2007年11月14日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 25

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、絶望の中のたったひとつの吉報にしがみついていたいところですが、えっと、もうすぐ出かけなきゃ。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

25:Shell Cottage

ビルとフラーの新居、シェルコテージ。しっくいの壁に貝殻を埋め込んだその小さな家は、海を望む崖に、外界から切り離されて佇んでいます。美しい孤高の家ですね。
ハリーは何日もの間、言い訳を作ってはひとり崖に座り込んでいます。限りなく広い空、それと同じくらい広い海、波が激しく断崖を叩き、冷たい潮風が頬にあたります。
ヘビ男との杖取り合戦はやらない。その決断が大きな罪悪感となってのしかかってきます。思えば、ハリーさんという人はこれまで、"何かをする"という決断ばかりしてきた。ところが今初めて、"行動しない"という決断をしているんですね。校長のお墓が壊されるのを止めることもできなかったし、なんだか自信がなくなってきます。
手遅れだろうがなんだろうが杖を取りに行こうぜと言った、ほんとにすっかり頼もしいロンは、「ダンブルドアはぼくらに例のシンボルを解読して杖を手に入れてほしかったのかもしんないしさ、無敵の杖を取られた今となっては、どーやってヘビ野郎をやっつけよう?」なんて言い続け、ハリーの不安はどんどん煽られていきます。
ハーは懸命にハリー擁護。だけどそれすら、ハリーの自信喪失を加速させます。
ぼくは、ダンブルドアの生前の意思を、読み違えたのだろうか?
そしてやっぱりときどき、ダンブルドアが何も説明してくれなかったことに対する怒りがこみあげてきます。

「ダンブルドアって、ほんとに死んだのかな?」
そっか、ロンは、銀の雌鹿や剣や、ハリーが鏡のかけらの中に見た目のことを考え続けているんですね。
まるほい地下室に誰がドビーを送ったのかを崖の上でトリオが話し始めたとき、背後からフラーが呼びました。「ハリー、グリップフックが話したいってさー」あーあ、ゴブリンの使い走りなんてやらされて、ちょっと不機嫌そう(笑)。
コテージに戻ると、赤い木綿のカーテンを閉め切ったいちばん小さな寝室でグリップフックは待っていました。
「結論に達した、ハリー・ポッター。元同僚に裏切りだと思われるだろうが・・・おまえたちに手を貸す」
「ひゃっほー!」ハリーさん、久々の"行動"に大喜びっす。
ところが、「ただし、見返りをもらう」うーん、さすがゴブリン。「ゴドリック・グリフィンドールの剣をよこせ」
まさかの逆提案。
それは無理だと言っても、代わりに他のモノをと言っても、レストレンジ家の金庫から選り取り見取りだYO!と言っても、聞いてくれません。
「わたしは泥棒ではない!バカにしおって!」
ハーも負けないように反論します。「でも、あの剣はハリーのだもん!」
しかーし、ゴブリンにはゴブリンの言い分がありました。
「あの剣は、グリフィンドールの前は誰が所有してた?あん?傲慢な魔法使いめ!あの剣は"Ragnuk"1世のものだ。それをゴドリック・グリフィンドールが盗んだのだ!失われた宝、我らゴブリンの最高傑作!だからあの剣はゴブリンの所有物。嫌ならもうたすけてやらーん!」
困りました。困ったので、えっと、ここは、「相談してきます」と言ってとりあえず退室しましょう。

