2011年09月21日

さるお訳HP7もさすがにもうネタばれ解禁なので

さるおです。
『ハリポタ and the Deathly Hallows』の63記事すべてをですね、携帯電話や携帯端末で読めるように、反転文字をやめましたよ。
反転文字をやめる作業をしながら、また号泣しているという、ありえないわたくしのこの非効率性。卿が少し訛っていますが、みなさんも是非、号泣アゲイン。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年09月10日

マーリンの猿股でお困りのポッタリアンのよい子のみなさま

さるおです。
少し文章を直しました。書いてていろいろ気づいたので。すみません。

長く苦しい逃亡生活のはじまりです。DEに追われ、仲間を殺され、あるいは耳を切り落とされ、それでも逃げてきた。ヴォルディに殺されかけて、逃げ惑い、追い詰められて、それでも生き延びた。魔法省も陥落、ウェディング会場は襲撃にあい、オーダーは家を焼かれ家族が拷問されました。マグル生まれはムショ送り、DDの過去は謎ばかり、追い込まれたハリーは大切な味方のリーマスとケンカしてしまいました。
ホグワーツは新しい年度がはじまります。トリオはブラック邸にこもり、とうとうクリーチャーとレグルスの勇気と涙の物語の真相を知ります。
そんなとき飛び込んできたニュース。それはセヴルス・スネイプの校長就任。
ハーはこう言うと何かを思い出したかのように大慌てでキッチンから飛び出して行きました。
「人殺しで人の耳を切断してまわるようなヤツよ!わるもんなのに!あのスネイプが校長だなんて!ダンブルドアの校長室にいるなんて!マーリンの猿股!」

ポッタリアンのよい子のキミ、せつないですねー。涙が出てきたでしょう。
これじゃハーはキチガイだ。先の冒険が思いやられます、ま、勝てねぇな、ヴォルディには。

さるおは日本語版を買っていません。ということは、さるお自身はまだ読んでません。
だからもし何かさるおに勘違いがあるようなら、それはご指摘いただきたい、素直に受け止めますから。
ただ、こちらでおしえていただいた、大感動のデスリーハロウズ日本語版にあるというこの世にも恐ろしい、ジョークだとしたら破壊力ありすぎの、ミラクル邦訳「マーリンの猿股!」は、あまりにもせつない。
"Merlin's pants!"はあっても、断じて、ハリポタには意味不明のマーリンの猿股など存在しません。
本当に心の底から悔しくなって泣けてきたので、なんかこう、ね、書いておこうと思うわけですよ。

How in the name of Merlin did she find a マーリンの猿股?
(マーリンの名において、どーやって彼女は"マーリンの猿股"を見つけたのさ)
How in the name of God did she find a マーリンの猿股?
(神の名において、どーやって彼女は"マーリンの猿股"を見つけたのさ)

この2つの英文は同じ意味です。
もっと自然な日本語にすると、「いったいぜんたい、どーやって彼女は"マーリンの猿股"なんて訳したのさ」となる。
God(神)という単語は、絶対的な、とても明白なことを意味します。白黒はっきりしている状態の、神様というのは白なんですね。だから本当はこの場合のもっと適した言い回しは"the hell"なんだけど(笑)、これについては後で書きます。
"in the name of Merlin""in the name of God"は同じだということです。

マーリン・アンブロジウス(Merlin Ambrosius)さんというのは神様の名前ではありません。ブリテン島にいたと言われる中世の伝説の魔術師さん。いろんな物語に出てきます。アーサー王伝説とかね。
つまり、魔法界で"神様みたいに扱われている"歴史上・伝説上のセレブです。マーリン勲章があるくらいだし。
マグルのみなさんご存知の"Oh my god!"(これも訳せば"神よ!"ですが、実際は神様はどーでもいいわけで、"あぁ!"とか、そんなもんすよね)、あるいは"Good Lord!"(これも"おぉ!"ぐらいのもんす)のような"びっくり"を表す慣用表現は、魔法界(ミュリエルおばさんの例もあるので、少なくともウィーズリー家では)だと"Merlin's beard!"(マーリンのヒゲ)になるわけです。"マーリン"の名を使うのは、God(神)を使うマグルの言い回しの変形、魔法界バージョン(ハリポタ流)なわけですわ。
(基本的な意味でマーリンを知らない)マグル生まれ(ハー)やマグル育ち(ハリー)と異なり、ロンちんはもともとこの言い回しを多用しています。しかも、下ネタとして使っている(笑)。"How in the name of Merlin's pants have you managed to get your hands on those Horcrux books?"とか、"And what in the name of Merlin's most baggy Y-front was that about?"とか、"So why in tne name of Merlin's saggy left-"とか。"Merlin's beard!"は"ウィザード育ち"の魔法使いの言葉遣い、さらに"Merlin's pants"はロン特有の遊んだ言葉遣いだということっすね。お気に入りの表現、口癖、あるいはちょっとした"マイブーム"だと思えばいいだろうと思います。

さて、さきほどの"the hell"、こちらは白黒はっきりしている状態の黒。絶対にありえない、あるはずない、あっちゃいけない、そーゆーね、良くない意味合いです。
What the hell are you doing? は「何やってんの?」という疑問ではなく、「何やらかしてんの!」と咎めている感じです。What are you doing?(何やってんの?)を強調して、「何やらかしてんの、バカね、あんたは」というニュアンスを盛り込む。

"for heaven's sake"、あるいは"for God's sake"というのもあります。
直訳すれば「天国(神様)の目的のために」ですが、正しくは「どうかお願いだから」です。God(神)やheaven(天国)のためだと思って何かをやってくれと、人に頼んでいるわけで、ここには"どうしても"という気持ち、"絶対的"にこれしかないというニュアンスが含まれている。
これもロンちんが使えば"for Merlin's sake"になるわけっすよね。

ここで気づくのは、"in the name of God"にも"the hell"にも"for heaven's sake"にも、そして"in the name of Merlin"や"Merlin's Pants"にも、本当は意味なんてない、ということっす。神様がどーしたの、地獄がどうだの、天国の目的がどーとか、マーリンが誰だとか、パンツはいてんのかとか、そーゆー意味はないんです。

というようなことは、"英語がわかる"人なら理解しているはずなわけですよ、神の御名において(訳:どー考えたって)。

ちなみにパンツというのは、米語ならズボン、英語ならズボン下です。
猿股というのは、19世紀頃の欧米の下着を大正時代に日本に持ってきたもので、腰から股のあたりを覆う西洋ふんどし。膝丈くらいの長さになるとステテコになって、これは下着とズボンの間にはいたりもする(ズボン下)。
って、そんなことはどーでもいいんだよ、だって、意味なんて無いんだから。

さらに、ハーちんは猿股直後、慌ててキッチンを飛び出して行きます。それは"あること"に気づいたから。ある、とても重要な、トリオの命に関わる"すぐにやらなければならないこと"に気づいたからです。怒っている場合ではない。急がなくちゃ。そう、フィニアスの肖像画です。
つまり、ハーちんはとても驚いて怒っていたところ、急にあることに思い当たって"ハッとした"。そのときの言葉なわけです、猿股は。気づいたショックで出た"慣れない"言葉だから、本来なら"Merlin's beard!"でいいはずのところ、いつもロンがヘンなことばっか言うのを聞いてるもんだから"Merlin's pants!"になっちゃった。ヒゲをパンツに変えてある、なんだか"Merlin's beard!"のもっとすごいやつ、そんな感じっすね。
ハーによるロンのモノマネであり、いつもちゃんとした言葉遣いの子が「すげぇ!」とか、なんか食って"おいしい"じゃなくて「うまーい!」とか、そーゆーのとも似ています。そもそも翻訳する際にこの"ロンならではの言い回し"に気づいていれば今回それを引用すればいいわけです。が、今さらどーにもならんので、この場合のハーのセリフは「Merlin's pants!(やっべぇ!)」みたいな感じじゃないかな。
Merlin's pants!
やっべぇ!まじやべぇ!
絶対的な、とても明白な命に関わる危機に気づいて慌てた瞬間。
猿股じゃねーんだよ。

同じことが海外で起きたと思えばよりわかりやすいっす、マーリンの猿股のばかばかしさが。
ある日本文学をね、これは素晴らしいから英語に翻訳しようということになる。で、プロフェッショナルな翻訳家さんがまずは日本語の原書を読んでみたら、物語の途中で主人公が「そんなことは逆立ちしたってできないよ」なんて言うわけです。で、I can't do such thing no matter what I do.(どうやったってぼくには無理だよ)としなければならないところ、なぜかこう直訳してしまうわけですよ、I can't do such thing no matter I stand on my head.と。(これはI can't do such thing even if I stood on my head.だったら話は別なんですが、複雑な話なので今は置いておくことにします)
すると読んでるほうはわからなくなるわけです、逆立ちしなければできるかもしれないのに、なんだろうこの人。
もっとひどいと"ことわざ"なんかが出てきて、このプロフェッショナルな翻訳家さんはそれがわからない。わからないときは普通どーするかといえば、調べるとか、誰かに聞くとか、とにかく勉強するわけですよ。お勉強するというのはプロとしてとても大事な、とても基本的な姿勢です。でもなぜかこのプロフェッショナルな翻訳家さんはお勉強をしないんですね。で、その"石の上にも三年"を、まさかの"three years on a stone"と訳してしまう。その翻訳本は、なぜか誰も阻止できずそのまま出版されてしまいます。そして読者を大いに惑わせる、その石はどこから出てきたんだ、話はいつのまにか3年後になってるのか、と。
あるいは"saying a prayer in a horse's ear"とか書いてあって、なんだ、突然馬が出てきたぞ、馬の耳に祈りを捧げるのか、なんでだよ、とか。

ということで、こう思うわけですね。
How the hell did she find a マーリンの猿股?(どこをどー間違えば"マーリンの猿股"なんて訳せるわけよ、ハリポタワールドのどこからそーゆー発想が出てくるわけよ、まったく、おまえねぇ)
あまりに唐突で、あまりにキョーレツで、あまりにレベルの低い、冗談だとしたらよそでやっていただきたいまさかの翻訳能力。魔法のような思いつきで、ハリポタが台無しになりましたね。もう何度もなってるようですが。
今更ですが、『Harry Potter and the Puzzling Prince』の本当の意味がわかってきたような気が致します。

ということで、最低限、意味だけは伝わる、問題の個所のもうちょっとちゃんとした日本語訳はこうだと思います。
「人殺しで人の耳を切断してまわるようなヤツよ!わるもんなのに!あのスネイプが校長だなんて!ダンブルドアの校長室にいるなんて・・・やっべぇ!」
ハーらしくない最後の言葉にびっくり飛び上がったのはハリーとロンです。ハーは「すぐ戻ってくるから!」と叫びながらすごい勢いで出ていっちゃいましたよ。
「なんだぁ?ハーちん、パニクッってんのかな」とロン。


誰か止めてやれよ。なぁ。(ふるえながら)
あんたの翻訳センスも、Merlin's pants!(かなりやばいかも)

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年08月07日

Harry Potter and the みんなの Nineteen Years

さるおです。
いただいたコメントへのお返事というかたちになりましたが、生き残ったハリポタの登場人物たちのその後の人生について、"さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Nineteen Years Later"のコメント欄に書きました。ま、wikiっただけなんですが。
2008年08月07日 17:59のコメントです。

さるおとしてはね、ハーちんとルナちんとハンナ・アボットさんの19年間に、それぞれ感動しましたよ。
ちゃんと卒業して、ハーはやっぱりとても責任感のあるよい子です。もしも自分が死なずにすんだら必ずやろうと思ったことに、ちゃんと挑戦して実践してます。パパママを取り戻す。ハウスエルフを救う。差別をなくす。彼女は「社会の役に立つことをしたい」と言って、有言実行。本当に素晴らしい人です。
ルナちんはなんつっても世界中を旅しているところが素晴らしい!ルナは大人になっても、ルナのままでいる強さと賢さと想像力を持ち続けます。彼女がいちばんDDと似てるなぁ。
そしてハンナ。リーキーの女将ってもー、最高の就職先っすよね!

ジョージとアンジェリーナのカップルも素敵だし、フィレンツェ元気かなーとか。

なお、さるおは今年の12月4日以降、『The Tales of Beedle the Bard』ツアー(さるお訳)に出かける予定ですYO!
ハリー・ポッター大辞典も決して終わっていません。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年03月04日

『DH』では明かされなかったけど後々明かされたこと&まるで明かされてないこと(涙)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、『DH』には謎の答えがほんとに書いてあったのかなぁ、と考えてみます。数々のJoのコメントを元に(だいたいこちらに沿って)、『DH』を検証してみたいです。
ネタばれエントリーなのでご注意ください。ネタばれコメントも大歓迎なので、そっちも気をつけてね。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

えっと、まず、確かなことは、Joが明かすと言っていた謎の大半は明かされてねーな、ということですね(泣)。

本を読めばわかることはとりあえず置いておくことにして、本には書いてなかったけどJoはこう言ってる、というのがこれらです。本に書いてないっちゅーのはなんだか反則な感じがしますが、まぁええわ。

ジェームズとリリーのとても重要な職業がわかる
これについては、さるおはあれこれ考えてましたが、ジェームズが透明マントを守ってコドモに受け継がなきゃいけないというところでちょっとだけ当たってた感じがするだけで、"常勤"のオーダーメンバー(戦士)というのはちょっと拍子抜けです(笑)。オーダーに所属してたのは周知だしな。
ディメンターに襲われたとき(『OotP』)ダドリーが何を見たかがわかる
ダッダちゃんが見たのは"ダッダちゃん自身"だと言ってます。
I think that when Dudley was attacked by the Dementors he saw himself, for the first time, as he really was.

次はまるで明かされてないことです。

●ハリーのじーちゃんばーちゃんについて語られる
●ジェームズとリリーがGodric's Hollowで殺された夜、ヴォルディの横には誰かがいたかどうかがわかる
●シリウスがなぜ死ななければならなかったかがわかる
●シリウスとスネイプの間の秘密がわかる
●スネイプの恐れるもの(ボガートが化けるもの)と最も幸せな経験(パトロナスに必要)がわかる
●スネイプは愛されたことがある
●『OotP』魔法省内でダンブルドアがヴォルディに使った呪文が何かわかる
●ドラゴンの血の12の使い方がわかる(うち1つはオーブンクリーナー)
●死んでゴーストになる人とならない人の違いがわかる(I can say that the happiest people do not become ghosts.)
●ウィーズリー家の人々は、ある裏切りから家の秘密を知る

こんなにあるぞ。(間違ってたらどなたかご指摘ください)
もうね、かすみますよ。これ↓が。
"There is plenty to guess at... at least one thing I think people will probably deduce, there is a mystery left at the end, but I think they might already know the answer if they think about it."
(シリーズが終わったとき、謎がひとつだけ、そのまま残されている。もう気づいている人もいるかもしれないけど。)

でもまぁ、どれもこれも考え甲斐はありそうっす。おもしろそうなのでこれから記事にしていきます。
ところで、次のは実現しなくて残念でした。

●ハリーはもう1度タイムトラベルするかもしれない
●珍しいことに、誰かが魔法を使えるようになる
●ホグワーツ創設者4人についてさらに語られる
●ダンブルドアの左膝の傷跡(London Underground)を見る

特に4つ目。見たかったっすねー。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年02月20日

読書感想文『Harry Potter and the Deathly Hallows』

さるおです。
さるおと一緒に歩いてくださったよい子のみなさん、本当にどうもありがとう。何度もへびの親方に土下座しそうになりましたが(弱い)、みなさんに励まされ、ベラの子分にならずにがんばれました。心から感謝しています。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアー後に思ったことを書いておこうと思います。
思いっきりネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。

人が成長する過程というのは、多かれ少なかれ、その人なりの痛みを伴う。コドモからオトナへ。親鳥の羽の下で過ごす守られた日々から、いつか勇気を出して自分の足で1歩を踏み出す。そして自分の居場所を探し求め、見つけるその日まで、格闘し続けるわけです、自分自身と。
それが人生。
ハリーもその人生を歩んでます。
だから、やっぱりこれは、ヒーローの話でもなければファンタジーでもなかったなぁ。
青春の物語ですね。学園モノです。この気持ち(感想)は変わりません。
ただ、ハリポタ内の死生観について、"Horcrux"と"The Master of Death"の共存は少々ひっかかりました。つまり、不死への道は2本あった、という点です。2つ目があまりに唐突に登場したので、ここから一気にファンタジーになってしまうのかと心配になりましたね。死んだけど(死にかけたけど)生き返る(三途の川から戻ってくる)、という話に秘宝を使ってしまうと、突然出てきたちょっと紛らわしいだけの小道具、という気がしてならなかった。だけど秘宝を使わないと、AKが当たったのに死ななかった、という大矛盾が生じてしまうから。
でも結局は、その"ファンタジー"なる部分が、うまく死生観としてまとまったような気もします。
"Horcrux"を作ると、つまり自分だけは永遠に死なないぞと欲を出して強引に自身を神格化する行為は、邪悪すぎて自分を痛めつけてしまう。もう取り返しがつかないほどに。
一方で秘宝集めはほんとは誰もがやりたいわけですが、ハリーだけが結果的にこれを達成します、"意図せずに"。"The Master of Death"に値するかどうかは秘宝(死神)が決めることなんですね。
そして、ハリーは死ななければならないという運命は、3つ集めたから死なない、という奇跡の大転換を起こす。これはハリーが求めたことではないし、さらに、ハリーは死と引き換えに世界を救おうなどいう大きなことも考えていなかった。自分が死ねば、世界を救うチャンスを残せる、というだけ。自分にできる最大限のことを、謙虚に遂げようとしたわけです。そしてそこからもう1度立ち上がるわけですね。
考えてみればやっぱり秘宝はAKに対抗する小道具に過ぎなかったわけですが、その意味するものはちゃんとあったわけですね。
命をかける。人生をかける。覚悟を決める。
そーゆー瞬間が、何度かあります、人生には。それは、避けて通れる人もいるかもしれないけれど、あったほうがよい。自分の意志で積極的に、何かを選び、決断し、そこに向かって行こうと1歩ずつ前に進むこと、それには意義があるとダンブルドアが言ったように。
この物語はひとつの人生をおしえてくれるなぁ。

ハリーも含め、オトナもコドモも皆、完全な悪や完全な善ではなく、短所をかかえた複雑な多面体として生きています。壮絶に生き、卑劣に生き、運命に抗い、社会に翻弄され、汚名に甘んじ、正義を信じ、欲にまみれ、自らを呪い、ある者は夢の途中で、またある者は誇り高く死ぬ。
それがこの世界。
やっぱりこれは、ファンタジーなんかではなかった。
人間の不完全さを描いた、人の世の物語ですね。
『LotR』はファンタジーとしての壮大な世界観を見事に描いたと思いますが、ハリポタが描いて見せたのはこの社会そのものです。この社会を生きる人々の姿だからこそ、完全な悪や完全な善など存在しないわけですね。
"完全な悪"に極めて近いところにいるのがヴォルディさんですが、その深い闇を、本当の暗さを、もっと描いてほしかった気はします。見捨てられたコドモの"怨み"というものが、頭の中でどう捩れて、恐怖政治を行う暴君への道を歩み始めたのか。
ダンブルドアに言わせれば、"選択"という行為を行うのがハリー、それができないのがヴォルディなわけですが、だからと言ってなぜ不死と同時に世界を手に入れようとしたのか。
そしてその高みを目指したにもかかわらず、自称天才のヴォルディが策略家になりきれず、幼稚に立ち回ってしまう"オトナのガキ大将"にしかなれなかったのは、彼に"何が"欠落しているせいなのか。
いや、わかるんだけど、もっとはっきり描いてほしかった。
ヴォルディの闇の深さをもっと感じることができれば、ハリーとヴォルディの1対1の対決はもっともっとおもしろかっただろうと思います。

この物語では、多くの血が流れました。その重みは、エピローグにあたる"Nineteen Years Later"を読んではじめてずっしりと感じます。
ここを読み始めたときにね、"19年後"なんて書かなくていいのにー、とじつは思いました。でも、読み終わったときに、やっとその意味と意義がわかりました。
生き残ったハリーたちが手に入れた世界は、顔をあげて自らの意志で戦場に立ち、自分の身体とハートで闘い、勝ち取ったものだということです。
生き残ったハリーたちが19年後に生きる社会は、その闘いで流れた血と、失った者への追悼と喪失感の上に成り立っている世界。
与えられた平穏ではなく、勝ち取った(奪い返した)平穏なんですね。虐げられようとしていた者が(ハリーを革命のシンボルとしたレジスタンスであるホグワーティアンが)独裁を阻止するクーデターの旗を振り、虐げられていた者が(例えばハウスエルフが)市民権をその手に取り戻す。フランス革命がそうだったように、血が流れ、灰が降り、革命が成就する。その土台の上で生きているわけです。父親も母親も次世代が生きる未来のために血を流し、コドモたちは親と志を同じくして戦いそして死んで行く。この犠牲と悲しみと痛みの上にこそ築かれる19年後なわけです。
現代に生き、与えられた日常的な日常を享受する多くの読者に対して、血を流して得た市民権というものが、エピローグによって語られているんですね。
なんとも感慨深い"Nineteen Years Later"です。この章は、なければならなかった。19年後のために、すべてが描かれていたのだから。

そして最後に、7作目『DH』は1作目『PS(SS)』にそっくりだったぁーっ!
『PS』でハリーは魔法界に足を踏み入れます。ハグリッドに連れられ、リーキーを抜け、ダイアゴン横丁を歩き、銀行へ行く。
『DH』ではハーについて、リーキーを抜け、ダイアゴン横丁を歩き、銀行へ行く。前とは違う気持ちで。
『PS』でヘドウィグに出会い、『DH』で別れを告げました。
『PS』で鳥が飛ぶのを見ると、校長先生は大事なときにかぎっていなくなってるわけです。
『DH』でも鳥が飛ぶのを見たら、やっぱりそれはロンドンへの知らせでした。
『PS』の賢者の石、『DH』の甦りの石。あのときのスニッチ。ダンブルドアが鏡に見るものもわかったし。森で敵と対峙する。
『PS』ではクィレルさんがスネイプを語り、『DH』ではハリーが語りました、同じ場面で。
『PS』でダンブルドアが、ハリーの額の傷跡の意味を語ってたし。
他にも、各章ごとにいくつもあります、符号点が、山ほどね。たしかに対になってます。物語自体も含めて。
2巻目は"秘密の部屋"に怪物がいて、その後の人生を支えてくれる人の命を救いました。
6巻目は"必要の部屋"からDEが出てきて、それまでの人生を支えてくれた人を失いました。
3巻目で家族を得て、5巻目で家族を失う。
そしてたしかに、すべてのターニングポイントは4巻目っすよね。
あまりに美しい構成と、あまりに精密な細部。ハリポタは素晴らしいですね。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年02月14日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Nineteen Years Later

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、19年後のロンドンで懐かしいみんなに再会です。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

Nineteen Years Later

その年の秋は突然やって来ました。
くっきりと黄金色に晴れた9月1日の朝、人とクルマがクモの巣のように行き来する混雑した道路をぴょこぴょこと横断して、すすけた巨大な駅ヘ向かう家族がいます。両親が押す2台のトロリーのてっぺんには大きな鳥カゴ。中ではバタバタと怒ったようにふくろうが暴れています。泣きそうな顔の赤毛の女の子がパパの腕をつかみ、お兄ちゃんたちの後ろを歩いています。
「すぐだよ」ハリーはその少女に言いました。
「2ねんなんてまてないー!いますぐいきたいのー!」リリーちゃんはごきげん斜めです。
人込みをよけてジグザグに歩きながら9番線と10番線の間の壁に向かう家族の不思議な持ち物"ふくろう"を、通行人がじろじろ見ています。
「やだよ!スリザリンになんかはいらない!」
前を行くアルバスの声が聞こえます。そうそう、クルマの中から口論は始まってたんだっけ。
「ジェームズ!もうやめなさい」ジニーが言いました。
「入る"かも"って言っただけじゃん」ジェームズは弟を見てニヤニヤしてますが、お、ママが睨んでる、黙ってよっと。
壁まで来ました。ジェームズはちょっと生意気そうに弟を振り返ってから、ママが押していたトロリーを押して走り出しました。そして、消えました。
「てがみかいてくれるでしょ?」お兄ちゃんがいなくなるとすぐ、アルバスは両親にそう聞きます。
「なんなら毎日書こっか?」答えるのはジニー。
「まいにちじゃなくてもいいけど。ジェームズがいってた、みんなつきに1かいくらいてがみもらってるって」
「あら、ジェームズには去年、週に3通書いたけど」
「おまえのお兄ちゃんは冗談言うのが好きなんだ。信じすぎちゃだめぽ」口を挟むのはハリーです。
トロリーを押して走り出す。アルバスは一瞬びくっとしましたが、ほらね、ちゃんと通れた。
9と3/4番線、白い蒸気をもくもくと吹き上げて、真っ赤な汽車が待っています。
ジェームズお兄ちゃんはもうどこかに行っちゃった。見つかるかなぁ。
濃い雲の中にいるようで、人々の顔はよく見えません。が、不自然に大きな声が聞こえてきました。あ、パーシーの声だ。箒のレギュレーションについてアナウンスしてます。おシゴトっすね。
「アル、そこにみんないるわよ」ジニーが別の家族を見つけました。
「ハーイ!」アルバスはちょっと安心したように駆けて行きます。近づくと顔が見えました。ローズちゃんが、すでに真新しいホグワーツの制服を着て、アルバスを笑顔で迎えます。ピカピカの1年生さん同士です。
「駐車できた?」ハリーにそう尋ねるのはロンです。「ぼくはちゃんとできたけど。ハーちんさ、ぼくがマグルのクルマの免許とれるって信じてなかったんだ。ひどくね?教官さんに魔法かけてズルしたんじゃねーか、だってさー」
「んなこと言ってないじゃんか。受かるって信じてたよ」慌てて取り繕うハーちん。
「ま、実際、魔法は使ったんだけど」ハーに聞こえない声でハリーにささやくロンちん。「横のミラー見るの忘れてさ、でもほら、そこんとこは"Supersensory Charm"でなんとか、ねぇ」
アルバスのふくろうと荷物を列車に積んでプラットフォームに降りると、リリーと、ローズの弟ヒューゴが大コーフンで話しています、ホグワーツに入学したら自分たちはいったいどの寮に入るんだろうって。
「おまえもしグリフィンドールに入れなかったら、うちの子じゃねーぞ。あ、いや、まー、気にすんな」
「ロンちんってば、そーゆーこと言うんじゃないの!」んもー、パパさんになってもハーに叱られ続けるロンちんです。
まだ時間のあるリリーとヒューゴは笑っていますが、もう組み分けが目の前に迫っているアルバスとローズはドキドキっすね。

少し離れたところに立ってる3人家族を見つけました。黒いコートのボタンを襟までしっかりとめたドラコ、奥さんと息子さん。アルバスがパパ似なのと同じくらいに、ドラコんちの1年生もパパ似です。
ドラコは、トリオとジニーが自分を見ているのに気がつきました。そっけない素振りで頷き、背中を向けます。
「ちっこいサソリ野郎めー。ロージー、期末試験は毎回あいつに勝てよー。おまえ、母ちゃん譲りの頭脳でよかったなぁ」
「あのねロンちん、学校始まる前からそんなケンカんなるようなこと言わなくたっていいじゃんか!」本当に、どこまでも、叱られ続けるロンちん。
「あ、うん、まぁ、そうね。えっと、つまり、ヤツと仲良くなりすぎるな、ロージー。純血とケッコンでもすることになったら、じいちゃんだって許さねぇ」
そこへジェームズが大コーフンで現れました。自分の荷物は自分で積んだみたいです。「ねぇねぇ!テディがいる!今会ったよ。何してたと思う?Victoireといちゃいちゃしてた!」
反応の薄いオトナにがっくし。「テディだってば!テディ・ルーピン!Victoireとチュッチュチュッチュしてたぁ!いとこのVictoireと!だからさ、テディにさ、それ何してんのって聞いたらさ・・・」
「邪魔したのー?」ジニーが呆れてますよ。「ロンみたいな子ね・・・」
「そしたらさ、Victoireを見送りに来たんだって。で、あっち行けって」
「ケッコンしたらステキじゃん?そしたらテディもうちの家族だし」気の早い祝福はリリーから。
「めし食ったりとか、テディはしょっちゅううちに来てんじゃん。もう家族だよ。一緒に住もうって誘おうかー」提案はハリーから。
「いいね、それ!ぼくテディと同じ部屋でいいよ」ジェームズはずいぶんテディになついてますね。
「だめ。おまえはアルと同じ部屋なの」ハリーは長男をたしなめながら、かつてはFabian Prewettのものだった古い金時計を見ます。もう出発する時間ですね。
「ネビルによろしく」ジニーはジェームズをハグしながら言いました。
「そんなの無理だよ、学校に行ったら"先生"だもん。薬草学で温室に行って、よろしくって言ったら変だ」
ジェームズは列車に乗り込む前にアルバスにキック(笑)。「あとでな、アル。セストラルに気をつけろ」両親に手を振ると友達を探して走って行きました。
「みえないんでしょ?そーいったじゃーん!」
お兄ちゃんの背中に叫ぶちょっぴり怖がりの弟にハリーは言います。「セストラルは怖くないよ。優しい生き物なんだ。それに、馬車には乗らない、1年生はボートだから」
「クリスマスにね」ジニーがアルバスにキスを贈ります。
「ハグリッドにお茶呼ばれてんの、忘れるなよ。ピーヴスはほっとけ。ケンカはすんな。あと、ジェームズに負けるなよー」ハリーからはありったけの"注意事項"のプレゼント。
「パパ、スリザリンだったらどぼちよう」アルバスはハリーだけに聞こえるように囁きました。
出発の今が、"怖れ"に立ち向かって1歩を踏み出させる絶好の時だとハリーにはわかっています。ハリーはアルバスの目線より低くなるように屈み込み、次男の目を覗き込みました。3人のコドモたちのなかでただひとりリリーの瞳を受け継いだ、次男の明るい緑色の瞳。そしてアルバスだけに聞こえるように、いや、ほんとはジニーには聞こえているんですが、男同士の内緒話を彼女は聞こえないふりしてくれているんですね。
「アルバス・セヴルス、きみの名前はホグワーツのふたりの校長先生からとった。ひとりはスリザリンの先生だった人だ。その彼は、パパが知っている人の中でいちばん勇敢な人なんだよ。スリザリンには優秀な子が多い。だからスリザリンでもいいんだよ。でももしきみが嫌なら、スリザリンよりグリフィンドールに入れてって、選べばいい。ソーティングハットはきみの望みを尊重してくれるから」
「まじで?」
「パパはそーした」
アルバスは不思議そうな顔つきで列車に乗り込み、ジニーがドアを閉めました。どの窓からもコドモたちが顔をのぞかせています。あれ、汽車に中のコドモたちも、プラットフォームの家族も、なぜかこっちを見ている。
「なんでみんな見てるのー?」
ローズと一緒に窓から顔を出し、アルバスが聞きました。
「気にすんな。ぼくだよ、みんなぼくを見てるの。セレブだから」と答えたのはやっぱりロンちん。
アルバス、ローズ、ヒューゴ、そしてリリーも笑っています。
ホグワーツ特急はゆっくりと動き出しました。ハリーは汽車に歩調を合わせてプラットフォームを歩きます。アルバスの顔の不安は消えました。学校が楽しみになってきたんだな。ハリーは微笑んで手を振り続けますが、ほんとは勇気を振り絞ってるのはパパのほう、次男が遠ざかって行くのはドキドキです。

ホグワーツ特急はカーブを曲がり、見えなくなり、最後の蒸気の一筋が秋の空気の中に消えました。
手を振りっぱなしのハリーに「だいじょぶよ」とジニーが言います。ハリーは所在なさげに手を下ろし、額の傷跡に触れました。「うん、だいじょぶだよね」
稲妻型のその傷跡は19年間、1度も痛んでいません。めでたしめでたし。

【メモ】

Scorpiusは"さそり座"ね。

Victoireさん、ヴィクトアールって読むのかな、ヴィクトリアのフランス語読みみたいなので、こりゃビル&フラーんちのお嬢さんでしょうか。で、まだ学生さんなんすねー。

ロンがマグルの運転免許をとったというあたり、ははーん、モリーママと一緒に出ているこれのことかな。んも〜、Joったらぁーっ!

