スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、セヴルス・スネイプという人物が、きっともともと背負っているだろうモノについて考えてみたいと思います。
ネタばれエントリーなのでご注意ください。ネタばれコメントも大歓迎なので、そっちも気をつけてね。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。
夜行性で、ハイカラーの黒いマントを着て、血色の悪い白い顔をしてて、夜な夜な喉に噛みついては血を飲むモンスター、ヴァンパイア。
こんな感じに。(こちらでも確認できます)
マントがひゅーっとなびいてます。歩いてるんじゃなくて、滑るように進んでる感じ。怖そうな人ですねー。
が、じつはこの絵はJoがノートに描いたものですよ、題材はセヴルス・スネイプさん。
そうです。さるおはずっとこれを気にしていました。つまり、スネイプさんは、そうなんじゃないかと。
『PS』にはこう書いてあります。
"You'll be g-getting all your equipment, I suppose? I've g-got to p-pick up a new b-book on vampires, m-myself." He looked terrified at the very thought.
リーキーコルドロンにて、初対面のハリーに向けたクィレル先生のセリフ。「入学準備の買い物に来たんですね。私は吸血鬼に関する本を買いましたよ」と、恐れている様子で言っている。
そして後にクィレル先生が職場で恐れるのがスネイプさんです。詰め寄られてしどろもどろになってます。クィレル先生は後に"弱いフリ"をしていただけだとわかりますが。
His classroom smelled strongly of garlic, which everyone said was to ward off a vampire he'd met in Romania and was afraid would be coming back to get him one of these days ... they had noticed that a funny smell hung around the turban, and the Weasley twins insisted that it was stuffed full of garlic, as well, so that Quirrell was protected wherever he went.
クィレル先生の教室はニンニクくせぇ。どうやら以前ルーマニアで遭遇した吸血鬼が追っかけてくるんじゃないかと恐れているようです。フレッドとジョージは、クィレル先生のターバンの中はニンニクがぎっしり詰まっていると思っています。
ニンニクで吸血鬼から自分を守ろうとしているわけです。
"Severus?" Quirrell laughed, and it wasn't his usual quivering treble, either, but cold and sharp. "Yes, Severus does seem the type, doesn't he? So useful to have him swooping around like an over-grown bat."
さらに、ハリーと対決するシーンでは"Mirror of Erised"の前に立ったクィレル先生がこう言います。「セヴルスはいかにも悪役やから、あいつが悪もんやと思ったんやろ。育ちすぎたコウモリみたいにうろうろしててくれて好都合やったわー」
『CoS』ではセヴルスが、ギルデロイへの「あいにくだな」というセリフを、"悪意に満ちた大きなコウモリのように、滑るように動きながら"しゃべっています。
"A bad idea, Professor Lockhart," said Snape, gliding over like a large and malevolent bat.
そして、さるおの疑問に対する"ほとんど答え"だ!と思う記述は『HBP』に出てきます。
スピナーズエンドのスネイプ邸に姉妹が訪ねてきたところです。
A sliver of a man could be seen looking out at them, a man with long black hair parted in curtains around a sallow face and black eyes.
戸口に立つ姉妹をカーテンの隙間からちらりとのぞき見る、長い黒髪と黒い瞳で顔色の悪い(sallow)男の姿が見えた。
They had stepped directly into a tiny sitting room, which had the feeling of a dark, padded cell. The walls were completely covered in books, most of them bound in old black or brown leather; a threadbare sofa, an old armchair, and a rickety table stood grouped together in a pool of dim light cast by a candle-filled lamp hung from the ceiling. The place had an air of neglect, as though it was not usually inhabited.
姉妹は、入ってすぐの小さい居間に入った。壁が古い本で埋め尽くされたその部屋はまるで、暗い安全保護室(壁にクッション材を張って患者が暴れてぶつかっても安全なようにした部屋のこと)のようだった。天井からぶら下げられたキャンドルの薄明かりが届く範囲に、すり切れたソファー、古いひじ掛け椅子、がたつくテーブルが置かれていた。その居間は手入れされておらず、普段使われていないようだった。
Snape poured out three glasses of blood red wine and handed two of them to the sisters.