トリオは客間で相談をします。
「剣を渡すなんてできないよ」
「グリフィンドールが剣を盗んだってほんとかな」
「でっち上げだよ、きっと」
「ゴブリンが魔法使いを嫌いなのって、それなりに理由があるのよ」
「ゴブリンはフワフワのウサギちゃんじゃないんだぞ。昔、たくさんの魔法使いが殺された。あいつら、汚い戦い方するんだ」
「とにかく、どっちの種族が悪いのかって議論してもしょーがないじゃん。それよりグリップフックを説得しなきゃ」
トリオは問題(剣を渡すこと)を回避する方法を考えます。窓から外を見ると、ルナがジャムの瓶に入れた"sea lavender"でドビーのお墓を飾ってるのが見える。
「ほんじゃさ、金庫に入るまで剣が必要だから、入ったらあげるね、とか言っといて、贋物を渡しといて、バレるまえに逃げ出すとか」
「それって卑怯よ。たすけてくれって言っといて裏切るなんて。だからゴブリンが魔法使いのこと嫌いなんじゃん。何か他のモノ、剣と同じくらい価値のある何かで納得させなきゃ」
ハリーには分かっています、この取り引きは、グリフィンドールの剣でしか成立しない。他のすべての提案にグリップフックはノーと言うでしょう。でも、ホークラックスを壊すのにグリフィンドールの剣はどーしても必要です。
グリフィンドールのことをずっと誇りに思っていたのにな。マグル生まれを守って、純血一筋のスリザリンに立ち向かった、ドえらい人だと思ってたのにな。ハリーは思い直します、グリフィンドールは剣を盗んでなんかいないさ、グリップフックが言っているのはゴブリン目線の歴史なんだ。
「グリップフックに、金庫に入るのを手伝ってくれた後で剣を渡すって言おう。"いつ"渡すかは言わないようにするんだ。ほんで、剣を渡すのはホークラックスをぜんぶ壊してから。そうしよ。時間かかるかもしんないけど、嘘はつかない」
ハーの視線はやや軽蔑的(笑)。「そーゆーのって気に入らないわ」
ロンは意気揚々と立ち上がります(笑)。「天才的なアイデアだと思うけどなぁ」
FOR THE GREATER GOOD
偉大なる善のために。
Nurmengardの入口に刻まれたあの言葉が頭をよぎります。

トリオはグリップフックのところに戻り、剣を渡す"とき"を特定しないように言葉を選びながら話します。
「ハリー・ポッター、おまえをたすけたらグリフィンドールの剣を渡すと、約束するのだな」
「うん」
「取引成立」
グリップフックはハリーだけを見つめています。信じてくれたみたいかな。そして両手を叩くと「なら早速はじめるぞ!」、あんたはシゴトがはやい(笑)。
トリオとグリップフックは計画を練り始めます。
それはまるで、魔法省に忍び込んだときのような、綿密で周到なプランです。思いつく限り、あらゆる不測の事態に備えます。グリップフックが手書きした見取り図がたよりです。
グリップフックによれば、レストレンジ家の金庫は、もっとも古い金庫のうちの1つで、グリンゴッツの最下層に位置します。純血魔法使いの古い一族が利用するそれらの金庫はいちばん厳しいセキュリティ下にあるんですね。
日に何時間も閉じこもり、やがて何週間にもなりました。時間はゆっくりと過ぎていきます。次から次へと問題点が浮き彫りになり、その都度、解決方法を慎重に検討します。が、いちばんの問題点は、ポリジュース薬のストックが残り少ないことです。
食事にしか姿を見せないトリオ、こりゃもう何か企んでるのはバレバレなわけで、コテージの全員が気付いているわけですが、誰も何も聞きません。外は激しい春の嵐。もう4月です。