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年02月12日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 36 (3)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、1対1のガチンコ対決!
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

「まっさか。それはおまえのやり方やない。ポッター、今日は誰に守ってもらうねん?」
「誰も。もうホークラックスはすべてなくなった。ぼくらだけだよ、ヘビのおじさん。Neither can live while the other survives, 他方が生きる限り、どちらも生きられない。どっちかが死ぬんだ、正義のために」
「どっちか?言うたらおまえやな。偶然生き残ったただのガキや、今まで生きて来られたんはダンブルドアが裏で糸を引いとったおかげやろ」
ヴォルディの赤い目がハリーを見据えています。今にも襲いかかろうとするヘビの目です。
一定の距離をおいてゆっくりと円を描いて回り続けるふたり、ハリーにはもうヴォルディしか見えません。
「ぼくのママがぼくを救うために死んだときのことも偶然?あの墓地でぼくが戦ってやるって決めたときのことも偶然?今夜ぼくが自分を守ろうとしなかったことも、そしてまた戦うためにここに戻ってきたことも偶然?」
「そんなもん、偶然なんや!」
ヴォルディは吐き捨てるように言いました。
見守る仲間たちは微動だにしません。呼吸をしているのはハリーとヴォルディだけ。緑の瞳と赤い瞳が見つめ合っています。
「今夜こそはもう誰も殺せないよ。ヘビのおじさん、わかる?誰も殺せないんだよ。仲間が傷つけられるのが嫌だから、ぼく死ぬ覚悟したんだ。ぼく、ぼくのママと同じことしたんだよ。みんなおじさんから守られてる。おじさんの呪文、みんなちゃんと効かなかったじゃんか。気づかないの?おじさんは誰も拷問できない。おじさんはもう誰にも手を出せないんだ。リドルのおじさん、自分の失敗から何も学んでないの?」
「失敬な!なんやこのガキ、腹立つわー」
「おじさんが知らない大切なことをぼくは知ってる、トム・リドル。聞きたくない?次の大失敗をするまえに」
「また愛やろ?ダンブルドアお得意の、愛やないのか?あのじーさん、愛は死を超えるとか言うて、自分は塔から落ちて蝋人形みたいになってもうたやないか?愛の力言うたって、穢れた血のおまえのおかんは死んでもうたやないか?ポッター、今夜は誰も立ちはだかってくれへんで。もう誰もおまえをそれほど愛しとらんのや。さて、今夜はどないして生き延びる?わしの知っとる魔法よりものすごいのを知っとる言う気か?ものすごい武器でも持っとるんか?」
ふたりは回り続けています。ハリーが見てきた、最後の、そして究極のヒミツ、それだけがハリーの武器です。
「うん。どっちも持ってるよ」
一瞬、ヴォルディの顔がこわばります。が、笑い始める。楽しさは無く狂気のみの、怒るより恐ろしい笑いです。
「ダンブルドアでさえ夢にも思いつかんような魔法でブイブイ言わせてきたヴォルデモート卿より、おまえが上やて。あははーだ、笑けるわー」
「ダンブルドアは思いついてたよ。ダンブルドアのほうがすごいんだ。おじさんと同じ魔法を使わなくて済むくらいにすげぇ」
「あのじーさんは弱かったんや。弱くてそれを掴み取ることができんかっただけや。わしは強いで」
「違うよ、ダンブルドアはおじさんより賢かったの。おじさんよりいい魔法使い。いい人なんだよ」
「なんやおまえ、えらい腹立つわー。じーさんは殺したったやないかー」
「ヘビのおじさんが勝手にそう思ってるだけだってば」
「じーさんは死んだんや、あほんだら!」その言葉は、まるでヴォルディをも苦しめているようです。「墓んなかにおるわー。見たんやで、ポッター。たしかに死んどるんや!」
「そう、ダンブルドアは死んだ。でも、おじさんが殺したわけじゃない。ダンブルドアは自分で死に方を選んだ。何ヶ月も前に決めて、おじさんがヘビ組だって信じてた人物と、全部計画してたんだよ。セヴルス・スネイプはおじさんのものじゃない。スネイプはダンブルドアに忠誠を尽くした。おじさんがぼくのママを殺した瞬間から、ずっとダンブルドアに仕えてた。おじさん気づかなかったんでしょ、理解できないものが理由だから。リドルのおじさん、スネイプのパトロナス見たことないんでしょ?」
ヴォルディは答えません。ひたすら、相手の喉を噛み切ろうとする2匹の狼のように、回り続けます。
「雌鹿なんだ、ママのと同じ。スネイプは生涯をかけてぼくのママを愛した。小さい頃からずっとね。おじさん、気づくべきだったんだよ、彼女を殺さないでくれって頼まれたときにさ」
ヴォルディの鼻の穴もおっ広がりますね。これを知ったときは読者の鼻の穴もおっ広がったくらいですから。
「スネイプはダンブルドアの指令で動くスパイになった。スネイプがAKをぶん投げたときは、もう死ぬ時期だったんだよ」
「だからなんや!スネイプがどっち側だろうともうかまわへんのや!じーさんとグルで邪魔しようとしたってな、どっちみちふたりともぶっ潰してやったわ。おまえのおかんも、スネイプの愛とやらも、とにかくぶっ潰してやったわー!」
ヘビのおじさん、逆ギレ。
「じーさんはずっと、ニワトコの杖をわしから遠ざけようとしとった。スネイプを正当な所有者にしようとしてたんや。そーはさせるかあほんだら。わしのが早かったんや、ガキ。とっとと杖を手に入れて、スネイプもさっき殺したった。だからわしんじゃ!どや!じーさんの最後の計画は大失敗や!どないや、ハリー・ポッター!」
「そだね。でもさ、ぼくを殺す前にさ、おぢさんが今までしてきたことを考えて、反省したほうがいいよ」
「なんちゅう生意気なガキや、腹立つわー」
「おじさんの最後のチャンスだよ。おじさんに残されたものはあれで全部、ぼく見てきたんだ、おじさんのほんとの姿を。がんばれ、おじさん。死ぬ前に更生だ」
「何様じゃあほんだら。しばくぞこら」
「いいから聞きなよ、リドルのおじさん。ダンブルドアの最後のプランは、ぼくじゃなくて、おじさんにとって裏目に出たんだよ」
なんだかんだと言いながら、真に受けて長々と話を聞いてしまうヘビのおじさん、ニワトコの杖を握る手が震えてますよ。ハリーの手はしっかりとドラコの杖を握っています。
「その杖はおじさんには使えない。おじさんが殺した人、人違いだもん。セヴルス・スネイプはニワトコの杖の所有者になったことなんかないよ、ダンブルドアをやっつけてないんだから」
「殺したやないか」
「やだなぁおじさん、人の話聞いてないの?スネイプはダンブルドアをやっつけたことなんてないの!ダンブルドアの死は、そのふたりによって計画されたものなんだってば!ダンブルドアはスネイプに負けて死んだんじゃない。計画通りなら、ダンブルドアの死と同時に杖の伝説は終わるはずだったっちゅーことよー」
「それでもわしは杖を手に入れたんや。墓掘り返してやったんやど。杖の力はわしのもんなんや!」
依然として人の話を聞いてないヘビのおじさん。
「おじさーん、もう、ぜんぜんわかってないんだからぁ。おじさんは杖を"手に持ってる"ってゆーだけなんだってばぁ。オリバンダーさんからも聞いたでしょ?杖が魔法使いを選ぶって。その杖は、ダンブルドアが死ぬ直前、新しい主人を選んだ。ダンブルドアの意に反して、ダンブルドアの杖を奪い、そして自分が伝説の杖の持ち主になったなんてことに気づかない、つまり杖を追い求めたりしない、その人物を選んだ。死神の杖の真の所有者はドラコになったんだよ」
ヘビのおじさんびっくり。呼吸が荒いです。
「だ、だからなんや。おまえの言うとーりやとしても、ええんや、今はおまえとわしの一騎打ちや。おまえはもう不死鳥の杖を持っとらん。こうなったら"普通の杖"同士で勝負や、ぼけ。強いほうが勝ちやぞ。おまえを殺して、ほんでドラコもやったるわ」
「おじさん、遅いよ。とっとと杖を手に入れたのはぼく。何週間か前にぼく、ドラコに勝ったよ」
そして囁くように付け加えます。
「ヘビのおじさん、その杖、ぼくんだよ」
深紅と黄金に輝く光りが突然、大広間の天井の空に広がります。朝陽です。地平線から、太陽が昇る。大広間もヘビのおじさんの顔も真っ赤に染まりました。
ヴォルディが叫ぶ。ハリーも、たったひとつの希望を信じて、叫ぶ。
"AK!"
"Expelliarmus!"
ぼっかーん!
ふたりが描いた円の中央で、呪文同士が激突します。大砲を撃ったような激しい爆発音。黄金の炎がほとばしる。
ハリーは見ました、ヴォルディの緑色の呪文が自分の呪文とぶつかり合い、ニワトコの杖が空中高く舞うのを。真っ赤に燃える朝陽を背景に、杖はくるくると回り、空気を切り裂くように真の所有者の元へ。ハリーはそれを空いているほうの手でつかみます、だってシーカーだもんね。
ヴォルディは、両腕を広げ赤い瞳を見開いて、ふっ飛んじゃった。
トム・リドルは、床に倒れた。またしても跳ね返った自分のAKでヴォルディは死に、ハリーは2本の杖を手に、そこに立っていました。

一瞬の静寂の後、耳が割れんばかりの歓声が沸き起こります。生まれたばかりの太陽が、明るい光でホグワーツを包みます。
ハリーのもとに最初に駆けつけたのはもちろんロンとハー。ふたりの親友の腕が暖かくハリーを包みました。ジニーが、ネビルが、ルナが、そしてウィーズリー家のみんなとハグリッド、キングスレーもミネルバ女史もフリトウィック先生もスプロウト先生も、ハリーを祝福しています。
大広間にいる誰もが、ハリーの身体のどこかをハグしようと、生き残った少年、ついに戦いを終わらせたその少年に触れようと、集まってきます。祝福の叫び声で広間は満たされました。
陽が昇る。ホグワーツは再び、燃え立つような生命の輝きに満ちています。
歓喜と追悼、深い悲しみと大いなるよろこび、その中心にハリーはいました。指導者であり、シンボルであり、人々を導く救世主。みんなハリーと一緒に過ごしたいわけです。でもハリーさんはお疲れですね、寝てねーし。
握手して会話して賛辞を受け取り、人々の涙を見守る。そして、操られていた人々が元に戻ったとか、DEがどんどんタイーホされてるとか、アズカバンに入れられていた無実の人々が解放されてるとか、とりあえずテンポラリーな大臣としてキングスレー・シャクルボルトが就任したとか、たくさんのニュースを聞きます。
ヴォルディの遺体は大広間から別の小部屋に移されました。フレッドやトンクスやリーマスやコリンたち50人の亡き骸のそばに置いとくなんて嫌だから。
マクゴナガル先生はいつもの長テーブルを元通りに置きました。でももう誰も、寮ごとに分かれて座ったりしません。先生も生徒も家族も、オバケさんたちもケンタウロスもハウスエルフも、みんな混ざって一緒に座ろう。部屋の隅にフィレンツェもいます。グロウプも窓からのぞいています。みんな、グロウプの口に食べ物を投げ込んであげてますね。腹へったもんなぁ。
ふと気がつくと、ハリーはルナの隣に座っていました。
「あたしだったら、ちょっと静けさがほしいな」
「うん」
「あたしがみんなの気をそらしといてあげる。マント着なよ。ぶわぁーっ!"Blibbering Humdinger"はっけーん!」
心優しいルナ、窓の外を指差し、どでかい声で叫びましたよ。
みんながそっちを見ている隙に、ハリーは透明マントをかぶりました。
歩き出すハリー、ふたつ向こうのテーブルに、モリーの肩に頭を乗せたジニーがいるのが見えます。きっと後で話せる、好きなだけ、何時間でも、何日でも、何年でも。
ネビルはお皿の横にグリフィンドールの剣を置き食事しながら、ネビルに忠誠を尽くす仲間とご歓談中。
あ、まるほい家のみなさんもいます。誰も見てませんが、3人寄り添い居心地悪そうです。
あちこちで、家族がまたひとつになっています。
「ぼくだよ。一緒に来て」
ハリーは、いちばん会いたいふたりにこっそりと声をかけました。ロンとハーはすぐに黙って立ち上がり、トリオは大広間を出ます。吹き飛ばされ血だらけの階段を上って行くと、どこからともなくピーヴスの歌が聞こえてきました。
We did it, we bashed them, wee Potter's the one,
And Voldy's gone moldy, so now let's have fun!

もう終わったんだ。もう平和になるんだ。でもハリーの心の中では、フレッドやリーマスやトンクスを失った悲しみのほうが大きい。それに、とても疲れて眠りたい。けどその前に、最後のシゴトがあります。ロンとハーに、何が起きたのか説明しなくちゃ。ずっとハリーのそばを離れなかったロンとハー、真実を知る権利があるはずです。ペンシーヴで何を見たか、森で何が起きたか、その後のことも、歩きながら全部話そう。ロンとハーは1度も口を挟まず、黙って聞いてくれています。
そして、着きました、ハリーが何も言わずにふたりを連れてきたのは校長室。立っていたガーゴイルは転がっちゃってますが、ちゃんと聞いてから入ります。
「入れる?」
「ご自由に」
トリオーはゆっくりと回りながら上る螺旋階段に乗り、校長室のドアを開けました。
ものすごい騒ぎです。割れんばかりの拍手と歓声。帽子を振り、場合によってはカツラを振り(笑)、部屋を取り囲んだ肖像画の歴代校長全員からスタンディングオベーションです。校長先生たち、肖像画の縁に手を伸ばして隣の校長と手をつなぎ、輪を作っています。そうかと思うと椅子に立ったり降りたりして踊ってみたり。Dilys Derwent校長は泣き崩れ、Dexter Fortescue校長は補聴器をぶんぶん振り回し、フィニアス・ナイジェラスは「スリザリンも役割を果たしたぞ!」と叫んでます。
ハリーの目は、机の真後ろのいちばん大きな肖像画に注がれました。
半月型のめがねの奥から涙が流れ、銀色の髭を濡らしています。その涙は、フェニックスの歌のようにハリーを癒してくれます。誇りと感謝の涙なんだって、ハリーにはよくわかっています。
ハリーは手を上げました。歓声が止み静かになります。校長先生たち、涙を拭きながら、ハリーがしゃべりだすのを暖かく見守ってくれてますね。
ハリーは話し始めます。ダンブルドアひとりだけに向かって。とても注意して言葉を選びながら。
「スニッチの中に隠されてたモノ、森で落としちゃった。どこだかわかんないし、探しに行くつもりはありません。それでいいかな?」
「それでいいよ。賢明で勇気ある決断だね。思ったとおりだ。どこで落としたか、誰も知らないんだろう?」
「うん、誰も」
他の校長先生たちはきょとんとしてますが、ダンブルドアは満足そうです。
「でも、イグノートゥスのプレゼントだけは持っていようと思う」
ダンブルドアがニコニコと微笑んでいます。「あれは永遠にきみのモノだ。きみが次に引き継ぐ日までね」
「あと、これ」
ハリーはニワトコの杖を掲げて見せました。
「ぼく、ほしくないや」
「えー。ふざけんな」ロンが大きな声で言いました。
「この杖強いってわかってるけど、こっちのが好き」
ハリーが取り出したのは、ハグリッドのポーチの中の、真っ二つに折れた柊とフェニックスの杖です。ハーがもう直せないって言った杖、これでだめならあきらめるしかない。でも、きっと。
"Reparo"
ハリーは自分の杖を机に置き、伝説の杖をかまえて呪文を唱えました。
フェニックスの杖は元通りになり赤い火花が光ります。
うん。できるって、わかってたよ、なんとなく。
ハリーはまだ温かい自分の杖を握ります。これでまた、杖と杖が選んだ持ち主はひとつになれた。
「ニワトコの杖は、あったところに返そうと思う。そこにあったほうがいいから。ぼくがイグノートゥスみたいに人生を全うして死んだら、終わるんでしょ?前の持ち主が負けないで死んだら、すべて終わり。だよね?」
ダンブルドアはうなずきました。ハリーとダンブルドアは微笑み合います。
「杖要らないのー?」まだ言ってる(笑)。
「いいのよ、それで」ハーが静かに言いました。
「この杖強いけど、面倒なことだらけだよ。それに正直言って、トラブルはもう充分経験したからおなかいっぱい」
グリフィンドール寮のベッドに入ってもう寝よう。クリーチャーが部屋にサンドウィッチ運んでくんないかなぁ?

【メモ】

ハリーの最後の必殺技がまさかの"説得"だということで、もう半笑い半泣きになりながら、すごすぎると思いました。
なんだかんだ言いながら飽きずに話を聞いてしまう素直なヴォルディ、あんた、今日成人式挙げたばかりのガキに「おじさんバカなの?」くらいのこと言われていいのか、しっかりしろ。
というようなことを笑って思えるのもハリーさんがついにわるもんをやっつけてくれたからですが(笑)。

"Blibbering Humdinger"は魔法生物です。存在を信じている人がきわめて少ない。でもよくわかんないっすね。

長い銀の巻き毛のDilys Derwent校長、St Mungoのヒーラーだったこともある18世紀の魔女です。この人の肖像画はホグワーツの校長室だけじゃなく、もちろん病院にもあります。ナギニちゃんに襲撃された瀕死のアーサーのことを見守ってくれてましたねー。
Dexter Fortescue校長のことはよくわかりませんが、えっと、前からずっと気になってたんすけど、ダイアゴン横丁のアイスクリームパーラーのFlorean Fortescueさんの親戚筋じゃないかと思います。

これでハリポタ最終章まで終わりです。でもあと少しだけツアーは続きます。エピローグにあたる"Nineteen Years Later"(19年後)があるからね。
その後、さるおのちょっとした感想と、その他のいろいろ(解けてない謎のこととか、他にも)を書こうと思います。
えっと、おうちに帰るまでが遠足ですから、ツアー参加者のみなさん、よろしくお願いします。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年02月07日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 36 (2)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、最後の反撃の烽火を上げます。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

悲鳴が夜明けを切り裂く。ネビルが、動くこともできずに火だるまです。
ハリー、今こそ行動するときだ。
その瞬間、いくつものことが同時に起きました。
数百人の人々が押し寄せでもするように騒がしさが近づいて来ます。グロウプが現れて"HAGGER!"とハグリッドを呼ぶ。するとヴォルディ側についた巨人たちが地面を揺らしながらグロウプに突進します。続いてたくさんの蹄の音が鳴り響き、ビューンという音とともに矢が豪雨のように、慌てるDEたちに降ります。
一瞬の隙に、ハリーは透明マントをかぶり、立ち上がりました。
同じく一瞬の隙をついたネビルがBody-Bind Curseを破り、頭から落ちた燃える帽子から、ルビーに飾られた銀色に輝く剣を引き抜きました。
うりゃぁーっ!
銀の刃で鋭く切りつける。
その一太刀は、ナギニちゃんの頭を切り落としました。スローモーションのように、城の玄関の明かりを背景にヘビの頭は弧を描き、それを見た飼い主が声にならない叫び声をあげ、ヘビはどさりと地面に落ちました。
怒ったヴォルディが杖を構えるより早く、ハリーは透明マントの下からShield Charmをかけます、もちろんネビルとヴォルディの間に。
ハグリッドの叫ぶ声が聞こえてきます。「ハリー!どこだ、ハリー!」

大変な騒ぎです。
ケンタウロスはDEたちを追い回し、巨人の足の下敷きにならないように皆が逃げ惑います。ヴォルディの巨人たちの頭上の明るくなりかけた空には巨大な翼を持った生物が舞っているのが見える。敵の巨人たちにひとまわり小さいグロウプがパンチを浴びせ、セストラルたちとバックビークも巨人たちの目を突いているんですね。
今や魔法使いは、つまりホグワーティアンもDEも、城内への退却を余儀なくされています。というより避難だな。
ハリーは透明マントをかぶったままヴォルディを追って城に駆け込みます。杖からあっちゃこっちゃにばんばん火花を散らし、DEたちに指示を叫びながら、ヴォルディが大広間に入って行くのが見えたぞ。
ハリーは、ヴォルディとシェーマス・フィニガンの間、ヴォルディとハンナ・アボットの間にShield Charmをぶん投げながら大広間に走ります。
そこは、すでに戦場でした。
チャーリー・ウィーズリーが、エメラルドのパジャマ姿のままのホラスに追いつくのが見える。チャーリーはホグスミードの店主や住民を従えて駆けつけてくれたんだ。
ケンタウロスのベイン、ロナン、マゴリアンは城のキッチンのドアを蹴破り、蹄の音を高らかに響かせて大広間に駆けてきました。城で働くハウスエルフの一団も、ナイフや肉切り包丁を手に大広間に突進してきます。先頭でレグルス・ブラックのロケットを胸に弾ませ勇ましく叫んでいるのはクリーチャー。「戦え!戦え!私の主人、ハウスエルフの守護者のために!勇敢なるレグルス様の名のもとに、ダークロードと戦え!」DEたちの足首をフォークでぶすぶす刺しまくりです。
DEたちはてんやわんや。呪文はわんさか飛んでくるわ、矢は刺さるわ、ナイフで刺されるわで、逃げ惑っています。

でもまだ終わりじゃない。ヴォルディを仕留めるまで、この戦いは終わらない。ハリーは透明マントのまま戦火を縫って大広間の中央へと急ぎます。
ジョージ・ウィーズリーとリー・ジョーダンがヤクスリーを沈めるのが見えます。フリトウィック先生がドロホフを仕留め、ハグリッドがウォルデン・マクネアをぶん投げている。ロンとネビルはついにグレイバックを追い詰め、アバフォースがロックウッドを気絶させています。アーサー・ウィーズリーとパーシー・ウィーズリーは魔法省大臣シックネスをねじ伏せました。
まるほいパパとまるほいママは、ドラコの名を呼び続けています。
はたして、大広間の中央ではヴォルディが戦っていました。相手は3人同時、ミネルバ、ホラス、キングスレー。
ヴォルディから50ヤード離れたところではベラ姐さんも戦っています。こちらも相手は3人同時、ハー、ジニー、ルナ。3人とも、今までで最も熾烈な死闘を演じています。これでベラ姐とまったくの互角。姐さん、強ぇ。
ベラがAKをぶん投げました。その呪文はジニーをわずか1インチのところでかすめます。
ハリーはコースを変えました。ヴォルディではなく、ベラに突進して行きます。
ところが、ハリーより素早く、マントを脱ぎ捨ててベラに辿り着いた人物がいました。
「私の娘に何するの!YOU BITCH!」
振り向いて笑うベラ姐さん。
「あんたたちは引っ込んでなさい!」
3人の少女にそう叫ぶと、モリーの杖がしなり、戦闘開始です。
空気を切り裂き、曲線を描き、モリーの呪文が容赦なく襲いかかります。ベラ姐さんの顔から笑みが消えました。
2人の魔女の杖は火花を散らし、ものすごいスピードで呪文が炸裂しています。2人の周囲の床がひび割れメラメラと熱くなる。相手を殺すまで、どちらかが死ぬまで、戦い続ける。
数人の生徒が、モリーを手伝おうと前へ出ますが、それはモリーが許さない。「邪魔しないで!この女は私のもんよ!」
今や数百人の人々が大広間の壁際に並び、2つの死闘を見守っています。ハリーは透明マントのまま、その間で板挟みです。
「あんたを殺したら、ガキどもはどうなるだろうねぇ?ママが死んだよぉ〜、フレディみたいにぃ〜」
師匠と同じくらいの狂気を身にまとったベラ姐、強気の挑発。
「あんたに、うちの子にはもう二度と、指1本触れさせるもんですか!」
モリーが呪文をぶん投げながら叫びます。
ベラは笑いました。
ハリーには、次に起こることがわかりました。だってあのときと同じだもん。あのとき、シリウスは笑ったんだ。そして死んだ。
次の瞬間、モリーの呪文はベラ姐さんの胸を直撃。ベラは目を見開き、ほんの一瞬だけ今起きたことを理解したかもしれない。そしてばたりと床に倒れました。歓声が上がります。
ヴォルディは振り向いて叫び、その怒りが爆弾のように、ミネルバとキングスレーとホラスを後ろに吹き飛ばしました。そして杖をモリーに向ける。
"Protego!"
ハリーが叫びました。そのシールドは、大広間の中央に広がります。きょろきょろ見回すヴォルディ、ついに透明マントを脱ぎ捨てるハリー。
「ハリー!生きてんじゃん!」
驚きとよろこびで歓声が沸き上がり、次の瞬間、静まり返ります。
見つめ合うドクロベーとハリー。お互いの周りを、ゆっくりと円を描き始めます。
「誰も手を出さないで。こうなるって決まってたんだ。ぼくのシゴトなんだ」
ハリーの声はトランペットの音色のように、静寂に包まれた大広間に響きました。

