スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、ペヴェレルの紋章について考えてみます。
これは第6巻目『HBP』でほんの一言だけ触れられる、"あの指輪"のルーツについての検証です。ということはこのエントリーは『HP7』の大予想へとつながる可能性があります。ネタばれコメントも大歓迎なので、そっちも気をつけてね。記事は反転色にしてあります。
訳本は読まないので日本語訳がたまにヘンだと思いますが、それは許してください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。
See this? See this? Know what it is? Know where it came from? Centuries it's been in our family, that's how far back we go, and pure-blood all the way! Know how much I've been offered for this, with the Peverell coat of arms engraved on the stone?
(さるお訳:これが見えっか?これだ!ほれ!何だかわかっか?どーゆもんかわかっか?ほれ!何世紀もうちにあんだぞ。うちは由緒あってずーっと純血ですーっと遡れんだぞ、あん?みんながどれだけ欲しがるか。石にペヴェレルの紋章が刻まれてんだぞ、ほれ!)
これはペンシーヴ内のシーン。オグデン(Ogden)がゴーント家にやって来てヴォルディのじーさん(Marvolo Gaunt)と対面した場面で、じーさん(このときはまだ中年)が怒りだしてオグデンにこう言います。
さて、ペヴェレルの紋章(Peverell coat of arms)ってなんだべか?
まずは、どんな紋章なのか見てみます。
剣が2本クロスしていて中央にヘルメット(兜)と楯、上部に獅子が描いてあるもの。大きな楯の中央に獅子が描かれ楯の上に王冠が配置されたもの。いろんなバージョンがあります。
ありゃーっ!蛇じゃないぞ、ライオンだ!
ペヴェレルを探してみると、2つありますね。地名と人名。
地名としては、イングランドの南西部の街プリマス(Plymouth)の近郊。
人名のほうは、こちらにおもしろいことが書いてあります。ペヴェレルさんは、ノルマン朝初代イングランド王ウィリアム1世の息子(あるいは弟?)らしく、私生児(ウィリアム自身も私生児だとか)だとか。イングランド中部のダービーシャー(Derbyshire)に城を与えられてそこに住んでいたみたいですが、その城にこの紋章が掲げられているそうな。
資料が少ねー、少ねー。なんだかわからない人です。時間をかけて調べてみるので、このエントリーはいずれ加筆されます。
お父ちゃんだとされるウィリアム1世(William of Normandy)というのは、1035年から1087年までノルマンディー公として、1066年から1087年はイングランド王として国を治めた人物ですね。彼と妻マチルダ(Matilda of Flanders)の間には少なくとも息子3人娘1人、彼の息子のうちの2人は後に王位を継承することになります。ひとりはウィリアム2世、もうひとりはヘンリー1世(Henry Beauclerc)です。巨漢だったこの王様(ウィリアム1世)は59歳でこの世を去りますが、亡骸がでかすぎて石棺に入らない!集まった司教たちがぎゅうぎゅう押し込もうとしたら石棺のほうが割れちゃった。教会内は悪臭が充満し、みんな逃げてしまったと、そういう話になってます。
ヴォルディのじーさんが我が家のルーツの証だと言っている以上、これは人名をたよりに考えてみるべきだな。
私生児。これは婚姻関係のない男女間の子供だから、ウィリアム1世が認知してない子だよね。でも、まぎれもなく王の血筋です。
ヴォルディのじーさんは、王(王たる者)の血筋の証明(たとえば生物学的に直系とか)であろう指輪を持っていた。それは何世紀もの間、ゴーント家で継がれてきた。これはゴーント家が王の末裔である(由緒正しく純血だって意味かな)証だぞ。王族(純血の中の純血)に向かって、何だこのやろう、ひかえおろ〜!そう言いたかったんじゃないか。
