2011年01月20日

映画鑑賞感想文『レボリューショナリー・ロード -燃え尽きるまで-』

さるおです。
『REVOLUTIONARY ROAD/レボリューショナリー・ロード -燃え尽きるまで-』を観たよ。
監督はケイト・ウィンスレットのだんなさんのサム・メンデス(Sam Mendes)。この監督さんはとても好きだし、とてもすごい人だと思います。作品の数は少ないけれども、撮った映画は全作品がまぎれもない名作ばかり。
『AMERICAN BEAUTY/アメリカン・ビューティ』
『ROAD TO PERDITION/ロード・トゥ・パーディション』
『JARHEAD/ジャーヘッド』
『THE KITE RUNNER/君のためなら千回でも』
そして『レボリューショナリー・ロード』をはさんで、『THINGS WE LOST IN THE FIRE/悲しみが乾くまで』。
すばらしすぎー。
ケイトさんも、すごい演技力でよい作品に出る女優さんだしなぁ。とてもとてもよい働きっぷりのご夫婦っすねー。
原作はリチャード・イェーツ(Richard Yates)さんというこれまた素晴らしい作家さんの『REVOLUTIONARY ROAD/家族の終わりに』です。この映画は、まさに"家族の終わりに"。
感想書く前に涙出てきましたよ。
出演は、レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)とケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)がウィーラー夫妻。キャシー・ベイツ(Kathy Bates)、リチャード・イーストン(Richard Easton)、マイケル・シャノン(Michael Shannon)でギヴィングス一家。デヴィッド・ハーバー(David Harbour)とキャスリン・ハーン(Kathryn Hahn)がキャンベル夫妻。

すごい。この作品はすごい。さるおがひじょーに好きな映画ですよ。
1950年代アメリカの"理想的な家族"が、"終わる"顛末を描いた作品です。
人が、溺れまいと必死でもがく姿。それはとても、炎のようで、刺すように痛い。もがき続けて、希望を失い、いつしか焦げついていく、その姿というのは、とてつもなく苦しい。それを描いた作品。
さるおはそーゆーのが大好きっす。なんて暗いんだ、わたくしは。

私が働いてあなたは遊んでていいからパリに行こう、と言い出すウィーラー妻のエイプリル。
理由1:だんなに"輝かしい未来"を取り戻させてあげたい。
理由2:とにかく私はパリに行きたい。
たしかにね、前者も真実ではあった。けどまぁ、後者なんすよね。パリ行きの理由にだんなを利用してるわけです。
タイミングの悪い3人目のベビーさんのことを、エイプリルは気づいたときから邪魔だと思ってた、だって私はパリに行きたいんだもん。
後々、タイムリミットの12週を過ぎた瞬間に決定的な大ゲンカをするんですが、このときウィーラー夫フランクは、自分もそんな子いらんと言おうと思ってた、と言ってはならなかった言葉を言い捨ててしまう。でもこれは真実ではなかったはずで、売り言葉に買い言葉、勢いで言っちゃったんすよね。
フランクも、輝かしい未来を夢想していた。それをエイプリルに話した。それはとても魅力的で楽観的で、ふたりは夢中になった。いや、実際はフランクの話す輝かしい未来にエイプリルが乗っかったんだろうと思います。けれどもフランクはしがないサラリーマンになり、夢は終わった。つまらないけど、現実を生きなくちゃ。それがフランクの、他の人と変わらない、挫折込みの"普通の人生"だったんだろうと思います。そこへエイプリルがもう一度だけ夢をみようと誘うわけです。人生のワンラストチャンス。私たちが特別だと証明しよう。迷いますね、揺れますね、そりゃそうだ。タイミングの悪さはエイプリルのおなかのベビーさんだけではなかった。"普通の人生"の中にも"それなりの成功"がありそうだということになる。どーしても揺れるよね。
エイプリルは違いました。情熱を、命を、燃やさなければ生きられない。たとえ燃やし尽くしたとしても。彼女が愛したのは、フランク経由の"輝かしい未来"。だから、賭けなければ、生きられなかったんだろうと思います。彼女には後戻りはできないんですね。

