さるおです。
少し文章を直しました。書いてていろいろ気づいたので。すみません。
長く苦しい逃亡生活のはじまりです。DEに追われ、仲間を殺され、あるいは耳を切り落とされ、それでも逃げてきた。ヴォルディに殺されかけて、逃げ惑い、追い詰められて、それでも生き延びた。魔法省も陥落、ウェディング会場は襲撃にあい、オーダーは家を焼かれ家族が拷問されました。マグル生まれはムショ送り、DDの過去は謎ばかり、追い込まれたハリーは大切な味方のリーマスとケンカしてしまいました。
ホグワーツは新しい年度がはじまります。トリオはブラック邸にこもり、とうとうクリーチャーとレグルスの勇気と涙の物語の真相を知ります。
そんなとき飛び込んできたニュース。それはセヴルス・スネイプの校長就任。
ハーはこう言うと何かを思い出したかのように大慌てでキッチンから飛び出して行きました。
「人殺しで人の耳を切断してまわるようなヤツよ!わるもんなのに!あのスネイプが校長だなんて!ダンブルドアの校長室にいるなんて!マーリンの猿股!」ポッタリアンのよい子のキミ、せつないですねー。涙が出てきたでしょう。
これじゃハーはキチガイだ。先の冒険が思いやられます、ま、勝てねぇな、ヴォルディには。
さるおは日本語版を買っていません。ということは、さるお自身はまだ読んでません。
だからもし何かさるおに勘違いがあるようなら、それはご指摘いただきたい、素直に受け止めますから。
ただ、
こちらでおしえていただいた、大感動のデスリーハロウズ日本語版にあるというこの世にも恐ろしい、ジョークだとしたら破壊力ありすぎの、ミラクル邦訳「マーリンの猿股!」は、あまりにもせつない。
"Merlin's pants!"はあっても、断じて、ハリポタには意味不明のマーリンの猿股など存在しません。
本当に心の底から悔しくなって泣けてきたので、なんかこう、ね、書いておこうと思うわけですよ。
How
in the name of Merlin did she find a マーリンの猿股?
(マーリンの名において、どーやって彼女は"マーリンの猿股"を見つけたのさ)
How
in the name of God did she find a マーリンの猿股?
(神の名において、どーやって彼女は"マーリンの猿股"を見つけたのさ)
この2つの英文は同じ意味です。
もっと自然な日本語にすると、「いったいぜんたい、どーやって彼女は"マーリンの猿股"なんて訳したのさ」となる。
God(神)という単語は、絶対的な、とても明白なことを意味します。白黒はっきりしている状態の、神様というのは白なんですね。だから本当はこの場合のもっと適した言い回しは"the hell"なんだけど(笑)、これについては後で書きます。
"in the name of Merlin"と
"in the name of God"は同じだということです。
マーリン・アンブロジウス(Merlin Ambrosius)さんというのは神様の名前ではありません。ブリテン島にいたと言われる中世の伝説の魔術師さん。いろんな物語に出てきます。アーサー王伝説とかね。
つまり、魔法界で"神様みたいに扱われている"歴史上・伝説上のセレブです。マーリン勲章があるくらいだし。
マグルのみなさんご存知の"Oh my god!"(これも訳せば"神よ!"ですが、実際は神様はどーでもいいわけで、"あぁ!"とか、そんなもんすよね)、あるいは"Good Lord!"(これも"おぉ!"ぐらいのもんす)のような"びっくり"を表す慣用表現は、魔法界(ミュリエルおばさんの例もあるので、少なくともウィーズリー家では)だと"Merlin's beard!"(マーリンのヒゲ)になるわけです。"マーリン"の名を使うのは、God(神)を使うマグルの言い回しの変形、魔法界バージョン(ハリポタ流)なわけですわ。
(基本的な意味でマーリンを知らない)マグル生まれ(ハー)やマグル育ち(ハリー)と異なり、ロンちんはもともとこの言い回しを多用しています。しかも、下ネタとして使っている(笑)。
"How in the name of Merlin's pants have you managed to get your hands on those Horcrux books?"とか、"And what in the name of Merlin's most baggy Y-front was that about?"とか、"So why in tne name of Merlin's saggy left-"とか。"Merlin's beard!"は"ウィザード育ち"の魔法使いの言葉遣い、さらに"Merlin's pants"はロン特有の遊んだ言葉遣いだということっすね。お気に入りの表現、口癖、あるいはちょっとした"マイブーム"だと思えばいいだろうと思います。
さて、さきほどの"the hell"、こちらは白黒はっきりしている状態の黒。絶対にありえない、あるはずない、あっちゃいけない、そーゆーね、良くない意味合いです。
What
the hell are you doing? は「何やってんの?」という疑問ではなく、「何やらかしてんの!」と咎めている感じです。What are you doing?(何やってんの?)を強調して、「何やらかしてんの、バカね、あんたは」というニュアンスを盛り込む。
"for heaven's sake"、あるいは"for God's sake"というのもあります。
直訳すれば「天国(神様)の目的のために」ですが、正しくは「どうかお願いだから」です。God(神)やheaven(天国)のためだと思って何かをやってくれと、人に頼んでいるわけで、ここには"どうしても"という気持ち、"絶対的"にこれしかないというニュアンスが含まれている。