【メモ】

ネビルさんかっこよすぎ。どこまでもハッフルパフ的だったネビルですが、やっぱりあんたは本当のグリフィンドールっす。そもそも予言が指していた人物というのは、ハリーとネビル、やっぱりどちらでもよかったんだなぁと思います。
ヴォルディと、自ら選んだガチンコ対決。炎に包まれて、ネビルは死を覚悟したはずっすよね。それでも負けず、オーガスタから学んだ戦士の誇りも失わなかった。そして次の瞬間にはナギニちゃんを仕留めるわけです。もしもハリーがいなければ、その後のネビルはヴォルディに瞬殺でしょうから、死などというものはとっくに覚悟した者の、最後の、渾身の反撃ですね。
ちゃんとわかってたんだな、ハリーが最後に話したことは、ハリーの遺言だったと。約束を守りましたよ。

弓の使い手ケンタウロスも、美しい馬セストラルも、バックビークも来ました。クリーチャー率いるハウスエルフも!ハグリッドの弟さんもがんばってるし。あらゆる種族を巻き込んで入り乱れる異種格闘技戦は嬉しいです。
そして何より感動的なのは、みんなそれぞれ"己の敵"と戦うっちゅーところです。ハグリッドは、かつてバックビークの死刑を執行しようとしたマクネアをぶっ飛ばす。アーサーとパーシーは大臣をぶっ飛ばす。素晴らしいっす。

スゴ腕3人を相手にしても余裕のドクロベー様、さすが。
そして、修羅場をくぐり抜けて鍛え抜かれたハーとジニーとルナが"凡人"だとは到底思えないので、たぶん"フツーのオトナ"とバトルしても負けない強さのスゴ腕3人を相手にして、同じく余裕のベラ姐さん、あんたも強ぇ。
しかし、モリーはさらに強いです。圧倒的に強い。彼女はハートで戦ってるから。ネビル同様、自分の死などというものはとっくに覚悟した者の、本気の復讐。彼女には、守るモノがある。自分の命と引き換えても、守る価値のあるモノを持っている。モリーは無敵っすね。"おかあちゃん"的なモリーなのに超スゴ腕でかっこよすぎ。
ベラを殺した呪文が何なのか、本には書いてありません。モリーにAKは似合わないけど、さるおはAKであってほしいです。これはフレッドの弔い合戦、これは愛する者を守るためのバトル。ならば彼女には燃える殺意があってほしいと、さるおは思います。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年02月05日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 36 (1)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ラストチャンスを狙いましょう。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

36:The Flaw In The Plan

森の香りの中、ハリーはうつ伏せに地面に倒れていました。メガネのちょうつがいの下あたり、頬のところに、冷たく固い地面を感じます。倒れた衝撃でメガネがはずれかかってます。こめかみには切り傷ができているようです。身体のあちこちが痛いし、AKの当たったところはなんだかものすごいパンチを食らったみたい。杖とマントが胸の下にあるのを感じます。
ハリーは、おかしな恰好で倒れたまま目も開かず、じっと動きませんでした。
ガキをやっつけたぞ、という歓声が聞こえてくるかと思ったのに、様子が変だ。足音と囁き声しか聞こえません。
「卿・・・卿・・・」
それはベラ姐さんの声。愛する者に囁きかけるような声音です。どしたのかな?
ハリーはほんの1ミリだけ、薄目を開けてみます。
あれれ?ヴォルディが立ち上がったところです。いったん近寄ろうとしたDEたちが後ずさりしています。ヴォルディのそばに膝をつき離れようとしないのはベラ姐のみ。

今のは何だろう?DEたちはおっさんを覗き込んでました。AKの瞬間、何かが起こって、ヴォルディもずっこけたのかな?
まるで、二人そろって気を失い二人そろって目覚めたみたいです。冷たいヴォルディの声がこう言うのが聞こえます。「なんともないんや」
きっとベラ姐さんが起き上がるヴォルディをたすけようと手を差し伸べたんですね。
「ガキは死んだか?」
誰も答えないし、誰もハリーに近づこうとしません。全員がハリーを見つめている気配はします。
指先ひとつ動かさないように。瞼がぴくぴくしないように。
「おまえ、見てこいや」
目を閉じたままのハリーには、近づいてくるのが誰なのかわかりません。じっとしているしかないけれど、このままじゃ生きてるってバレちゃう。

やわらかな手が、ハリーの顔に触れました。瞼を上げたり、身体を触って心臓の鼓動を確認したりしています。
女の人だ。
長い髪がハリーの頬を撫でます。彼女にはわかったはず、ハリーの心臓が動いていることが。
「ドラコは生きている?城にいる?」
やっと聞こえる程度の囁き声。彼女の唇はハリーの耳のすぐそばです。長い髪が彼女の唇の動きを隠しています。
「うん」
ハリーもほとんど聞こえないほどの囁きを返しました。
「死んでいます!」
立ち上がったナルシッサ・マルフォイは、はっきりした口調で告げました。
今度こそ、勝利の叫びが聞こえます。赤と銀の閃光が、花火のように空に打ち上げられます。
ナルシッサがドラコを探しに城に入る方法はただひとつ、勝者としてヴォルディに付き従って行く以外にありません。彼女には、ヴォルディが勝とうが負けようが、もうどーでもいいんだよね。
「ハリー・ポッターを殺したでー。この手でやってやったわー!見てみい、Crucio!」
ハリーは身構えます。
ところが、痛みはやってきません。代わりに、ハリーは宙に浮き、地面に投げ出され、また宙に浮き、これを3度繰り返す。メガネがどっかにぶっ飛んじゃいましたが、ぐったりと死体を演じ続けます。
DEたちの笑い声はどんどん大きくなります。
「よっしゃ、城に行こか。やつらのヒーローがこのザマやと見せつけるんや。・・・あ、おまえがぴったりやな。小さなお友達を運んでやれや、ハグリッド。メガネもかけさせてやらんと、誰だかわからへんとおもろないで」
誰かの手が落ちたメガネを拾い上げハリーにかけさせました。とても優しく、震える大きな手がハリーを抱き上げます。大粒の涙が降ってくる。
「行こか」
ヴォルディの声に従い、ハグリッドが歩き始めました。ほんとは、泣きじゃくるハグリッドに「ぼく生きてるよ」と言ってあげたいハリーですが、今は我慢です。木々を抜け、城に向かいます。
「ベイン!」
ハグリッドの大声に思わずまた薄目を開けてみると、たくさんのケンタウロスがヴォルディたちの行列を見ています。
「嬉しいか?これで満足か?戦いもしない憶病者ども、ハリー・ポッターが死んで満足かよ?」
ハグリッドがケンタウロスの群れにむかって、泣きながら怒っているんすね。
「止まれや」
ヴォルディの声でハグリッドが立ち止まります。呪文で操られているんですね。
森を抜け、ついに校庭に出ました。
校庭にはディメンターが飛び回り、異常な寒さです。でも今のハリーはだいじょうぶ。生き延びたという事実が、ハリーの中で燃えながらハリーを守ってくれています。ジェームズの牡鹿が、まだハリーの中にいるみたい。
ヴォルディの気配がハリーの横を通りすぎ、あの不自然に響く大きな声で話し始めました。

「ハリー・ポッターが死んだでー。おまえらがこいつのために命を落としているときにな、こいつは自分の命が惜しくて逃げようとしたんや、そして殺された。おまえらのヒーローは死んだんや。その証拠に遺体を運んできた。戦いは終わりや。おまえらは半数を失い、今ではDEの数がおまえらを上回っとる。まだ抵抗する者は、男も女もコドモも、皆殺しや。一家全員、皆殺しや。城から出て跪け。そうすれば許してやる。私に加わり、私と共に、新しい世界をつくるんや」

ハリーがまた薄目を開けると、プロテクションを外されたナギニちゃんを肩に乗せたヴォルディの背中がすぐ目の前です。
でも、後ろにずらりと並んだDEたちに気づかれずに杖を出して仕留めるなんて不可能。空は明るくなろうとしています。
一団はまた少し前進し、城の真っ正面で立ち止まりました。
「ハリー・・・ハリー・・・」ハグリッドは泣き続けています。
ヴォルディとハリーを抱いたハグリッドを中央に、DEたちは横一列に並んで立っています。
閉じた瞼の向こうで、城の正面玄関が開き、明かりが漏れました。
「No!」
これほど悲痛な叫び声を、マクゴナガル先生がこんな叫び方をするなんて、思ったこともなかった。
それを笑ってる女が近くにいます。ベラ姐ですね。
また一瞬だけ薄目を開ける。自分たちを征服した者と対面し、ハリーが死んだという事実と向き合うために、城の正面玄関から次々に人が出てくるのが見えます。
「No!」
「No!」
「Harry! HARRY!」
ロンが、ハーが、ジニーが、マクゴナガル先生の叫びよりさらに大きな声を絞り出し、絶叫しているのが聞こえます。他の生き残ったみんなも、DEたちに罵声を浴びせ始めました。抵抗し続ける気持ちなんですね。
彼らの絶叫が引き金のように、ハリーを突き動かします。「ぼく生きてる」って言いたいな。
「静かにせーやー!」
明るい閃光とともに、皆静まり返ります。これも魔法ですね。
「もう終わりなんや!ハグリッド、ガキを降ろせ。帰してやるんや」
ハリーは地面に横たえられました。隣ではヴォルディが行ったり来たりしながら話し始めます。「ハリー・ポッターは死んだ!こいつはただのガキや。自分のためにおまえらに犠牲を強いたガキや!」
「ハリーはおまえをぶっとばーすっ!」
叫んだのはロンです。ヴォルディの呪文を破ったんですね。他のみんなも呪文を破り、ロンに続いて叫び出します。
ぼかん!
だまらっしゃいの2発目です。
「こいつは逃げ出そうとして殺されたんやで。こいつは自分だけたすかろうと・・・」
明るい光りがヴォルディを遮りました。誰かが、再び呪文を破り、なんとヴォルディに反撃したんです。その人物が杖を奪われ地面に倒れるのが、薄目の向こうに見えます。奪った杖を投げ捨て、ヴォルディさんは笑ってますよ。
「こいつは誰や?抵抗するとどーなるか、見せしめに立候補してくれたよい子は誰くん?」
あ、ベラ姐さんが嬉しそう。「ネビル・ロングボトムです、ドクロベー様!カロウ兄妹をてこずらせた、オーラーのガキよ!」
「あーん、覚えとるわー」
ネビルは立ち上がりました。杖も失い、守るモノもなく、味方とヴォルディの間(no-man's-land)に。
「勇気ある少年くん、おまえ、純血やろ?」
ネビルは空のこぶしを強く握りしめ、力いっぱい叫びます。
「だからどーした!」
「きみは勇気あるなぁ。しかも純血や。素晴らしいDEをたくさん生むやろう、ネビル・ロングボトム。我々にはきみのような血筋が必要なんや」
「地獄の炎が凍ったら仲間に入ってやるさ!」
負けないネビルはこう言い放ちます。そして叫ぶ。"Dumbledore's Army!"
呪文を破り、みんながネビルに応え、歓声が沸き起こります。
「よろしい」
この優しい言い方はキケン。
「それがおまえの選択なら、しかたないな。おまえの頭に、これを」
ヴォルディが杖を振る。ネビルは動けなくなり、一瞬後にホグワーツの窓のひとつが割れました。窓からは1羽の鳥が飛んできて、ヴォルディの手に止まりました、と思ったら、鳥じゃなくてソーティングハットだ。
「こんな帽子、もう要らへん。ホグワーツはスリザリン1色でええやろ、ネビル・ロングボトム」
ヴォルディはソーティングハットをネビルの頭にかぶせました。帽子はネビルの目のあたりまですっぽりと覆っています。
背後で仲間たちがネビルをたすけようと動きます。DEたちは一瞬で杖を抜きました。杖は"Dumbledore's Army"のひとりひとりをぴたりと狙っています。
「逆らう愚か者がどーなるか。見せてやろうやないの、ネビル君」
ヴォルディが再び杖を振り、ソーティングハットは炎に包まれました。

【メモ】

ヴォルディもずっこけてたんですね。
ヴォルディとベラの関係、愛はないはずだけど、どんな感じなんでしょうか。

誰よりも早く絶叫を響かせたミネルバ。涙出ました。彼女はほんとにほんとにハリーを、グリフィンドールの受け持ちの生徒を、未来のあるコドモたちを、心底愛しているとてもよい先生。ハリーさん、マクゴナガル先生もおまえの家族だよ。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月30日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 35

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、不思議な場所で、懐かしいあの人と本当の会話をしましょう。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

35:King's Cross

うつ伏せに横たわり、目を閉じたまま静けさに耳を澄ませる。
周囲には、誰もいません。
長いことたって、いや、あるいは一瞬の後、ハリーは間違いなく自分が"存在"していると感じました。だって、何かの上に横になってるこの感じ、間違いないもん。
目を開けてみます。見えるぞ。とりあえず、少なくとも目はついてます。
白い霧に包まれ、白い床の上に横になっている。床は温かくも冷たくもなく、ただそこに存在している、不思議な感じです。
ハリーは起き上がってみます。そして自分の身体を見ようとすると、そこに身体が見えました。なんかしらんけど、誰もいないからべつにええけど、裸んぼじゃーん!
顔を触ってみる。メガネもありません。
そのとき、何もないどこかから、耳障りな音が聞こえてきました。何かが、もぞもぞともがきながら、床を叩く小さな音です。それはとても哀れな音、静かな泣き声の混ざった、聞きたくない音でした。
素っ裸なのがなんだか恥ずかしくなりました。着るモノがあればいいのに。すると少し離れた何もない床の上に、ローブがありました。柔らかく清潔で温かいそのローブを羽織り、ハリーは立ち上がって辺りを見回します。
ここはRoRなのかな?
見上げると、巨大な半球のガラスの円天井が、はるか頭上で日の光にきらめいています。なんだか宮殿みたいなところです。
その聞きたくない哀れな音以外、何の音もしません。
明るくて、とても大きな場所。ホグワーツの大広間より大きい。そこに、ただひとり。この嫌な音を除いて。と思ったら、見えました、その音を出しているモノが。
それは、小さな裸のコドモ。生皮を剥がれ、床に丸くうずくまるようにしてベンチの下にいるコドモです。喘ぐように呼吸しています。
傷を負った瀕死の小さなコドモなのに、なんだか近寄るのが怖い。ちょっとずつ近づいてみたものの、手を伸ばすことができません。
「たすけられん」
唐突に声がしました。
はっと振り向くと、アルバス・ダンブルドアが、ミッドナイトブルーのマント姿でこちらに歩いて来ます。無傷の両腕を大きく広げています。「ハリー、すばらしい少年、勇気ある者よ。少し歩こ」不快な音から遠ざかるように、ダンブルドアは、そこにはなかった2脚の椅子へと歩きます。銀色の長い髪と髭、半月型のメガネの奥の心を貫く青い瞳、ちょっと曲がった鼻、ハリーが知っているダンブルドアです。
「死んじゃったんじゃなかったの?」
「そうだよ」
「じゃ、ぼくも死んだの?」
「あぁ」ダンブルドアはとても優しく微笑んでいます。「そこが問題だ、そうだろう?けど、私はそうは思っていない」
「死んでない?」
「そのとおり」
「でも・・・」ハリーは戸惑いながら額の傷跡に触れます。あれれ、傷がないみたい。「ぼく、死んだはずなんだ。自分のこと守ろうとしなくて、あいつにぼくのこと殺させたんだ」
「それですべてが違ってくる」
光りのように、炎のように、見たことがないほど充実した幸福を、ダンブルドアは身体中から発散しています。
「説明してよ」
「もうきみにはわかってるはずだが」
「ぼくはあいつにぼくを殺させた」
「そうだね」
「それでぼくの中にあった彼の魂のかけらが・・・消えた?」
「それだ!彼が自分で破壊した。きみの魂は傷ひとつない、これですっかりきみ自身になったんだよ、ハリー」
「それじゃ・・・」ハリーは肩越しに、耳障りな音を出し続けるあの震える小さな生き物を見ました。
「あれは何?」
「私たちには救うことのできない何か」
「もしヴォルデモートがAKを使ったなら、なんでぼく生きてるの?今回は誰も身代わりになってくれてないのに」
「それもきみにはわかってる。よく考えて、欲望と残虐さに溺れた彼が、自分でも気づかぬうちに何をしてきたか、思い出してごらん」
考えようとするハリー、なぜか答えがすぐにわかります。「・・・ぼくの血をとった」
「それだ。彼はきみの血を使って肉体を復活させた。きみの血が彼の血管を流れている。リリーの守護がきみらふたりの中を流れているんだよ、ハリー。彼は、彼の命ときみの命を自分で結びつけてしまった」
「彼が生きている限り、ぼくも生きるってこと?でもぼく、両方とも死ななきゃならないのかと思ってた。でもこれって、同じこと言ってるのかな?」
ハリーはまたあの小さな生き物を見ます。「ほんとにたすけられない?」なんだか気になってますね。
「ハリー、きみは7つ目のホークラックスだった。作るはずではなかった、7つ目。彼の魂は不安定になりすぎていて限界だったのに、きみの両親を殺しきみも殺そうとしたら、不安定だから割れちゃった。彼はあの家に肉体だけを置いて逃げ出したつもりでいたが、それ以上のモノを置いてきてしまったんだ。彼の魂の破片は、殺すはずだったきみに、生き延びたきみの中に封印された。彼はまったく学習しない。ハウスエルフや、童話や、愛、忠誠、そして無垢であること、そーゆーのものを軽んじて、何も理解しない。何もだ。それらは、彼がまったく及ばないほどの強力な力を、"魔法"などが及ばない強大な力を持っているのに。彼はきみの血を使えば強くなれると思ったが、彼がリリーの犠牲と守護を生かしている。リリーの犠牲はきみらふたりの守護になった」
「はじめからわかってたの?」
「いやいや、推測していただけ。私の推測はけっこう当たるけどね」ダンブルドアは嬉しそうに微笑んでいます。しばらく黙ってそこに座り、長い時間が経ったような、時間は経っていないような、で、あのコドモは震えながら泣き続けています。
「ぼくの杖は、なんでやつの借り物の杖(ルシウスの)をやっつけたのかな?」
「確かなことは言えないが」
「じゃ推測してよ」
ハリーの言葉に、ダンブルドアは笑いました。今のハリーは遠慮なくずけずけと命令口調ですね、トムぐらいに。
「きみとヴォルデモート卿は、まだ誰も知らない魔法の国をともに旅してきた。私も知らない前人未到の領域だから、憶測だよ。ヴォルデモート卿は復活に際して、きみとの繋がりをより強固にしてしまった。魂の一部をきみにあずけている上に、きみの血まで使ったから。もしも彼が"犠牲"というもののとんでもない魔力を理解していたなら、きみの血は使わなかっただろう、触りたくもなかったはずだ。ま、それが理解できるくらいなら、彼は"ヴォルデモート卿"などにはならなかったし、殺人など犯さなかっただろうけど・・・。で、絆の深いその相手に、まずは兄弟杖で攻撃した。そしたら兄弟杖ならではのあの現象が現れた。最も恐怖を感じたのは、きみではなく彼のほうだよ、ハリー。きみは死を覚悟した、ヴォルデモート卿には決してできないことだ。きみの勇気が勝ち、きみの杖が勝った。それを杖は知っているんだ。所有者に起きたことに、杖は共鳴する。きみの杖は、ヴォルデモート卿の力と資質を吸収し、敵として記憶したわけ。だからきみの杖はヴォルデモート卿が現れたのを認識すると、ヴォルデモート卿の力と資質で反撃する。きみの杖は、今では、きみの類いまれな勇敢さとヴォルデモート卿の恐るべきスキルの両方を兼ね備えている。誰かに杖を借りたって無駄だ」
「そんなに強い杖なのに、ハーに折られちゃったよ」
「杖は"ヴォルデモート卿を"敵と見なすんだ。"ヴォルデモート卿にだけ"めっぽう強い」
ハリーは考え込みます、長い間、あるいはほんの数秒。ここでは時の流れがどうもおかしい。
「あいつは先生の杖でぼくを殺した」
「"殺し損ねた"が正しい。きみにもきみが死んでないってわかるだろう?きみの苦難を過小評価するわけじゃない。大変な思いをした、それはわかっているよ」
「ところでさ、ここって気持ちいい。ここどこ?」
「それは私がきみに聞こうと思ってたんだ。ここはどこだい?」
ダンブルドアに聞かれるまでわかりませんでした。けど、急にわかったぞ。
「キングスクロス駅みたい。すごくキレイで、誰もいないし、列車もないけど」
「キングスクロス駅か!なるほど、きみの世界に属する場所だね」
ハリーにはどーゆー意味かわかりません。でももっと他の質問が浮かんできました。
「ですりーはろうず」
ダンブルドアの笑顔が消えます。ダンブルドアは老人ではなく、いたずらをして捕まったコドモのような表情になりました。
「許してくれるかい?真実を語らなかった私を許すことができるかい?ハリー、私はただ怖かったんだ、私が失敗したように、きみが失敗するのが。私と同じ過ちを犯してほしくなかった。いや、きみは私より良い人間だと知っていたのに。許しておくれ」
ハリーはびっくりします。だって、ダンブルドアの知的な青い目には涙がいっぱい。
「死神の秘宝、向こう見ずな人間の夢、危険で、愚か者を惹きつける。私は愚かだった。きみが知っているとおりの愚か者だ。もうきみに隠し事はない。・・・死の支配者だ、ハリー、死の支配者!私は死を克服する道を求めた。私はこれでもヴォルデモートよりマシだろうか?」
「あなたはあいつなんかと違うよ!人殺しなんかしないもん。はろうずはホークラックスとは違うもん」今までぶっきらぼうな命令口調でなんだか怒っていたハリーですが、こうしてダンブルドアを目の前に、怒っているのもなんだか変だと思い始めました。
あの奇妙なコドモは泣き続けています。でも、もう振り向きません。
「グリンデルバルドも探してたの?」
ダンブルドアは頷きました。「同じ夢を見た2人の聡明で傲慢な少年たち。私たちは秘宝に夢中になったよ。彼はゴドリックズホロウに来たがった、Ignotus Peverellの墓があるからね」
「じゃ、ほんとなの?だんご三兄弟の話も?」
「もちろん。人気のない道で死神に会った、というより、あれほどの魔力を持ったモノを作ることができる天賦の才を持っただんご三兄弟はキケンな存在だった、という意味だろうがね。・・・透明マントは、きみも知っているとおり、父から子へ、母から娘へ、Ignotusと同じくゴドリックズホロウに生まれたIgnotusの子孫へと代々受け継がれた」
「それぼくのこと?」
「そうだよ」ダンブルドアはまた少し微笑みます。「なぜあれを私があずかっていたのか疑問に思うだろうが、ジェームズが死ぬ少し前、彼は私に透明マントを見せてくれた。あのときやっと、彼が学校でこっそりいたずらばかりできたわけがわかったよ!私は、自分が見ているモノが信じられなかった。バカな夢はずっと昔にあきらめたというのに、逆らうことができなかった。よく見たくて、触ってみたくて、借りたんだ。いにしえの、なのにほころびひとつない完璧なマントだった。・・・そしてきみのパパさんは死に、私は2つ目の秘宝を手に入れた。・・・私は、自分を軽蔑している」ダンブルドアはハリーの目を見るのがやっとです。
「ぼくは軽蔑なんてしてないよ」
「軽蔑されるのがあたりまえだ。・・・きみは私の妹のことを知った。マグルたちが何をして、妹がどうなったか。私のパパさんは復讐を果たし、代償を払ってアズカバンで死んだ。私のママさんは自分の人生を捨てて妹のためにすべてを捧げた」
そして冷たく言いました。「あろうことか、私はそれに腹を立てたんだ」
ハリーの肩越しに、ダンブルドアは遠くを見やります。「私は才能に溢れていた。私は聡明だった。家から逃げ出して、輝きたかった。栄光をつかみたかった」
ダンブルドアは年老いた表情に戻っています。「でも、誤解しないでほしい。私は彼らを愛していた。ただ、自己チューだったんだ。ハリー、私の知る限りもっとも他人を尊重することのできるきみとは比べ物にならないほど、私ははるかに自己チューだった。私のママさんが死んで、傷ついた妹と強情な弟の面倒を見なければならなくなって、村に戻ったよ。怒り、苦々しいと思いながら。家に縛られるなんて浪費だと思ってね。そして・・・彼が来た」
ダンブルドアはハリーの目をまっすぐ見つめます。
「グリンデルバルト。彼の考えていることがどれほど素晴らしく思えたか、想像もつかないだろう。我々魔法使いが勝利し、マグルは従属する。グリンデルバルドと私、栄光に満ちた若き革命の指導者。もちろん私には疑念もあった。自分の良心を、すべては偉大なる善のためだと意味のない言葉でごまかした。私は、心の奥の奥のほうで、グリンデルバルトが何者かを、はたして知っていただろうか?あぁ、おそらく私は気づいていた。でも、そのことに目をつぶった。もしも計画が達成されるなら、私の夢が叶うから。・・・ほんとはね、計画の中心にあったのは、死神の秘宝だったんだ。それらはどれだけ彼を魅了しただろう、私たちふたりを、どれほど虜にしただろう!権力の頂点に我々を導く無敵の杖、そして甦りの石、彼にとって石は・・・私はそれを知らないと自分を欺き続けたが・・・彼にとって石は、Inferiの軍隊を意味した。私にとっては、両親を呼び戻し、私の肩の荷を下ろすための道具だった。あとは透明マント。私たちはふたりともマントを使わなくても自分を見えないようにするのがうまかったから、マントのことはあまり議論しなかったけど、でも私はそれを、アリアナを隠すのにちょうどいいなどと考えていた。とにかく、3つ集めることに意味があった。そーすれば、死を克服できる。本当の意味で"無敵"になれる。・・・無敵の、死の支配者、グリンデルバルド&ダンブルドア!・・・一夏の狂気、一夏の残酷な夢、ただふたりの残された家族を、私は無視したんだ。・・・夏が終わり、あの弟によって現実が戻ってきた。私は、彼が私に真実を怒鳴りつけるのを聞きたくなかった。口論は大喧嘩になり、グリンデルバルトは歯止めが効かなくなった。その凶暴性に密かに気づいていたのに、知らんぷりをしていた。そしてアリアナは・・・ママさんが人生をなげうってすべてを捧げたあのアリアナは・・・死んで床に倒れていた」
ダンブルドアは泣き始めます。ハリーはダンブルドアの手を取り、あ、ダンブルドアに触ることができたぞ、強く握りしめます。
「グリンデルバルドは逃げた。そんな気はしていた。権力の頂点へ向かう計画と、マグルを痛めつける陰謀と、死神の秘宝への夢を手に、忽然と姿を消してしまった。私は妹を埋葬し、この取り返しのつかない罪と重い後悔を背負って生きると決めた。・・・年月が流れ、あるとき彼の噂を聞いた。とんでもなく強力な杖を手に入れたと。その頃の私は大臣の職を何度か薦められていた。でも決してそれを受け入れなかったよ。権力構造の中で私などが信頼されるはずがない」
「そんなことない!ファッジやスクリムジャーよりずっといい大臣になったはずじゃん!」
「そうだろうか。私はすでに若い頃に証明してしまった、"力"こそが私の弱点だと。権力など欲しない者が上に立つべきなんだ、真のリーダーシップを持つきみのようにね。私にはホグワーツが合っていた。良い教師にはなれたと思う」
「良いどころか、いちばんだってば」
「きみは優しい子だ、ハリー。でも私が学校で授業をやってる間に、グリンデルバルドは軍隊を組織してしまったよ。彼は私を怖れていると聞いたが、いやたしかにそうだったろうが、本当は私が彼を怖れていたんだ、彼が私を怖れる以上に。死の恐怖ではない。彼の魔力でもない。私たちはほぼ互角、いや、実際は私のほうが強かったと思う。力比べではなく、私が怖れたのは真実だった。誰が妹を殺してしまったのか、もう知る術もないけど。・・・きみは私を憶病者と思うだろう。そのとおりだな。彼は私が何を怖れているかを知っていた。私は彼と会うことを拒んだ。これ以上遅らせるのはさすがに恥だと思うまで遅らせ続けた。その間に人々は死に、彼は止められない勢いだった。私はするべきことをしなければならなくなった。きみが知っているとおり、私は勝って杖を奪った」
長い沈黙の中でハリーは考えます。誰がアリアナを殺したかを、ダンブルドアは知ったのだろうか。でもそんなことかまわないや。ダンブルドアもきっと話したくないだろうし。ハリーにはとうとうわかりました、ダンブルドアがthe Mirror of Erisedを覗いたときに何が映るのか。あのとき。なぜダンブルドアには、ハリーのことがわかったのか。もう耳障りな泣き声など気になりません。
「グリンデルバルドはヴォルデモートから杖を守ろうとしたよ」
ダンブルドアは、涙の滴が落ちた自分の膝を見つめ、頬を濡らしたまま頷きました。
「Nurmengardの独房で、彼はついに深く後悔したと聞いている。それが本当だといいね。彼には自分がしたことが恐ろしく恥ずかしいことだと理解してほしい。ヴォルデモートに嘘をついたのは、その後悔のためだろう、彼が秘宝を手に入れるのを防ごうと・・・」
「あるいはあなたのお墓が荒らされるのを防ごうと」ハリーが付け足します。
「それから長いこと経って私はうち捨てられたゴーント家から復活の石をみつけた。彼とは別の理由で、秘宝の中で私がもっとも欲したモノだ。私は片手を失った。それがホークラックスだということも、呪われているだろうということも、忘れていた。私は指輪をはめ、すぐにアリアナの気配がした。ママさんも、パパさんも来てくれた。私は彼らに謝り続けた。・・・私はそのような愚か者だ、ハリー。この人生を生きてもなお、私は学ばなかったんだ。私は秘宝を持つにふさわしくないということを、最後にまた証明してしまった。これが私なんだよ」
「家族に会いたいのって、フツーじゃん。悪いことじゃないよ」
「おそらく、秘宝を集めることができる者は100万人にひとりだ、ハリー。私は、ニワトコの杖には認められた。それを持っていることを威張らないし、その道具を殺しに用いたりしない。私はそれを欲で奪ったのではなく人々を救うために手に入れた、だから杖は私がそれを使うことを許してくれた。だが透明マントは、無駄な興味で手に入れてしまった。だから本当の持ち主であるきみに働いたようには、私には働いてくれなかった。そして石は、きみのときのように犠牲を赦すのではなく、私は平和に過ごしている彼らをいたずらに引きずり戻しただけだった。・・・私ではない。きみこそが、秘宝を持つにふさわしい」
ダンブルドアはハリーの手を優しく叩き、微笑みかけています。ハリーはもうダンブルドアのことを怒っていません。
「なんでこんなに難しくしたの?」
ダンブルドアの笑顔が震えています。
「私はね、グランジャーさんがきみを少しだけ遅らせてくれると思ったんだ。きみの善良な心が、秘宝を求める情熱に支配されしまうのが怖かったんだよ。私のように、ふさわしくないときにふさわしくない理由で、それらを手にしてしまうのを怖れた。正しい心で安全に手に入れてほしくてね。きみは本当の、死神の克服者。ホンモノは決してそれから逃げたりしない。ホンモノは死を受け入れ、死よりももっとつらいことはこの世にこそあると理解する」
「ヴォルデモートははろうずのこと知らないの?」
「知らないんじゃないかな?あの石の価値に気づかずホークラックスにしちゃったし。でもハリー、もし知っていたとしても、あまり興味は持たなかったかもしれない。彼も透明マントは必要ないし、黄泉の国から取り戻したい人なんているはずもない。彼は死を怖れただけだ。誰のことも愛しはしなかった」
「杖はほしがると思った?」
「きみの杖がリトルハングルトンの墓地でヴォルデモートに打ち勝ったとき、いずれあの杖を手に入れようとするだろうと思ったよ。最初彼は、きみがとんでもなく高度な魔法で自分を負かしたと思った。ところがオリバンダーさんを拉致ってみたら兄弟杖だと聞かされ、これですべて説明がつくと考えた。ところが借り物はまたきみに負けた。ヴォルデモートは、きみの杖をそれほどまでに強くするきみの資質について、きみだけが授かり自分が持たない力とは何かと自問するかわりに、最強の杖を追ったんだ。それさえ手に入れれば、ただひとつの弱点を克服できるぜ無敵だぜ、と信じてね。かわいそうなセヴルス・・・」
「あなたの死がスネイプと一緒に計画されたなら、ほんとは彼にニワトコの杖の最後の所有者になってほしかったんじゃ?」
「そう思ったが・・・そのとおりにはならなかったね」
長い時間、ハリーとダンブルドアはそこに黙って座っていました。あの奇妙な生き物はもぞもぞ動き喘ぎ続けています。