同じくこちらを元に、別の側面から、王の末裔としてのゴーント家を眺めてみるね。
実在の(!)ゴーント(Gaunt)なる人物(ジョン)について知っておきましょう。
ジョン・オブ・ゴーント(John of Gaunt)、ランカスター公(Duke of Lancaster)です。
14世紀、イングランド王エドワード3世と、バランシェンス(現在のフランス)から嫁いできた女王フィリッパ(Philippa of Hainault)の、4番目の息子で、1340年にゲント(Ghent)で生まれたことから、ジョン・オブ・ゴーント(John of Gaunt)と名乗ります。初代ランカスター公の次女(Blanche)と結婚して自身もランカスター公となるわけだけど、超リッチなゴーントは王家の政策やら跡目争いやらに多大な影響力を持ち、もれなくドロドロの王位争奪戦に巻き込まれていきます。
ジョン・オブ・ゴーントを後継するランカスター家からはヘンリー4世、ヘンリー5世、ヘンリー6世を輩出。正式ではない後継者(つまり私生児)はチューダー家(the House of Tudor)へと吸収されていきますが、この血筋からもヘンリー7世が王位につく。娘フィリッパはポルトガル王ジョン1世に嫁ぎエドワード王を生み、エリザベスはエクセターの公妃となり、キャサリンはカスティリャの王ヘンリー3世に嫁ぎます。
なんかよくわからんがものすごい家系っす。
ジョンの甥っ子リチャード2世がジョンの多大な影響力に大反発。後継者であるジョンの息子、後のヘンリー4世(Henry Bolingbroke)を国外追放に追い込みます。その1年後の1399年ジョンが亡くなったときには領地没収でとどめを刺しますが、父ジョン・オブ・ゴーントの死を知ったヘンリー4世が帰還して大反乱を起こし、イギリス王座に就きます(1399−1413)。これでランカスター朝がはじまるわけっすね。
王位争奪戦に巻き込まれたといっても、当の本人は欲張りだったわけじゃなくて、人気がありました。悪役はリチャード2世側。ジョン・オブ・ゴーントは"the last Englishman"、息子ボリングブロク(Bolingbroke)は"a true Englishman"と呼ばれました。
さて、これは余談ですが、ジョン・オブ・ゴーントと結婚したBlancheは1369年に亡くなっています。詩人のジェフリー・チョーサーが彼女に捧げたと言われる"Book of the Duchess"には"Black Knight"と"Lady White"が登場します。あー、たしかに、Gaunt(気味の悪い)を名乗る家に、ブランチ(白い)という名の人が入籍するのはなんだか不思議な感じです。
たしかにハリポタと符合するな。
ボリングブロク(Bolingbroke)が国外追放されて不在の間に、父ジョン・オブ・ゴーントは亡くなっている。
モーフィン(Morfin)がアズカバン刑務所(Azkaban)にいる間に、父マーヴォロ(Marvolo)も亡くなります。
Slytherin's! Salazar Slytherin's! We're his last living descendants, what do you say to that, eh?
やっぱり、オイラ達はサラザール・スリザリン(王たる者)の末裔だぞ、そう言ってます。ほとんど水戸黄門(笑)。スリザリンの紋所が目に入らぬかぁーっ!頭が高い!ひかえおろ、ひかえおろーっ!
しかしですよ、蛇のはずのスリザリンの紋章が、なぜライオンなのか?
ライオンの紋章は、グリフィンドールのものではないのか?
ここではヨーロッパ史とハリポタワールドの背景がリンクしています。
ペヴェレルの父(王たる者)は、グリフィンドールなのか、スリザリンなのか?
様々な疑問が沸いてきますね。たった一言しか出てこない"ペヴェレルの紋章"が、これまたハリポタの世界観に通ずる伏線として活きてくると重厚さが増すな。ハリポタって隅々までおもしろいっす。
心ゆくまでさるお、もんち!
> 石にペベレル家の・章が刻まれた、この指輪に!
思い出させてくれてありがとうです。書きました。
どうかな?
ビンス先生の「魔法史」がこんなに面白かったらロンもハリーも落第しなかったでしょうに(苦笑)
何世紀も続く、王家のような家柄。しかも・・・ええーっ、ライオンの紋章??
