2010年11月02日

『SAW 3D』(SAW VII) 解読2 さ・ば・い・ぶ!

さるおです。
ネタばれ記事です。ネタばれコメントも大歓迎です。これからご覧になる方は気をつけてねー。

今作で一連のゲームの主役になったのはボビーです。ほんとはゲームなんてやったことないのにサバイバーのフリして、偽の"サバイブ体験"をネタに本出したりセミナーやったり、儲けてやろうというダメ男っす。
さるお的にはですね、時系列で言えばこのお話は『SAW II』の後か、遅くとも『SAW V』の後くらいの時間軸で、作品の順番でいえばこれが『SAW IV』あたりならよかったのに、と思う。今ボビーか、大トリがボビーか、と思うわけ。
理由はふたつで、ひとつはあまりに地味だから(笑)。
もうひとつは『S.U.R.V.I.V.E. - My Story of Overcoming JIGSAW -』という本が、ジョンがまだずいぶんと元気なときに出版されているからです。もちろん、正確な時期はわからない。けどあの元気さは、『SAW II』より前だよねぇ。
すると時系列はこうなります。

2004年4月28日  ポールのカミソリワイヤー(3週間後に警察が現場発見)
2004年6月14日  マークの引火性ジェル+ロウソク持って金庫開け
2004年7月17日  放火事件(火曜なら01年か07年なので全体がズレます
(2004年7月中旬 歯科医(ゴードンの近所)を逮捕)←ジェフだといいな
2004年7月23日  アマンダのヘッドギア

2004年7月末(?)  ドリル男ジェフ、シン殉職、タップ喉切り、ジョン逃走
2004年末〜2005年はじめ  バスルーム(アマンダのヘッドギアから5ヶ月)

この8〜9ヶ月間に行われたゲームはもっとたくさんありそうっすね。ボビーがケイルと一緒にバーで飲んでいて、テレビに映るひとりのサバイバーがステキなこと言ってるぞ、これネタにして商売やろう、と思いつくシーン。あれは本の発売時期から推測して、おそらくアマンダのヘッドギア以前の3ヶ月間のできごとだろうと思うのです。

さてここで、『S.U.R.V.I.V.E. - My Story of Overcoming JIGSAW -』発売。
サイン会でジョンとボビーが会って、縁起の悪そうな会話(笑)をする。
このサイン会のシーンでみなさんが何を着ているかというと、ジョンはTシャツの上にパーカー、ジーンズにキャップ、防寒着はありません。ジョイスらしき人物は膝丈のスカートにブラウスとカーディガン、薄手のセーターの人や、少し襟ぐりの開いた服の人もいる。みなさんだいたい、軽めのシャツ類にもう1枚羽織っている、そんな感じです。いい季節っすね。真夏や真冬ではありません。
ということは、たとえば7月末にさっそく原稿を書き始めたとして、翌年春か、初夏の出版。行動開始から1年かからずに発売とサイン会にこぎつけている、ということになります。

2005年7月下旬  マイケルの目に鍵ゲーム(バスルームの7ヶ月後)
2005年7月下旬(?)  屋敷で8人集団ゲーム/エリックの我慢ゲーム

ここで、少なくとも2冊、別のジグソウ本が発売されていることが、『SAW IV』を観るとわかります。
TIM BLAKE著のドキュメンタリー『JOHN KRAMER AKA JIGSAW -IS HE THE MURDERER THE POLICE SAY HE WAS-』 と、雑誌のように見える『MODERN CULTURES』(DET. ERIC MATTHEWS、IT'A ALL IN THE TRAPS、influential criminal mastermindsなどの特集を組んでいる)です。
ははーん、そーゆーことですね。ボビーがすでに動き出していたからなんすね。
『S.U.R.V.I.V.E. - My Story of Overcoming JIGSAW -』が発売されて、話題になっている。おそらく『友の会』もすでに発足していて、こちらも注目されている。プレー経験があろうがなかろうが、恐怖と一体のジョン・クレイマー的道徳観を、街の人々はそれなりに理解しようとしている、その状況だからこそ、殺人ゲームが"啓蒙活動"としてカルチャー扱いされているわけですね。ま、言ったって、キワモノカルチャーだけどな。

