2008年01月15日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 33 (1)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、極限の哀しみをくぐり抜け、ついに次のエントリーで愛すべき究極のヒミツを、切なくも孤高の人生のヒミツを、目の当たりにして泣きましょう。ということで、次の記事は長いっすよー。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

33:The Prince's Tale

スネイプさんのかたわらにひざまずいたまま、ただじっとスネイプさんを見つめるハリー。
そこへ、冷たく甲高い声が響き渡ります。おっさんが戻ってきたのかとびっくりしましたが、壁や床や天井から聞こえるような、例の村内放送です。ヴォルディはまたホグワーツに向かってしゃべってるんですね。

おまえらは勇敢やった。ヴォルデモート卿はその勇気を褒めたたよう。おまえら、もうほんとボロボロやけどな、これ以上わしに逆らえば、全員死ぬことになるで。一人ずつ、皆殺しや!
価値ある魔法族の血を流すなんて無意味や。損失と浪費でしかない。
ヴォルデモート卿は慈悲深いんや、DEたちに撤退を命じてやる。
そんでおまえらに1時間の猶予を与えよう。威厳を持って死者を葬れ。傷を負った者を手当てしてやれや。
でな、ハリー・ポッター、ここからはおまえひとりに向かって話すで。おまえはわしと向き合おうとせんのや、おまえのために友を次々と死なせとる。今から1時間、Forbidden Forestで待っとるで。1時間経ったとき、もしもおまえが現れなければ、再び戦闘がなされるやろう。今度は、わしが城に乗り込んだる。おまえをかくまう全員を殺して、女子もガキも、ひとり残らずや。おまえをみつけてやるでー。1時間や。

ロンは「こんなの聞いちゃだめだよ」と言います。ハーは「なんとかなる。城に戻って作戦練ろう」と言います。
だけどハリーの心の中に、痛い言葉がこだまします。おまえは私から逃げ、友を次々死なせた、と。
透明マントをかぶり、スネイプの死を消化できないまま遺体を置いて、トリオは城に戻ります。ポケットに、スネイプさんの記憶のフラスコを持って。

夜中をすぎた城はまだ真っ暗で、不気味な静けさに包まれています。閃光も爆発も悲鳴もありません。校庭にいたはずのグロウプの姿もない。エントランスは血に染まり、エメラルドが散らばり、あちこちが吹き飛んでいます。
「みんなはどこ?」ハーがささやくようにつぶやきます。ロンはそれに答えるようにまっすぐに大広間に向かいます。
大広間の入り口で立ち止まるハリーが見たのは、あまりに凄惨な、あまりに哀しい、直視できない光景でした。
4つの長テーブルなどなく、生き残った人々が互いに肩を抱き合っています。マダム・ポンフリーが負傷者を手当てしてせわしなく歩き回り、何人かがそれを手伝っています。怪我人のなかには、わき腹から血を流し、立っていることもできずに倒れたまま震えるフィレンツェの姿も見えます。
大広間の中央には、横たわる死者の列。ウィーズリー家が取り囲んだ、あの中心には、きっとフレッドが眠っている。
フレッドの頭のそばに跪くジョージ、フレッドの胸で泣き崩れ激しく身体を震わせているモリー、モリーの髪を撫でるアーサーの頬に涙が光っています。
傷だらけの顔で泣きはらしたジニーを、ハーが抱きしめる。ビルとフラーと一緒にいたパーシーが、ロンの肩を抱きます。
そして、見えました、フレッドの隣に横たわるふたつの亡き骸が。それは、眠るように穏やかな、リーマスとトンクス。

ハリーは思わず後ずさります。苦しくて呼吸ができない。もう見ていることができない。これ以上、いったい誰が、ぼくのために死んだというのか。
もうウィーズリー家の仲間に入れてもらうわけにはいきません。彼らにあわせる顔がない。ぼくが最初からあきらめていれば、フレッドは死なずに済んだかもしれないのに。
ハリーは大理石の階段を駆けあがります。リーマスだって、トンクスだって、死なずに済んだかもしれないんだ。ぼくのせいだ。ぼくのせいだ。ハリーの内側で、取り返しのつかない、大きすぎる罪悪感が悲鳴をあげている。
人影のない校舎を、走って、走って、走り続けて、スネイプが遺した記憶のフラスコを握りしめたまま、気がつけば校長室の前です。
「パスワードは?」石のガーゴイルが問い掛ける。
ハリーは考えるより先に叫びました。
「ダンブルドア!」
パスワードなんかじゃない。混乱と絶望とショックに押し潰され、たすけを求める心の叫びです。それが今こそ必要だから、今こそどーしても会わなければならないから。
ガーゴイルの彫像は道を空け、らせん階段が現れました。