次に起きることが、静かにゆっくりと、優しく降り積もる雪のように、ハリーの中に積もりました。
「ぼく、戻るんだよね?」
「きみ次第だよ」
「選べるの?」
「もちろん」ダンブルドアがハリーを見つめて微笑んでいます。「ここはキングスクロスなんでしょ?もしきみが戻らないと決めたら、きみは、列車に乗れる」
「どこに向かうの?」
「この先へ」
ハリーはしばらくの間黙ります。
「ヴォルデモートはニワトコの杖を手に入れたんだ」
「たしかに、ヴォルデモートは杖を"手に持ってる"」
「それでもぼくは戻るべき?」
「もし戻るなら、きみにはすべてを終わらせるチャンスがもう1度あると思うよ。確かなことは言えないが、少なくとも私にはわかっていることがある。ハリー、彼と違って、またここに来るのは怖くないだろう」
ハリーは、生皮を剥がれ丸くなって泣き続ける裸のコドモを見ます。
「死者に情をかけるな。ハリー、生きている者にこそ慈しみを持つんだ。特に、愛なしに生きる者に。戻れば、傷つく魂を、引き裂かれる家族を、減らすことができる。そこに価値を見出すなら、今しばらくのさよならだね」
ハリーは頷きます。温かく明るく平和なこの場所を去るのは嫌だけど、また苦痛と恐怖と喪失の世界に向かうことになるけれど、森に向かうときほど難しくはありません。
ハリーは立ち上がりました。ダンブルドアも立ち上がりました。長い瞬間、互いを見つめ合います。
「最後にもうひとつだけおしえて。これは現実?それともぼくの頭の中で起きてるのかな?」
ダンブルドアがきらきらと微笑みます。その声は、大きく、力強く、耳の中で響きます。再び白い霧がすべてを覆い始めます。「もちろんきみの頭の中だよ、ハリー、でも、なぜそれが現実じゃないと言い切れる?」

【メモ】

「説明しろ」ととんでもなく失礼な命令口調のハリーさん、あんたはやっぱりトム・リドルにそっくりです。ヴォルディの"部分"が消えても、ハリーのトム癖は健在。ハリーを完全無欠にしないところが深いっすねー。

生皮を剥がれたこのかわいそうな裸のコドモ、これはヴォルディの限界まで損なわれた魂の姿っすね。
無傷の魂を持ったままのハリーは、メガネも要らないし傷跡も消えて、まっさらな状態。
ふたりの魂が、三途の川(limbo)にやってきたわけです。

さるおが泣いたのは「きみは列車に乗れる」「どこに向かうの?」「この先へ」のところっすね。
さるおのイメージではホグワーツ特急、スカーレットに輝く力強い蒸気機関車です。
そっかー、列車というのはいつだって、"知らない世界に運んでくれる"乗り物なんだなぁ。『PS』でハリーは魔法使いだと知らされ、まだ知らない魔法の国に、冒険の世界に、真っ赤な汽車で第一歩を踏み出したわけです。
今度は、この世を終えたあとの、次の冒険の旅へ、列車に乗って出かけることができる。ハリーには乗る資格があるよということです。死んでもいいんだよと言ってくれている。優しいですね。
そしてその列車はハリーをどこへ連れて行くのか?
答えはとてもシンプルに"On,"でした。さるおはこれを、前へ進むんだと、先にある世界に行くんだと、次の冒険の舞台へ連れて行ってくれるんだ、と解釈しましたよ。
あーん、もう、ハリポタって素晴らしい。
ダンブルドアはキングスクロス駅を"きみの世界に属する場所"(your party)だと言いました。それぞれが、"その人の世界"から旅立つわけですね。ダンブルドアはどこを通って冒険の旅に出かけたのかなぁ。

心ゆくまでさるお、もんち

2008年01月22日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 34

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ついに真実を思い知らされてしまいましたが、やっぱ怖いよな。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

34:The Forest Again

ついに、真実を知るときがきた。
かつて、勝利のためのヒミツを学んだはずの校長室の、埃っぽいカーペットに突っ伏して横たわったままのハリーは、ついに、はじめから自分には生き残る選択肢がなかったことを知ります。彼の使命は、両手で迎える死神のもとへ、ただ静かに歩いて行くことでした。
ヴォルディの待つ森へ、杖など構えず、己を守ろうともせず、ただ歩いて行く。ヴォルディを生かし続けたてきた自分のこの命が終わると同時に、あの夜ゴドリックホロウでなされるはずだった終焉が訪れる。
Neither would live, neither could survive.
定められた運命に逆らいハリーを生かそうとするかのように、心臓がドキドキと暴れています。
死ぬのって、痛いのかな。
思えば、ハリーはこれまで生き延びてきました。なぜなのか、考えもしませんでした。ハリーの生きたいという意志は、常に死の恐怖を上回っていた、けれどもう、それも終わり。逃げる道は残されていません。ハリーを待つのは、死です。
もし、プリベット通り4番地を出たあの夏の夜に死んでいたら、ヘドウィグのように一瞬で死ねたら、この真実を知らずに済んだのに。あのとき不死鳥の杖はハリーを救いました。
もし、この戦闘で失った自分が愛する誰かのために、杖の前に立ちはだかって代わりに死ねていたら、この真実を知らずに済んだのに。それを行えた両親が、今では羨ましく感じます。
知っている勇気とはまったく別の勇気、異なる種類の勇敢さ、それが必要。指先がかすかに震えています。喉も口の中もカラカラです。

ゆっくり、とてもゆっくり起き上がる。ゆっくりと、深く呼吸する。そうすれば、今はまだ生きていると感じることができるから。ぼくが今日まで生き延びてきた奇跡を、ぼくは今までなんとも思ってなかった。
ダンブルドアの裏切りは、もうどーでもよかった。そこにあったのはとても大きなプラン。ぼくがただ愚かで、気づかなかっただけ。なぜぼくに生きていてほしいのか、聞いたこともなかった、当然だって思い込んで。
今でははっきりわかります、ハリーの寿命は、ハリーがすべてのホークラックスを破壊するのにどれだけ時間がかかるかによって決まっていたのだと。
ダンブルドアはそのシゴトをハリーに引き継がせ、ハリーは従順にヴォルディを追い詰めているつもりが、自分の命のろうそくを削ってきたのです。なんと完全なプランだろう。なんと美しいプランだろう。多くの命を失うことなく、殺される運命の少年にキケンなシゴトをやらせる。そしてその少年の死は、不幸な損失ではなく、ヴォルディへの最後の反撃となる。
ダンブルドアにはわかっていた。たとえそれが自分の死を意味しても、ハリーは決して立ち止まらないと。
ダンブルドアにはわかっていた。ヴォルディも知っていた。誰かが自分のために死ぬなんて、ハリーには決して我慢できないと。
でも、ダンブルドア、あなたはぼくを買いかぶりすぎた。ぼくは失敗したんだ。ナギニちゃんがまだ生きている。ぼくが死んでも、まだヴォルデモートにはヘビがいる。
ぼくが死んだら、誰が続きをやるのかな。もちろん、ロンとハーに決まってる。だからダンブルドアはぼくに、きみには友達が必要だなんて言ったんだ。誰かが続きをできるように。
ロンとハーが、なぜか手の届かないほど遠くにいる気がします。別れてから、長い時間が経っているような気がします。
さよならは言わない。説明はしない。ふたりはきっとぼくを止めようとするから。
最初から、彼らと一緒にゴールすることなんてできない旅路だったのです。
モリーにもらった金時計を見る。30分が過ぎました。死ななければならない。終わらせなければならない。
心臓はドキドキと、暴れる小鳥のように鳴っています。残された時間を知り打ち急いでいるのかもしれません。
ハリーは振り返ることなく校長室を後にしました。

城は静まり返り、肖像画も空のままです。
ハリーは透明マントをかぶり、大理石の階段を降り、エントランスに向かいます。
心のどこか、心のほんの小さな一部分が、願っています。誰かぼくを見つけて、誰かぼくに行かなくてよいと言って。
ネビルがオリバー・ウッドとともに、校庭に横たわる遺体を運び込んでいます。
あ、コリン・クリービーだ。未成年なのに、きっとこっそり戻ってきたんです、ハリーと一緒に戦おうとして。小さなコリンをオリバーが担ぎ上げて歩いています。
手の甲で額を拭い、一瞬立ち止まるネビルが、まるで年老いたように見えます。
ドア越しに大広間をちらりと見ると、労り合う傷ついた人々が見えます。ハーもロンもジニーも、他のウィーズリーも、ルナもいません。もう1度だけ、みんなの姿が見たいのに。いや、このほうがいいんだ。みんなと向き合うなんてできない。
校庭に出ます。まだ暗いけど、もうすぐ明け方の4時です。
別の遺体の上にかがみこむネビルに近づき、ハリーは声をかけました。
「ネビル」
「わぁ、びっくりした、ハリー、心臓が止まったと思ったよ!」
ハリーは、透明マントを脱ぎました。
「ひとりでどこ行くの?」
「こーゆープランなんだ。やらなきゃいけないことがあるから。聞いて、ネビル」
「ハリー!」感のいいネビル、はっとしてこう聞きます。「ヘビ男んとこ行く気じゃないよね?」
「ま、まさか」嘘をつくハリー。「ちょっとの間姿を消すけど。・・・ネビル、ナギニちゃんって知ってるよね?」
「うん。聞いたことある」
「殺さなくちゃいけないんだ。そのことはロンとハーが知ってる。もしも彼らが・・・」
言えません。そんなこと、言えない。息が苦しい。
どれほど残酷であっても、ぼくは今ダンブルドアみたいにならなきゃ、落ち着いて、バックアップが必要なんだ、誰かが続きをやらなきゃ。ダンブルドアはホークラックスのヒミツを知る人間を3人残して死んだ。ネビルがぼくの代わりになる。そーすれば、ぼくも3人残せる。
くじけそうになりながら、自分を励まし、言葉を続けます。「もしも彼らが・・・たとえば忙しくて・・・きみにチャンスがあれば・・・」
「ヘビを殺すんだね」
「うん」
「わかった」
「ありがとう、ネビル」
ハリーが歩き出そうとしたとき、ネビルがハリーの手首をつかみました。
「ぼくらはみんな、戦い続ける。ハリー、そうだろ?」ハリーの肩を叩いてくれました。
「うん。ぼく・・・」
もう言葉が出てきません。
ハリーは透明マントをかぶり、再び歩き出しました。少し離れたところにジニーがいます。
「だいじょうぶ、心配ないわ、すぐ中に連れて行ってあげるから」
「家に帰りたいの。これ以上戦いたくないの!」
「わかるわ。家に帰ろう」傷を負った女の子を励ましているんですね。
大声で叫びたい衝動に押し流されそうです。ぼくがここにいるって気づいて!ぼくがこれから行くところを、知っておいて!ジニー、ぼくを止めて、引きずり戻して、ぼくを家に連れ帰ってよ。
でも、それでも、ホグワーツこそがハリーの"家"。ハリー、ヴォルディ、スネイプ、見捨てられた少年たちの、家。
ハリーは歩きます。苦しくても、そしてこれが最後でも、ジニーに知られないまま、横を通りすぎる。
ジニーは振り返りました。まるでハリーを感じたかのように。でもハリーは振り返らない。
銅のやかんにお湯が沸き、お茶とケーキが並び、ヒゲだらけの大きな顔がいつも迎えてくれたハグリッドの、静まり返った小屋を過ぎ、森までやってきました。
そのとき、ディメンターの一団が木々の間を飛んでいるのに気づきました。もうパトロナスを呼ぶ力はありません。身体中が震えています。
戦って、苦しんで、真実を知った今になっても、死神の待つ森へ歩い行くことは簡単ではありません。
緑の香りが、冷たい空気が、ひとつひとつの呼吸が、とても貴重に思えます。みんなは、これから何年も生きて行く。ぼくにはもう費やすべき時間がない。無理だ、森へなんて行けない。でも行かなければなりません。
長い長いゲームは終わりました。スニッチはもう飛んでいません。地上に降りる時間です。
そして突然思い出しました。
I open at the close.(私は閉じるときに開く)
今が"閉じるとき"。"終わり"を意味しているんだ。今がそのときだ。
ハリーはハグリッドのポーチからスニッチを出し、口づけしたままこう囁きます。「ぼく、死ぬことにした」

スニッチは割れました。震える手でドラコの杖をとり明かりを灯すと、中にあったのは、ひび割れた黒い石です。ゴーントの指輪の石、あのシンボルが刻まれた"The Resurrection Stone"です。
ハリーにはわかります。死者を呼び戻すんじゃない、ぼくが仲間に加わるんだ。呼んでいるのはぼくではなく、彼らなんだな。
目を閉じて、手のひらで石を3度転がします。
人の気配がします。
来てくれたんだね、ぼくが会いたい人たちが。
目を開けると、ゴーストと人間の中間ぐらいの姿で、でもちゃんと見えます、微笑んでこちらに歩いてくるみんなが。
ハリーと同じ身長で、死んだ夜の服装で、はねた黒髪にメガネがかすかに曲がっている、ジェームズ。
背が高くてハンサムで、ポケットに手を入れて大股で優美に歩き、いたずらっぽく笑う、シリウス。
若々しくて、髪が多くて、この懐かしい場所に戻ってきたのが嬉しそうな、幸せな顔のリーマス。
にっこりと笑い、長い髪を手でまとめながら、緑の瞳でハリーをしっかりとみつめるリリー。
リリーが言います。「すごく勇敢だったわ」
ジェームズが言います。「もうすぐだよ。あとほんの少し。ぼくらはきみを誇りに思う」
「痛いの?」予想もしていなかったコドモっぽい質問が、ハリーの口から出ます。
答えてくれたのはシリウスとリーマスです。「痛くも何ともない。眠るより簡単さ」「向こうも早く終わらせたがってる」
思わずハリーはこう言います。「みんな、死なないでいてほしかったのに」、特にリーマスを見つめて「ベビーちゃんがいるのに。リーマス・・・ぼく・・・ぼく・・・」
「うちの子をもう見られないのは残念だけど、いつかあの子にはわかる、私がなぜ死んだのか。私はこの世界を、彼が幸せになれる世界にしようとしたんだと」
森からの風がハリーの髪を撫でます。ぼくを呼んでる。4人は何も言いません。ハリーの決断を待っています。
「そばにいてくれる?」
「最後まで」ジェームズが答えます。
「見えないよね?」
「私たちはきみの一部だ。誰にも見えないよ」シリウスが答えます。
「近くにいて」これはハリーが母親にする、最初で最後のお願いです。
ハリーは透明マントを身体に巻きつけるようにして歩き出しました。ディメンターは寄ってきません。きっと4人がパトロナスになって守ってくれているんです。
森の奥へ奥へ、ただひたすら歩く。ヴォルデモートに辿り着くことはわかっています。
ハリーの両隣を4人が並んで歩いています。彼らがそばにいる。それだけが、ハリーの勇気です。それだけが、ハリーの足を1歩ずつ動かしています。ずっとずっと奥まで。死神が待つ森の奥まで。

「誰かいるぞ」「ガキは透明マントを持ってる」
囁き声がします。
ハリーが立ち止まると、4人も立ち止まりました。
杖を構えて木の陰から飛び出してきたのはヤクスリーとドロホヴです。ハリーが見えない2人は森の奥へと歩き出しました。ハリーは跡を追います。
前方に、明かりが見える。焚き火を中央に、ある者はマスクをかぶり、ある者はフードをかぶり、DEが輪を作って座っています。巨人が2人、フェンリルは爪を噛んで、ベラ姐はもちろん、まるほいパパ・まるほいママもいます。全員がヴォルディを見つめています。
そこはかつてアラゴグがいた場所、巨大な巣が今も残っています。アラゴグのコドモたちはいません。
リリーがハリーに微笑み、ジェームズがハリーに頷きます。だいじょうぶ、そばにいるよと。
ヴォルディは立って祈るように頭を垂れ、ニワトコの杖を握っています。背後に浮かぶ球体にはナギニちゃんがいる。
「ガキの気配はありません」ヤクスリーの報告にヴォルディが顔を上げます。
「来ると思ったんやけどな」目は焚き火の炎を見つめています。
誰も何も言いません。DEたちも恐れているんだな。
ハリーは少し離れた場所に立ったまま、透明マントを脱ぎ、杖と一緒にポケットに入れました。
「思い違いか」ヴォルディが静かに言います。
ハリーは、できるかぎりの大声で言いました。「思い違いじゃないYO!」
怖れていると知られたくない。
汗で、"The Resurrection Stone"が手から滑り落ちます。一瞬、ハリーの視界の隅に4人が見え、そして消えました。
ハリーはゆっくりと明かりに近づきます。静かだったDEたちは、立ち上がって叫びながら、笑いながら、ハリーを見ています。
ヴォルディは動きません。赤い瞳が、ただハリーを凝視しています。
「ハリー!来るなー!」
その絶叫は、近くの木に縛りつけられたハグリッドでした。
「静かにしろやー」
ロウルが杖を振り、ハグリッドは黙らされました。
ベラ姐は呼吸も荒くギラギラした目でヴォルディとハリーを見ています。
メラメラと燃える焚き火の炎と球体の中を蠢くナギニちゃん以外、すべてが静止しています。
杖を出すつもりはありません。もしここからヘビを狙えるとしても、ハリーが呪文を唱えるより先に、15発の呪文が飛んでくるのはわかっています。
見つめ合う、ヴォルディとハリー。
「ハリー・ポッター。生き残った少年か」ヴォルディは小首をかしげ、やがて口元に、よろこびとは無縁の恐ろしい笑みを浮かべました。
誰も動かない。みんな待っています。すべてが、ヴォルディの次の動きを待っている。
ハリーはなぜかジニーのことを思います。ジニーの、あの炎のように激しく燃える瞳を。そしてジニーとのチューを。
ヴォルディが杖を上げました。何が起こるのかとコドモのように小首をかしげたまま。
ハリーはヴォルディの赤い瞳を見つめ返します。心の中では、ぼくが泣き出さないうちに、早くやっちゃってー、と思いながら。
ヴォルディの唇が動くのが見えました。そして緑色の閃光に包まれ、すべては終わりました。

【メモ】

やっぱり、やっぱりそーだったんだ。ハリーは死神の腕の中に歩いて行かなければならなくなった。勝つために苦難を乗り越えてきたのに、それは違った。運命は最初から決まっていたなんてー。えーん。
Neither would live, neither could survive.
シビルの予言では"neither can live while the other survives ..."ですね。
ハリーというホークラックスが死んで、ロンかハーかネビルがナギニちゃんを殺して、ヴォルディが残る。でももうヴォルディは"不死"ではないから、たとえ力で勝てる人が現れなくても、年とったら死ぬわけです。
でも、ほんとにそうかな。
Joが言ってました。ハリーは最後にリリーがやったことと同じことをやるんだって。ダンブルドアが言ってました。ハリーはジェームズよりもリリーに似ていると。
さるおはそれを"自己犠牲"かと思ってましたが、違います。リリーのしたことは"ハリーを守った"ということです。リリーがハリーを運命のこの日まで生かし続けた。ならばハリーにも、誰かを守れるんじゃないか。丸腰でただそこに立ち、ジニーを思い、緑色の閃光に包まれたハリー。守護をジニーに。あるいは、守護を愛する者たちに。そーゆーことじゃないかと思います。
さらに、これでハリーが死んじゃうんなら、"the Deathly Hallows"が出てきた意味がない。
透明マントは持ってます。石も手に入れた(落としちゃったけど)。そしてニワトコの杖は、ほんとはハリーが持ち主のはず。
ニワトコの杖の持ち主が代わるたび血が流れたのは、オリバンダーさんの言ったとおり、杖のせいではなく人間の愚かさのせいだと思います。だとすれば、杖の持ち主はダンブルドアからドラコへ、そしてハリーへと受け継がれているはずなんだよね。
"the Deathly Hallows"を3つ集めたら死神を退けることができる。だからハリーはこのまま死んだりするはずないさ。(まだページが残ってるし)

ホグワーツは、ハリーの家。ハリー、ヴォルディ、スネイプ、見捨てられた少年たちみんなの家。これでまた号泣なのです、わたくしは。

ダンブルドアが知っていたように、ヴォルディが知っていたように、やっぱりハリーは決して立ち止まらなかった。誰かが自分のために死ぬなんて、決して我慢できなかった。素晴らしいっす。そして、死ぬのを怖がり、怯え、止めてほしいと心の中で懇願しています。素晴らしい。
でももう試合は終わる。ほうきから降りる時間がきた。長い、とても長いクィディッチを、戦ってきたんだなぁ。
親を知らないハリーが、甘えたことのないハリーが、17年の生涯でただ1度だけ、自分が殺されに行くと知り、天国にいる親たちに、そばいてくれと、もう、涙で字が読めねーずら。

長い指が"クモのような"手をしたヴォルディ、アラゴグのネットの下で待ちかまえてるなんて、またしてもハリポタは美しいっすね。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月20日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 33 (3)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ついに、愛すべき究極のヒミツの、切なくも孤高の人生のヒミツの、後半です。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

[記憶10]
校長室です。何かが、まるで傷を負った動物のように、痛々しい音を立てている。スネイプが椅子に崩れ落ち、それをひどく険しい表情のダンブルドアが見つめています。
「私は・・・あなたが、彼女を・・・守ってくれると思っていたのに・・・」
「彼女とジェームズは、信じるべきではない人間を信じてしまった。きみはヴォルデモート卿に、彼女を殺さないよう頼んだのではなかったの?」
瀕死の動物のように、スネイプの呼吸は乱れています。
「彼女の息子は生き延びた。彼女の瞳をそのまま受け継いで。リリー・エバンズの瞳を覚えているだろう。色も形も、覚えている?」
「やめてくれ!」スネイプが叫びます。
「セヴルス、その感情は後悔か?」
「いっそ死んでしまいたい」
「おまえが死んでもどーにもならん」ダンブルドアは冷たく言います。「きみがリリー・エバンズを愛していたなら、心の底から愛していたなら、進むべき道ははっきりしている」
「・・・どういう意味です?」
「きみは、なぜ彼女が死んだか、いかに彼女が死んだかを知っている。決して無駄にするな。リリーの息子を守れ」
「ダークロードが死んだのに?」
「ダークロードは戻ってくる。そのとき、ハリー・ポッターはおそろしい危険にさらされる」
沈黙が校長室を満たします。やがてゆっくり口を開くスネイプ。
「わかった。わかりました。でも、このことは絶対誰にも言わないと誓ってください、ダンブルドア!私たちだけのヒミツにすると。でなければ、ポッターの息子など守れない!」
「誓おう、セブルス。決して誰にも話さない。これでいいか?」ダンブルドアは溜め息をつき、獰猛に見えるほどに耐え難い苦痛に満ちたスネイプの顔を見ました。

[記憶11]
スネイプがダンブルドアの前を行ったり来たりしています。
「凡才のくせに父親そっくりに傲慢で、有名人なのをよろこんで平気で規則を破り目立ちたがる・・・」
「思ったとおりの子か、セヴルス。他の先生たちは、謙虚で好感のもてる子で、才能もあるって言ってるけどな。私も個人的には、魅力のあるコドモだと思うが」『Transfiguration Today』から顔も上げずにしゃべっていたダンブルドア、本を閉じてこう言います。「クィレル、見張っといて」

[記憶12]
ユールボールの終わったエントランス。
「それで?」とダンブルドアがスネイプに声をひそめて聞きます。
「カルカロフのヘビ印も濃くなってます。怯えて、慌ててました、ダークロードの敗走後、彼は魔法省に証言してるから。ヘビ印が熱くなったら逃げ出すでしょう」
「そうか」
そこへ、校庭からフラー・デラクールとロジャー・デイヴィーズがくすくす笑い合いながら校舎に入ってきます。
「きみも逃げ出すか?」
「いいえ。私は臆病者ではない」スネイプもフラーたちを目で追います。
「そうだね。きみはイゴール・カルカロフより、はるかに勇敢だ。組み分けは早急すぎたかな」
打ちひしがれたような表情のスネイプを残してダンブルドアは歩き去って行きました。