グリフィンドールの遺品は剣でしたが、その他に、この指輪も、って事はあるのでしょうか・・・
でも、見た目が醜悪って書いてあったから、違うかな?(笑)
蒸し返すようですが、どうも気になって仕方がないのです。校長先生がハリーの質問に答えなかったことが2つ残っています。なぜスネイプを信頼するのか、どうして指輪を破壊したときに怪我をしたのか。
1)個人的な秘密に関わるから(スネイプの)
2)ハリーの身の上か、家族に直接関係するから。
3)秘密を打ち明けた場合のハリーの精神的な打撃が懸念されるから
校長は繰り返しハリーにヴォルデモートと戦う意思を確認させました。あの2つの疑問は、その決心を鈍らせるようなことを秘めているのでしょうか?
謎が謎を呼んで混乱する一方、ストーリーの面白さに引き込まれっぱなしでますますわけが分らなくなっているところです。
感服です。
緑と赤の話、すごく分かりやすくありがとうございました。
なるほどって感じです。
賢者の石の時は、「緑がいいもんで赤が悪いもんなのかな〜?」と、瞳の色だけ見て浅はかに勘違いしていたんですけど、読むにつれてグリフィンドールとスリザリンの旗(?)の色とかで、んん〜違う、逆?とか思ってくるとわけが分からなくなってきちゃって・・・
でも、さるおさんの説明で分かってきました!
ハリーの瞳の色って言うのは、みんなが言っている、ハリーのもつヴォルデモートの要素ってやつなんですね!
本当、深い。
あと、ぺヴェルってそんな意味だったんですね〜
さるおさん、すごすぎる。
JOって、すごくイギリス文化というか歴史というか、ハリポタに入れ込んでいるような気がしますね。
確か、『アルブス』だったか、『アルベス』だったか。あと、『アンブルボダ』だか『アンブルダボ』だったかって言う人が神様かなんかでいたような気がします。
忘れてしまってちゃんとした記憶じゃないんですが。それも確かイングランド地方の民話の中の話だったような・・・
誰か知りませんかね?
ニンフさんにも同感です。
確かに、ダンブルドアって自分が殺されること察知していながらハリーに残していたものが少なすぎると思います。
ハリーがヴォルデモートを殺さなきゃなんないのに、アバダケタブラとか出来ないし。
どうしろって言うことなんでしょう?
ペヴェレルの紋章大変勉強になりました。
ハリポタは、宗教、神話、星座、童話、絵本、王族・・・等がてんこ盛り(?笑)なので、博学な人程、読んでいて更に楽しいでしょうねぇ♪
さりげなく出てくる言葉にも、キチンとした意味があるし!!
いつも色々教えていただきありがとうございます。
また、このページでニンフさんたちの鋭いコメントが読めるのも楽しいです♪
読んでくれてありがとうだぞ!
> ビンス先生の「魔法史」がこんなに面白かったらロンもハリーも落第しなかったでしょうに(苦笑)
なんかさ、"歴史"って、授業つまんないよね(笑)。
おもしろく教えてくれたらすごくおもしろいはずなのに、なんかしらんけど"歴史"ってつまんない。さるおも嫌いだったなー、さるおが習ったのは"非魔法史"だけど(笑)。
> グリフィンドールの遺品は剣でしたが、その他に、この指輪も、
> でも、見た目が醜悪って書いてあったから、違うかな?(笑)
"醜悪"、これは大事な言葉だよね。グリフィンドールの物じゃない。スリザリンの物だとさるおも思う。
http://kooks.seesaa.net/article/17535849.html
ここに書いたように、4人がそれぞれ剣と杖とカップと金貨を持ってたと思うんだ。
だから例えば、じつは同じ家の出で、本家からライオンを分けてもらうような、そーゆーことってないのかなぁとか、思いを馳せてるところです。でも単純に、由緒ある純血の家柄だぞっていうだけかもしんない。もう少し考えてみます。
> なぜスネイプを信頼するのか、どうして指輪を破壊したときに怪我をしたのか。
これについてはさるおも気になってる!スネイプを信頼するわけは確実に『HP7』で明かされると思うんだけど、それだけじゃなくって、怪我の意味もきっと大事だよね。
スネイプについては、"自己犠牲"というものと密接な感じもします。ハリーのとうちゃんたちいじめっ子に逆さ吊りにされた姿はまるでタロットカードのようで、いろんな意味がありつつ、"自己犠牲"も象徴している。で、スネイプが自己犠牲を払う存在ならば、当然、リリーの自己犠牲とも密接なはずじゃないかと、そんな気がするなぁ。(2)ハリーの身の上か、家族に直接関係するから)
ただ、スネイプの表情をいろいろ思い出してみると、心の問題のようにも見えるね。(1)個人的な秘密に関わるから)
> 校長は繰り返しハリーにヴォルデモートと戦う意思を確認させました。あの2つの疑問は、その決心を鈍らせるようなことを秘めているのでしょうか?