ハリーは自分のことを、ゴブリンを好きになれないタイプだな、と思います。たすけてくれるグリップフックですら驚くほど残忍で、"重要でない生物に苦痛を与える”可能性や、レストレンジの金庫にたどり着くまでの間に魔法使いに危害を加えるかもしれないという想像が、楽しくってしょーがないご様子。
それに、グリップフックは元気になってもみんなと食事をするのを嫌がっています。面倒をみるフラーはとうとう怒り爆発。グリップフックはしぶしぶ食卓を囲みます。グリップフックが食べるのは生肉ですね、あと根菜類やキノコ類。
ちなみに、最近のビルも生肉がお好き(涙)。お肉はレアがいちばん。これはさるおも同じですが(爆)。
ぼくがグリップフックをここに泊めてって言ったんだ。それに、ウィーズリー家のみんなはシゴトにも行けず軟禁状態、みんなぼくのせい。「迷惑かけてごめんなさい」ハリーは夕食の準備を手伝いながらフラーに謝ります。
「ハリー、妹を救ってくれたこと、私、忘れてないわ」
コジャレて気が強いフラーですが、優しいですね。ま、これはぶっちゃけ、ガブリエルちゃんはぜんぜん危機に瀕してなかったわけですが、それはそれ。要はハートです。
「オリバンダーさんが今夜ミュリエルおばさんちに発つの。そしたらゴブリンを下に移して、男のコらは(ハリーとロンとディーン)はあの部屋を使ってよ」
あはは、無理無理。グリップフックをソファーで寝かすなんて、機嫌悪くなっちゃう。
「いいんだ、ぼくらソファーでへいちゃら。それよりぼくら(トリオとグリップフック)、もうすぐ出かけるから」
「えー、どこ行くの?だめよ、出かけちゃ。ここにいれば安全だもん」
心配してくれるフラー、なんだかモリー的(笑)。
そこへルナとディーンがやってきます。ルナはディーンにしゃべりまくってるんですね、「・・・ほんで耳が小さくて、色は紫で毛むくじゃらだけど、ちょっとカバさんに似てる、パパが話してくれたんだ。ワルツをハミングすると寄ってくるんだってー。うちにおいでよ、角、見せてあげる。あたしもまだ見てないけど、ホグワーツ特急の中でDEに誘拐されちゃったから」、ディーンはあんまり興味なさそうですが、おかまいなし(笑)。
こーゆーのをハーが聞き逃すはずはありません。「ルナちんてば、言ったじゃん。あれ、爆発したんだよ。エランペットなんだってばー」
「違うわ。あれはスノーカック。パパが言ったもん。今ごろ自己復元してる」こーゆーときはルナのほうもしっかりと自信を持って否定します。
オリバンダーさんがビルに付き添われてよろよろと階段を下りてきました。
「行っちゃうのね、寂しくなるわ、オリバンダーさん」
「私も同じだよ、お嬢さん。まるほい地下室できみがどれほど私を勇気づけてくれたか。言葉では言い表せない。どうもありがとう」
そうっすね、ルナとオリバンダーさんは戦友同士。
フラーもオリバンダーさんの両頬にキスをして、お別れを言い、ひとつお願いごとをします。ミュリエルおばさんに返してほしいと、ベルベットのケースに入ったティアラを見せるんですね。オリバンダーさんは、フラーのホスピタリティに感謝して、役に立てて光栄だとそのティアラをあずかります。もちろん、「ムーンストーンとダイヤモンドのゴブリン・メイド!」と、ギラギラした目で見ているのはグリップフックさん。
「お金を払って買ったモノだよ」ビルが静かに言い、グリップフックが挑発的な眼差しを向けます。
窓の外で強い風がうなるのが聞こえます。ビルとオリバンダーさんは夜の帳へと消えて行きました。
さて、晩ごはんです。オリバンダーさんを送って行く、たったこれだけのことでも、心配のあまり食欲がないフラーねーさん。
ビルは戻ってくると報告です。「オリバンダーさんは無事。パパママとジニーがみんなによろしくってさ。フレッドとジョージはミュリエルおばさんを怒らせてばっかりだ、あの双子、裏の部屋でまーだ通信販売やってんの。そうそう、ミュリエルおばさんね、ティアラ盗まれたぐらいに思ってたっぽい(汗)」
「あはは、あなたのおばちゃま、チャーミングねぇ」思いっきり不機嫌に乾いた笑いのねーさんでした。

