てれびでやってんな、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線というのを。
そもそも、そりゃなんだと。原子核からなんでそんないろんなもんが出るんだよ、というのがわからねぇ。
というわけで、イメージで、なんとなく思い浮かべてくださいな。
えー、まずね、どんな物質も"つぶつぶ"でできています。"つぶつぶ"にはいくつもの種類があって、陽子という粒と中性子という粒が、おにぎりみたいに集まったやつ、これが原子核です。物質の種類によって"つぶつぶ"の個数が違うんですが、陽子のほうの個数が変わると別の物質になる。つまり名前も性質も違うモノになります。なので中性子を無視することにして陽子の数だけを数え、並べて書いてみたのが周期表っすね。陽子の数は、酸素だったら8コ、水素は1コ、ヨウ素だと53コでセシウムは55コ、ウランだと92コとかになるわけです。陽子の数が同じで中性子の数が違う場合、同じ名前で性質も似ているけれど原子核のボリュームが違うということになって、こーゆーのを同位体(アイソトープ)と呼ぶんですね。
ちなみに陽子というのは+の電気を持っていて、反対に−の電気を持っているのは電子といって原子核の外側にある粒のこと。ほんでどんな物質も電子を持っていて、酸素だったら8コ、水素は1コ、ヨウ素だと53コで・・・あ、そうか、陽子と電子は数が同じで、プラスマイナス0になるようになってるんすね。
この原子核というのは、"いびつ"でいるのが不安定で嫌なんだ。いい感じに丸くなりてぇ。だから、出っ張って要らないところを切り離して放り出してしまう。たとえば大きくパカッと2つに割れて元のおにぎりより小さいおにぎり2つに変わったりするわけです。こうして"つぶつぶ"を減らしていくことを核分裂と言って、核分裂するときには中性子線というのも出します。そして核分裂でできた"小さいおにぎり"を核分裂生成物と呼んで、こちらも、もう少し安定になりたいなということでアルファ粒子やベータ粒子を放り出す。それでもまだ余分にエネルギーがありすぎるので嫌だなということになるとガンマ線を出す。これを(核分裂生成物の)原子核の崩壊と言います。
つまり、核分裂生成物を含む"いびつな原子核"というのが放射性物質です。アルファ粒子、ベータ粒子、ガンマ線、中性子線が放射線。放射線というのは、ぶつかった相手の科学的性質を変えてしまうほど強烈なエネルギーを持った電磁波で、粒子の場合でもひっくるめて放射線と呼びます。
アルファ(α)線は数cmしか飛ばない、紙で防げる、でも内部被爆はこわい。その通りです。補足すると、アルファ粒子というのは陽子2コと中性子2コがひとかたまりになったもの(ヘリウム4)で、これが原子核から飛び出すことをアルファ崩壊と言います。
ベータ(β)線は数m飛びます。でも、うすいアルミの板とか、プラスチックでも1cmあれば防げる。内部被爆だととてもこわいです。ベータ崩壊というのはじつは総称で、陽電子と電子ニュートリノを放出するとか、ベータ粒子と反電子ニュートリノを放出するとか、電子を取り込んで電子ニュートリノを出すという電子捕獲とか、いろいろあるんすが、まぁいいや、ここではほうっておきます。ベータ崩壊はアルファ崩壊と違って、質量の変わらない原子核崩壊の総称です。
ガンマ(γ)線は、じつは少し様子が違うんすね。防ぐには10cmくらいの分厚い鉛の板が必要。で、これは"ガンマ粒子"ではないのです。エネルギーなのですね。"光"と言いかえてもいいけれど、目には見えない波長です。長い距離をよく飛んで、DNAを傷つける、ものすごいこわいっすね。原子核からエネルギーが出ることをガンマ崩壊と言います。
あとは中性子線。これは何でも突き抜けて止まらない。よほど大量の水(あるいはコンクリート)がないと止まらない。ということは、木造の我が家に退避なんてことをしても意味ねぇな。もちろん、人体なんて突き抜けちゃう。
放射線を浴びるというのは、その場では痛みもないし血も出ないくらいものすごい小さい、たとえば中性子という名前の弾丸で、蜂の巣にされるようなもんです。いくら小さくたって蜂の巣なんだから、少したって気がつくころにはもう身体は火傷だらけ穴だらけ、大変なことになっているわけです。ひゃー、こわすぎ。
さて、放射線の強さは、距離の二乗に反比例する、とか言ってます。
放射性物質の近くへ行けば行くほど、思ってる以上にこわい。逆に、離れるとぐーんと安全になる。放射性物質から10mのところで放射線の強さが100μSvだとすれば、2倍の距離(20m)なら1/4になり(25μSv)、4倍の距離(40m)なら1/16になり(6.25μSv)、8倍の距離(80m)まで離れれば1/64になる(1.56μSv)というわけです。