[記憶13]
夜の校長室。玉座のような椅子にぐったりと沈み込み、死にそうに弱ったダンブルドア。右手が黒く焼けてます。
スネイプはダンブルドアの右手首に杖をあて、片方の手でゴブレットに入った黄金色の薬品をダンブルドアの口に垂らしながら、もごもごと早口で呪文を唱え続けています。
ダンブルドアが目を開きました。
「なぜです。なぜあなたはこの指輪をはめたのですか?呪いがかかっていることくらい、わかっていたはずなのに。なぜ触ったのですか?」
石の割れたマーヴォロ・ゴーントの指輪が机の上に置いてあります。かたわらにはグリフィンドールの剣。
「私は・・・愚かだったんだよ。ひどく誘惑されてしまってね」
「いったい何に?」
ダンブルドアは答えません。
「ここに戻って来られたのは奇跡だ。この指輪にかかっている呪いはとんでもなく強力です。右手だけにとどめましたが・・・」
ダンブルドアは痛々しい真っ黒な右手を上げ、興味深いものを観察するように眺めています。
「よくやってくれたね、セヴルス。私にあとどのくらい時間があると思う?」
さらっと質問するダンブルドア。スネイプは躊躇しながらこう答えます。
「はっきりとは言えません。たぶん1年。この呪いは止められない。やがて身体中にひろがり、時を経るにつれますます強力になっていくでしょう」
ダンブルドアは微笑みます。1年生きられないかもしれないと言うのに、そんなの何でもないと言うように。
「私は運がいい。とても運がいいよ。セヴルス、きみがここにいてくれてよかった」
「もう少し早く呼んでくれたら、もっと軽くできたのに。もっと時間をあげられたのに!」
スネイプさん、悔しくてほとんど怒っています。
「この剣で呪いが破れるとでも思ったのですか?」
「うんまぁ、そんな感じ。ところでさ、ヴォルデモート卿はかわいそうなまるほい少年に私を殺させるつもりかな」
スネイプさん、ほんとはダンブルドアの右手の話がもっとしたいんですが、ダンブルドアがその話を切り上げたのがわかるので逆らいません。
「ダークロードはドラコにそんな期待はしていない。ルシウスがヘタレなのを罰しているだけです。ゆっくり行う拷問だ。失敗すればまた罰です」
「彼は死を宣告されたようなもんだな。ドラコが私の殺害に失敗したら、きみが代行?」
沈黙が流れます。
「おそらく・・・それが・・・ダークロードのプランでしょう」
「もうヴォルデモート卿は、ホグワーツにスパイはいらんの?」
「ホグワーツはやがて手に入ると思ってるから」
「もしホグワーツが落ちたなら、そのときには、ホグワーツの生徒を全力で守ってくれるよね?」
スネイプはしっかりとうなずきました。
「それならよかった。じゃまずは、ドラコの動きを探ろう。怯える10代というのはキケンだから。ドラコに好かれているきみが、手を貸すと、たすけてやると言えば・・・」
「ルシウスの立場を私が奪う気だとか言って、最近のドラコは私になついていませんが」
「まぁやってみてよ。あの子が心配だから。ヴォルデモート卿の仕返しからあの子を守る方法は、結局んとこひとつしかないんだけどさ」
「まさか、あの子に自分を殺させる気ですか?」
「違う違う。"きみが"私を殺すの」
とても長い沈黙が流れます。
「私にあなたを殺させたい?なんなら今ここで?」重く、皮肉めいた口調です。「それとも墓碑銘を考えてからにしますか?」
「えーっと、もうちょっと後にして」黒い右手を指し示し、微笑むダンブルドア。「いずれそのときは来る。ほらね、1年以内にそのときは来るよ」
「死ぬのがかまわないなら、どうしてドラコじゃダメなんですか?」
「あの子の魂はまだそんなに傷ついてない。私のために引き裂きたくないんだ」
「私の魂は?ダンブルドア、私はどーなってもいいと?」
「老人が苦しみや辱めを避けるのを手伝うんだよ、きみの魂が引き裂かれるかどうかは、きみにだけはわかるだろう。これは私の大きな頼みごとだ。死はいずれ訪れる。"The Chudley Cannons"がリーグ最下位でシーズンを終わるのと同じくらいに確実にね。正直言えば、苦しまずに素早く死にたい。グレイバックに噛まれるのも嫌だし、食べる前に食べ物を弄ぶようなベラちゃんにいたぶられるのもごめんだ」
ダンブルドアの口調は明るく、心を射貫くその青く輝く瞳は今、スネイプを射貫いています。
再び無言でうなずくスネイプに、ダンブルドアは満足そうにお礼を言いました。

[記憶14]
たそがれどきの校庭を、ダンブルドアとスネイプが散歩中です。
「夜な夜なポッターとどこほっつき歩いてるんですか?」スネイプがぶっきらぼうに聞きます。
ダンブルドアはなんだかうっとうしいみたい。「なぜそんなこと聞くんだ、セヴルス。あの子にこれ以上の罰を与えないでくれよ、もっと大変なことになるんだから」
「父親そっくりだ」
「あの子は本当は母親に似てるんだよ。彼と話しがあるから一緒にいるんだ。情報をできるかぎり残さないと、手遅れになる前に」
「情報・・・あなたは私ではなくあの子を信頼しているのか」
「信頼とかじゃないってば。わかってるだろう、私には時間がない。あの子がなすべきことをなせるように、充分な情報を伝えとかなきゃならないんだよ」
「ならば、なぜ私にはその情報をおしえてくれないのですか」
「私はヒミツを1つのバスケットに入れておくのが好きじゃないんだ。特にヴォルデモート卿の手が届くバスケットにはな」
「あなたの命令に従うバスケットだ!」
「きみはよくやってる。セヴルス、きみを疑ってるんじゃない」
「それでもあの子を選ぶのか。Occlumencyもついにできない、ありふれた魔力の、ダークロードと特別なつながりを持つあの子を!」
「ヴォルデモートは今ではそのつながりを怖れている。ハリーと一体化するのには懲りたはずだ。ハリーは彼の知らないものばかりを持っているから、ハリーと繋がるのは苦痛でしかないんだよ。ヴォルデモート卿の傷ついた魂は、ハリーのような魂と接触していられない。凍った鉄を舐めるようなものだ。炎に身を投じるようなものなんだ」
ダンブルドアは誰にも聞かれていないのを確かめるようにあたりを見回します。Forbidden Forestがすぐそばです。
「きみが私を殺したあと・・・」
「私にすべてを話してくれないで、この上まだ私にそれをさせるのか!」スネイプは本当に怒っています。「もう嫌です!」
「約束したはずだ、セヴルス」ダンブルドアは溜め息をつきます。「ほんじゃとにかく今夜11時に校長室においで」

[記憶15]
「ハリーは知ってはならない。最後の瞬間まで、絶対に知ってはならない。それが必要になるまで。でなければあの子はくじけてしまう」
「彼は何をしなければならないのですか?」
「それは、ハリーと私の問題だ。いいかい、黙ってよく聞いてセヴルス。私の死後、ヴォルデモート卿がペットの命を心配をする日が訪れる」
「ナギニちゃん?」
「そうそう、そのヘビちゃん。ヴォルデモート卿がそのヘビを案じて肌身離さず魔法で守るようになれば、ハリーに知らせてもいい」
「知らせる?何を?」
ダンブルドアは目を閉じて深く息をつきます。
「ヴォルデモート卿が彼を殺そうとした夜、リリーが命を投げ出して彼を守ったとき、AKはヴォルデモート卿に跳ね返り、砕けたヴォルデモート卿の魂の破片はあの吹き飛んだ家でただひとつの生存者の魂に自らを封じ込めた。ヴォルデモート卿の一部がハリーの中で生きているわけだ。だからヘビ語が話せるし、なぜか理解できぬままにヴォルデモート卿の心とつながっている。その魂の破片がハリーの中でハリーに守られ生きているかぎり、ヴォルデモート卿は死なない」
「それじゃ、あの子は・・・あの子は死なねばならないと?」
「しかもそれは、ヴォルデモート卿自身がやらなければならない」
長い沈黙のあと、スネイプが言いました。「私は・・・何年もの間・・・彼女のためだと思っていたのに。リリーのためだと」
「私たちは彼を守ってきた。教え、育て、そして彼に自分の強さを試させるために」
ダンブルドアの目はかたく閉じられたままです。
「ハリーと卿のつながりは強く大きくなった。ハリーはそれが自分自身なのではないかと怯えたに違いない。己の死と向き合うとき、彼にはきっと、それがヴォルデモートの最期を意味するとわかるだろう」
ダンブルドアは目を開けました。スネイプはショックを受けています。
「あなたは、あの子が死ぬべきときに死ねるよう、今まで生かしておいたというのか?」
「そんなにびっくりしないでよ、セヴルス。人々が死ぬのをもう充分見てきただろう?」
「昔と違う。私が見てきたのは、救えなかった者たちだ。あなたは私を利用したんだ!」スネイプは立ち上がります。
「あなたのためにスパイになり、あなたのために嘘をつき、あなたのために危険の中をくぐり抜けてきた。すべては、リリー・ポッターの息子を守るためだったのに。今になってあなたは彼を、大きくなったら殺されるブタのように育ててきたと言うのか!」
「おまえもついにあの子を本当に心配するようになったか」
「彼の心配?Expecto Patronum!」
スネイプの杖から輝く銀の雌鹿が出てきました。校長室を横切り、飛び立つように窓を駆け抜けて行きます。ダンブルドアの目は雌鹿を追い、光りが遠ざかると目には涙がいっぱいです。
「今までずっと?」
「いつだって」

[記憶16]
「ハリーが家を出る正しい日付をヴォルデモートに言いなさいね。怪しまれちゃだめ」
校長室で、スネイプがダンブルドアの肖像画と話しています。
「でもそれだとハリーが危ないから、ポリジュース薬で囮をつくるってことで、それはマンダンガス・フレッチャーに提案させるといい。もしも当日きみがチェイスに加わらなきゃならなくなったら、ちゃんとやってよ。キミにはできるだけ長くヴォルデモートの右腕でいてもらわないと、ホグワーツはカロウ兄妹のものになっちゃうから」

[記憶17]
見慣れない居酒屋でスネイプが、妙に無表情なマンダンガスと向かい合い、低い声でぶつぶつ言ってます。
「おまえは囮を使うことをオーダーに提案する。ポリジュース薬。複数のポッター。他に方法はない。私と会ったことは忘れる。すべておまえの考えだ」

[記憶18]
夜。スネイプがほうきに乗って飛んでます。フードをかぶったDEたちが一緒です。
リーマスとハリー(ジョージ)を追いかける。
スネイプの前を飛んでいたDEの杖は、ぴたりとリーマスの背中に狙いを定めています。
"Sectumsempra!"
スネイプが叫ぶ。リーマスを狙うDEの、杖を持つ手をめがけてぶんなげた呪文は惜しくも外れ、ジョージの耳を切り落としました。

[記憶19]
シリウスの寝室で、スネイプが床に膝をついています。彼の鼻のあたまからぽたぽたと涙が落ち、リリーがシリウス宛てに書いたあの手紙を濡らしています。
 グリンデルバルドと友達だったなんて。彼女、どうかしてるわ!
 愛を込めて リリー
リリーのサインとリリーの愛が書き込まれた、その2枚目をポケットに入れます。そして写真を破り、ジェームズとハリーを床に捨て、リリーの笑顔だけをポケットに入れました。

[記憶20]
校長室の肖像画にフィニアス・ナイジェラスが慌てて戻ってきました。
「校長!あのコドモら、ディーンの森でキャンピングだ。あの穢れた血が・・・」
「その言葉を使うな!」
「・・・そんならあのグレンジャーが、そう話してるのが、バッグが開いたとき聞こえた」
「よかった!よくやった!」会話を聞いていたダンブルドアも肖像画から声をかけます。
「今だ、セヴルス、剣だ!いいか、あの剣は、本当に必要なとき、真に勇敢な者でなければ、手に入れることはできない。きみが背後にいると気づかれるなよ、でないとハリーを通して、おまえがこちら側だとバレちゃうからな」
「わかってます」スネイプはぶっきらぼうに答え、ダンブルドアの肖像画を壁から外すと、その裏にあるグリフィンドールの剣を手に取りました。「この剣をポッターが持つことがなぜ重要なのか、まだ私に話してくれないんですか?」
「キミには言わない。でもハリーにはわかる。セヴルス、くれぐれも気をつけろ。ジョージの件があったしな、姿を見られないように・・・」
スネイプはドアのところで振り返ります。「ご心配なく。考えてあるから」

ペンシーヴから校長室に戻り、床に横たわるハリー。なんだか、たった今スネイプがそのドアを閉めたばかりのような、そんな気がします。

【メモ】

[記憶12]には"You know, I sometimes think we Sort too soon..."というセリフがあります。「きみにはわかるね?私はときどき組み分けが早急すぎると思うことがあるんだ」という意味です。
何のことを言っているのかというと、ソーティング・セレモニーですね。人はじっくり評価すれば正しい個性を理解することができる(本当に入るべき寮に組み分けることができる)けれど、ハットはその場で短時間で生徒を割り振っていくから、早まった結論を出していることがあるかもしれない。
この場合はスネイプさんのことです。きみはスリザリンに入ったけれど、本当はグリフィンドールに入るべき人間だったと、その類いまれな勇敢さを褒めているわけですね。

[記憶15]は悔しい気持ちになりましたね。正しいタイミングで死なせるために、大きくなったら殺されるブタを、今まで生かしてきたなんて。ちくしょう、アルバス、あんまりじゃねーか。オトナはそーやってこっそり先のことを勝手に決めて、ずるいんだ。そう思いましたよ。
セヴルスは、これからの人生を"生きる"ということすら投げ出して、感情を捨てて、愛情を隠して、すべてを賭けて、命以上のモノを賭けて、リリーのためにふんばってきたんすねぇ。アルバス、今さらなんだ、ずるいじゃねーか。そう思いましたよね。
でも、アルバスの見ているものは大きい。世の中というものを見ているわけで、ただそれだけなんだよね。
アルバスはこれを誰にも言わずひとりで抱えてきた。大事な真実は、自分しか知らない。ヴォルディにそっくり、比べ物にならないほどでっかいけど。本を読んでいるさるおとしては、ここでアルバスの抱えてきたプランを知ることになったわけですが、でもね、もしもさるおがあなたのそばにいたとしたら、やっぱり1度はあなたと大ケンカになったよな、ひどいじゃないかっつってさ。

[記憶16]
例の情報源、やっぱりダンブルドアだったんすね。

[記憶19]はまた号泣。
命をかけて自分がハリーを守り続け、そしてその子は、自分ではなく、ダンブルドアに救いを求めた。
まただよ。
リリーへの愛を人知れず貫き、すべてを捧げたセヴルス。リリーはシリウスに友愛のこもった手紙を書き、リリーはシリウスに微笑んだ。自分に向けたのではない、その愛と笑顔を、おまえは持って行くのか。それだけしか持たずに、おまえは死んだのか。
もう、ほんとにだれか、お願いだから、セヴルスに優しくしてあげてくださいませ。
ちなみに、手紙に出てくる"彼女"はバチルダっすね。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月17日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 33 (2)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ついに、愛すべき究極のヒミツの、切なくも孤高の人生のヒミツの、前半です。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

[記憶1]
日差しの中、地面が温かい。
少女が2人、人気のない公園のブランコで遊んでいます。
それを、茂みに隠れるようにして9歳か10歳くらいの痩せた少年がじっと見つめている。長い黒髪、丈の短すぎるズボン、スモックみたいなシャツ、そしてお下がりのような大きすぎるヨレヨレのコートを着ています。
2人の少女の一方が、高く高くブランコをこいでいる。
「やめなよぅ!リリー!」
リリーと呼ばれた少女は、高く揺れるブランコから空に舞いあがり、不自然なほど遠くまで飛んで、不自然なほど軽やかに着地しました。
「ママからそーゆーのしちゃだめって言われたじゃん!」
ペチュニアは腰に手をあてて立ち、妹をたしなめています。
「あたしへいきだもん。チュニー、それよりみてみてー、あたしこーゆーのもできるー」
リリーは、セヴルス少年が隠れている茂みに近づき、落ちた花を拾いあげて手のひらに乗せます。その花は、リリーの手のひらで開いたり閉じたり、開いたり閉じたり。
ペチュニアも思わず見とれます。「それ、どーやるの?」
「そんなのわかってんじゃん」これは思わず少女たちの前に飛び出したセヴルス少年です。
ペチュニアは驚いて後ずさり。リリーは動かず少年を見つめています。
出てこなきゃよかったな。少し後悔しているような表情で、セヴルス少年は赤くなってます。
「わかってるってなにが?」
セヴルス少年はブランコの近くに佇むペチュニアをちらりと見ると、声をひそめてリリーに言いました。「きみがなんでそーゆーのできるか、ぼくわかる。きみ、まじょだもん」
ところが、これを聞いたリリーは「そんなこといきなりいうなんて、むかつくんですけどー!」と怒っちゃいました。
「ちがうってば!」慌てて取り繕おうとするセヴルス少年は大きすぎるコートをはためかせて少女たちを追おうとします。後のスネイプ同様、このころからまるでコウモリみたい。
少女たちは、ここなら安全だというようにブランコの手すりまで戻ると、もう一度少年と向き合いました。
「きみはまじょなんだ。ずっとみてたもん。ほんとにまじょなんだよ。でもへんじゃない。ぼくのママもまじょだし、ぼくもまほうつかいだもん」
「魔女だって!」冷たく笑うペチュニア。「あんた誰だか知ってる。スネイプさんちの子でしょ!川の近くのスピナーズエンドに住んでる子。なんで私たちのことコソコソ嗅ぎ回ってんのよ?」
「かぎまわってなんかいない!っちゅーか、すくなくともきみにようはない、だって、マグルだから」
ペチュニアには少年の使う言葉がわかりません。「行こう、リリー。おうちに帰ろう!」
リリーはすぐに姉を追って去ってしまいました。
残されたセヴルス少年、とても残念そうな苦々しい表情をしています。

[記憶2]
キラキラと日差しを跳ね返す川のほとりの木かげに、セヴルス少年とリリーが座っています。セヴルス少年はもうコートを着ていないけれど、スモックが相変わらずちぐはぐな感じです。
「がっこうのそとでまほうつかったらさ、まほうしょうからしょばつがあるんだ」
「えー、でもあたしもうつかっちゃってるよ」
「ぼくらはまだいいんだ、コドモだから、つえ、もってないし。でも11さいになったらちゃんとおそわるようになって、そしたらそとではちゅういしないといけないんだ」
しばらくの沈黙。リリーは小枝を拾い、振ってみます。杖のつもりね。
「ほんとだよね?ふざけてるんじゃないよね?ペチュニアは、あなたがわたしにうそついてるって。ホグワーツなんかないって。でも、ほんとでしょ?」
「ほんとだよ、ぼくらにとっては。ぼくらんとこにはてがみがくる」
「それって、ふくろうがはこんでくるの?」
「ふつうはね。でもマグルうまれだとおうちのひとがびっくりするから、だれかがせつめいにいくんだ」
「マグルうまれって、ほかのひとと、どこかちがうかな?」
セヴルス少年は躊躇します。木かげの緑の中で、黒い瞳が赤毛の少女をうっとりと見つめている。
「ちがいなんてないよ」
「そんならよかったー」
「きみさ、もうたくさんまほうできるよね。ぼくみてた。ずっとみてた・・・」セヴルス少年の声はだんだん小さくなりました。
安心したリリーは落ち葉の上に寝転がり、木々を見上げています。
「おうちはどう?」
「べつに」
「もうけんかとかしてない?」
「それはかわってないけど。でももういいんだ。もうすぐでていくんだから」
「パパさんはまほうとかきらい?」
「うん」
「ねぇ、セヴ」
「なぁに?」あ、名前呼んでもらってちょっと嬉しそう。
「ディメンターのこともういっかいはなして」
「なんでそんなことしりたいの?」
「もしがっこうのそとでまほうつかっちゃったら・・・」
「そのくらいじゃディメンターはこないよ!もっとわるいやつがいるアズカバンっていうけいむしょをみはってるんだ」
そのとき背後に人の気配。振り向くと、木々に隠れてペチュニアがふたりを見ています。
「チュニー!」リリーは嬉しそうな声で、「かぎまわってるのはそっちだろ!」セヴルス少年は立ち上がって怒ります。
慌てたペチュニアはごまかそうと必死です。「そ、その服、ちょっと変。ママさんのブラウス着てんの?」
パキッ
頭上の小枝が折れ、ペチュニアの肩に当たりました。
ペチュニアは突然泣き出し、走り去って行きます。
「あなたがやったのね!」
「ち、ちがうよ・・・」
「わたしのおねーちゃんをいじめたんだ!」
「ちがうってば!」
リリーは燃えるような目でセヴルス少年を睨み、ペチュニアを追って走って行きます。
残されたセヴルス少年は、混乱してみじめな顔をしています。

[記憶3]
9と3/4番プラットフォーム。血色が悪く不機嫌そうな痩せた女性の隣に、居心地悪そうなセヴルス少年が立っています。セヴルス少年は、少し離れたところで両親と距離を置いて話している姉妹を見つめています。リリーは嫌がる姉の手をとり何か懸命に訴えかけているようです。
「ごめん、チュニー、ほんとにごめん。でもきいてよ。ついたらすぐ、あたしダンブルドアせんせいのとこにいく。かんがえなおしてくださいって、せっとくするから!」
「私は行きたくないの!ばかげた学校に私が行きたがってるって、勝手に思わないで!」
ペチュニアの目はプラットフォームを見回し、飼い主に抱かれた猫、カゴの中のフクロウ、そして深紅の蒸気機関車とそこに荷物を運び込んでいるコドモたちを見渡します。
「私が化け物になりたがってると思ってるの?」
リリーの目に涙が溢れます。「あたし、ばけものじゃないもん。そんなこというなんてひどい」
「だって、そーゆー場所に行くんでしょ。あなたもスネイプさんちの子も、怪物のための特別な学校に行く。怪物だから。正常な人間からは離れて暮らすのよ」
リリーはちらりと両親を見ます。物珍しそうにきょろきょろして楽しそう。
リリーは低い声で姉に厳しくこう言います。
「おねーちゃん、こうちょうせんせいに、にゅうがくしたいっておねがいのてがみをかいたときは、そんながっこうだっておもってなかったでしょ」
「お願い?私、お願いなんかしてない!」
「こうちょうせんせいからのへんじ、みたんだもん。ちゃんとしたしんせつなてがみだったのに」
「見た?・・・人の手紙を勝手に見るなんて、あんた最低。よくそんなことできるわね」
ちらりとセヴルス少年を一瞥するリリーを、ペチュニアは見逃しません。
「あの子ね!あんたとあの子とふたりして、私のこと嗅ぎ回ってたのね!」
「そんなんじゃない。セヴルスがふうとうみて、マグルがホグワーツとてがみのやりとりできるなんてすごいねって、ただそれだけよ。マグルのゆうびんきょくにまほうつかいがこっそりしのびこんではたらいてて、そーゆーのとどけたりするのかなって・・・」リリーの口調は少し言い訳っぽくなりました。
「そのとおりよ!あんたたちはどこにでも遠慮なく忍び込むのよ!」そして妹に言い捨てました。「化け物!」

[記憶4]
ホグワーツ特急は徐々に都会を離れます。セヴルス少年は着替えが早い、さっきまで着ていた"マグルの服"がちぐはぐなことに気づいているんですね。セヴルス少年は、騒々しい男子ばかりの個室のいちばん窓際にぽつんとリリーが座っているのを見つけ、その向かい側の空いた席に座ります。
「はなしたくない」
「なんで?」
「チュニーがわたしのことおこってる。あたしたちがダンブルドアからのてがみをみたから」
「だから?」
リリーはセヴルス少年を睨みます。
「わたしのおねーちゃんなのに!」
「それでもいくんだ!ぼくら、ホグワーツにいくんだよ!」
リリーはうなずき、涙を拭いて少し微笑みます。
「スリザリンにはいれるといいね」
ところが、今までぜんぜんセヴルスとリリーに興味を示してなかった"騒々しい男子”のひとりがこれを聞き逃しませんでした。
「スリザリン?」黒髪のジェームズ少年です。
「だれがスリザリンにはいりたいって?ぼくだったらいやだね、そうだろ?」
ジェームズが話しかけた相手はにこりともせずにこう答えます。「うちみんなスリザリンなんだけどー」
「まじで?でもきみはだいじょぶそう」
シリウス少年はにやりと笑います。「そしたらうちのでんとうはぼくでおわりだな。えらべるとしたらどこにはいりたい?」
「グリフィンドール!ゆうきあるものがすまうりょう!うちのパパもそうだったもんね」
今度はセヴルス少年がこれを鼻で笑う番です。
「なんだよぅー」振り向くジェームズ。
「べつに」冷笑するセヴルス。「べんきょうよりうんどうがとくいなら、ぴったりなんじゃん?」
割って入ったのはシリウスです。「きみはどこにはいりたいのさ?どこにもあてはまらないみたいだけど」
これを聞いて高笑いするジェームズ。
リリーがジェームズとシリウスを見てます、あんたたち嫌い!という目で。「いこう、セヴルス。ほかんとこにすわろう」
「ヒュー!ヒュー!」ジェームズとシリウスがセヴルスをからかいます。出て行こうとするセヴルスを、足ひっかけて転ばせてやれ。「じゃぁな!スニヴルス(よわむし)!」

[記憶5]
マクゴナガル先生の声が響きます。「エバンズ、リリー!」
リリーは震えながらスツールに腰掛け、マクゴナガル先生がソーティングハットをかぶせる。帽子はリリーの頭に触れた瞬間叫びました。「グリフィンドール!」
「あーぁ」セヴルス少年は小さく溜め息をつきます。リリーは哀しそうな笑顔をセヴルス少年に送り、グリフィンドールのテーブルにつきました。すでにそこにいたシリウス少年がリリーのために席をつめます。リリーはそれが汽車で会った嫌なやつだと気づき、背中を向けています。
リーマス少年がグリフィンドールへ、ピーター少年もグリフィンドールへ、ジェームズもグリフィンドールへ組み分けされ、とうとうセヴルス少年の番です。
「スリザリン!」
セヴルス少年は、プリフェクトのバッジをつけたルシウス青年がいるスリザリンのテーブルへ向かいました。

[記憶6]
リリーとセヴルスが校庭を歩いています。ふたりともずいぶん背が伸びてます。
「友達だって思ってた。親友だって」
「あたしらは友達よ、セヴ。でも、あなたの周りの人たち、好きになれない。悪いけど、Avery君とかMulciber君とか、大嫌いなの。あんな子たちのどこがいいの?気味悪いじゃん。Mulciber君がメアリー・マクドナルドに何しようとしたか知ってる?」
リリーは立ち止まり、血色の悪いセヴルスの顔を見上げます。
「ふざけてるだけだよ」
「ダーク・マジックのどこがおもしろいのよ?」
「ならポッターはどうなんだよ?」セヴルスの顔が赤らみます。
「ポッターなんか関係ないじゃん」
「みんなで夜中に抜け出したりして、ルーピンが怪しいんだ。あいつ、どこに行ってんのさ?」
「病気だって、あの人たち言ってたよ」
「満月の夜にいつも病気なんて変じゃん?」
「言いたいことはわかるけど。なんで、あの人たちのこと気にすんの?」
「あいつらだって、みんなが思ってるほどいいやつらじゃないのに」
「でも、あの人たちは少なくともダーク・マジックは使ってないもん。それより聞いたよ、あなたが暴れ柳に行って、ジェームズ・ポッターがあなたを救ったって」
これを聞いたセヴルスはとても苦しそう。「救った?救っただって?ポッターはぜんぜんヒーローじゃない。やつが救ったのはぼくじゃなくて自分の首の皮だ!だめだ、きみがそんな、許せないよ・・・」
「許せないってなによ!」
リリーが目を細めます。
「だから、えっと、つまり、あ、あいつ、きみのことが好きなんだ。ジェームズ・ポッターは、きみのことを気に入ってる。あいつは、みんなが思ってるような"偉大なクィディッチ・ヒーロー"なんかじゃないのに」セヴルス少年、言うつもりじゃなかったのに、意に反してこんなこと言ってしまいました。
「ジェームズ・ポッターは傲慢なクズよ。そんなの言われなくたってわかってる。ただ、Avery君とかMulciber君のいたずらって、悪質なのよ。邪悪なの。なんであの人たちと友達でいるの?」
セヴルスはもうリリーの言葉を聞いていません。リリーの口からポッターの悪口を聞いて安心したセヴルス、足取りが軽くなっちゃった。