夕食の席でルナが話します。「うちのパパね、ティアラ作ったんだ。レイヴンクロウの象徴だった失われた宝、それを創り直すんだって。基本的な構成元素はほとんど特定できたって言ってた。"Billywig"の羽がすごい効くみたい」
そのときです。玄関先でどっかーん!と爆音が。
瞬く間に杖を構えるビル。トリオもビルに倣います。グリップフックは静か〜にテーブルの下へ。
「私だ!リーマス・ジョン・ルーピン!ウェアウルフで、ニンファドーラ・トンクスと結婚して、ほんでビル、きみはここのシークレットキーパーで、緊急事態にだけ来ていいって、ここをおしえてくれた!」
ビルは玄関に駆け寄ってドアを開けます。転がり込んでくるリーマス、灰色の髪は風で乱れ、顔面蒼白です。全員が緊張して見守る中、リーマスは言いました。「男のコだ!ドラのパパさんの名前をとって、テッド君だYO!」
ひゃっほーい!
部屋の中にはあっという間に歓喜と安堵が広がります。
女子ふたりはキャーキャーとはしゃぎ、みんなおめでとうを言います。
リーマスはまっすぐにハリーに近づくと、強く抱きしめました。「ゴッドファーザー(後見人)になってくれるかい?」
「ぼ、ぼくぅ?・・・ぼく・・・えっと・・・すごいや!」
ヒデキ感激、ハリーも感激。(←ヒデキの部分はわからない人は無視してください)
「テディ・リーマス・ルーピンに!」
「未来の偉大なる魔法使いに乾杯!」
「もう帰らなくちゃ」とかなんとか言いながら、ビルが開けたワインをけっこう飲みまくるリーマス(笑)。テディ坊やの髪は少なめだけど、生まれたとき黒髪で、1時間後には赤毛、今ごろはブロンドかなと、で、お義母さんアンドロメダによれば、トンクスも生まれた瞬間からさっそくくるくると髪の色が変わっていたらしいです。
暖炉の火がはじけ、みんなでワイン飲んで、リーマスのニュースはつかの間のオアシスですね。こんなときでも、新しい生命が生まれて希望を運んでくれる。
ただひとり、ぜんぜん嬉しくなさそうなグリップフックは寝室へ(笑)。
リーマスも本格的に酔っぱらってもいられないのでおうちに帰ります。「近いうちに写真を持ってくる!」にこやかに嵐の中へ消えました。
お祝いはまだ続いています。が、ビルがハリーひとりをこっそり呼び止めました。
「話があるんだ、ハリー。きみら、グリップフックと何か企んでんじゃん」質問ではありません。ハリーは黙って聞くことにします。
「ぼくはさ、ゴブリンを知ってる。グリンゴッツで働いてるから。魔法使いとゴブリンの間に成立し得る友情関係の範囲内でね、ぼくにはゴブリンの友だちがいる・・・っちゅーか、よく知ってて仲のいいゴブリンがいる。だけどハリー、グリップフックに何を頼んだ?見返りに何を約束した?」さすが銀行員、ゴブリンのやり方はお見通し。けれどハリーにはそれを打ち明けることができません。
「ハリー、聞いて。これだけは言わなきゃ。もしきみがグリップフックとある取り引きをして、しかもそれが宝と関係あるなら、気をつけろ。所有権とか報酬とか返済とか、そーゆーのの考え方って、ゴブリンとぼくらじゃぜんぜん違うんだよ。彼らは異なった種族。ぼくらの常識は通じない。魔法使いとゴブリンは大昔から仲が悪かった。魔法使いが無実だって言うつもりはない。過ちは両方にあった。とにかく、特にグリンゴッツで働いているゴブリンは、ゴールドと宝に関しては魔法使いを信用しない。ゴブリンと一緒に過ごさないとわからないことなんだよ。ゴブリンにとって、たとえそれがどんな品物であろうと、正当な所有者はそれを作った者なんだ、ぼくらは買ったつもりでも、彼らは貸したと思ってる。ゴブリン製品はすべて、ゴブリンが所有者なんだよ。だから彼らは、ゴブリン製品を魔法使いから魔法使いへ受け継ぐなんてこと、理解してくれない。ティアラだってギラギラ見てたじゃん?グリップフックは強硬派。買った人間が死んだら宝はゴブリンに返却されなきゃおかしいって思ってる。・・・だからさ、気をつけて。約束破ったら、グリンゴッツに強盗に入るよりもっと危険な目に遭う」
ビルったら、どこまで見当つけてるんでしょう?
忠告をありがとうと言いながら、皮肉なことを思います。ぼくは、テディ・ルーピンの向こう見ずなゴッドファーザーになるんだな、シリウス・ブラックがぼくの無鉄砲なゴッドファーザーだったように。

【メモ】

ラグナック1世さん、これは剣を作ったゴブリンさんですね。

シーラベンダー、これはリモニウムっすね、キレイなお花っすよ。

ゴブリンを騙そうと提案するロン、等身大で好きですねー(笑)。正義を貫くハーも好きです。
そして、いつもはトリオの成長ぶりに感動するさるおですが、ここはフラーの描き方もステキ。オトナになるって、こーゆーことかと。
彼女はフランスの名門ボーバトンのチャンピオンだった人です。超危険なトライウィザード・トーナメントに立ち向かった勇敢で頭のいい魔女です。偽マッドアイも言ってました、フラーは"妖精版マッドアイ"だって。フラー・デラクール(宮廷の花)の名を持つ令嬢にしては、お転婆きわまりない、スゴイ人なんだ(笑)。ところが今はご結婚されて、立派な"オトナ"なんですね、だから、彼女なりに自分より年下のコドモらを守ろうという保護者的な気持ちが働いているんだと思います。そんでモリー的になっちゃう。よくわかります。オトナになるって、そーなんだよなぁ。
ま、もちろん、いざとなったら彼女は暴れまくって強いと思うけど(笑)。

