2009年11月17日

映画『SAW VI』解読4 いったい誰に届けたのか

さるおです。
ネタばれ記事です。ネタばれコメントも大歓迎です。これからご覧になる方は気をつけてねー。

【ジルは誰に届けたのか】

まず感じる違和感は、病院の中の一室なのに、ドアに郵便受けがあるってマンションみたい、という点です。この部屋の住人が、医者なのか患者なのかもわかりません。勤務医のオフィスなら表札があってもよさそうだし、郵便受けは要らないだろう。入院患者にしても同じことで、米国の病院事情はまるで知らないですが、とーっても変。何か特別な事情のある患者さんが"住んで"いて、ドアの外に監視カメラが必要、そんな風に見えます。
『SAW VI』の最後にゲームオーバーと言ったのはジルでした。1から5までの封筒はホフマンに渡したけれど、最後の最後にすべてを終わらせるのはジルの仕事だった。この表現が正しいかどうかわからないけれども、ジルはジグソウ後継者だった、とある意味言えそうです。そして、この"鉄則"のようなものが今も生きているとすれば、"ジグソウは最前列で見ている"、つまりジルはこれまでのゲームの一部始終を知っているかもしれません。となるとね、変じゃん、このシーンでは、ジルは観察される側になってる。ジルは見られる側で、他に見ている人がいそうっす。あの監視カメラは、警備のためのものとはかぎらない。カメラそのものをクローズアップしたり、その映像を見せたり、不自然に強調しすぎな感じがしたんだよね。
では、いったい誰が見ているのか。その人物は、あの部屋の住人でしょうか。

リンジー・ペレズの場合
ベッドに意味不明の血痕まで残して、エリクソンはペレズを秘密裏に退院させました。ジグソウから守るためだったと言っている。ならば匿う場所が必要です、少なくとも元気になるまで。
そもそも彼女が最初に運び込まれた病院はどこなんでしょう。ケーサツ病院?そうかもしれない。病院なら安心だろう、ケーサツ病院ならなおさら安心だ、と思いそうなところです。ところがエリクソンは、そこの医者もおまわりも信用していなかった、そーゆーことになります。ここにいたらあぶない、と思ったわけです。つまり、ごく近くに裏切り者がいる、ケーサツ内部にジグソウの協力者がいる、そう考えていたわけですよね。
ストラームによれば、ペレズの"最期の言葉"は「ホフマン」でした。ホフマンはジグソウの協力者だと、ペレズが気づいていた。エリクソンもペレズからこれを聞いて、彼女を退院させることにしたのかもしれません。
なぜストラームまで騙さなければならなかったのかは疑問です。ペレズの"最期の言葉"の真意は何だったのか。あるいは、わざと残した血痕は、ストラームへのメッセージだったかもしれない。となると、ストラームは相棒が生きていることを知りながら突き進み、命まで落としてしまったわけですが。
とにかく、ペレズは退院して"安心できる"病院施設にこっそり入った。なんとなく、警備のための監視カメラがあっても不思議はないような感じです。
すると、その場所をなぜジルが知っていたのかが謎。エリクソンなりペレズなり、FBIもまたジョンの協力者だったという可能性が出てきます。
劇中では、セス事件のビデオテープが見つかったという話の後に、ジルが小包みを届けた。これは一見、話が前後しているように見えます。でももし逆だったら?ジルが小包みを届けたらビデオテープが見つかった、そんじゃおもしろくも何ともないだろう(笑)。前後を入れ替えてスリリングな感じにする。映画作る側だったら、手法として当然使うだろうと思います。
ただ、ビデオテープが見つかったというときに「誰かが届けに来たのよ」とは言ってないし、監視カメラがある以上"誰か"では済まない。そーなると、ペレズの可能性は低そうっすね。

ローレンス・ゴードンの場合
もうね、ケイリー・エルウェスとギャラのことで揉めてて出演交渉がどうのこうの、これ自体が仕組まれた茶番劇なんだろうと、さるおは思っているわけで、7だか8だか、3部作の3部作(3×3)なら9とか、とにかく最後に、予告なしで出てきて感動させておいしいところを持って行くわけでしょ、とね、うん、ほんと思う(笑)。そのための準備を、SAWチームは怠ってないし(爆)。
もともとローレンスが勤めていた病院は、Angel of Mercy Hospitalという名前です。今度の聖ユースタス病院には、医者としているのか、患者としているのか。
うん、これはこれでどっちもありだとは思います。この点でもSAWチームは準備を怠ってないっすね(爆)。ケイリーに出てもらう手筈は整ってますがなー。
ただ、アリソンとダイアナ、つまり家族と(親戚も)の関係には何らかの折り合いをつけなければなりません、事件前のようにはもうなれないっすから。ジョンの側についたにしろついてないにしろ、彼がたどった経緯は説明されなければなりません。

ここからはすごいことを書きますよ。えーっと、願望です。ただの願望ではありますが、理論的にある程度の整合性はあるはずです。しかも、シーンとして美しい、ステキと思えるオチです。

聖ユースタス病院が、一般的には"気が変になっちゃった"と思われている人が暮らせる施設だとします。
そしてもうひとつ、ジョンが選んでいるのは、家族を持たない協力者(後継者)だということにも着目してみます。