この時間軸があっていれば、やっぱボビーのゲームはこのへんでやらないとオカシイんじゃないか。最終章じゃねーよ、と言いたい(笑)。

ジョンにとって、なんというか、思い入れというか、大事な被験者というのはいたと思うんすよね。
筆頭はもちろんゴードンせんせで、これはジョン自身の究極のターゲットだったと思う。で、これに匹敵するのはウィリアム・イーストンのはずです。このふたりは、やっていることが同じなんだよね。人をモノのように扱って、勝手に作ったセオリーに無理矢理あてはめ、そのセオリーを理由に死を宣告する。しかも、医療と保険というのは、システム上の共犯関係です。
もうひとりいるとすれば、我が子を失うという似た悲劇に見舞われながら未だ自分の人生の軌道に戻れず家族に犠牲を強いていたジェフ・レインハルトかと思うんだけれども、そもそもリン・デンロンを推薦したのはゴードンせんせであり、それはアマンダを再テストするためだった。ということは、やはり愛弟子アマンダなわけです。これがジョンの3大ターゲット。
同じように、アマンダの世界について考えれば究極のターゲットであるエリック・マシューズが最重要になるわけで、素晴らしい入れ子構造なのですが。

ゴードンせんせ、アマンダ、ウィリアム・イーストン。
もちろんここにボビーを入れるのはいい。ボビーのゲームはたとえば1作目『SAW』のような因果応報ゲームっすから、そこに美学もある。けどね、ボビーのゲームを後回しにする理由も見当たらず、お仕置きするなら『友の会』発足直後であり、それはウィリアム・イーストン以前でしょ、と思うわけです。
ゴードン、アマンダ、ボビー、ウィリアム・イーストン。この順番が自然。

けれど実際は、『友の会』は発足してからしばらく経ってるみたいっす。ミーティング内でのやりとりを聞くと、シドニーは脱・カレシ依存に成功してある種の達成感を持っている一方で、片腕まるまる切り落としたシモーヌは怒っているように見え、いわゆる"まだ"混乱している状態だとグルに診断されている。なるほど、シドニーは立ち直ってきていて、シモーヌのほうは新入りだということなんすね。マリックの入会時期とか、ウィリアム・イーストンにつきあわされた人たちの入会時期もわからないわけですが、とにかく、みなさんの姿が確認できる。
ボビーはゴードンせんせを"自分より長くあーしているんだ"(He's been around longer than I have. He's fine.)と言っている。"around"というのは、周囲にいたとかうろついてたという意味なので、ボビーが『友の会』をやろうと言った頃、ゴードンせんせの方からボビーひとりに会いにやって来たはず。けど、これまでミーティングには顔を出していないんすね。だからボビーの取り巻き3人はゴードンせんせを知らない。ボビーからすれば、ゴードンせんせというのは「来ちゃったよ、ホンモノが!」という存在っすから、"うろつくだけの大御所"がついにセミナー会場に来るとなると、オブザーバー扱いっす。

もちろんゴードンせんせは亡きジョンに派遣されてボビーを観察しに来てるわけですが、劇中には、ホフマンが箱の中に『さ・ば・い・ぶ!』のパンフレットとボビーの写真などを持っている描写がある。となるとボビーをゲームに放り込んだのはホフマンだということになり、ホフマンとゴードンせんせはお互いに役割まで知っているということになります。すると、ホフマンはジルを殺しただけで逃げ切れるはずはなく、ゴードンせんせも始末しなければならないはずで、これはちょっと辻褄が合わなくなりそうっすよね。
これについては別のエントリーでまた考えることにして、話は、大トリのボビーさんに戻りますね。

ボビーを大トリにしたのには、"ジグソウ事件をもう街中が知っている"という設定で最終章を飾ろうとしたからだろうと思います。前述のとおり、『SAW IV』の時点ですでにこのアイデアはあったかもしれないし。
で、ジグソウ事件を街中が知っているよ、というあのオープニングのショーケースの公開処刑になっちゃった。
でもね、ケヴィン・グルタートよ、パトリック・メルトンよ、マーカス・ダンストンよ、おまえら、何か、まずいと思わんかね?
"You don't see anything wrong with that?"