心ゆくまでさるお、もんち!
この記事へのコメント
いやぁ、今日も楽しかったです。笑
いつも忙しいみたいですが、頑張って下さいね。また楽しみにしてます。
Posted by 黒 at 2007年11月15日 08:22
赤ちゃんが生まれたんですね!リーマスおめでとう!!明るいニュースなんてひさびさ(^o^)なごみます。しかし、ゴブリンてあなどれないんですね。3人が何するのかワクワクしてたのにビルの発言(思いっきり読まれてる〜)でトーンダウン。少し不安になりました。次の章はグリンゴッツだし、どうなる?
Posted by ピンク at 2007年11月15日 09:01
25章、いよいよ侵入する前まで来た感じっです。そしてテディ君、七変化みたいですね。狼人間じゃなくて良かった。しかし、ビルのセリフは不安を煽ります。次の章が楽しみですが、グリップフックがちゃんと協力してくれるか不安。
楽しみに次の章待ってます。
Posted by at 2007年11月15日 10:24
さるおさんの仰る「成長」「等身大」。確かに10年に亘って書き綴られたこの作品の持つ魅力の一つだと思います。推理小説的な手法もあって、児童向けファンタジー小説としては、大人まで広く惹き付ける力を持っているのではないでしょうか。(このブログにコメントを残されるのは物心ついた立派な大人の方が多いように思います)
ただ「等身大」であるがゆえに、実に多くの登場人物が、巻を重ねるごとにそのイメージを変化させている、それも「成長」による変化もそうですが、むしろ人間の業のような姿を次第に現していくのに気がつきます。
この章のルーピンがそうですし、主人公の亡き父親像は普通正義感の強い偉大な人物と相場が決まっていますが、当初そう思われたジェームズは実際はかなりの悪たれだったようですし、主人公を導く絶対的な師(マーリンやガンダルフやアイハルのように)のはずのダンブルドアも、その過去に暗い影のあることが示唆されています。悪役側とて例外ではなく、マルフォイ家は次第に帝王から心が離れつつあるし、(先回りしないように)他にも大物小物敵味方入り乱れてこれからも人物像のどんでん返しのオン・パレードとなります。
大人の視点からは、その背景を知らされることで、却ってそれぞれの登場人物のありようがよく理解できるし、それゆえに感動もするのですが、子供にとってはどうなのかな、と思ったりもします。でも子供とて、きっと本当の人間の姿をこの作品を通して学んでいくのかも知れません。
その中で、どうしてもわからないのがヴォルデモートの人間性(実はペティグリューの方がもっとわからないのですが)です。いずれまたみなさんと議論させていただくことになると思うので(と勝手に決めている)ここでは深入りしませんが、彼がこれほどまでに絶対的な悪にそまる理由がいまだにわかりません。一時、親子関係のもつれを想定していたのですが、さるおさんに論破されてしまい、最後に心変わりする結末なども考えてみたりはしているのですが、とにかく益々わからなくなっています。両親をうらんでいたことはわかりますが、ホグワーツに入学してからはもう少し違った道がいくらでもあったはずなのに、どこでここまで転落したのか?「それが彼の選択だ」とかで無理やり納得させようとしていますが私は納得できません。グリンデルバルトの方が悪は悪なりに、よほど大義名分があり、自分自身本当にそれを信じていたのは理解できますが、彼にはそれが感じられない。唯一彼について言えることは、ものすごい小心者だということです。こんな彼を名門ぞろいの死喰い人がどうして信奉するようになったのか不思議でなりません。SWの前3作のような、ヴォルデモートがヴォルデモートになる話を書いてくれないかなあ〜
Posted by ルートヴィッヒ at 2007年11月16日 00:12
 時間が少ない中で、皆(ハリーとその仲間たち)本当によくがんばっています!

ガンバッ!!
 
