ラース・フォン・トリアー(Lars von Trier)監督の問題作『DOGVILLE/ドッグヴィル』の続編『MANDERLAY/マンダレイ』、うかうかしてたら、3月11日から公開になりました。"アメリカ3部作"の2本目だからね、あと1本あるわけですよ。こりゃ観に行かねば。
主演はブライス・ダラス・ハワード(Bryce Dallas Howard)、『THE VILLAGE/ヴィレッジ』で森をずんずん歩いていた彼女です。
ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)はね、もうラース監督には懲りちゃったからね、ロン・ハワード(Ronny Howard)の娘が次なる生け贄。もともとはニコール・キッドマン用に書いた脚本だけれど、3部作次々と主演女優を変えることに方針が変わったぞ。(ちなみに噂では3つめはケイト・ブランシェット(Cate Blanchett))
共演者はダニー・グローバー(Danny Glover)、イザーク・ド・バンコレ(Isaach De Bankole)、グレースのおとうちゃん役にウィレム・デフォー(Willem Dafoe)、そしてみんなが嫌がるラースとのシゴトを飽きもせずに続けるローレン・バコール(Lauren Bacall)、クロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)をはじめとするみなさん。
またあれですよ、床に線ひいた演劇セットです。
「こんな町さえなきゃ世界はもちっとマシになるのに、ちきしょーっ!」って言って(ちきしょーっ、は言ってません、すみません)ドッグヴィルを焼き払って皆殺しにしてしまったあの美しい女神のその後です。今度は、おとうちゃんとやってきた新たな場所マンダレイ農園で、終わったはずの奴隷制度を見て逆上する。
「奴隷を作り上げたのは私たち白人。彼らに対して責任を取らなくてはっ!」
グレースの傲慢さに磨きがかかっている気がしないでもないが(笑)、それ行けグレース!
http://www.manderlay.jp/
『DOGVILLE/ドッグヴィル』は素晴らしかった。自分を恵みの神だと信じているグレースの、恵みそのものがかかえる傲慢さを描いた。転じて裁きの神となったグレースの思い上がりは、浄化という名の、さらなる"神の傲慢さ"でもあった。
しかしそれでも、『ドッグヴィル』は神の視点で描かれた作品ではない。純粋な良心と正義を持った、"人の"物語である。つまり、傲慢なのはあなただ、と言っている。
楽しくなければ映画じゃない!かなんか思っているみなさんは観ない方がよろしい。ドッグヴィルの消滅はグレースの復讐劇だな、と思ってしまう人も観ない方がよろしい。「あなたに自由を!」これが思い上がりのセリフであると気づけないなら観ない方がいい。
良心、正義、寛容、許し、協調、親切、信頼・・・あらゆる善意があなたの傲慢さである、と突きつけられる覚悟がないと、不快なだけの映画だYO!不快なのは映画ではなく、愚かな自分たちだと受け止める覚悟がないと、観てもつまらない。観客の精神に鞭をふるう恐ろしい映画でございますよ。
不快な映画が観たいさるお、救いのない映画が好きなさるお、ここまでくれば本格的なマゾだNE!(涙)
美しき逃亡者があらわれ、一つの村が消えた。
審判の日がくる。
あれから3年。
美しい救世主があらわれ、そして、自由が消えた。
アメリカ的民主主義が現実に敗北する物語。偽善、傲慢、社会の矛盾を、シニカルに描くこの3部作2作目は、またしても世界に不快感と反論と拒絶反応を巻き起こすに違いない。
【追記】
観てきたよ。感想はこちらです。
心ゆくまでさるお、もんち!