これもロンちんが使えば"for Merlin's sake"になるわけっすよね。
ここで気づくのは、"in the name of God"にも"the hell"にも"for heaven's sake"にも、そして"in the name of Merlin"や"Merlin's Pants"にも、本当は意味なんてない、ということっす。神様がどーしたの、地獄がどうだの、天国の目的がどーとか、マーリンが誰だとか、パンツはいてんのかとか、そーゆー意味はないんです。
というようなことは、"英語がわかる"人なら理解しているはずなわけですよ、
神の御名において(訳:どー考えたって)。
ちなみにパンツというのは、米語ならズボン、英語ならズボン下です。
猿股というのは、19世紀頃の欧米の下着を大正時代に日本に持ってきたもので、腰から股のあたりを覆う西洋ふんどし。膝丈くらいの長さになるとステテコになって、これは下着とズボンの間にはいたりもする(ズボン下)。
って、そんなことはどーでもいいんだよ、だって、意味なんて無いんだから。
さらに、ハーちんは猿股直後、慌ててキッチンを飛び出して行きます。それは"あること"に気づいたから。ある、とても重要な、トリオの命に関わる"すぐにやらなければならないこと"に気づいたからです。怒っている場合ではない。急がなくちゃ。そう、フィニアスの肖像画です。
つまり、ハーちんはとても驚いて怒っていたところ、急にあることに思い当たって"ハッとした"。そのときの言葉なわけです、猿股は。気づいたショックで出た"慣れない"言葉だから、本来なら"Merlin's beard!"でいいはずのところ、いつもロンがヘンなことばっか言うのを聞いてるもんだから"Merlin's pants!"になっちゃった。ヒゲをパンツに変えてある、なんだか"Merlin's beard!"のもっとすごいやつ、そんな感じっすね。
ハーによるロンのモノマネであり、いつもちゃんとした言葉遣いの子が「すげぇ!」とか、なんか食って"おいしい"じゃなくて「うまーい!」とか、そーゆーのとも似ています。そもそも翻訳する際にこの"ロンならではの言い回し"に気づいていれば今回それを引用すればいいわけです。が、今さらどーにもならんので、この場合のハーのセリフは「Merlin's pants!(やっべぇ!)」みたいな感じじゃないかな。
Merlin's pants!
やっべぇ!まじやべぇ!
絶対的な、とても明白な命に関わる危機に気づいて慌てた瞬間。
猿股じゃねーんだよ。
同じことが海外で起きたと思えばよりわかりやすいっす、マーリンの猿股のばかばかしさが。
ある日本文学をね、これは素晴らしいから英語に翻訳しようということになる。で、プロフェッショナルな翻訳家さんがまずは日本語の原書を読んでみたら、物語の途中で主人公が「そんなことは逆立ちしたってできないよ」なんて言うわけです。で、I can't do such thing no matter what I do.(どうやったってぼくには無理だよ)としなければならないところ、なぜかこう直訳してしまうわけですよ、I can't do such thing no matter I stand on my head.と。
(これはI can't do such thing even if I stood on my head.だったら話は別なんですが、複雑な話なので今は置いておくことにします)すると読んでるほうはわからなくなるわけです、逆立ちしなければできるかもしれないのに、なんだろうこの人。
もっとひどいと"ことわざ"なんかが出てきて、このプロフェッショナルな翻訳家さんはそれがわからない。わからないときは普通どーするかといえば、調べるとか、誰かに聞くとか、とにかく勉強するわけですよ。お勉強するというのはプロとしてとても大事な、とても基本的な姿勢です。でもなぜかこのプロフェッショナルな翻訳家さんはお勉強をしないんですね。で、その"石の上にも三年"を、まさかの"three years on a stone"と訳してしまう。その翻訳本は、なぜか誰も阻止できずそのまま出版されてしまいます。そして読者を大いに惑わせる、その石はどこから出てきたんだ、話はいつのまにか3年後になってるのか、と。
あるいは"saying a prayer in a horse's ear"とか書いてあって、なんだ、突然馬が出てきたぞ、馬の耳に祈りを捧げるのか、なんでだよ、とか。
ということで、こう思うわけですね。
How the hell did she find a マーリンの猿股?(どこをどー間違えば"マーリンの猿股"なんて訳せるわけよ、ハリポタワールドのどこからそーゆー発想が出てくるわけよ、まったく、おまえねぇ)
あまりに唐突で、あまりにキョーレツで、あまりにレベルの低い、冗談だとしたらよそでやっていただきたいまさかの翻訳能力。魔法のような思いつきで、ハリポタが台無しになりましたね。もう何度もなってるようですが。
今更ですが、
『Harry Potter and the Puzzling Prince』の本当の意味がわかってきたような気が致します。
ということで、最低限、意味だけは伝わる、問題の個所のもうちょっとちゃんとした日本語訳はこうだと思います。
「人殺しで人の耳を切断してまわるようなヤツよ!わるもんなのに!あのスネイプが校長だなんて!ダンブルドアの校長室にいるなんて・・・やっべぇ!」
ハーらしくない最後の言葉にびっくり飛び上がったのはハリーとロンです。ハーは「すぐ戻ってくるから!」と叫びながらすごい勢いで出ていっちゃいましたよ。
「なんだぁ?ハーちん、パニクッってんのかな」とロン。誰か止めてやれよ。なぁ。(ふるえながら)
あんたの翻訳センスも、Merlin's pants!(かなりやばいかも)心ゆくまでさるお、もんち!