Posted by sinobu m at 2007年11月16日 15:43
黒さん
どうもありがとーう。
さるおのくせになんか忙しくて(奇跡)、読むの遅いですが、ふんばってヘビ男やっつけます。
Posted by さるお at 2007年11月25日 10:24
ピンクさん
リーマスとトンクスのベビーさんだもん、ほんとに未来の偉大な魔法使いっすねー。スゴ腕になるに違いない!
命が失われていく時代に差し込む一筋の希望の光っすね。

> ゴブリンてあなどれないんですね。

気を緩めちゃいかんですね。ちょっとこわい人たちだなぁ。で、ビルはさすが、ゴブリンをよく知ってる。ゴブリンが同僚って疲れそうだけど。
Posted by さるお at 2007年11月25日 10:30
閑さん

> 狼人間じゃなくて良かった。

これね、どーなんだろう?七変化はトンクス譲りで楽しそうだけどなぁ。
そーいえば、トンクスはなんで七変化なんだぁ?
Posted by さるお at 2007年11月25日 10:32
ルートヴィッヒさん
感動したYO!素晴らしいコメント(考察)っす。ルートヴィッヒさんってすごい。

ハリポタは、魔法というスパイスの効いた素晴らしい青春群像劇。"The Boy Who Lived"というスパイスの効いた、ほんとはマグルのぼくらとなんら変わりのない、学園モノっすね。
いわゆる"学園モノ"が、指輪物語やなんかとほぼ同列に語り継がれるであろう長大で緻密で"ちゃんとおもしろい"名作になったっちゅーのは偉業としかいいようがないです。
では指輪物語(など)と似ているかというと、これはぜんぜん違うと思っています。で、今回、それをルートヴィッヒさんがここに書いてくれたなぁと思って、頷きながら感動して読みました。
人の業、まったくおっしゃるとおりだ。ハリーが思い描いている人物像とその実際の人物は、少なくとも一時期は(さるおがまだ読み終わってないからかもしんないや)どんどんかけ離れて行きます。ジェームズも、DDも、しまいにはGGまで。
これから起こる"人物像のどんでん返しのオン・パレード"、楽しみだなぁ。
たしかに、そーゆーのって子供目線ではどーなんだろう?と思う。けど、これこそがハリポタの"成長を見る"という面なんじゃないかな。

ハリポタはファンタジーではない。さるおたちが住むマグル社会となんら変わりなく、すぐ隣でパラレルに存在するとてもよく似た"人が形成する社会"が舞台です。だけど、マグル界と少し違って、ハリポタに登場するあちらのオトナたちは"人が形成する社会"を大まじめに生きている。マグルのオトナのように"冷めて"いません。
小さなことですが、『PS』の本屋の軒先でアーサーとルシウスは火花を散らします。『CS』では校長の退陣をめぐってDDとルシウスが火花を散らします。とっくみあいのケンカをするわけじゃなくて、とても静かなファイトですが、これで、オトナたちが信念を貫いて生きていることがよくわかる。"この場を穏便に乗り切ろう、たとえ自分に少し嘘をついても"という妥協がありません。
いや、もちろんマグル界にだって大まじめに情熱を燃やして生きている人はたくさんいますが、つまり、身近にそーゆーオトナが少ない場合が多いっちゅー意味っす。あちらでは、正義vs不正、あるいは思想同士をオトナが真剣にぶつけ合って、それを主人公たちは目の当たりにしてるんですね。
瞳に炎を宿すマグルのオトナってなかなかいないです。でも、ハリポタのオトナたちは情熱を持って生きている。
もちろん、主人公の周りにそーゆーオトナが集まってる設定なわけで、魔法界にも信念のないオトナはいっぱいいるんでしょーが(笑)。
で、そんなオトナたちを見ながらも、ハリーの心は何度も大きく揺れます。信じていた人物を、今後も信じていいのかどうか、それとも評価を変えなければならないのか、思い悩んだり怒ったりする。信念を貫くオトナ(たとえばオーダー)はみんな目指すところは一緒ですが、その情熱の現れ方は十人十色なわけで、それもハリーを迷わせます。そしてそれらをあるとき越えて、自分自身も己の信念に辿り着く。それを揺るぎない思想に育て上げる。他のオトナにように。それがハリポタの"成長"のひとつの姿だと思います。
ジェームズやDDや、シリウスやレグルスやアーサーやリーマスやモリーのように、たまに間違えそうになりながら成長して、ブレないオトナになる。
でね、そう考えるとハリポタに怒られてるのはオトナの読者だなぁと思ったりしますね。さるおも揺るぎないオトナになりたいっす(涙)。

> きっと本当の人間の姿をこの作品を通して学んでいくのかも知れません。

そうっすね。人は、間違ったり嘘ついたり、みんな罪を背負ってますが、もっとその先にでっかい思想を持って、芯のしっかり通ったオトナになれと、そんな感じかな。

> どこでここまで転落したのか?