とわたくしは強く思いますよ。
ボビーのゲームこそ、パブリックでやらなくちゃいけないんじゃないか。ボビーのゲームだけが、パブリックでやる意味があるんじゃないのかよ。
ボビーは、世界中に嘘をついた。その嘘で、不特定多数の人々から儲けようとした。街中の人に、「胸にフックが刺さっててね、鎖がついててね、闘うぞ!生き残るぞ!って思ったから、痛かったけどがんばって登って、よい人間になったのだぁーっ!本買ってね」ってありもしない嘘を言ったんすよね。
だから、それをやってみせろと。2度目なんだからやり方は知ってるだろ、みんなにお手本をみせてやれ。
これこそ、白昼、街中に見られながらやんなくちゃぁ!

後にも先にも、なにしろこれがモーレツに残念です。青年2名とギャルの恋ゲームのほうを公開処刑する意味がわからない。
『お仕置きショー』として成立するのは、ボビーのゲームなのに。
ボビーを主役に4つもトラップを仕掛けて、『SAW 7』という映画はこれで楽しもうぜということなら、街中の人に見える場所で、ケーサツが60分間手出しできない場所、60分間誰も近寄れない場所、そんな状況設定を作り出してほしかった。

もっと言うと、えー、長々と書いておいてアレですが、やっぱ公衆の面前で60分もうだうだやってたらレスキューみたいな大部隊が来ちゃって別の映画んなっちゃうので(笑)、いいや、ボビーは60秒で。あとは全部、要らねぇ(爆)。ジョイスがいたオーブンの上に取り巻き3人縛りつけて、60秒の間にボビーは自分が体験したはずのトラップに挑戦して胸筋がちぎれて、友達とかビジネスパートナーを失えばいいんです。ジョイスさんは悪い人じゃないんだし。
で、新登場のデカさんかなんかも、要らねぇ。
7年間築き上げてきたジグソウ・ワールドにまったく必要ない"新ネタ"で上映時間の大半を無駄にするより、広げた風呂敷をちゃんと片づけないといけないのに、まるでその気がないなんて、ケヴィンよ、パトリックよ、マーカスよ、おまえら、何か、まずいと思わんかね?

ということで、解読なのか愚痴なのか、とても怪しい(明白)感じになって本当に申し訳ごさいません。
さ・ば・い・ぶ!

心ゆくまでさるお、もんち!
この記事へのコメント
コメントの回答ありがとうございますm(_ _)m いろいろ愚痴りましたが、今回見ていて「ゾクッ」ときたシーンがありました。アマンダ好きのさるおさんもさぞかし興奮してんじゃないかって思ったんですが、ホフマンがジルを殺すヘッドギアをあえて元祖の方を選んだシーンです!あのホフマンの一瞬の考える間にゾクッときてしまいました。さるおさんいかがでしょうか?
Posted by taka at 2010年11月03日 19:37
takaさん

> あえて元祖の方を選んだシーン

むははー。わたくしも、よっしゃと思いました。
ホフマンが、ジルの口の中に金属のやつ(あれはどーゆー機能の部分なの?)入れたとき、アマンダが金属の味がしたって言ってたのを思い出し、さるおも口の中がなんとなく金属のやーな感じになって、そしてコーフンしましたよ。(異常)
Posted by さるお at 2010年11月08日 19:53
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