校長室の壁の歴代校長の肖像画はどれも留守です。校長の椅子の真後ろ、つまりド真ん中の額縁に、何が何でも会いたいダンブルドアはいません。
そしてペンシーブは、昔と同じ、キャビネットの中にありました。
現実に耐えられないハリーは、誰かの頭の中にいるほうがマシだと、たとえそれがスネイプでもこの惨状よりマシだと、スネイプの記憶をペンシーブに注ぎ込み自らもその中へ飛び込んでいきました。

【メモ】

血に染まり、エメラルドの雨が降ったホグワーツ。ここにもまた赤と緑の対比です。

これ以上、いったい誰が、ぼくのために死んだというのか。
"ぼくのせいだ"と罪の意識にさいなまれるハリーさん、かわいそうっすねぇ。違うのにな、ヘビのおじさんのせいなのにな。

校長室のパスワード、号泣っす、号泣!
セヴルスは、いつかハリーが本当に追いつめられたとき、今度こそ本当に押し潰されそうになったとき、たすけを求める相手を知っていた。命をかけて自分がハリーを守り続け、そしてその子は、自分ではなく、ダンブルドアに救いを求めると、きっと知っていたんだ。

心ゆくまでさるお、もんち!
この記事へのコメント
さるおさん、お陰様でまた新たな発見をさせてもらいました!

校長室のパスワード。そんなうまくパスワードが合うわけないよ、と思い、きっと魔法のパスワードは我々のイメージする単純な言葉だけではなく、その人の気持ちまで汲み取って合否を決定するのかも...と勝手に解釈していました。

でも確かにパスワードは校長が決めるのでしょうから、スネイプがこの状況まで汲み取って設定していたというのは、新鮮な驚きと共に説得力のある説明です!

だとしたら、益々スネイプという人はすごい!
Posted by ルートヴィッヒ at 2008年01月16日 00:35
さるおさん、こんにちは。32章は読んだもののコメント出来なかったので、この章はコメントしたいと思います。
フレッドはおろかルーピンとトンクスが悲しい(泣)ハリーの所為で死んだのではないのに、自分を責めるハリーがまた悲しい(泣)
そして校長室のパスワード。これは、スネイプが決めていた筈ですから、ハリーが間違いなく叫ぶであろう名前(ダンブルドア)にしておいたんですね。スネイプの凄さに驚きます。スネイプって凄いじゃん!
ダンブルドアは死後尚も名前は登場。ほとんどの章で名前を聞いている気がしてなりません。
そして校長室の肖像画は空っぽ。椅子の後ろのド真ん中も空っぽ!どこ行ってんだ、DD!
まあ、皆で避難中ですか・・。
この後はスネイプの記憶ですね。クライマックスという感じがしてきました。
Posted by at 2008年01月16日 10:44
ルーピン先生とトンクスの死についての記述って少ないんですが、
そこがいっそう痛々しい。
いろいろと考えてしまいます。
だれと戦ってとか、何の呪文でとか、、、ふたり一緒にだったかとか
Posted by PlusG at 2008年01月16日 11:56
スネイプ、カッコよすぎだよ!ホント。まさかこんなにもスネイプのことを好きになれるなんて想像もできなかった・・。

それとルーピンとトンクス・・。
そりゃジェームズ四人組の三人がもう死んじゃったんだし、ルーピンもいずれは死ぬだろうと思ってたけど、こんなにあっさり逝かれると痛々しい・・・。
Posted by 暖気団 at 2008年01月16日 14:12
ここでは、私もハリーになってしまいました。悔しくって、申し訳なくって、逃げ出したくって、怒って、泣きたくってもうすべての感情がすべての穴からあふれでている様態です!大人のスネイプさんからいいメッセージが聞けるといいですね。ハリーが落ち着くような。
Posted by rinsou at 2008年01月16日 21:09
さるおさん、みなさんおはようございます。
ハリーのせいで仲間が傷つき、逝った訳ではなく、みんなが自分の意思で戦ったんですよね、それぞれに守りたいものの為に。でも現場を目の当たりにしたら物凄く怖いでしょう。修羅場をくぐりぬけてきてもやっぱりまだ17歳なんですもんね。