孤児院じゃないかな。マグルが魔法使いを躾けるっちゅーのに無理があったわけですが、要は躾がうまくいかなかったんじゃねーか。目が届かなくて。友達をいじめるとか、おもちゃを取り上げるとか、怖い思いさせるとか、そーゆーときの"限度"を知らない子になっちゃった。
いまどきの"過保護"に対する警鐘のような気もします。ケンカして、友達のことぶったりとかしても、極端なこと言えば、これ以上やったら死んじゃうっていうのがわかってるから大きな怪我とかになる手前でやめるわけで、だから昔は、怒られることは怒られるんだけど、まぁケンカしてもよかったわけっす。でも、昔と比べて、最近のコドモには限度がわからないことが多い。だから友達を殺しちゃう。
ヴォルディの場合も、それを叱って裁けるオトナがまわりにいなかった。夢中になったら歯止めの効かないチビの自分より強いオトナが誰もいなかった。これがすべての原因なんじゃないか。コドモのまんまヴォルデモート卿になっちゃったから、大義名分も要らないわけで。

> 唯一彼について言えることは、ものすごい小心者だということです。

そうっすね。

ところで、ペティグリューさんについてはさるおも謎だらけっす。
Posted by さるお at 2007年11月26日 00:32
sinobu mさん

> 時間が少ない中で、皆(ハリーとその仲間たち)本当によくがんばっています!

『DH』は常にヘビ男をモニタリングしながら進むので、ハラハラするよね。
Posted by さるお at 2007年11月26日 22:59
はじめまして。さるおさん
はじめましてと言いますが、実は前からさるおさんの考察やツアーを読ませていただいていました。
僕も7巻を読了したのですが、1巻から振り返るとハリーは本当に大きく成長したと感じます。(僕と現在のハリーさんとは十歳以上歳が離れていますが)
大切な存在を失っても立ち上がり、友人を護るために、自分を犠牲にする覚悟がある。
真の愛という最大の武器を持っている彼は負ける筈が無いと思いましたが…
ひとつ残念だったのは、ハリーは共通する面の多いトムとは全く違った闘い方を選び取る事が出来たのに、一方のトムは自分自身を創りあげていき、結局救われ無かった事です。
トムの最期は、虚しく、悲しく感じました。
新参者が感想のみを書いてしまい、申し訳ありません。
もひとつあります。US版の表紙に違和感を感じました。(ハリーはもう一本杖を持っている筈、等)
長々と書いてしまって申し訳ありません。
僕も誠に勝手ながら、さるおさんを応援させていただきます。これからもさるおさんの考察を楽しみにしています。
Posted by Aurus at 2007年12月13日 19:28
Aurusさん
はじめましてー。いつも来てくださってどうもありがとーう。嬉しいでござるー。

> (僕と現在のハリーさんとは十歳以上歳が離れていますが)

さるおとは20歳離れてます。(号泣、なんとなく)

ハリーはとっても成長したね。彼はスーパーヒーローとして生まれたのではなくて、能力的には"普通の"子だと思うんです。たまたま、この運命を背負った、ごく普通の子。孤独を知るがゆえにリスクよりも友人をとるのであり、自分の居場所を求めて生きたいがゆえに立ち上がる。必死で自分の居場所を探して成長してきたんだなぁ。

> トムは自分自身を創りあげていき、結局救われ無かった事です。
> トムの最期は、虚しく、悲しく感じました。

そっかぁ。
さるおはそのへんをこれから読むので楽しみっす。
だけど、トムに救いがあってはいけないような気がします。今のところ。虚しく死ななければならないんじゃないかなぁ。

> US版の表紙に違和感を感じました。(ハリーはもう一本杖を持っている筈、等)

これも全部読んだらわかるんだな、きっと。読了後にじっくり考えてみます。

また来ておくれよー。
Posted by さるお at 2008年01月09日 00:55
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