そして計算上、「放射線の強さは距離の二乗に反比例する」っちゅーことは、距離がゼロのところ、つまり放射線の発生源のことですが、そこでの放射線の強さは無限大になる。おもしろいっすねー。
こうなると、放射線(いちばん勢いのある中性子線)はどんくらい飛ぶか、ということが知りたくなります。そんで、原発に近寄らなければいいだろう。そんな気がします。中性子線の飛距離は数十kmで、しかも強さは距離の二乗に反比例、となると原発から1kmも離れたらもう思いっきり安全じゃん。
原発と言えばウランですが、ウランにもいくつか種類があるんだよね。陽子の数は同じだからとにかくウランなんだけれども、中性子の数がちょっとずつ違っていて、安定だったり不安定だったりするわけです。
たとえばウラン238というものは安定しているんだけど、そこに中性子が飛んできてぶつかるとそれを取り込んで粒が1つ増え、ウラン239に変わる。するととたんに不安定になってしまい、ベータ崩壊でネプツニウム239という別の物質になり、もう1回ベータ崩壊してプルトニウム239になる。プルトニウム239はこの後も核分裂するし、また中性子を取り込んで240になるとこれまた核分裂する。あるいは24000年の半減期でアルファ崩壊する。うーん、終わりがない感じ。
このプルトニウムをリサイクルしたのが例のMOX燃料、福島第1の3号機で使ってるやつです。
ウランには235というのもあって、これは連鎖的に核分裂する性質です。前述の238のように原子核に中性子を吸収するんだけれども、よほど不安定なのでパカッと2つに割れちゃう、でこの時に2コとか3コとかの中性子を出す。するとその中性子がべつの原子核にぶつかって、そしたらまた割れて、中性子が出て、ウラン235がなくなるまでずーっと続いちゃう。ウラン235の半減期はなんと7億年。ほんと、ずーっと続いちゃう。
これはほんの1例で、核分裂のパターンというのはものすごーいたくさんあるんすよね。
ウランとかプルトニウムというのは、重たいから飛びません。つまりずっとあそこにあり続ける。
だから、中性子線に関して、放射線の強さは距離の二乗に反比例する、という話は通用します。
ところが実際問題は、飛散する放射性物質(放射性ヨウ素131とか放射性セシウム137とか)のことを考えないといけない。小さい粒ではあるけれども、"放射線の発生源"そのものが風に乗ってやってくるわけだから。
放射性ヨウ素131も核分裂でできる物質です。8日で半分になるペースでベータ崩壊し、キセノンという放射性物質になり、これはこれで12日で半分というペースで崩壊します。
放射性セシウム137も核分裂の生成物で、チェルノブイリから拡散した放射性物質の大半はこれだと言われています。30年で半分になるペースで、ベータ崩壊とガンマ崩壊により放射能を出さないバリウムという物質になります。人間ドックで飲むヤツの、いちおう仲間っすね、いちおう。
放射性ヨウ素も放射性セシウムも、ウランやプルトニウムの核分裂でできるわけですな。
で、これを吸ったり飲んだり食べたり体内に入れてしまうというわけです。
ここまで理解すると、自衛隊のヘリが床に鉛の板を敷いていたことの意味がわかったりするし、原子炉の近くで放水作業じゃファイヤーファイターといえどもおよび腰になっちゃうよなとか、水溜まりで作業して被爆したというのがどーゆーことかもわかる。
見えない放射線が、とても怖いということがわかる。
やっぱりね、理解しないといけないと思うんです。理科の勉強をしようという意味ではありません。計算とか理論ではなくて、イメージでいいから、何が起きているか思い浮かべることができるようになりたいと思うのです。
東電は人命に無頓着な会社。知らないがために、東電に被爆させられたり殺されたり、そんなことをこれ以上繰り返すのは我慢ならないのです。
広島に落とされたリトルボーイは、前述のウラン235を使ったもの。ウラン235の2つの塊をぶつけて核分裂させる爆弾です。TNT火薬に換算して15000トン。長崎のファットマンは、前述のプルトニウム239です。中性子点火器という部品があって、最初の1粒をぶつけさえすれば、ぼかーんとなるわけです。こちらはTNT換算で22000トン。
痛い思いをしたのに、核が大好きな不思議な国です、にっぽんは。フランス同様、資源を持たない国が決意したエネルギー供給の独立性なのかもしれず、実際、地球のこの環境の延命に一役買うのは原子力かもしれない。ただ、この国には不向きなんだろうな。それぞれに動きたい4つの地殻がパッチワークされた島国が、無理した結果なんだろう。地震や津波や火山と戦うなんてばかげてるもん。
心ゆくまでさるお、もんち!