はカーブを曲がり、見えなくなり、最後の蒸気の一筋が秋の空気の中に消えました。
手を振りっぱなしのハリーに「だいじょぶよ」とジニーが言います。ハリーは所在なさげに手を下ろし、額の傷跡に触れました。「うん、だいじょぶだよね」
稲妻型のその傷跡は19年間、1度も痛んでいません。めでたしめでたし。
【メモ】
Scorpiusは"さそり座"ね。
Victoireさん、ヴィクトアールって読むのかな、ヴィクトリアのフランス語読みみたいなので、こりゃビル&フラーんちのお嬢さんでしょうか。で、まだ学生さんなんすねー。
ロンがマグルの運転免許をとったというあたり、ははーん、モリーママと一緒に出ているこれのことかな。んも〜、Joったらぁーっ!
心ゆくまでさるお、もんち!