[記憶7]
O.W.L.試験のDADAが終わり、大広間を後にして校庭に出るセヴルス。
この記憶は知ってます。グリフィンドールの4人組が、セヴルスを吊るし上げていじめる。そこへやってきてセヴルスの味方をするリリーに、セヴルスは言ってしまうんです、"Mudblood."って。

[記憶8]
「ごめん」
「興味ないの」
「ごめんってば!」
「勝手にすれば」
夜です。ガウン姿のリリーが、The Fat Ladyの前で腕組みして立ってます。
「あなたがここで寝て待つって脅かしてるって、メアリーに聞いて出てきただけ」
「穢れた血なんて言うつもりじゃなかったんだ」
「ついうっかり?」
リリーの声に温かみは微塵もありません。
「謝ったってもう遅い。あたしの友達はみんな、あたしがあなたと口聞くだけでコソコソ言ってる。それをずっと言い訳してきたのよ、あなたのために。わかってる?あなたと、あなたの大事なDEのお友達・・・ほら、否定もしないじゃん!将来の夢はユーノーヘビ男に仕えることでしょ?・・・なんで違うって言わないのよ!他のマグル生まれを"穢れた血"って呼んで、今さらなんであたしだけ違うの?」
何か言おうとするセヴルス。でも言葉になりません。
「もうこれ以上友達のふりはできない。あなたはあなたの道を選んだ。あたしも自分の道を行く」
リリーはスネイプを残し、肖像画の奥に消えてしまいました。

[記憶9]
夜の丘です。冷たく激しい風が、葉をすでに落とした木々の間を吹き抜けて行きます。
オトナになったスネイプが立っている。手にはきつく杖を握りしめています。スネイプはとんでもない恐怖を感じている、それがハリーにも伝わるほどです。
白い閃光が空気を切り裂くと、次の瞬間、スネイプは地面に膝をつき、杖が手から離れます。
「殺さないでくれ!」
「そんな気ないよ」どこからともなく現れたのはダンブルドア。「それで?セヴルス、ヴォルデモート卿のメッセージは?」
「メッセージなどない。私は、自分の意思でここに・・・忠告に・・・いや、お願いに、来たんです」
ダンブルドアは杖を一振りします。強風に煽られ落ち葉や小枝がふたりの周りをぐるぐる舞っているのに、静寂が訪れます。
「DEが私に頼みごと?」
「予言を・・・あの予言を・・・」
「ヴォルデモート卿に何を話した?」
「すべてを・・・私が聞いたすべてを話してしまった。そして彼は、それがリリー・エヴァンズのことだと!」
「予言に女性は出てこない」
「わかっているでしょう!彼女のコドモだ。だから彼は、彼女を殺してしまう!」
「そんなに彼女が大切なら、ヴォルデモート卿に彼女を殺さないでくれって頼めば?」
「頼みました。けど・・・」
「おまえって、やなやつー」ダンブルドアが言います。ダンブルドアの声にこれほどの軽蔑が込められているのをハリーは聞いたことがありません。「彼女のだんなやコドモの死は、おまえにとってどーでもいいのか?」
スネイプは何も言わずダンブルドアを見つめ、しぼりだすようにこう言います。「かくまってください、全員を・・・彼女を・・・彼らを守って。お願いです」
「見返りに何をしてくれる、セヴルス?」
「み、みかえり?」スネイプは驚いてダンブルドアを再び見つめ、沈黙のあと、答えました。「なんでも」

【メモ】

ちぐはぐな恰好で、家庭内も問題だらけ。スネイプ少年の中では、幼い頃から劣等感とプライドがぶつかり合ってるんですね。
コドモの頃からコウモリみたいな彼。ママさんと親子そろって血色の悪い顔をしています。スピナーズエンドのスネイプ邸はそーいや暗かった。カーテンも閉めちゃうし。で、映画を観てるといつもスネイプ先生の授業は薄暗がりの中です。そして、リーマスの正体にいち早く気づくスネイプさん。最後は喉を噛まれて死ぬスネイプさん。
これはもう、そーゆーことだろうと、さるおは思っています。何が言いたいかもうバレバレでしょーが、これは別途記事に書こうと思うので、詳しくは後ほどね。

木かげの緑の中で、黒い瞳が赤毛の少女を見つめる。ハリポタの色の対比は、ほんとに美しく残酷で切ないっすねぇ。
少年セヴ、おまえはなんでこんなに不器用なんだよ。切なくって歯がゆくって苦しくって、涙が出ますな。いつもいつも失敗しちゃう。ほんとのことが言えなくて、大事なことが言えなくて、言うはずじゃなかったことばっかり言っちゃうの。泣けるなぁ。

スネイプ少年がチュニーの頭上の枝を折るシーン、ハリーさん、そっくりです。
で、びっくりして泣いちゃうチュニー。魔法使いが怖い、でも魔法使いになりたい。ほんとはホグワーツに行きたかった。とっても自然ですね。
そんなチュニーを追いつめてしまった妹の残酷さや鈍感さもまた、とっても自然です。
コドモの世界は過酷です。愛し合い、いたわり合う姉妹が、こーして癒えない傷を負ってしまうわけで。

ホグワーツ特急の中でいきなり衝突し合うスリザリンvsグリフィンドールズ、またまたハリーさん、あんたそっくりだ。
しかしまぁジェームズ、おまえ、ほんとどこまでもいじわるな子だな。とっても"甘やかされた一人っ子"なところはドラコ的であり、つまり構図はハリー時代の逆に近いですな。

"Mudblood."発言に怒るリリーの「あなたはあなたの道を選んだ。あたしも自分の道を行く」という言葉は決定的ですね。それ以前にスネイプ青年がDE入りを決めていたかはわかりません。5巻『OotP』でスネイプDE入りの決め手となりそうな哀しい記憶は出てきてますから。(a hook-nosed man was shouting at a cowering woman, while a small dark-haired boy cried in a corner … a greasy-haired teenager sat alone in a dark bedroom, pointing his wand at the ceiling, shooting down flies … a girl was laughing as a scrawny boy tried to mount a bucking broomstick さるお訳では「スネイプパパが縮こまっているスネイプママを怒鳴りつけ、部屋の隅ではまだ幼い黒髪のセヴルス君が泣いている・・・脂っこい髪の10代のセヴルス君が暗い寝室にひとりぽつんと座り、杖を上に構えて天井近くを飛んでいるハエを撃ち落している・・・小柄なセヴルス君が暴れる箒に乗ろうとしているのを見て女の子が笑っている」です)でもまぁとにかくこれで引き返せなくなりました。
ヴォルディに懸命に仕えるスネイプ青年、幸せではなかったはず。でもそーするより他に、彼には選択肢がなかったんだろうと思います。ところが、リリーと決別して突き進んだ道でもまた、彼のがんばり(予言の盗み聞き)が彼の足をひっぱります。
"裏目に出る"、それが彼の人生だなんて、さるお泣いちゃう。早く誰かセヴルスをたすけてやってくれーい。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月15日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 33 (1)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、極限の哀しみをくぐり抜け、ついに次のエントリーで愛すべき究極のヒミツを、切なくも孤高の人生のヒミツを、目の当たりにして泣きましょう。ということで、次の記事は長いっすよー。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

33:The Prince's Tale

スネイプさんのかたわらにひざまずいたまま、ただじっとスネイプさんを見つめるハリー。
そこへ、冷たく甲高い声が響き渡ります。おっさんが戻ってきたのかとびっくりしましたが、壁や床や天井から聞こえるような、例の村内放送です。ヴォルディはまたホグワーツに向かってしゃべってるんですね。

おまえらは勇敢やった。ヴォルデモート卿はその勇気を褒めたたよう。おまえら、もうほんとボロボロやけどな、これ以上わしに逆らえば、全員死ぬことになるで。一人ずつ、皆殺しや!
価値ある魔法族の血を流すなんて無意味や。損失と浪費でしかない。
ヴォルデモート卿は慈悲深いんや、DEたちに撤退を命じてやる。
そんでおまえらに1時間の猶予を与えよう。威厳を持って死者を葬れ。傷を負った者を手当てしてやれや。
でな、ハリー・ポッター、ここからはおまえひとりに向かって話すで。おまえはわしと向き合おうとせんのや、おまえのために友を次々と死なせとる。今から1時間、Forbidden Forestで待っとるで。1時間経ったとき、もしもおまえが現れなければ、再び戦闘がなされるやろう。今度は、わしが城に乗り込んだる。おまえをかくまう全員を殺して、女子もガキも、ひとり残らずや。おまえをみつけてやるでー。1時間や。

ロンは「こんなの聞いちゃだめだよ」と言います。ハーは「なんとかなる。城に戻って作戦練ろう」と言います。
だけどハリーの心の中に、痛い言葉がこだまします。おまえは私から逃げ、友を次々死なせた、と。
透明マントをかぶり、スネイプの死を消化できないまま遺体を置いて、トリオは城に戻ります。ポケットに、スネイプさんの記憶のフラスコを持って。

夜中をすぎた城はまだ真っ暗で、不気味な静けさに包まれています。閃光も爆発も悲鳴もありません。校庭にいたはずのグロウプの姿もない。エントランスは血に染まり、エメラルドが散らばり、あちこちが吹き飛んでいます。
「みんなはどこ?」ハーがささやくようにつぶやきます。ロンはそれに答えるようにまっすぐに大広間に向かいます。
大広間の入り口で立ち止まるハリーが見たのは、あまりに凄惨な、あまりに哀しい、直視できない光景でした。
4つの長テーブルなどなく、生き残った人々が互いに肩を抱き合っています。マダム・ポンフリーが負傷者を手当てしてせわしなく歩き回り、何人かがそれを手伝っています。怪我人のなかには、わき腹から血を流し、立っていることもできずに倒れたまま震えるフィレンツェの姿も見えます。
大広間の中央には、横たわる死者の列。ウィーズリー家が取り囲んだ、あの中心には、きっとフレッドが眠っている。
フレッドの頭のそばに跪くジョージ、フレッドの胸で泣き崩れ激しく身体を震わせているモリー、モリーの髪を撫でるアーサーの頬に涙が光っています。
傷だらけの顔で泣きはらしたジニーを、ハーが抱きしめる。ビルとフラーと一緒にいたパーシーが、ロンの肩を抱きます。
そして、見えました、フレッドの隣に横たわるふたつの亡き骸が。それは、眠るように穏やかな、リーマスとトンクス。

ハリーは思わず後ずさります。苦しくて呼吸ができない。もう見ていることができない。これ以上、いったい誰が、ぼくのために死んだというのか。
もうウィーズリー家の仲間に入れてもらうわけにはいきません。彼らにあわせる顔がない。ぼくが最初からあきらめていれば、フレッドは死なずに済んだかもしれないのに。
ハリーは大理石の階段を駆けあがります。リーマスだって、トンクスだって、死なずに済んだかもしれないんだ。ぼくのせいだ。ぼくのせいだ。ハリーの内側で、取り返しのつかない、大きすぎる罪悪感が悲鳴をあげている。
人影のない校舎を、走って、走って、走り続けて、スネイプが遺した記憶のフラスコを握りしめたまま、気がつけば校長室の前です。
「パスワードは?」石のガーゴイルが問い掛ける。
ハリーは考えるより先に叫びました。
「ダンブルドア!」
パスワードなんかじゃない。混乱と絶望とショックに押し潰され、たすけを求める心の叫びです。それが今こそ必要だから、今こそどーしても会わなければならないから。
ガーゴイルの彫像は道を空け、らせん階段が現れました。

校長室の壁の歴代校長の肖像画はどれも留守です。校長の椅子の真後ろ、つまりド真ん中の額縁に、何が何でも会いたいダンブルドアはいません。
そしてペンシーブは、昔と同じ、キャビネットの中にありました。
現実に耐えられないハリーは、誰かの頭の中にいるほうがマシだと、たとえそれがスネイプでもこの惨状よりマシだと、スネイプの記憶をペンシーブに注ぎ込み自らもその中へ飛び込んでいきました。

【メモ】

血に染まり、エメラルドの雨が降ったホグワーツ。ここにもまた赤と緑の対比です。

これ以上、いったい誰が、ぼくのために死んだというのか。
"ぼくのせいだ"と罪の意識にさいなまれるハリーさん、かわいそうっすねぇ。違うのにな、ヘビのおじさんのせいなのにな。

校長室のパスワード、号泣っす、号泣!
セヴルスは、いつかハリーが本当に追いつめられたとき、今度こそ本当に押し潰されそうになったとき、たすけを求める相手を知っていた。命をかけて自分がハリーを守り続け、そしてその子は、自分ではなく、ダンブルドアに救いを求めると、きっと知っていたんだ。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月11日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 32 (2)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、この章は深いなと、いろいろ考えちゃいますねぇ。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

"The Whomping Willow"へと走りながら、フレッド、ハグリッド、自分が愛した人々のことを考える。もう犠牲は嫌です。もう誰も失いたくありません。でも、走らなきゃ。今は走らなきゃ。
呪文が飛んできても無視して走る。後ろは見ません。
湖が海のように波立ち、風もないのに森がきしむ。
息もつかず、脇目も振らず、死に物狂いで走ります。
暴れ柳に辿り着き、「クルックシャンクスがまたいればいいのに」と言うロンに、ハーが名ゼリフを言いますね。
Are you a wizard, or what?
あんたそれでも魔法使いかと。
ロンは杖を"Swish-and-Flick"、Wingardium Leviosa! 小枝はスピンして柳の幹にヒットしました。
「待って」
いざ敵地に乗り込もうと鼻息荒いふたりをハリーが止めます。
ヴォルデモートはぼくを待ってる。ロンとハーを、みすみす罠の只中に連れて行く気?ハリーは自問自答します。
残酷で、同時に明確な現実が、このトンネルの先で待っている。ナギニちゃんを殺す、他に道はありません。そしてナギニちゃんはヴォルディと一緒にいるわけです。
友達を道連れにすまいと葛藤するハリーに、ロンが言います。「はやく行こ」
杖に明かりを灯し、トリオは、今ではずいぶん狭く感じるトンネルを進みます。
トンネルが終わりに近づいたとき、ハーに言われてハリーは透明マントをかぶり、杖の明かりを消しました。静かに、静かに、"Shrieking Shack"へ忍び込む。声が聞こえます。ドアは開いているようです。ドアの近くの隙間から、こっそりと部屋を覗いてみましょう。

薄暗い部屋です。宙に浮いた、星のようにキラキラ光る半透明の球体の中で、ナギニちゃんがとぐろを巻いてます。
テーブルの上に、杖をもてあそぶ白く長い指が見えます。こちらに背中を向けて、すぐそこに立っているのはスネイプさんです。
「彼らの抵抗もこれまでですな」
「ほならもう、おまえが行かへんでも、ええよね」
「私にポッターを見つけさせてください。ポッターを連れてまいります」
ハリーはナギニちゃんを見ています。ここからやっつける方法ってあるかな?失敗したら居場所がばれちゃうし。
立ち上がったヴォルディが見えます。薄闇の中でもヘビ似の顔の赤い目が見える。
「ちょっとな、問題があるんや」ヴォルディの穏やかさが不気味です。静かに杖を持ち上げました。「この杖、思うようにならへんのや。セヴルス、なんでやと思う?」
「とても素晴らしい杖、ちゃんと使ってらっしゃるのに」
「あかんねん。平凡なことしかでけへん。私の魔力はバツグンやのに、この杖はぜんぜん特別やないで。オリバンダーのじっちゃんが作った杖と変わらんわー」
ヴォルディの口調はとても冷静で、会話を楽しんでいるかのようです。でも、額の激痛でわかります。ヴォルディは内心、はらわたが煮えくり返ってますよ。
スネイプは、黙ったままです。
ヴォルディは部屋の中を行ったり来たり。
「セヴルス。おまえを戦場から呼んだ理由、わかっとるんか?」
一瞬、スネイプさんの表情が見えました。彼は、親方ではなくナギニちゃんをじっと見据えています。
「ポッターを探しに城に戻ってもよろしいでしょーか。うっかり死んじゃうかもしれないし」
「おまえもルシウスも、わかっとらんわ。ポッターはほっといたってわしんとこ来る。あのガキは、仲間が死んでいくのに耐えられへんのや。どんな代償を支払うことになろうと、それを止めようとするんや。それがやつの弱点やね。手下全員に言ってあるんや、ポッターは殺さず仲間を殺せ、できるだけ多くやって。でな、おまえと話したいんは別件なんやけど」
「行かせてください。私がポッターを見つけて来ます。卿、お願いです」
「しつっこいな!」ヴォルディ怒っちゃった。赤い目が光ってます。「ガキのことより、この杖やて!」
ヴォルディは杖を手に、スネイプさんを見ています。「なんでやろ、どの杖もポッターに勝てへん、なんでやろな?」
「私には・・・」
「ははーん、わからへんか?」
激痛に襲われるハリー、叫びそうになるのを懸命にこらえ、思わず目を閉じます。ハリーの意識はヴォルディの中へ。
「イチイの杖は思い通りやった、ポッターを殺すことを除いてやけど。2度失敗して、オリバンダーがわしに兄弟杖のことを話して、他の杖使うたらええっちゅー話になって、ルシウスの杖借りてな、けどそれも無駄やったん」
スネイプはヴォルディを見ていません。ナギニちゃんをじっと見ています。
「このニワトコの杖が3本目や。運命の杖、死の杖やで。私はこれを前の持ち主から奪ったんや。そう、アルバス・ダンブルドアの墓から奪ったんやで」
スネイプの目がヴォルディをとらえます。デスマスクのような白い顔。黒い目は何も語りません。「卿、ポッターを見つけに、私を行かせてください」
ヴォルディはスネイプの頼みを無視します。不気味な囁くような声で話し続けます。
「ずっとな、ずっと考えとってん。なんでこの杖は思いどおりにならへん?真の所有者の言うことを聞く、それが伝説や。それでな、わしには答えがわかった。おまえ、知ってたんやろ。おまえは賢いヤツや。そして、たしかに忠実なよい僕やった。セヴルス、こうなったんが残念やわ。ニワトコの杖が私に仕えようとせぇへんのは、私が真の所有者ではないからや。伝説の杖は、前の所有者を殺すことで手に入るんやったな。ダンブルドアを殺したのは、おまえや。おまえが生きている限り、この杖はわしのものにはならん。他に方法はないんや。私は杖を手に入れる、そしてハリー・ポッターに勝つんや!」
ヴォルディは杖を一振り。ナギニちゃんが解き放たれます。
「やってまえ」ヘビ語です。
すさまじい悲鳴。ナギニちゃんの鋭い牙がスネイプの喉に深く食い込みます。スネイプさんの顔はみるみる色を失い、目は見開かれ、床に倒れてしまいました。
「あー、残念や、ほんま残念」 
ヴォルディ、そんなこと言って、ほんとは哀しみも後悔もありません。振り向きもせず、さっさと部屋から出て行っちゃいましたよ。ナギニちゃんが追って行きます。

ヴォルディを振り切るように目を開くと、床の血だまりの中で震えるブーツの足先が見えます。ヴォルディはもういません。
ハリーは透明マントを脱ぎ捨て、隠れていた暗がりの隙間から飛び出しました。ハリーには、自分が何をしようとしているのかわかりません。血の海に倒れ、スネイプさんの指が喉元で溢れる血を止めようともがいています。ずっと憎み続けてきた男の黒い瞳がハリーをとらえる。ハリーは夢中でその男のそばへ屈み込みました。
スネイプさんの喉がザラザラと音を立て、血が溢れます。
「これを・・・これを持って行け・・・」
血ではない何かが流れています。青みがかった銀色の、気体とも液体とも言えない"記憶"が、口からも耳からも目からもほとばしる。
ハーが呪文でフラスコを出し、ハリーに手渡しました。ハリーは杖で記憶をからめとり、フラスコに入れます。
もう流す血は残っていません。ハリーのマントをつかんでいたスネイプさんの手から力が抜けます。
「私を・・・見てくれ・・・」
緑色の瞳と黒い瞳が、一瞬だけ見つめ合います。黒い瞳の中で、何かが消え、空虚だけがそこにありました。スネイプさんの手が床に落ち、もう動くことはありませんでした。

【メモ】

"ポッターを連れてくる"にこだわったセヴルス。もしもヴォルディがそれを認めていたら、彼はどーしたんでしょう。きっと記憶を渡しに行きたかったんだろうなぁ。
セヴルスには、呼ばれたときにわかったと思います。何が起きて、自分がどーなるか。
"ポッター"にこだわり、ナギニちゃんを見つめ続けたセヴルス。反撃の可能性をどこまで考えていたでしょうか。そしてこの牙によって自分は息絶えると、どこまで知っていたでしょうか。
胸が痛いっすね。
最後まで負けなかったセヴルス。壮絶な生き様だったと思います。切ないなぁ。
彼の最後の言葉はこうです。
"Look ... at ... me ..."(私を見ろ)
"see"でも"watch"でもなく、Look at me. 今すぐ自分を見ろと言っている。
最後にもう1度だけ、その緑色のリリーの瞳を見せてくれと、そう言ってるんですね。
もう涙が止まりませーん。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月07日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 32 (1)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、泣きながら読みましょう。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

32:The Elder Wand

世界は終わってしまった。なのになぜバトルは終わらない?。
だめなのに。あっちゃいけないのに、こんなこと、絶対に。大好きなフレッドを失うなんて。そんなこと。そんなこと。
もう、心が折れそうです(涙)。
追い討ちをかけるように呪文が下からぼかんぼかんと飛んでくる。
パーシーは動きません。愛する弟を、これ以上傷つけさせるもんか。フレッドの亡き骸に覆いかぶさり、自分を楯にして弟を守ろうとしています。もうね、魔法がどーとかではないんだよね。パーシーは、魔法をはるかに超えた戦いをしているんです。捨て身のパース、あんたって子は。
「パーシー!来て!」ハリーが叫びます。ロンは涙に濡れたまま、パーシーを無理矢理亡き骸から引き剥がそうとします。動かないパーシー。
ハーの悲鳴に振り返ると、でっかいクモ、来たぁー!小型乗用車くらいあるアラゴグのお子さんたちが、よじ登ってくる。"向こう"についたわけです。
ロンとハリーが同時に叫ぶと呪文はクモに当たり、真っ逆さまに落ちて行きます。見ると、うじゃうじゃと巨大グモが登って来てますよ。
ここから逃げなきゃ。ハリーはフレッドを抱えて動かそうとします。何をしているのか気づいたパーシーも一緒に弟を抱き上げます。鉄の鎧が立っていた隙間に、そっとフレッドを横たえる。ここならきっと傷つかない。ハリーはフレッドを直視することができません。
トリオとパーシーが角を曲がると、「ROOKWOOD!」パーシーが吠え、突進して行きます。
追いかけたいロンですが、ハーが突然ふたりを強引にひっぱり、タペストリーの裏に引きずり込みました。
「聞いて!ロンちん!聞きなさい!」パーシーに続こうとするロンを、ハーが必死で止めます。
「行かなきゃ!DEどもを殺してやる!行かなきゃ!」ロンが怒りに震えています。
「ロンちん!戦争を終わらせる方法はひとつしかないのよ!お願い、聞いて!ナギニちゃんを殺すの!」
ハリーにはロンの気持ちが痛いほどわかります。ホークラックスを壊すだけでは気が済まない。何が何でも、リベンジしてやる。フレッドを殺したやつらを、殺してやる。
「わかってる!戦うわよ!わかってるってば!ナギニちゃんを仕留めて、この戦いを終わらせるの!」
ハーだって泣いてます。ぼろぼろに破れた袖で涙を拭き、バトルに勝とうと死に物狂いで自分をコントロールしているんです。
「ハリー、ヴォルデモートの居場所を突き止めて。ヘビ男の心の中を見て!」
ハリーの額の傷跡は、ハリーにヴォルディを見せようと、ずーっと激痛のまま。ハリーは目を閉じます。

見覚えのある部屋にいます。壁紙は剥がれ、窓は1ヵ所を除き板が打ち付けられた、オイルランプ1つの暗い部屋です。遠くに、ホグワーツのバトルの音が聞こえ、開いた窓からは城が見える。
長く白い指で杖をもてあそび、あの部屋のことを考えています。自分だけが知っているあの部屋。そう簡単には誰も入れないんだ。ガキに王冠を見つけられるはずがないのだぁー。むはははー。
「卿、お願いです、息子を・・・」
まるほいパパの悲痛な声です。暗い部屋の隅に座り、罰のマスクをかぶらされ、片方の目が腫れ上がってなんだかヨレヨレっすね。
「おまえんちのガキが死んでもな、それ、わしのせいやあらへんで。あの子はわしんとこに来ぇへんかった。今ごろすっかり裏切って、ハリー・ポッター君とオトモダチやないんか!」
「ポッターがうっかり殺されてもいいんですか?ご自分でやっつけたいって言ってたんだから、ご自分で城に捜しに行ったらええのに」声は震えてますが、まるほいパパのせめてもの抵抗で、怖い親方にイヤミのひとつも言っておけ。
「なんやごまかしやがってルシウス、こら、ドラコ捜しに行きたいだけやろ。ほっとけばええんや、ポッターの方からこっちに来よる。それより・・」
杖を見る。私をてこずらせているニワトコの杖。なんとかしなければ。
「スネイプ連れてこいて」
意外にも退室が認められたまるほいパパが出て行きました。
「他に方法はないんや、ナギニちゃん」
話しかけながらペットを見ると、その巨大なヘビは、飼い主が作ってくれた半透明のタンクのような球体の中にすっぽりおさまって宙に浮いています。

