2010年11月04日

『SAW 3D』(SAW VII) 解読3 ブタになる理由

さるおです。
ネタばれ記事です。ネタばれコメントも大歓迎です。これからご覧になる方は気をつけてねー。

さるおがブタ家族だと書いた理由を、2つの記事に分けて説明してみようと思います。まずはお父さんブタから。
もちろん、解読はオリジナル『SAW』までさかのぼりますよ。

『SAW 3D』にこんなセリフがありました。
Congratulations, Dr. Gordon. You survived.
(おめでとう、ゴードンせんせ。あなたは生き延びた)
これを聞いて思い出しました。オリジナル『SAW』を観たときの、ゴードンせんせは勝ったのか負けたのか、という疑問を。
おめでとうと言われると、勝ったような気がする。では、バスルームにおけるゴードンせんせのゲームのルールは何だったか。"生きてバスルームを出る"というのが、ゴードンせんせの勝つ条件だっけ?

Your aim in this game is to kill Adam. You have until six on the clock to do it.
There's a man in the room with you. When there's that much poison in your blood, the only thing left to do is shoot yourself.
There are ways to win this hidden all around you. Just remember, X marks the spot for the treasure.
If you do not kill Adam by six, then Alison and Diana will die, Dr. Gordon, and I'll leave you in this room to rot.
Let the game begin.
Follow your heart.

このゲームにおけるおまえの目的は、アダムを殺すことだ。制限時間は6時。
そこに倒れている男は、体中に毒がまわり耐えられずに銃で自殺した。
ゲームに勝つ方法はあちこちに隠されている。X印は宝のありかだ。
もし6時までにアダムを殺さなければ、アリソンとダイアナは死ぬ。そして、ゴードンせんせ、私はおまえをここに置き去りにする。
ゲームを始めよう。
ハートに従え。

これがゴードンせんせへのテープです。
今読み返すとまたいろんなことがわかるなぁ。ちょっとそれも書いておきます。
「目的は、アダムを殺すことだ。ところで、その真ん中の人は自殺したよ」
これは、どーにもならなくて勝つことができない、というのがつらいなら、自殺してゲームを降りるという手もあるよ、と言っているんすね。続く言葉のX印は宝箱には、たしかに毒を投与するためのタバコや銃弾が入ってました。そしてそれらは、ゲームに勝つためにも、ゲームを降りるためにも、使える。
見事っすねぇ!
そしてこうです。
「私はおまえを置き去りにする」
今このバスルームに犯人がいないなら、"置き去り"にはできない。犯人がバスルームにいるから"置き去り"にできるんだ。
つくづく、見事っすーっ!
こうなると犯人は、アダムか死体のどちらかしかないわけで、アダムを殺せということならもう、死体よあんたが犯人だ、ということになる。
見事すぎ。そして、それに今気がつくわたくしは、見事じゃなさすぎ(泣)。

本題に戻ります。
ゴードンせんせが勝つ条件というのは、6時までにアダムを殺すこと、のように思えます。
だとすると、足を切ろうが腕を切ろうが首なしドクターになろうが、おめでとう、ということにはならない。
"ここで死ぬか、どーにかするか"というざっくりした二者択一を与えられたアダムであれば"生き延びた"というのは大勝利だと思うけどなぁ。

ここまで考えて、また気になることが出てきました。
『SAW V』でジョンはホフマンに殺人は不快だ(Killing is distasteful to me!)と言っているんすね。"人殺ししろ"なんてジョンらしくないのです。しかも、ゴードンせんせが言うことを聞いてあっさりとアダムを殺してしまったら、アダムのチャンスを奪ってしまうことになる。これはジョンの主義に反するのです。
(もちろん、ジョンはアダムのチャンスを奪わないように手は打った。ゲームの手がかりのいくつかはアダムの周辺にあったからっす。アダムにとっての勝利法は、第1にバスタブに流れた鍵、第2に殺されないこと、そして最後に足枷からの脱出だったわけっすよね)

Every day of your working life you have given people the news that they're gonna die soon. Now you will be the cause of death.
おまえは毎日、あなたはもうすぐ死ぬと人々に言っている。今はおまえ自身が死因そのものだ。

日々平気な顔で死の宣告をしている、と咎めた直後に、アダムを殺せ?
そうか!これはよく考えると、逆の意味かもしれないのです。
アダムを殺せと言われたら、考えもせずにおまえはそれができるのか?ちがうだろ?そうじゃないだろ?よく考えて、良心に従えよ。
そう言っているんじゃないか。
Follow your heart.
じつはこれがいちばん大事。これこそがルール。ハートのマークを探せというヒントであると同時に、良心の命じるままに従え、という意味じゃないかな。ハートを探して、そこから出てくるのはのこぎりなんだよね。アダムを殺すのではなく、のこぎりを使ってでもここから出ろ、という意味なんじゃないか。