スネイプは3つのグラスに、血のように赤いワインを注ぎ、2つを姉妹にそれぞれ渡した。
But Snape had gotten to his feet and strode to the small window, peered through the curtains at the deserted street, then closed them again with a jerk.
しかしスネイプは立ち上がり小さな窓に大股で歩み寄ると、人気のない通りをカーテンの隙間からのぞき、そしてすぐにカーテンをさっと閉じた。
そうそう、顔色の悪い(sallow)セヴルス、いつだってそう紹介されていました。『PS』で"sallow skin"、『CoS』で"a thin man with sallow skin"、『PoA』でも『GoF』でもそうです。
『DH』ではホグワーツ入学前のセヴルス少年がすでに"sallow, small, stringy"(血色が悪く小柄で痩せた)だったこともわかりました。
He flapped after the girls, looking ludicrously bat-like, like his older self.
セヴルス少年は、オトナになったときの彼と同じ、滑稽なコウモリのように、少女たちを追って大きすぎるコートをバタバタとはためかせた。
顔色が悪い、つまり白い顔、これはヴァンパイアのイメージで、なんとなく、ご飯食べてないからかな、と思ってしまう。そうです、吸血鬼は普通の食事をしません。では、ハリポタにセヴルスの食事のシーンがあるかというと、ないんです。食事の席にいても、"食べる"という描写がない。
『PoA』ではクリスマスのディナーに同席してます。シビル・トレローニーがセヴルスとミネルバ女史の間の椅子に座ろうとして、13人になっちゃうと騒ぎ出すシーンです。でも、セズルスが"食べた"とは書いてない。
それどころか『OotP』では、騎士団指令本部となったブラック邸のディナー前のオトナの会話を、ハリーたちがフレッドとジョージの発明品"Extendable Ear"を使って盗み聞きしようとして憎たらしいスネイプも騎士団だと知るシーンで、なんとロンがこんなことを言ってます。"Snape never eats here, thank God."(スネイプは絶対ここで食わないんだ)と。
シリーズで唯一、口にモノをいれるのが上述の"血のように赤いワイン"です。
姉妹とのこの会合場所はずいぶん薄暗い。カーテンを閉めきった暗い家に住んでいるのがわかります。そして職場のオフィスと教室は日の差さないdungeon(地下牢)です。映画『PoA』でスネイプ先生がリーマスの代役を務めるDADAのクラスの始まりにはぞくぞくしましたよ。黒いマントをなびかせて、教室のカーテンを閉めて歩くセヴルス、ヴァンパイアそのものじゃないか。暗いところが大好きなんですね。
『HBP』にはまだあります。non-verbalの魔法を教えるセヴルスが、生徒の練習を見て回る様子が、"これまで以上に、育ちすぎのコウモリそっくり"だと。He swept between them as they practiced, looking just as much like an overgrown bat as ever...
この表現を言葉通りに受け取れば、セヴルスはどんどんコウモリになってきている(笑)。
そしてついに『DH』では、こうなります。
With a tinge of horror, Harry saw in the distance a huge, batlike shape flying through the darkness toward the perimeter wall.
飛んだーっ!
ダンブルドアのときとは違って彼は杖を持ったままだから死んでない。"スネイプ型に穴の開いた"窓際に立って外を見ると、遠くに巨大なコウモリのようなシルエットとなってセヴルスが闇夜を飛んで行くのが見える。
さるおはそうだと信じています。
Joは「違う」というよーなコメントをしてたと思いますが、それでもさるおは信じています。信じずにはいられない。セヴルスはヴァンパイアだと。
ママさんはヴァンパイアとの混血で、セヴルスにもその血が流れているのではないか。1/4でも、1/8でも、1/16でも、きっとその血は強力で、薄まってもヴァンパイアとしての性質が消えてしまったりはしないはず。
そしてもしこれが当たっているなら、セヴルスはもともと空を飛ぶことができたかもしれません。ヴォルディに教えてもらわなくても。
さて、最後に、『PoA』に描かれた重大なあのできごとについて考えてみます。
When the bell rang at last, Snape held them back. "You will each write an essay, to be handed in to me, on the ways you recognize and kill werewolves. I want two rolls of parchment on the subject, and I want them by Monday morning."