「やつは"Shrieking Shack"にいる。ナギニちゃんも魔法で守られてそこにいる。で、まるほいパパがスネイプを捜しに行った。やつはぼくがホークラックスをハントしてるのを知ってるから、ナギニちゃんを手元においてるんだ。ぼくの方から来るぞって、待ってるんだよ」
殺し合いをさせておいて自分は安全なところで待ってるなんてずるいと激高するハー。
「なら行っちゃだめだ。行ったら敵の思う壷だもん。ここでハーと待ってて。ぼくが行く」「違うよ、ロンとハーが待つの。ぼくが透明マントかぶって行く」「だめだめ。あたしが行く。あたしが行くほうが好都合だもん」
相手は強敵。よっぽどの秘策でもないかぎり、行けばヴォルディとガチンコ勝負です。それはほぼ間違いなく死を意味します。なのにこのトリオは、それぞれが決死の覚悟で友達を守ろうとしている。
「ポッター!」そこへ2人のDEが現れます。
"Glisseo!"
ハリーとロンが杖を振り上げるより素早く反応するハー。滑り落ちて行くトリオにDEの呪文は当たりません。
"Duro!"
タペストリーめがけ、続けざまにハーが吠えます。DEたちは石になった壁掛けに激突です。
目の前を、動物みたいに"机"が突進して行きました。一緒にいるのは髪を振り乱し頬に深い傷を負ったマクゴナガル先生。「行けぇーっ!」机に号令かけてます。
ハリーは透明マントを3人でかぶることにしました。足がちょっとくらい見えたって、どさくさに紛れてなんとかなるさ。そして階下へと駆け降ります。
そこは、対決する戦士で溢れかえっていました。肖像画も「後ろに敵だ!今だ、ぶっぱなせ!」と参戦しています。ディーン・トーマスは杖を手に入れドロホヴと、パーバティ・パティルはトラバースと、1対1の死闘を繰り広げている。
"Wheeeeeeeeeeee!"
ピーヴスもやって来て"Snargaluff"をDEの頭へ投げ落としています。
Snargaluffはロンにもヒット。「そこに誰かいるぞ!」とトリオの居場所はDEにばれてしまいました。とっさにStunning Spellをぶん投げてくれたのはディーン!パーバティはBody-Bind Curseをドロホヴにぶん投げた!
みんなにたすけられて先を急ぐトリオの前方に、DEと対峙しているドラコが見えます。「ぼ、ぼくまるほい。卿の味方だってば!」
ハリーはStunning SpellでDEを気絶させ、裏切り者かと怪しまれているドラコを救います。ロンはすれちがいざまに「今夜おまえをたすけるの2度目だぞ、ペテン師野郎!」と言ってやりました。
エントランスも一大戦場です。フリトウィック先生はヤクスリーと大決闘、キングスレーさんも仮面のDEと戦っています。生徒の何人かは、激しい戦火のさなか負傷した友達をたすけようとしています。ネビルが"Venomous Tentacula"を腕いっぱいに抱えて現れると、蔦がDEに絡んでいきます。ポイントを記録しているスリザリンの砂時計が割れ、ガラスの破片とエメラルドの雨が降る。バルコニーから誰かが落下し、そこに襲いかかる灰色の4本足の獣!
「だめぇーっ!」
叫んだハーの杖の先から、耳をつんざくほどの爆音とともに閃光がほとばしり、フェンリル・グレイバックを吹っ飛ばしたぞ!ハーちん、強ぇ!ラベンダー・ブラウンを救いました。
そこへすかさず水晶玉が降ってくる。見上げると、シビル・トレローニー先生が戦ってます。「水晶玉ならもっとあるわよ!食らえぇーっ!」テニスのサーブのように杖を振り、水晶玉をDEめがけてぶん投げる。シビル、行けぇーっ!
エントランスの扉が開き、アラゴグのお子さんたちが大挙してなだれ込んできました。これは怖い。DEも"Hogwartians"も戦いながら逃げ惑います。雪崩のようなクモの大軍に、ピンクの花柄の傘を振り回しながら飛び込んで行ったのはハグリッド。クモたちが味方を襲うのを止めようと必死です。
ハグリッドが死んじゃう!
ハリーはすべてを放り出します。ハグリッドをたすけたい一心で、あらゆるものをかなぐり捨てて、クモの群れに飲み込まれようとしているハグリッドのほうへ走り出します。ところが、クモの群れはハグリッドを捕らえると、あっという間に暗い校庭に退却してしまいました。必死で追いかけ校庭に出ると、目の前には・・・ジャイアント、出たぁーっ!
身長20フィート(6m)、顔なんてもう見えません。ただただ大木のようです。この巨人は"向こう側"ですから、城から人をつまみあげようとしています。
"HAGGER?"
明らかに"小柄な"グロウプもやってきました。ジャイアント同士のバトルです。
ハリーはハーの手を取り走り出します。後ろをロンが走ります。きっと、きっと救える!
そのときです。急に寒くなりました。夜よりも黒い影が飛んでくる。フレッドが死んじゃった、ハグリッドも死んじゃう、みんな死んじゃう、もうだめぽ。そんな気分です。
ロンの銀のテリヤが、夜の校庭を駆ける。ハーの銀のカワウソが闇の中を泳ぎます。
「ハリー!早くパトロナス出して!」喝を入れてくれたのはハーちん。でもハリーにはできません。
銀の野ウサギが、銀の雄豚が、銀のキツネが、トリオの頭上を駆け抜けて行きます。駆けつけたのはルナ、アーニー・マクミラン、そしてシェーマス!トリオの危機を救いに来たぞ。
「そうよ、ハリー、だいじょうぶ。幸せなこと考えよう。私たち、まだここにいるもん。戦い続けてるもん。だいじょうぶよ、ほら」
ルナに励まされ、ハリーの杖からも銀の牡鹿が飛び出した!
ピンチを抜け出し、大きな地響きに辺りを見回すと、別のジャイアントが森から出てくるのが見えます。棍棒をぶんぶん振り回して襲いかかってくる。ルナたちを見失ったトリオは、"The Whomping Willow"へと走りました。

【メモ】

ロンちんとパースによる敵討ち、さるおも手伝う!と強く思いましたよ。涙が止まらないっすね。
で、シビルも戦ってるぞ、と思ってまた号泣。野ウサギと雄豚とキツネが出てきてまた号泣。震えながら読みましたよ。

"Glisseo!"は階段を平らにする呪文。滑っちゃうわけね。ドリフみたいなもんです(笑)。
"Duro!"はターゲットを石に変える呪文です。

ところで、海パン姿のピーヴスの"Wheeeeeeeeeeee!"は、まさにおっぱっぴーだと思いましたね。"Snargaluff"は食人植物。ツタを絡めて獲物(人間)を獲ります。

"Venomous Tentacula"は赤黒いトゲだらけの植物です。毒もあります。お花には歯が生えてますよ。

ちなみに、ハグリッドの身長は"2倍"と書かれているので11.5フィート(3.5m)、弟さんは16フィート(4.9m)です。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月05日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 31 (2)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、この章を読み終わったとたんに号泣しながら、ちっくしょう、さるおが必ず敵討ちしてやるぞと、あまりの淋しさと悔しさに震えながらも、鼻息荒いっす。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

ミッドナイトまであと5分。
ハリーは考え続けます。
王冠は発見されていない。いつの時代も宝探しは失敗に終わった。ってことは、レイヴンクロウ・タワーに王冠があるはずないよ。でも、レイヴンクロウ・タワーでないなら、いったいどこにあるんだろう?
ハリーが歩いていると、なんと驚くことにぼっかーんと廊下の壁が砕け、なんだかでっかいモノが外から飛び込んできました。
「ハグリッド!」うはー、ファングも一緒です。ハグリッドは砕けてできた壁の穴から校庭に向かって声をかけています。「いい子だ!グロウピー!」うはー、弟さんもご一緒っすね。ハリーも校庭を見下ろします。すると、閃光が飛び交い、叫び声が聞こえる。真夜中になったんだ、バトルが始まってしまいました。
聞けばハグリッドは、ホグズミード村に近くの、弟さんと一緒に隠れていた山の洞窟で、ヴォルディの声を聞いた。真夜中までにポッターを渡せっちゅーから、こりゃバトルが始まるぞと、ハリーも城にいるんだなと、駆けつけてきたわけです。で、弟さんに「あんちゃんを城に入れてくれ」って頼んだら、グロウプはハグリッドをぶん投げてくれたわけです(笑)。
ハリーとハグリッドは廊下を走り出します。ファングもしっかりついてきてます。
「どこに向かってるんだ、ハリー?」
「わかんない!」
でもきっと近くにロンとハーがいるはず。

最初の犠牲者が倒れています、ってこれは職員室を守っている1対の石のガーゴイルですが、何かの呪文でぱっかり割れて、床に転がってるわけです。「ちょっと失礼」と声をかけながら乗り越えて行きます。
ハリーはガーゴイルのちょっとおっかない顔を見て、ラブグッド家のおかしな飾りをかぶったロウェナ像を思い出し、タワーの王冠をかぶったロウェナ像を思い出し、ついでに、年とった醜い魔法使いの像が頭部だけハリーでカツラと王冠をかぶっているところを想像し・・・あーっ!!!わかったぁーっ!!!
ロウェナの王冠が、ヴォルディのホークラックスが、どこにあるかわかっちゃったぁーっ!
トム・リドルは、ホグワーツの秘密の場所を知ってた。そしてそこは自分しか知らない、他の誰も入れないって思ってた。優等生のダンブルドアやフリットウィックは立ち入らない、秘密の場所。ほくはそこに入ったことある、だって必要だったから、そこしかなかったから。
我に返ると、スプラウト先生がネビルと5、6人の生徒を引き連れ、でっかい鉢植えを抱えて猛ダッシュで通りすぎます。「マンドレイクを食らわせてやるんだ!」肩越しにネビルが叫びます。
ハリーも走り出す。ハグリッドとファングも一緒です。戦況を伝え合う肖像画の列の前を走る。
突然、誰かの呪文で巨大な花瓶が割れて砕け散りました。これにびっくりしたのは怖がり屋さんのファングちゃん、走ってっちゃいましたよ。ハグリッドが追いかけて行きます。
ハリーはまたひとりになっちゃった。でも立ち止まってられません。杖を構えて前に進みます。
"Braggarts and rogues, dogs and scoundrels, drive them out, Harry Potter, set them off!"
今日も勇ましいカドガン卿、ハリーにしっかりせえやと喝ですわ。これは訳したら、「ほら吹きと詐欺師ども、裏切り者と悪党ども、やつらを追い出せ、ハリー・ポッター!」って感じっすかね。
ハリーが角を曲がると、そこにいるのはフレッド・ウィーズリー、リー・ジョーダン、ハンナ・アボット、他数名。みんな杖を構えて、通路を封鎖しているんですね。あちこちで起こる爆発の衝撃で地震のように城が震えてもへいちゃらのフレッド、「楽しい夜じゃん!」と上機嫌っす。
フレッドたちを通りすぎて別の角を曲がると、ふくろうたちとミセス・ノリスも大騒ぎです。

「ポッター!」
そこに声を掛けてきたのは、アバフォース・ダンブルドア。「うちのパブが超満員だぞ、おめ、こら。おまえを渡さないからってバトルんなってんだろ、そんなことはわかっとる、耳は聞こえてるんでね!ぼうず、スリザリン生を人質にとったか?DEの子供たちだ、押さえとけば役に立つ」
さるおはここ読んで思いましたよ、そうだよ!失敗したぁー!と。
ところがハリーさんは言うことが違いますわ。「それじゃヘビ男は止められない。それにあなたのお兄さんだったら、そんなことしないもん」
そしてまた走り出します。
そこでついに、ロンとハー発見!ふたりは重そうなでっかい荷物を抱えています。
「どこに行ってたんだよぅ!」と怒りそうなハリーに、ふたりは話します。
「Chamber of Secrets(秘密の部屋)に行ってたんだ」
「ロンちんが思いついたのよ、すごくね?ハリーがいない間にできることやっとこうよって言ってさ、ハッフルパフのカップをどーにかしよーと思ってさ、そしたらロンちんがバジリスクの牙があるじゃんって!あそこに入るのに、ロンちん、ヘビ語しゃべったんだから!」
「モノマネだけど。ロケット開けるときにハリーが言ってたやつ、よくわかんないけど、音真似してシーシー言ってたら開いたんだ」
「ロンちんて、すごくね?」
「ハーちんもすごかったよ!カップを刺して壊したの、ハーちんなんだ!」
「ぐわぁーっ、すげぇ」ハリーさんびっくりです。「ぼくもわかったんだ、王冠のある場所。ぼくが去年、薬学の教科書隠したとこだよ、何世紀にも渡っていろんな人が"隠し場所"にした部屋なんだ。やつはそこなら見つからないって思ったんだ」
トリオは再びRoRにやってきます。
で、ジニーだけがお留守番かと思ったら、また増えてるー。なんと、トンクスとオーガスタ・ロングボトム参上!病院で見たことあるからね、すぐにネビルのばあちゃんだってわかります。
オーガスタばあちゃんが「ポッター、戦況はどうなってるの?」と早速聞いてきます。「私で最後よ。通路は閉じたわ。アバフォースもこっち来たし。うちの孫はどこ?」
ハリーはじつは戦況はわからないわけです。「戦ってるよ」と答えます。
「ならよろしい。私は孫の手伝いに行くわ」
するとオーガスタばあちゃん、目にも留まらぬ素早い動きで部屋を出て行きました。やっぱこのばーちゃんスゴ腕だわー。
実家でベビーを守ってるはずのトンクスも「リーマスはどこ?」とだんなをたすける気満々。ハリーから校庭にいると聞くとすっ飛んで行きます。そしてジニーも、抜け出すチャーンス!ということでトンクスを追って行っちゃいました。ほらね、勇敢で強い女の子は止めたって無駄。
ジニーを呼び止めようとするハリーですが、そのときロンが言いました。「そーいえば、ハウスエルフのこと忘れてる!きっとまだキッチンにいるよ」
「戦えって言うわけ?」と聞くハリーにこう答えます。「違うよ、逃げろって言わなきゃ。ドビーみたいな目に遭わせるわけにいかないよ、ぼくらのために死ねなんて言えない」
この言葉を聞いたハーちん、感動のあまり運んできたバジリスクの牙をほん投げてロンに抱きつき、チュッチュチュッチュです(笑)。ロンもそれに応えちゃったりして、ハーを抱き上げチュッチュチュッチュです(笑)。
「こんなときにチュッチュチュッチュしやがってー」と怒るハリーに、"I know, mate, so it's now or never, isn't it?" わたくしはロンちんが大好きですね。これは「戦闘中でしょ、わかってるってば、今やらなきゃ二度とない、だろ?」ですね。
でまぁ、現実はチュッチュチュッチュしてる場合じゃないわけで(爆)、トリオは急いでRoRからいったん出ます。城中が揺れ、埃が舞い、校庭を見下ろすと、赤と緑の閃光がもうすぐそこで飛び交っている。DEはもうすぐ城に突入しそうです。グロウプも大暴れしてます。横を見ると、ジニーとトンクスは上から校庭のDEめがけて呪文をぶん投げまくっています。ジニーはかなりの腕前っすよ。
「お嬢ちゃん、うまいぞ!」と灰色の髪をなびかせてすっ飛んできたのはアバフォース爺。「城の北側があぶない。やつら、巨人族を連れてきたぞ!」そしてトンクスに「だんなはさっきドロホヴの相手してたぞ」と告げます。トンクス、今度はジニーを残して行っちゃいました。
ハリーはジニーに動かず待っているように言うと、ってそんなの聞かないと思いますが、とにかく、"すべてが隠されている場所"を念じて3度廊下を歩き、ロンとハーを連れてRoRに入りました。

戦場のあらゆる音が消え、静寂に包まれた"隠し部屋"のRoRです。巨大なカテドラルのようで、そびえ立つ棚で通路が仕切られた、街のような規模の迷路です。トリオは、去年ドラコが使ったVanishing Cabinetの前を通りすぎ、奥へ奥へと向かいます。念のためにハーが"Accio Diadem!"を試しますが、効かないところをみるとここにはグリンゴッツと同じような魔法がかけられているんですね。
「手分けして探そう」ハリーは、カツラをかぶったおじいさんの石の胸像が王冠をかぶっている、そしてそれは自分がかつて教科書を隠したカップボードの上にあると説明します。
どんどん奥へ進みます。ロンの気配もハーの足音も聞こえません。自分の息遣いだけが大きく聞こえます。近くにあるはずなんだ・・・
すると、あったぁーっ!古びて変色した華奢な王冠が、思った通りの場所にありました。
王冠を取ろうと手を伸ばすハリー。ところが後ろから声がします。「ポッター、そこまでだ」
振り向くと、まさかのスリザリン・トリオ登場。杖を構えるクラッブとゴイルの間でドラコが言います。
「杖を返せ」
「やだ。もうおまえんじゃないもん。勝者が所有者なんだもん。おまえこそ、誰の杖借りて来てんだよ」
「おかあちゃんの」素直に答えるドラコ君ですね。
ここにきてスリザリン・トリオに囲まれるとは思ってなかったハリーですが、笑ってこう言います。「ヴォルディと一緒にいなくていいの?」
返事をしたのはクラッブです。「戻ってきたんだ。おまえを捕まえて引き渡す。そしたら褒められるから」
「あ、それいいね。ところで、どーやってここに入ったの?」かなんか言ってチャンスを伺うハリーさん。
「去年なんかほとんど丸1年、ここに住んでようなもんなんだから、そんなの知ってるぞ」またまた素直なドラコ君。
「廊下に隠れてたんだ。今じゃもう"Diss-lusion Charms"くらいできるんだぞ。そしたらおまえらが来たんだ!で、"Die-dum"って何だ!」どこまでも素直でどこまでもアホなゴイル君。
"Descendo!"
クラッブが鞭のように杖を振るとガラクタの山がガラガラと崩れ始めました。ロンがいるかもしれないあたりを直撃しそうです。
"Finite!"
今度はハリーが叫びます。
「やめろって!王冠とかゆーのが埋まっちゃうだろ!」
王冠の意味するものはわからないけれどもしかしたら重要だと思うドラコはクラッブを止めようとしますが、同等にやはりアホなクラッブに言わせれば、"Die-dum"がどーしたと、それどころか、生け捕りが無理ならポッターが死んだってかまうもんかっちゅーくらいの勢いです。クラッブは、ドラコの"腰巾着"でいることをやめようとしてるんですね、もう言いなりにはならないぞ、まるほい家は終わりだと、ドラコに反抗してみせるわけです。
"Crucio!"
すっかりワルなクラッブ君、今度はハリーを拷問にかけようとしますが、その呪文はおじいさんの胸像にヒット!胸像は落下し、はずみで王冠は放物線を描き崩れたガラクタの山のどこかに消えてしまいました。
「ポッターを殺すなってばー!」と慌てるドラコ。
「殺そうとなんてしてないじゃん。でもどーせヘビ男様がポッターを殺すんだ、今殺したってどーってこと・・・」
そこへ、深紅の輝きを放つ閃光が、ハリーをかすめてぶっ飛んできた。ハーがたすけに来ましたよ。クラッブの頭部を狙った正確無比なハーのStunning Spellです。ドラコがクラッブをひっぱり、間一髪です。
「穢れた血来たぁーっ!死ねぇーっ!AK!」
ハリーの視界の隅でハーがダイブ。うまくよけたけど、でも、大事なハーにAKだなんて、許せねぇ、ちくしょう。ハリーもStunning Spellで反撃っす。
必死でよけるクラッブがドラコを押しのけ、その拍子でおかあちゃんから借りたドラコの杖が手を離れます。
クラッブとゴイルは同時にハリーを狙っていますが、ドラコに止められ、躊躇した一瞬の隙に、"Expelliarmus!" ゴイルの杖も吹っ飛んで行きました。思わずゴイルは自分の杖を追いかけます。
ハーが再びStunning Spellを放った瞬間、ドラコはハーの射程圏内から飛び退きました。
ロンも駆けつけ"full Body-Bind Curse"をクラッブめがけてぼかん!惜しい!
クラッブは振り向きざま、今度はロンめがけて再び"AK!" こちらもギリギリでうまくよけました。ほんと、すっかりワルなクラッブ君ですな。
杖を失ったドラコは洋服ダンスの影に隠れています。そこに猛然と向かって行きながらハーちんがゴイルめがけてStunning Spell ぼかーん!当たったー!
戦ってばかりもいられないハリーさんは、近くのハーに「ぼくロンちんたすけに行く!このへんに転がってるから王冠さがしてー!」と言いますが、次の瞬間、ロンとクラッブが走るのが見えます。なんと、ふたりともモーレツな炎に追いかけられている。クラッブがロンに「熱いだろ、わはは」と、ということはこの炎の仕掛け人はクラッブなんですね。
慌ててハリーは"Aguamenti!"と放水開始。ところがこの水があっという間に蒸発しちゃう。火のほうがものすごいわけです。因縁の3対3は怒濤の逃避決戦に。
逃げろーっ!
ドラコは気絶したゴイルを引きずって懸命に逃げようとします。あれれ?ふたりを追い越して走るクラッブ、炎が手に負えなくなってしまいました。
それは、普通の炎ではありません。ハリーの知らない魔法です。生き物のようにトリオを追い、むさぼるように一面を焼き尽くします。燃える大蛇に、炎のキメラに、そしてドラゴンに姿を変えながら、牙をむき爪を立ててうねりのように襲ってくる。まさにインフェルノ。
スリザリン・トリオは視界から消えました。気がつけば、炎の怪物がトリオの周囲で円を描いています。絶体絶命、逃げ場はありません。
「どーすんのよー!」焦るハーちん。
ハリーはガラクタの山からほうきを2本つかみ、1本をロンに投げました。
ロンがほうきに飛び乗り、ハーちんと二人乗り。トリオは力いっぱい床を蹴ります。襲いかかる炎のモンスターをインチの差でよけながら、トリオは迷宮を飛んで行きます。
炎はみるみるRoRを焼き尽くそうとしています。もうもうと煙が立ちこめ、肺が焼ける。黒煙に遮られて出口は見えません。こんなふうに死ぬなんて・・・
「部屋を出るんだ!」ロンの叫ぶ声が聞こえます。
そのとき、聞こえました。たすけを求めて叫ぶ声が。ハリーは探していたんですね、自分たちを殺そうとした因縁のスリザリン・トリオを。
「無茶だ!キケンすぎるよ!」止めようとするロンをふりきり、ハリーは声の聞こえるほうへと引き返します。そして、ゴイルを支えて窮地に陥ったドラコ発見!ハリーは熱い炎の海へ急降下します。ドラコにもハリーが見える。ドラコは必死で手を伸ばします。手をつかんでも、汗で滑って引っぱれません。ゴイルと一緒じゃ重すぎる。
そこへ、ロンちん来たぁーっ!「もしぼくらがやつらのせいで死んだら、ハリー・ポッター、おまえをころーす!」 ほんと、わたくしはロンちんが好き。
ロンとハーがぐったりしたゴイルを引っぱり上げてほうきに乗せました。ドラコはハリーのほうきによじ登りました。
「ドアから出るんだ!」耳元でドラコが叫びます。
ドアなんて見えません。もう息もできません。ハリーはロンのほうきを追ってドアがあると思う方向へ飛んで行きます。そのとき目に入ったのは、炎に飲まれていくカップ、楯、輝くネックレス、そして色あせた王冠!
耳元で騒ぎ立てるドラコを無視して、最後にもう1度だけ、ハリーは鋭いヘアピンターンをして急降下!王冠が転がるのがまるでスローモーションにように見えます。炎のヘビに飲み込まれようとする王冠を、うりゃぁーっ!手首にひっかけたぁーっ!
ドアへ急げ!炎のヘビが追ってきます。ドラコが痛いほどにハリーにしがみついています。がんばれ、あと少し!

ドアをくぐると、空気がありました。吸い込んだ次の瞬間には、壁に激突。しかたないっす。
ロンもハーも咳き込んでいます。ゴイルは倒れたままです。ドラコも咳き込みながら「クラッブは・・・」と言いかけます。
「死んだよ」答えたのはロンです。
一瞬静寂が流れ、すぐに戦場の轟音が聞こえてきます。爆発音に続いて城が揺れ、叫び声が聞こえます。バトルは続いています。待っていろと言ったのに、ジニーはいません。
ハリーの腕のまだ熱い王冠。黒くすすけていますがよく見ると、"Wit beyond measure is man's greatest treasure."の文字が読み取れます。王冠は震えながら血のような赤黒い液体を流し、かすかな断末魔を残して手の中で2つに割れました。

「あの炎、きっと"Fiendfyre"よ、呪われた炎の魔法。ホークラックスを破壊できるレアな魔法だけど、あぶなすぎるよね。クラッブって、すごいの知ってんな」ハーちん博識。「これで、残すはナギニちゃんのみね」
そのとき、今までとは明らかに違う叫び声が近くで聞こえました。振り向くと、わぁー、DE城に入って来たぁーっ!なんと、フレッドとパーシーがそれぞれDEとガチンコ対決!ものすごい素早さで呪文をぶん投げ合い、あらゆる方向に閃光が飛び交っています。フレッドもパーシーも強い!DEとまったく互角っすよ。
トリオもふたりを手伝おうと駆けつけます。
パーシーの相手のマスクとフードがとれました。相手の顔を見たパーシーが言います。「こんにちは、大臣!辞めるって言いましたっけ?」そして呪文をぼかんと放つとシックネスを追いつめた!パーシーかっこええ!シックネスを小さなトゲトゲがいっぱいの"ウニ"にしちゃいました。
トリオのStunning Spellが3つ同時にフレッドの相手に命中!それと同時に、パーシーの声を聞いたフレッドは「パース、ジョークなんか言っちゃってぇー!」と心底嬉しそうにニコニコとパーシーと見つめ合います。

ぼっかぁーん!
それはフレッドが笑った瞬間のできごとでした。突然の大爆発。トリオもフレッドもパーシーも、気絶したDEもウニも、瓦礫と一緒に爆風で吹き飛ばされます。必死で杖を握りしめ、頭を腕で庇うのが精一杯。悲鳴と叫び声がこだまします。
煙が立ちこめ、あちこちが痛い。瓦礫に埋まりそうです。
冷たい風を感じます。大爆発の凄まじい破壊力で、城の壁がまるごと吹き飛んでしまいました。
頬を血が伝っています。
ひどく悲痛な絶叫が聞こえる。炎でも呪文でもない、それをはるかに超えた苦痛に満ちた、あまりに痛々しい絶叫。ハリーは立ち上がります。その叫び声が胸に突き刺さる。まさか。まさかそんな。
ハーも立ち上がります。
ふたりが見たものは、燃えるような髪の3人。吹き飛んだ壁に屈み込んでいます。ハリーはハーの手をとりました。
「フレッド!フレッド!」
パーシーが、フレッドを必死で揺さぶっています。すぐそばでロンが膝をついています。最後の笑顔のまま、フレッドの瞳は、もう何も見ていません。

【メモ】

"Diss-lusion Charms"は"Disillusionment Charm"ですね。背景と同じ色になって見えにくくなる、例のカメレオン呪文です。

またしても杖を失うドラコ、興味深いっすねー。

"Fiendfyre"は、止めることのできない呪いの炎。"止めることができない"ほどの破壊力で、ホークラックスを破壊することができます。
ハーは"Fiendfyre"がホークラックスを破壊することを知っていたと思います。けど、手に負えない、そんくらいにキケンだと言うことで今まで使わなかったんですね。
その炎が姿を変えるモンスターのひとつ、キメラ(キマイラ)。ギリシア神話に登場する伝説の生物で、ライオンの頭と山羊の胴体、蛇の尻尾ですね。

愛するフレッド、勇敢で知性に溢れて心優しいフレッド。ジョージを追いてくなってば。えーん、涙が止まりません。
この伏線というか、今思えば嫌な場面はたしかにありました。ケッコン式のこと話したり、組んだ相手がパパだったり。
ひどすぎるぞ、Jo。ドビーのときも泣きましたが、同じくらい泣いてますよ。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年01月02日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 31 (1)

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、バトルに備えながら、レイヴンクロウ母娘のお話を聞きましょう。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

31:The Battle of Hogwarts

大広間の暗い天井には星が瞬き、4つの長テーブルには各寮ごとに生徒が座っています。ゴーストも集まっています。生きている者も死んでいる者も、すべての目が教壇のマクゴナガル先生にそそがれています。先生たちの席には、パロミノ・ケンタウロスのフィレンツェもいるし、戦闘のために駆けつけたオーダーのメンダーもいます。
「避難通路にフィルチさんとマダム・ポンフリーがいます。私の合図で、プリフェクトは務めを果たしなさい。自分の寮の生徒をまとめ、並んで通路まで連れて行くのです」
「ここに残って一緒に戦うって言ったら?」立ち上がって叫んだのはハッフルパフのアーニー・マクミラン。歓声が湧き上がります。
「成人しているなら、残ってかまいませんよ」
「荷物とペットは?」この質問はレイヴンクロウからです。
「持ち物を運ぶ時間はありません。あなた方が安全に非難することが最優先なの」
「スネイプ先生は?」これはもちろんスリザリンから。
「逃亡しましたよ」マクゴナガルさんの答えに、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイヴンクロウから歓声が湧きます。
ハリーはロンとハーを探し、グリフィンドールのテーブルを見て回ってます。こんなときにどこ行っちゃったのかな?
「城の周囲にプロテクションを施しました。でも、補強し続けない限り、長くはもたない。ですから、プリフェクトに倣って素早く冷静に行動す・・・」
マクゴナガルさんの言葉は遮られました。冷たく甲高く恐ろしい声に。壁から床から天井から、その声は響き渡ります。
「おまえらが戦いの準備をしてるゆーことはわかっとるで。空しい努力や。おまえら、わしには勝てへんよーだ。おまえらを殺したいわけやあらへん。わしはホグワーツの職員に敬意を持っとるんや。魔法族の血を流したいわけでもない。ハリー・ポッターをよこせ、そうすればおまえらを傷つけへん。ハリー・ポッターをよこせ、そうすれば学校は無傷や。ハリー・ポッターをよこせ、そうすればおまえらにも報いはある。タイムリミットは午前0時や」
大広間は静まり返ります。鼓膜を圧迫するような、なんとも濃厚な静寂です。
スリザリンのパンシー・パーキンソンが立ち上がりました。「そこにいるわ!ポッターを捕まえて!」
パンシーに答えたのは、ハリーではなく巨大なうねりです。グリフィンドールの生徒がみんな立ち上がり、ハリーではなく、スリザリンと向き合いました。ハッフルパフ生も立ちました、ほとんど同時にレイヴンクロウ生も立ち上がった。みんなが、ハリーに背を向け、パンシーに向かい、杖をかまえています。さるおは早くも号泣っす。
「もうけっこうです、パーキンソンさん。あなたはフィルチさんと一緒に真っ先にここを出なさい。その後にスリザリンが続きます」
スリザリンの生徒たちは大広間から出て行きました。
「レイヴンクロウ、行きなさい!」
ゆっくりと、レイヴンクロウ生も席を立ちます。次はハッフルパフ、最後がグリフィンドールです。
スリザリンのテーブルには誰も残っていません。何人かのレイヴンクロウ生が、座ったまま、戦うことを決意しました。それより多くのハッフルパフ生が、戦うことを決めました。そしてグリフィンドールの半数が、残りました。
マクゴナガルさんは「だめでしょ、クリーヴィー、行きなさい。ピークス、あなたもよ!」と未成年を追い払ってます。