厳密には、6時の時点でアダムが生きているためにゼップはアリソンとダイアナを殺そうとしました。そしてその後、ゴードンせんせのことも殺す予定だった。だから厳密には、おめでとうでは済まない。
いや、ジョンという人間が妥協をしない厳密な人間だということはわかっています。だから少し行動するのが遅かったゴードンせんせは決して勝ってもいない。
また、そもそもゼップへの指示内容は主義に反するはずなんだけれど、これはターゲットがローレンスだという理由に尽きる。たとえ自分が大きな犠牲を払おうと、家族に忠実に振る舞えるかどうか。あるいはそれを、失うか。厳しいゲームをやっているわけっすからね。

もちろん、6時より前に足を切断しアダムを殺さずにバスルームから出たとして、ゴードンせんせは自力で家族を救いに行くことはできないっすから、仮に自分はたすかっても家族は失ってしまう。でもジョンが起き上がるのは6時をすぎてからなので、頼みの綱はアマンダとか、救済措置はあったはずっすよね。ま、この展開だとどーなるのか、それは確かめようもないので、こう考えてみたりもしています。ジョンのゲームのクオリティは発展途上だっただろうと。
セシルの場合、セシルの人間性を見越していたジョンの立ち位置からして、巧妙な処刑の雰囲気でした。カミソリワイヤーのポールや、ろうそく片手に金庫のカギの番号を探さなくてはならなかったマークのゲームだって、生き延びるのは不可能に近い。きびしすぎるな、みんな死んじゃうな、ということでアマンダには甘くなりすぎ、彼女は無傷で生還。今度はぬるすぎたな、ということで、バスルームはこんな感じでやってみたけれど、片足でどぼどぼ血ぃ流しながら家族をレスキューはさすがに無理かぁーと。そして徐々に、殺すか殺さないかじゃなくて、赦すか赦さないか、救えるかどうか、あと、たすけ合うとか、そーゆーテーマに移行して行くと(笑)。
少なくとも、あっさりアダムを殺せるようじゃ、自分の足は切れない。他人の命を軽く考えているままで自分の足ののこぎりを当てたら、そのギャップにには耐えられないからです。痛みや恐怖に負けてしまうからです。命の重み、失う恐怖、足を切ってそれがわかったから、ゴードンせんせはアダムを殺さなかった。最後の最後に、良心を貫いて闘い抜いたんすよね。

ゴードンせんせは、家族がキケンにさらされていると知って自分の足を切断した。救いたい一心で、家族に会いたい一心で、痛みや恐怖などどこかへ吹っ飛んでいったんです。自分のことなど考えもせずに、家族をたすけたい一心で、夢中で足を切断した。
ゴードンせんせだけが、本当の意味で、ゲームを生き抜き、学んだんだろうと思います。家族を守り、愛することを。自分にはそれができると知ったんだろうと思います。それがどんなものか、守り愛することがどんなものか、初めて実体験したんだろうと思うのです。彼は、死にもの狂いで精一杯やり遂げた。これが家族というものか。これが命というものか。
実際は、アリソンとダイアナは自力で生き延びてくれました。家族のためにバスルームから出る、これこそが、ゴードンせんせに用意されたゴールだったんだなぁ。
何が何でも家族を救おうとする体験。そのために自分は犠牲を払えるという体験。たしかに、それはかけがえのないギフトだろう。極限状態の中で背中を押されて、手に入ったときの衝撃は、まさに"Mind-Blowing"だっただろう。

ジョンは、ゴードンせんせを一所懸命に介抱したと思います。褒めていたと思います。アマンダの時のような師弟誕生とも違う、特別な絆ができあがっただろう。

だから、ゴードンせんせがブタマスクをかぶるのは、当然のことなんすね。
唯一の、正真正銘のジグソウ後継者。
すんばらしい!

ゴードンせんせはアダムをたすけたかどうか。
気絶しちゃってたし、次のシーンではジョンに義足つけられてるし、ほんとのところはわからない。
けれど、たすけようとしたはずです。さるおは、たすけたと思う。

心ゆくまでさるお、もんち!


この記事へのコメント
さるおさん、いつもわくわくしながら読ませてもらってます。
こうしてゴードンさんの過去をふりかえると、凄いですね、あらためて。彼はとんでもないゲームを、やってのけたんだわ。これで共犯者になるというのは、これもまた凄いと思いますが、ソウの中ではこれで自然というか、そんなふうに思えてきました。さるおさんもすごいです。
ブタの続きも楽しみにしていますね。
Posted by うり at 2010年11月05日 11:50
うりさん
どれもこれもとんでもないゲームだけれど、やってのけたっちゅーのはまぁ、すげぇっすよね。しかもゴードンせんせは良心に従ってて、その瞬間に自分が選べるベスト、というのを常に選択しようとしてるんだよなぁ。

> ソウの中ではこれで自然

『SAW』というユニバースの中のできごとっすから、美学はあってよいっちゅーか、ね、そうなんすよね。
Posted by さるお at 2010年11月09日 10:32
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