ルーピンとトンクス二人とも死んでしまうなんて(泣)ルーピンにはハリー同様戦いが終わったら平和に幸せに生きてほしかったです。
Posted by みかりん at 2008年01月17日 10:03
ルートヴィッヒさん
スネイプさんは、最後の最後にハリーをペンシーヴに導かなくてはならなかった。それがわかっていたんだと思います。
でもそのパスワードが、ハリーの心の叫びが、DDだっちゅーのがもう、なんちゅーか、号泣っす。
Posted by さるお at 2008年01月18日 00:53
閑さん
ルーピン夫妻、かわいそうだ。いや、ふたりは穏やかな表情でいいけど、テッドがかわいそう。いや、テッドもいつか両親の勇敢さを知るだろうから、いいんだけど、でも、でも、涙出ます。

> ハリーが間違いなく叫ぶであろう名前(ダンブルドア)にしておいたんですね。

自分に懐いていない子を守ってきたんだなぁ・・・
Posted by さるお at 2008年01月18日 00:57
PlusGさん

> ルーピン先生とトンクスの死についての記述って少ないんですが、そこがいっそう痛々しい。

同感です。さっき生きてる姿を見たのに、元気でいたのに、次に会うときはもう亡き骸って、あまりに痛々しい。
リーマスが家族を置いて戦うなんて妙な覚悟をしだして、リーマスがハリーにゴッドファーザーになってって言って、ハリーが自分もシリウスみたいに無鉄砲なゴッドファーザーになるんだなって思って、今思えば伏線だらけでした。

> だれと戦ってとか、何の呪文でとか、、、ふたり一緒にだったかとか

これはどーしても知りたいっす。あとで出てくるのかな?
『GoF』でDDが、セドの死を友人として知る権利があるし知らなければならないと、そう言ったもん。読者はふたりがいかに死んだかを知らなければだよね!
Posted by さるお at 2008年01月18日 01:05
暖気団さん

> まさかこんなにもスネイプのことを好きになれるなんて想像もできなかった・・。

さるおも、スネイプさんが好き。痛々しければ痛々しいほど、愛さずにいられないっす。

> そりゃジェームズ四人組の三人がもう死んじゃったんだし、ルーピンもいずれは死ぬだろうと思ってたけど、

親の世代や、その前(DD)の歴史は終わり、新しい時代をハリーたちが築いて行く。そーゆーことなんだなぁ。その意味で四人組は死ななければならなかった、そう思います。
でもリーマスの死はなんだかいちばん切ない。特定の理由や特別な成りゆきじゃなく、戦争を生き、戦争のために家族が引き裂かれ、正義のために戦って死んだ、純粋な"戦士"だったからいちばん素直に泣いてしまったですよ。
Posted by さるお at 2008年01月18日 14:00
rinsouさん

> 悔しくって、申し訳なくって、逃げ出したくって、怒って、泣きたくって

わかるー!これこそがヴォルディの罠だとわかっていてもなお、自分のミスのような気がして、悔しい気持ちになるですよー。

> ハリーが落ち着くような。

そうだな。冷静になれるような特効薬があればいいのに。
クスリといえば、スネイプじゃなければホラスが、たっくさんのFelix Felicisを作っておいてくれたらよかったなぁ。
Posted by さるお at 2008年01月18日 14:12
みかりんさん

> ハリーのせいで仲間が傷つき、逝った訳ではなく、みんなが自分の意思で戦ったんですよね、それぞれに守りたいものの為に。

おっしゃるとーりっす。みんなが、易きことではなく正しきことを選択した結果がこのバトルです。守りたい何かのため、命を投げ出して立ち上がった。
ハリー、おまえのせいじゃないんだぞ。

> 修羅場をくぐりぬけてきてもやっぱりまだ17歳なんですもんね。

ハリーが通り抜けてきた修羅場はハンパじゃないっすけど、いつもいつも成りゆきだったわけだし、なんつっても思春期のコドモだもんなぁ。きつい状況っすね。

> 平和に幸せに生きてほしかったです。

痛みを背負ってきた人ほど、幸せになってほしかったです。リーマスはその筆頭だったのにぃ。
Posted by さるお at 2008年01月18日 14:19
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