終業のベルが鳴ったとき、スネイプ先生は去ろうとする生徒を引き止めてこう言いました。「宿題。ウェアウルフを見分けて殺す方法について、各自レポートを書くように。羊皮紙2ロール分。月曜の朝までに提出しろ」
そうです。セヴルスはそれまでのDADAの授業の進み具合をすっとばして、生徒たちに"ルーピン先生の正体"に気づかせるためのヒントを与えます。
なんとこれに、リーマスは対抗してますよ!
"I was going to the library and do that vampire essay for Lupin."
ルーピンからの宿題のヴァンパイアのレポートを書くために、図書室に行こうと思ってたところ。これはハリーのセリフです。
"I'll come with you!" said Neville brightly. "I haven't done it either!"
ぼくも行く。まだ書いてないから。こっちはネビルです。
リーマスはまったく同じ仕返しをしたわけです。
セヴルスとリーマス、なんだかまるで、切り離せない1対の哀しい怪物同士のように思えてくる。
吸血鬼と狼男、人の心を持ったモンスター同士です。焦げついてこの世から消えた愛に命を捧げたヴァンパイアと、心優しいウェアウルフ。このふたりには、本で描かれなかった切れない絆があるような気がします。
憎まれながら誇り高く生きた吸血鬼と、愛されて幸せを求めた狼男。
なんと美しい対比。やっぱりさるおはそれを信じてます。
学生時代、ジェームズとシリウスはセヴルスいじめに興じていた。でも、リーマスは、傍観者だった。それには理由があるんじゃないのか。その絆を、血を流す傷口を、お互いに知っていたんじゃないのか。
He certainly wasn't the only one who was sorry to see Professor Lupin go.
ルーピン先生が出て行くのを残念に思ったのはハリーだけではなかった。
"Wonder what they'll give us next year?" said Seamus Finnigan gloomily.
「DADAの先生、ウェアウルフの次はいったい何を連れてくるかな?」シェーマス・フィニガンが憂鬱そうに言います。
"Maybe a vampire," suggested Dean Thomas hopefully.
ディーン・トーマスは希望を込めて「きっとヴァンパイアだよ」とシェーマスに答えた。
そして後年、セヴルス・スネイプは本当にDADAの教諭になります。
セヴルスの最期は、なんとも哀しく暗示的です。
"Kill." There was a terrible scream. Harry saw Snape's face losing the little color it had left; it whitened as his black eyes widened, as the snake's fangs pierced his neck, as he failed to push the enchanted cage off himself, as his knees gave way and he fell to the floor.
ヴァンパイアが喉を噛み切るように毒牙に喉を噛み切られ、ヴァンパイアが命を得る血の海で、自分の血の海で息絶える。
アイリーン・プリンス(Eileen Prince)、セヴルスのママさんもまた、"a thin, sallow-faced, sour-looking woman who greatly resembled him."(息子そっくりに痩せて顔色が悪くしかめっ面)の女性でした。
Half-Blood Prince
セヴルスは自らをそう名乗った。
本当は、ハーフ・マグルという意味ではなくて、アイリーンから受け継いだヴァンパイアの血のことではないのか。だからアイリーンの旧姓を名乗ったんじゃないのか。
セヴルスの得意科目がポーション(魔法薬)だったのは、そのスキルが必要だったからかもしれない。後にリーマスの1年間をたすけたように。
つまり、もしかしたら、アイリーン・プリンスその人を指しているのかもしれないな。
心ゆくまでさるお、もんち!