自分もそんな子いらんと言おうと思ってた。
タイムリミットは過ぎた。
これが、家族が終わった瞬間。エイプリルにはもう、他の選択肢はありません。すべてを、本当にすべてを、失ってしまったと感じた。長女長男がいるじゃんか、と思うけれど、彼女にとってはね、すべてが終わってしまった。そうなると、そもそも長女長男をエイプリルがどう思っていたのかってゆーのもあるわけです。彼女は、家族に何を求めていたのか。やっぱり彼女が愛したのは"夢"だったんですよね。
エイプリルはこの"家族が終わった瞬間"から、一晩かけて覚悟をする。自分は何をあきらめて、何を選択するのか。もちろん翌朝どう振る舞うのかも。
怖かったろうと思います。寂しかったろうと思います。本当に本当に、ひとりぼっちっすから。

それは新たなスタートだったのか。それとも終焉だったのか。
とにかく、"この"家族をどう終わらせるかを決めたのはエイプリルです。かわいそうに。
翌朝のエイプリルは良妻。あ、エイプリルにはもう会えないんだな、そう感じてさるおは涙目です。
タイムリミットを過ぎた我が子を殺そう。そして自分も死ぬのかもしれない。長女長男に、愛していると伝えて。さるおはふるえてしまうほど涙目です。
自殺ではないし、自分で救急車も呼んでいる。ということは、身の丈の、失望という名の幸せを生きようと、思ったのかもしれない。
あまりに見事な良妻の姿は、その日大事な会議があるフランクを安心して出勤させてあげようという最後の愛の姿だったかもしれないし、夫への復讐だったかもしれません。フランクは怯えていたかな。いや、エイプリルは本当に完璧だったから、フランクはわずかな安堵という幸せを感じただろうと思います。死ぬかもしれないエイプリルは、自分がいなくなってもフランクが生きられるように、仕事の心配をしてくれたんじゃないか。

フランクには、才能がちゃんとありました。エイプリルが夢にみた"特別"さをフランクは持っていた。彼女はある意味で正しかったんですね。
けれど彼がその才能を活かすとき、エイプリルはいない。叶わぬ夢の代償は、大きすぎました。

さて、ここからが、この作品の核心だと思います。
キャンベル夫妻はどうだったか。夫シェップはエイプリルとの間にヒミツを持った。彼にとってのエイプリルは、エイプリルにとってのパリ行きのようなものだったと思います。妻ミリーには求めることのできないものを、エイプリルに感じた。けれどシェップはそれを一時の夢だと知っていた。そして無邪気にウィーラー夫妻の悲運を嘆く妻に、もうその話はするなと言えば、素直に従う妻なんですね。口を閉じろ言えば、ちゃんと黙るわけです。
ギヴィングス夫妻はどうだったか。妻ヘレンはウィーラー夫妻を"理想的"だと言っていた。自分が紹介した物件に住み"理想的な家庭"を築く様子を見るのは、ヘレンにとって夢の実現だったかもしれない。ところが、再び家主を失ったその家を新たに現れた"理想"の買い手に引き渡すと、ウィーラー夫妻を悪く言い始める。夫ジョンは耳の補聴器を外します。聞かないでおこう、嫌な話は。知らずにいよう、妻の悪い一面は。それがジョンのやり方。
どっちの夫妻も安泰っすね。
ギヴィングス夫妻の年齢を思えば、これが長続きするケッコンの極意ですよ。ジョンとヘレンは、こうやって、長いこと共に生きてきたんすよね。
対照的です、ウィーラー夫妻は。ハートをぶつけ合い、情熱を燃やして生きた夫婦です。涙出るなぁ。

この作品は、自分がどの立場で観ることができるか、というのもとても大事っすね。"パリに行けた人"として観ることができる人は数少ないと思うけれど、これはとても意義あることです。
唐突すぎるエイプリルだけど、情熱的すぎるエイプリルだけど、とにかく、彼女の姿を見て泣けるハートでいたいっす。

心ゆくまでさるお、もんち!
posted by さるお at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画の感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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