これも大事っす。校長がしつこいほどハリーの意思を確かめたのは、自分はもうすぐ去ることになるからだと思う。けど、この2つの疑問が決心を鈍らせるくらいの内容なのも間違いないと思います。で、『HP7』ではついにそれを知って、でも乗り越えていくと、そーゆー大感動が待ってるはずだよね。
緑と赤の話はまた今度書こうと思います。どうせまた『SW』との対比になっちゃうんだけど(笑)。
> ハリーの瞳の色って言うのは、みんなが言っている、ハリーのもつヴォルデモートの要素ってやつなんですね!
そうだね。ただ、これについては、リリーを主軸に考えないといけないような気がします。
ハリーの瞳の色に限ったことならば、考えてみたい焦点は"いつ緑色になったか"です。生まれたときすでに緑色だったのか、ヴォルディのAKで"力の一部が移った"ときに変色したのか。
でも、みんなが言ってるよね。ハリーの目はリリーの目とそっくりだって。ということは、緑色だったのはリリーの瞳です。ハリーはそれを受け継いだ。
リリーの瞳はどこから来たのか?
> JOって、
マニアっすね(爆)!
> 『アルブス』だったか、『アルベス』だったか。あと、『アンブルボダ』だか『アンブルダボ』だったかって言う人が神様かなんかでいたような気がします。
わぁー、そんなのあるの?すごい!
イングランドの民話ですか。
あー、そーいえばケルト神話なんかの"妖精"は"アールヴァー"だね。それのことかな?
> ハリーがヴォルデモートを殺さなきゃなんないのに、アバダケタブラとか出来ないし。
> どうしろって言うことなんでしょう?
これについては『HBP』で校長が熱く語ってるのが答えじゃないかな。(『PS』で出てきてるけど)
"Power the Dark Load not knows"
それは"just love"だと力説してます。さらに、予言を知ったヴォルディが勝手にワンマンショーを繰り広げて(笑)、ヴォルディにとっての最悪の敵を生みだしたんだと熱弁をふるってます。(23章『Horcruxes』)
つまり、「ヴォルディには愛を超えることができない。だからこれは勝ち戦なんだ」と、そう聞こえない?校長は、勝てると知っている、そんなふうに感じるんだけど、どうかな?
> さりげなく出てくる言葉にも、キチンとした意味があるし!!
それそれ!奥深いというか、マニア心をくすぐるというか・・・Joは伏線作家っすよね(笑)。
> ニンフさんたちの鋭いコメントが読めるのも楽しいです♪
みんなすごいっす。いろいろ教えてくれます。楽しいよね。
>本家からライオンを分けてもらうような
サラザール・スリザリンがグリフィンドールの妹と結婚して、指輪は嫁入り道具だったとか?!
我ながらすごい妄想(笑)
>「ヴォルディには愛を超えることが出来ない、だからこれは勝ち戦なんだ」と
さるおさんのいろんな記事を見せていただくうちに、私も最近そうおもうようになってきました。
前に説明してくださった、
「賢者としてのスリザリンがホグワーツに戻る」
ということ、4つの寮が団結するということとつながっていくんですよね。
> サラザール・スリザリンがグリフィンドールの妹と結婚して、指輪は嫁入り道具だったとか?!
そうそう、そんな感じかも(笑)。
さるおもがんばって妄想してます。
> 4つの寮が団結するということとつながっていくんですよね。
うん。誰が生き残るにしろ、死ぬにしろ(ロンかジニーが死にそうな気が・・・)、ソーティングハットに言われたとおり団結して乗り越える、そういうことなはずだよなぁ。