I was guilty. But my life was saved that day I found myself a father. A leader. A teacher.
(私は罪を犯した。けど、あの日、父であり指導者であり教師となる人を見つけたあの日、私は救われたのよ)
アマンダはひとりぼっちのようです。今まで自分が持たなかった関係を見つけた。疑似家族(父娘)のように思えます。
今まで本当の家族の話は出てこないし、家族がいてちゃんとした関係を築いてこられたならこーはなならない。
ホフマンもひとりぼっちです。ジョンが調べた結果、I know she was your only family.(死んだ妹が唯一の家族だった)ことがわかっている。もっと言えばジルだって、ギデオンを失いジョンも死んだ今となってはひとりぼっちっぽい。
絶望や怒り、闇を知る孤独な者たちが、ジョンの元に集まった。ジョン・クレイマーは、命の意味を知る者たちの家。
この家族に入れるっぽい人物が、まだいますよ。
執念に取り憑かれた、あの人
ホフマンが、核心に近づいている(He's smart, and he's getting closer.)と言い、ジョンが"知っていた"、あの人。
1年前に(5作目で)とうとう死んだことになってしまいましたが、ペレズが生きていたなら、タップだって生きているかもしれません。さるおはこの展開を大希望っすー。

タップにはおそらく家族がいません。
Maybe you should find yourself a girlfriend.(カノジョくらいつくんなよ)
シンにこんなこと言われてました。
というか、タップにとっては、シンだけが家族。気の合うシンとずっと組んでやってきて、お互いのことがよくわかっている。Tapp と Sing、歌と踊りは切っても切れない、ふたつでひとつだった。かけがえのない存在だっただろうと思います。家族以上だったかもしれない。

1作目でタップは相棒シンを目の前で失い、自分は喉を切られて生き残りました。
その後、失職してるんですね。
シンの亡霊に取り憑かれ、何が何でも犯人を捕まえるぞと、収入が無いはずなのに高い代金を支払って盗撮カメラマンを雇い、ひとりでふんばっていました。
タップは、気が変になっちゃったという判断でケーサツをクビになったのかもしれず、あるいは、自分から辞めたのかもしれません。自分で辞表を出したんだとすれば、"おまわりでいてもだめ"だと考える何かしらの理由があっただろうと思います。独自の捜査に踏みきらないといかんと思ったか(ケーサツ内部に犯人の協力者がいると感じていたとか)、もしかしたら法の限界を越えた復讐を思い描いたか。

タップはゼップを追いかけ、バスルームへ続く通路を進みます。でも途中でゼップに撃たれちゃうんですね。
こんなの、死んでも死にきれない。
シンを奪われ、身分もなくし、自分にはもう失うものなどありません。自分だって、喉を切られて死にかけた。あのとき死んでいたかもしれない。だから、人生のすべてを賭けて、命をかけて、シンの敵を討つためだけに、なりふりかまわずがんばってたんです。
この状況は、息子を亡くしたジェフとも似ているし、エリックやケリーを救おうと突き進んだリッグにも似ている。
と同時に、ジョン・クレイマーとも酷似しています。絶望のふちで一度は死にかけ、それでも生きて、人生のすべてを賭けた。
無傷のまま怨念を"無気力"で表現したジェフや、警官としての視点しか持たないリッグと、ぜんぜん違うんですよね、タップは。ジョンが越えた一線を、タップもまた越えて社会から逸脱して行ったんです。
タップには、もしかしたら、ジョン・クレイマーを理解することができるかもしれません。あるいはそれは"理解"の対極にある真理で、そこに辿り着くことができるかもしれない。
ジグソウの後継者、あるいは"ジグソウではないジグソウの後継者"に、なれるんじゃないか。

まじめ刑事のタップはゲームのプレーヤーではありません。ふたりが出会うことになったのは"成りゆき"のはず。ところが、殺人を忌み嫌っているはずのジョンは、追い詰められてタップの喉を自らの手でかき切ってしまうんですね。ジョンにとってこれは"大義"のためなんだけれども。
さて、ゼップに撃たれたタップが、バスルームに続く通路に倒れています。
バスルーム内でジョンが起き上がり、アダムさんにご挨拶をして扉を閉め、歩いて行くとタップに会う。
ジョンはタップを置き去りにするか、救うはずです。
いや、救うよね。
3作目でアマンダに、死ぬとわかっててエリック・マシューズを置き去りにしただろうが、それは過ちだ(You left him for dead, didn't you? But I cleaned up your mistakes.)と言ったんだから。
消しかけた命を、今度は救う。救うどころか、「こないだはどうもすみませんでした」ぐらい言わないとまずい(笑)。

たとえば、タップを救うのはアマンダでもいいと思います。
思い出すなー、部屋の向こうにローレンス・ゴードンを座らせ、生還した被害者のアマンダに質問するタップがとても優しかった、あのシーンを。もしかしたらあれは、後々のタップとアマンダの繋がりを示す象徴的な場面だったかもしれません。

というわけで、タップはジョンかアマンダに救われたとします。
そして、聖ユースタス病院で、待っていた。ずっと、ずっと長いこと待っていた。届くのを、今か今かと。
ドアを閉めきり、あのときと同じように、モニタを見つめて待っていた。あのときと同じように、"家"を監視してた。今度は、自分の家を。
これがゲームだったかどうかはまだわかりません。ゲームが成立するかどうか、また考えてみたいと思いますが。
待っていたのはビデオテープ、あるいはゲームの指示書。

さてさて、残る可能性はアダムさんですが、長くなったのでまた今度書きます。
でもとにかく、アダムで始まりアダムで終わる『SAW』もステキっす。
I have a family too, I don't see them that's my mistake!
家族がいるんだ。会ってないけど。
うーん、"ひとり"に近いことは近い。
But what do voyeurs see when they look into the mirror?
今までは撮っていたけど、撮られるのはどんな気分だ?
聖ユースタス病院で、撮る方と撮られる方もやっちゃったりして。
この人も生きてておかしくないですから。

心ゆくまでさるお、もんち!
posted by さるお at 00:42| Comment(4) | TrackBack(1) | さるお発『SAW VI』予想/解読 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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