教壇のキングスレーが、残った勇敢な戦士たちに作戦を話します。「ミッドナイトまで30分しかない。急ごう。バトルプランはホグワーツの先生たちとオーダーで決めた。フリットウィック先生、スプラウト先生、マクゴナガル先生はそれぞれグループを率いて、レイヴンクロウ・タワー、天文タワー、グリフィンドール・タワーへ。そこからなら校庭が見渡せる。上から攻撃するんだ。リーマス、アーサー、そして私はそれぞれグループを率いて校庭に出て敵の侵入を食い止める。それから、外とつながってるいくつかの通路に防衛戦が必要なんだが・・・」
「ぼくらのシゴトじゃん!」手を挙げた双子にキングスレーは頷いてみせ、さっそくグループ分けにとりかかります。
「ポッター、何をグズグズしてるんですか!早く行きなさい、ほら!」とハリーに声をかけたのはマクゴナガル先生。そりゃそうだ、あんたの捜しモノのためにみんな命がけで時間稼ぎをやろうとしてるわけですよ。
オドオドしながら大広間を出るハリーさん、ロンとハーなしには、なんと頼りない自分、とか思ってパニック寸前です。どこを捜せばいいかわからないわけだから、行くあてがない。Marauder's Mapでロンとハーを見つけようとしますが、RoRへ殺到する無数の点が見えるばかりです。
ヘビ男はぼくがレイヴンクロウ・タワーに行くと考えた。だからそこにアレクト・カロウを配置した。ヘビ男は、ハリーがすでにそのホークラックスについて知っていると考えて恐れたわけです。でも、ほんとに王冠であってるのかな、だって、スリザリンのヘビ男がレイヴンクロウの宝を見つけられるわけないもん。そもそもヘビ男はどーやって王冠のことを知ったって言うんだ、生きている者の記憶にないのに。
!!!
わっ、わかりたぁーっ!
ひらめいちゃったハリーは来た道を引き返します。
低学年の子は泣いちゃって、他の子もみんな友達の名前を叫びながら、RoRの避難通路へ急ぐ喧騒の向こう、エントランスを横切るほとんど首なしニック発見!
ハリーは「ニック!ニック!」と大声で呼びながら人込みをかき分けて進みます。ハリーはニックと氷のような握手をかわし、「ニック、たすけて。レイヴンクロウのゴーストって誰なの?会わせてよ」と頼みます。これは本来ならニックに失礼なわけですね、グリフィンドールの子の世話を焼くのがニックのシゴトですから。「彼女じゃなきゃだめなんだ!」と言うとニックは「The Gray Lady、向こうにいる髪の長い若い女の子」とおしえてくれました。

ハリーは今度はグレイ・レイディを追いかけて走り、去ろうとするそのゴーストをなんとか呼び止めます。
「あなたはグレイ・レイディさん?レイヴンクロウ・タワーのおばけさんだよね?たすけてください、お願い、失われた王冠のことおしえてほしいんだ」
"The Lost Diadem"
この言葉を聞いたおばけさんは冷たく微笑み、「たすけられないと思うけど」と言うと背中を向けました。
「待って!」ハリーはちらりと時計を見ます。23:45、真夜中まであと15分です。
「緊急事態なんだ!もし王冠がホグワーツにあるなら、それを見つけなきゃならないんだ」
「そのことを質問してきたのはあなただけじゃないわ」グレイ・レイディは軽蔑したように言います。
「王冠がほしいんじゃない!ヘビ男に関することなんだ!ヘビ男をやっつけるためなんだ!関心ないの?たすけてってば!」
「ママの王冠のことじゃないのね?」
「ママ?あなたはロウェナ・レイヴンクロウの娘さんなの?」
「そう、私、ヘレナ・レイヴンクロウ。あの王冠は理知を与える、とか言ったって、自分のことをヴォルデモート卿なんて呼ぶ人を倒すのに役立つとは思えないけどな・・・」
「かぶりたいんじゃないってば!説明してる時間がないけど、とにかく、学校のことが心配なら、ヘビ男をやっつけたいなら、王冠のこと話してってばおしえてよーっ!」
ヘレナは黙ってハリーを見ています。だめかな、だって、このおばけさんが王冠のこと知ってるんなら、とっくにダンブルドアかフリットウィックに話してるはずじゃね?
ハリーが諦めかけたとき、ついにヘレナは囁くように話し始めました。

私は王冠を盗んだのよ。ママより私の方が賢いと、私の方が重要だと、証明したくてね。盗んで逃げたんだわ。ママにだって届くはずのない、遠い森に逃げた。
ママは王冠を失ったことを恥じて隠してた。ちゃんと手元にあるってフリをし続けたの。損失も私の裏切りも、すべてを隠して、ホグワーツの創始者たちにも言わなかった。
ママはあるとき病気になってね、ものすごい重病で死にそうで、最後にもう1度だけ私に会いたいと願った。ママは、私を連れ戻すために、私を愛するある人物を送ってきたわけ。ママはその人物が、目的を達するまで決して立ち止まらないと知っててね。
その人は私が隠れていた森に来た。で、私は帰らないと言った。カッとなるタイプだからさ、パニクって怒って、そして私の自由を羨んで、男爵(Baron)は私を刺し殺したのよ。
そうそう、The Bloody Baronさん。彼は自分がしたことに気づくと、それを悔やんで、私を刺した剣を引き抜き、自殺しちゃった。
そして王冠は、アルバニアの森の、中が空洞の木の中に残ったままになったの。

「この話、誰かにした?」
「えっと、だって、わかってくれる子だって思ったからんだもん・・・」
そうだよ、トム・リドルはたしかに彼女を理解しただろう。そしてトム・リドルなら、ほしいモノを手に入れるためにヘレナに好かれるように振る舞うなんて得意中の得意さ。
ヘビ男は卒業したらさっそくアルバニアに行ったんかも。B&Bに就職するより前に、王冠捜しに行ったんじゃないか。行ってみたら「ここ静かでいいな」って思って、後々の潜伏先にしたんだ。
でも、大事な大事なホークラックスをそんなとこに置き去りにするわけない。王冠は人知れず我が家に戻った。いったいどこに隠したんだろう・・・
「あの晩だ!」
またしてもひらめいちゃうハリーさん。「就職面談でダンブルドアんとこに来た夜、どっかに隠したんだ。校長室に行く途中とか、帰る途中とか。でも就職面談も大事だった。剣を校長室から盗めるかもしれないから」
ヘレナにお礼を言い、ハリーは歩きながら考えます。

【メモ】

ついに、みんながハリーを守りました。このシーンは感動的っす。守り、守られて、信頼しあうホグワーツのコドモたち、素晴らしいっす。
前の記事でも書きましたが、やっぱグリフィンドールに続くのはハッフルパフなんすねぇ。これもステキ。

さて、避難しないで戦うことにした生徒は何人いるのかな、とか考えますよね。各寮の各学年はおそらく10名程度だろうし、ここでは成人した学生が対象なので、実質7年生しか残れないわけですね。レイヴンクロウから2人、ハッフルパフから3人、グリフィンドールから5人、計10人、そんなもんなんでしょうかね。
これについては、Joの説明と食い違うみたいです。彼女はもっとたくさん学生がいるってコメントしてるから。まぁ、また今度詳しく書きます。

前から思ってたんですが、ヘレナ・レイヴンクロウがレイヴンクロウ・タワーのおばけさんだということは、ブラディー・バロンはサラザール・スリザリンと血縁関係に、ニックはゴドリック・グリフィンドールと血縁関係にあるってことなんでしょーか。その可能性はあります。もちろんThe Fat Friarとヘルガ・ハッフルパフの関係も然りです。

ヴォルディが潜伏したアルバニアの森がイギリス魔法界からみてブラックボックスなのがよくわかりましたねー。ロウェナの娘ヘレナが"ママにだって届くはずのない"森と考えたわけだから。

心ゆくまでさるお、もんち!

2007年12月30日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 30

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ファイナルバトルのオープニングへ!
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

30:The Sacking of Severus Snape

アレクトが腕のヘビ印に触れた瞬間、ハリーの額は割れんばかりの激痛です。

断崖の下の岩場に立ってます。足元で波が荒れ狂ってます。勝利の喜びで胸いっぱい。ガキをつかまえたぞ。

ぼかん!
大きな音に我に返ると、アレクトが勢いよく床に倒れこむのが目に入ります。
「DAの練習以外で失神の呪文使うの初めてー♪けっこう大きい音するんだね♪」
ルナちん、でかした。姿は見えませんが、ルナの声は"興味深い"といった感じ。
でも、大きな音でレイヴンクロウ生たちを起こしちゃいました。
「ルナちんどこ?」ハリーは慌てながらルナに透明マントに入れてもらいます。
レイヴンクロウの生徒たちが、何事かと談話室に降りてきました。レイヴンクロウにもいますね、勇敢な子が。ひとりの1年生が、アレクトに近づいて観察してます。気絶して転がっているアレクトを見て「死んでるかなっ!死んでるのかなっ!死んでるといいなっ!」と、とっても嬉しそうなレイヴンクロウのコドモたちです。よろこぶ同寮生を見てルナも嬉しそう。

あの洞窟の、湖へ続くトンネルを歩いています。ガキはつかまえたしな、ここを見てからでいっかなー。

ところが、談話室のドアの向こうには、アレクトの兄アミカスもやって来た。ノックの音が1回響きます。
「失ったモノはどこへ行くか?」
ははーん、またしてもロウェナ的クイズです。そしてもちろん、そんな知的なクイズには答えられないアミカス先生。
「アレクト?そこにいるのか?ガキを捕まえたのか?ドアを開けろ!ヘビ男様がおいでになってガキの姿がなかったらまずい。マルフォイの二の舞いはまずいんだ!返事しろ!」
怖くなったレイヴンクロウのコドモたちが少しずつ後ずさります。こーなったらドアを爆破してアミカスをやっつけちゃうか、ハリーがそう迷った次の瞬間、ドアの向こうに懐かしい声が!
「プロフェッサー・カロウ、そこで何をしているのかしら?」
ミネルバ・マクゴナガル参上!
「ちっくしょう、ドアを開けたいんだ!」
「あらま。フリットウィック先生が、妹さんを中に入れたはずでは?城中のみんなを起こしてないで、開けてもらえばよろしいのに」
冷静なミネルバ、ごもっともです。
「返事がないんだ。ちくしょう、ばばぁ!おまえが開けろ!」
軽蔑し切った目でアミカスを見るマクゴナガル先生、あたしは用があれば自分で開けるわよ、とイヤミを言いつつ、ドアをノックします。
「失ったモノはどこへ行くか?」
「"存在しない"という世界へ。"すべてのモノ"と同義ですよ」さらっと答えるミネルバさんはさすがです。彼女らしい。
「気の利いた答えだ」ブロンズの鷲がそう答え、ドアが開きます。

レイヴンクロウの談話室に入ったアミカスは、倒れた妹を見てびっくり。
「ガキどもめー、誰の仕業か言わないと拷問だ。ヘビ男様、何て言うかな、ヤツはいないし、ガキどもは妹を殺すし、まったくー」
妹のことが心配というより、ポッターはどこだと、ポッターがいないと後でやばいぞと、それが気になってるんですね。
「気絶してるだけですよ」
「"気絶してるだけ"じゃすまねーんだよ!妹はヘビ男様を呼んだ。腕のヘビ印が燃えたんだ、間違いない。ヘビ男様は我々がポッターを捕まえたと思ってる」
「ポッターを捕まえたですって?」鋭く聞き咎めるマクゴナガル先生。
「ヘビ男様はポッターがレイヴンクロウ・タワーに入ろうとするに違いないと言った。ポッターを捕まえたら知らせろと言ったんだ」
「どうしてハリー・ポッターがレイヴンクロウ・タワーにいるんです!あの子は私の寮の子です!」
マクゴナガル先生の声には、怒りと誇りが混ざっています。ハリーにはそれがわかって、少し元気が出ます。
"ハリー・ポッターがいるはずない"と口では言いながらもマクゴナガル先生の目は談話室のあちこちを素早くとらえます。
アミカスのほうはヘビ男への言い訳を考えようと頭をフル回転。「こうしよう、ガキどもがアレクトを待ち伏せして、無理矢理マークを押させたって言おう。ヘビ男様が自らガキどもを罰する。たいしたことじゃねぇ」
これを聞いたマクゴナガル先生が皮肉たっぷりに言い返します。
「たいしたことじゃないわねぇ、真実か嘘か、勇敢か臆病かという違い以外は。とにかく、はっきり言わせてもらいます。あんたたちのバカッぶりをここの生徒になすりつけさせはしません。私が許しませんよ」
アミカスはマクゴナガル先生に詰め寄ります。数インチの距離でにらみ合う。譲らないマクゴナガル先生、汚いモノを見るような蔑みをあらわに、アミカスを見下ろします。
「ミネルバ・マクゴナガル、おまえが許す許さねぇの問題じゃねぇーんだ!おまえの時代は終わった。ここで権力を握ってるのは、おれらなんだ!」
そしてなんとマクゴナガル先生に、唾を吐きかけやがった。
「やったなーっ!」怒ったハリーは透明マントを脱ぎ捨てます。そして振り返ったアミカスに、"Crucio!"
ハリーの"本気のCrucio"に、アミカスは本棚に激突しながら倒れます。「ベラ姐が言ったことがわかった。本気でやるってこーゆーことなんだ」
「ポッター!なんでここに!バカなことを!」ミネルバびっくり、心臓が止まりそうです(笑)。
「マクゴナガル先生、ヴォルデモートが来ちゃう」
「もう"ユーノーヘビ男"の名前言っていいの?」と姿を現したのはルナ。"a second outlaw"の登場にミネルバまたびっくりです。
「もういいんだ。っちゅーか、ぼくがここにいるの、もうバレてるんだよ」
ハリーを心から愛してくれているマクゴナガル先生は「逃げなさい、ポッター」と言います。
「だめだ。やらなきゃいけないことがあるんだ。先生、レイヴンクロウの王冠について、何か知ってる?」
「れいぶんくろうのおうかん?」唐突な質問にきょとんとするマクゴナガル先生。
「先生、みつけなきゃならないモノがあるんだ。それ、レイヴンクロウの王冠のはずなんだ。フリットウィック先生が知ってるかも・・・」
マクゴナガル先生はもぞもぞと動き出したアミカスを操り、DE兄妹の杖をさらりと取りあげ、2人まとめて銀のロープでぐるぐる巻きにしました。

そのときです。額の傷跡が焼けるように痛いっす。水盤をのぞき込む。金のロケットがなくなってるやぁーん!
いやぁーん!(←ヘビ語で)

ハリーの尋常ならざる様子に心配するミネルバさん。
ハリーはもう頭は痛いし疲れたしで、倒れそうです。ヨボヨボと、ルナの肩にぶらさがって立ってます。かわいそうに。それでも気丈に「時間がないんだ。ヘビ男が来る。ダンブルドアからもらった使命だから、お城の中を捜さなきゃ。あと、生徒たちを避難させないと。ヘビ男が狙ってるのはぼくで、ぼくを殺すためらな犠牲者が出たっていいやってヘビ男は思ってる。あぶないよ」
この子はダンブルドアの指示によって動いている。これを聞いたマクゴナガル先生、すぐに切り替えましたね、あなたは素晴らしい!「あなたが捜しモノをする間、時間を稼ぐくらいはできます。私たちホグワーツの先生って、魔法はけっこう得意なの。スネイプ校長もどーにかしなきゃ」
そりゃ"得意"でしょーとも!なんて素敵な言い方。あなたは素晴らしい!

ハリーはマクゴナガル先生に、RoRからホグズヘッドへ脱出できる、例の唯一の通路の存在をおしえます。
ハリーとルナは透明マントをかぶり、マクゴナガル先生と一緒に廊下に出ます。
マクゴナガル先生は杖を一振り、銀色に輝く"メガネの"トラ猫が3匹、競い合うように廊下を駆け抜け、3方向に別れて走り去ります。フリットウィック先生、スプラウト先生、そしてスラグホーン先生に、パトロナスで緊急事態を知らせるんですね。
ハリーとルナとマクゴナガル先生も走ります。ところが、誰か別の足音が加わりました。マクゴナガル先生は素早く杖を構え、臨戦態勢で聞きます、「そこにいるのは誰?」
「それは、私だ」
甲冑の後ろから出てきたのは、さるおが大好きなまわりくどいこのしゃべりかた!スネイプ校長。同じく杖を構えて臨戦態勢。
久々に見るスネイプさん、こんなにべっとりした黒髪を細い顔に垂らして、死のように冷たい黒い瞳で、あらためてこの人はハリーの憎悪の対象ですな。
「カロウズ兄妹はどうしました?アレクトが侵入者を捕まえたようだが」
「カロウズ兄妹はあなたがいろといった場所にいるのでは?セヴルス、なぜ侵入者などと?そーいえばあなたたちDEは左腕のヘビ印で連絡し合うんだったわね」
今にも決闘をはじめそうに睨み合うスネイプさんとマクゴナガルさん。
スネイプさんはマクゴナガル先生の周囲をじろじろ見回します、まるでそこにハリーがいるのを知っているように。ハリーはマントの中で杖を構え、アタックに備えます。
「今夜がパトロール担当だとは知りませんでしたよ、ミネルバ」
「文句あるかしら?」
「ミネルバ、ポッターを見かけたのでは?」
次の瞬間、マクゴナガル先生が動きました、信じられないような素早さで!彼女の杖が空気を切り裂き、一瞬、スネイプさんが倒れるのかと思ったとき、スネイプさんのシールドに今度はマクゴナガル先生がよろけます。スゴ腕のミネルバ、そこでずっこけたりしてないっすよ、一瞬後には彼女の杖は壁のトーチに呪文をぶん投げ、その炎は投げ縄のリングにようになってスネイプめがけてぶっ飛んでいきます。こちらもスゴ腕のスネイプさん、あっという間に炎のリングは黒いヘビに姿を変えマクゴナガル先生に襲いかかる。かと思ったらもう煙になっちゃいました、かと思ったらその煙は無数の短剣になってびゅんびゅんとスネイプさんめがけて飛んで行く。スネイプさんは甲冑を楯にナイフをよけてます。甲冑は穴だらけ。スゴ腕同士のバトル、すげぇ。
ハリーはルナが怪我しないように懸命に守ってますね。
「ミネルバ!」
駆けつけたのはフリットウィック先生とスプラウト先生、遅れて走ってくるのは太り過ぎのホラスです。「許さん!ホグワーツで殺人はたくさんだ!」そう叫びながらフリットウィック先生は杖を上げ甲冑に呪文を投げつけます。甲冑は生命を吹き込まれて動き出し、スネイプさんは甲冑から離れるとその甲冑にフリットウィック先生を攻撃させようとする。突進してくる甲冑をハリーとルナがよけたところで甲冑は壁にぶちあたりガラガラと崩れました。
スネイプさんは教室に駆け込みます。それを追うマクゴナガル先生、フリットウィック先生、スプラウト先生。
「臆病者!臆病者!」
マクゴナガル先生が叫んでいるのが聞こえます。ハリーもルナを連れてその教室へ入ると、先生3人は"スネイプ型に穴の開いた"窓際に立ってます。
「飛び降りたわ。でも死んでない。ダンブルドアのときとは違って、彼は杖を持ったままだし、師匠からいろいろ学んだようね」
ハリーは透明マントを脱ぎ、フリットウィック先生とスプラウト先生をびっくりさせながら窓の外を見ます。
すると、ぐわぁーっ!セヴルスもほうきなしで飛んでるぅーっ!巨大なコウモリのように、闇の中を飛んでっちゃいました。
やっと追いついたパジャマ姿のホラス、いつものように"My dear boy"とハリーに声をかけ、こりゃどーなってるんだと、マクゴナガル先生に聞きます。「校長先生はちょっと休憩をとってるのよ」
このセリフもね、ミネルバ最高!

インフェリの湖を見下ろす。そしてボートを降ります、殺意を胸に。

「バリケードがいるよ、やつが来る!」ハリーはマクゴナガル先生に叫びます。
マクゴナガル先生にもはや迷いはありません。てきぱきと同僚に指示を出します。「ユーノーヘビ男がここに来ます。ダンブルドアの命令で、ポッターは城でやることがあります。その間、我々はできるかぎりのプロテクションをかけましょう」
「ユーノーヘビ男は止められないぞ」とフリットウィック先生。
「ユーノーヘビ男をしばらく足止めするくらいならできるわ」とスプラウト先生。
「ありがとう、ポモナ」2人の魔女は見つめ合います。これで理解し合える、同性同士の素晴らしさっすねー。
「城の周りにプロテクションを張りましょう。その後生徒たちを連れて大広間に集まり生徒たちを避難させます。成人して、残って戦うことを望む者がいれば、それを受け入れます」マクゴナガル先生、ホグワーツが戦場と化すのはもうわかってるんですね。
「20分後に」スプラウト先生は友人の提案のすべてを受け入れるやいなや、ぶつぶつ言いながらハッフルパフ寮に向かいます。「"Tentacula"、"Devil's Snare"、そして"Snargaluff pods"も使える。DEめ、かかって来なさい!」潔い人です。スプラウト先生、かっこいいなぁ!あなたも素晴らしい!
「私はここから」フリットウィック先生は杖を上げ、窓から外に向かってかなり複雑な呪文を唱え始めます。突然激しい風が吹く、まるでフリットウィック先生が風の魔力を解き放ったかのように。フィリウス、さすがは決闘チャンプ、あなたも凄そうだ!
ハリーはフリットウィック先生に近寄って質問します。
「邪魔してごめんなさい。えっと、レイヴンクロウの王冠、見たことありませんか?」
「なんだ、こんなときに。生きてる者の記憶にあるはずないだろう、大昔に失われたんだから!」
ハリーはがっかりと同時にパニクり気味ですね、どーやって捜したもんかと、困っちゃいました。
「こんなのバカげてる。止められっこない。抵抗したって殺されるだけだ」さっさと行動し始めた先生3人と違い、戸惑っているホラスさんに、マクゴナガル先生はきっぱりと言います。「スリザリンの生徒を集めて大広間に連れて来てください。あなたも避難したいなら、止めはしません。でももしも邪魔をする気なら、決闘よ。あなたと私、どちらかが死ぬまでね。ホラス、スリザリン寮の忠信がどちらにあるのか、決める時が来たのよ、さぁ、行って生徒を起こしなさい」
マクゴナガル先生は、そこに現れたフィルチさんにも「今こそ役に立つことをしなさい!ピーヴスを見つけるのよ!」と叫び、続けて"Piertotum Locomotor!"と吠えました。「ホグワーツは危機にさらされている!城を守る者たちよ!我々を守り、我々の学校に義務を果たしなさい!」
すると、城中のすべての彫像、すべての甲冑が、剣を抜き、ハンマーを振り上げ、目を覚まして動き出した!
「ポッター、ラブグッドさんと一緒に友達を呼んできなさい。私はグリフィンドールの生徒を起こします」
ハリーとルナはそこでマクゴナガル先生と別れ、RoRに向かいます。起き出した生徒たちと擦れ違うと、みんながびっくりしてハリーを見ます。

RoRは、人が溢れ返りものすごいことになってましたよ。
キングスレー・シャクルボルト、リーマス・ルーピンはもちろん、オリバー・ウッド、ケイティ・ベル、アンジェリーナ・ジョンソン、アリシア・スピネットってもう、クィディッチがはじまりそうっす。ビルとフラー、アーサーとモリー、みなさん勢揃い。
「どうなってる?」まず声をかけたのは、リーマス。
「DA全員呼んじゃったー。楽しみを独り占めなんてずるいや、ハリー」とフレッド。
「ヘビ男が来る。先生たちはバリケードしてる。スネイプは飛んでっちゃった。生徒を避難させるんだ、みんな大広間に集まってる。戦いが始まってるんだ」ハリーは手早く説明します。RoRは雄叫びでどよめき、みんな次々と大広間に向かいます。
「行こう、ルナ」ルナの手を取ったのはディーンです。
リーマスと双子と新婚さんに囲まれて、モリーはジニーを止めようと必死です。
「あなたはまだコドモでしょ!」
「私DAだもん!帰らないからね!私の家族のすべてがここにいるのに、私だけ何も知らされずに待ってるなんて嫌だもん!」
ハリーとジニーの目が合います。ハリーはジニーに、無言で首を振ります。
「わかったわ」ジニーが苦々しく横を向いたとき、また誰かが来ました。ドアのところでつんのめりながら(笑)、ひん曲がったメガネを直して「遅刻?もう始まっちゃった?」っておまえー、パーシー・ウィーズリーじゃねーか!
静まり返るRoR、パーシーとパーシー以外で見つめ合うウィーズリー家。
ついに、パーシーがでっかい声で言いました「ぼくがバカだったんだ!とんでもないバカちんだった。気取ってるだけの間抜けだった。ぼくは、ぼくは・・・」
続きを引き取ったのはフレッドです「魔法省が大好きで、家族と断絶、権力におぼれた間抜けのことね」
「そう!それ!」
「これ以上の正論はないね」手を出すフレッド、握り返すパーシー。
感動で泣き出したモリーはフレッドを押しのけてパーシーを抱きしめます。アーサーも涙目をしばしばさせてパーシーを抱きしめます。
「なんで正気に戻ったの、パース?」とたずねるジョージにパーシーは答えます。しばらく前からわかっていたけど、反逆者をアズカバンに送り続ける魔法省から抜け出すのは大変だった、でもアバフォースが知らせてくれたんだ、ホグワーツで戦いが始まると。
「お義姉さんだよね」パーシーはフラーとも握手をします。
「モリー、ジニーはこの部屋で待ってるってことでどーかな。戦闘には参加しないっちゅーことで」感動の再会シーンのどさくさにまぎれて参戦しようとこそこそしていたジニーも、リーマスのおかげで家に帰らなくてもいいことになりました。待ってろったって、そんなん言うこと聞くはずないけど(笑)。
あれれ?ロンとハーの姿がありません。ジニーによれば、ふたりは「トイレがどーとか言ってたわ」とのこと。何のことかな?

翼の生えた雄豚の彫像が乗った左右の門柱の間に立ち、鉄門の向こう、明かりの灯った城へと続く暗い校庭を見つめる。
肩の上には最愛のナギニちゃん。
冷たく、残酷な殺意が、胸を満たしています。

【メモ】

ルナを"a second outlaw"と表現しているところ、なんだか嬉しいっす。そうだぜミネルバ、ルナはかっこいいアウトローだぜ、と思いました。
他の人がアウトローになるのと違って、ルナの場合は一切肩に力が入ってないわけですが。で、そこがルナちんの魅力っすね。

"Pomona"はスプラウト先生のファーストネームです。"Filius"はもちろんフリトウィック先生。

翼の生えた雄豚、"winged boars"です。雄豚というより、"翼の生えたイボイノシシ"なのかな、Hogwartsだから。

さて、この章は非常に興味深いです。
さるおはね、グリフィンド−ルに最初に続くのはレイヴンクロウだと思ってました。理由は色です。グリフィンドールは金、スリザリンは銀、レイヴンクロウは銅、こりゃメダルじゃねーかと。第1巻『PS』の最後に、1位グリフィンドール482点、2位スリザリン472点、3位レイヴンクロウ426点、4位ハッフルパフ352点になったのと一致する。決して4賢者の"優劣"ではないけれど、少なくとも、グリフィンドール、スリザリン、レイヴンクロウは戦う気概がありそうだし、ハッフルパフは争う意志がなさそうな穏やかな感じ。そう思ったわけです。詳しくはこちらです。
ところがこれは逆転しました。マクゴナガルさん(グリフィンドール)と以心伝心、一瞬のためらいもなく正義を信じて、友と一緒に戦う覚悟を決めたのはスプラウト先生(ハッフルパフ)でした。迷わず行動したのは彼女なんすね。ハッフルパフはすべてを内包し得る"黒"であると同時に、やっぱり"黄色(原色)"だったんすね。
フリトウィック先生(レイヴンクロウ)だって弱虫じゃありません。決闘チャンプだもん。レイヴンクロウは頭が良いだけに、行動するより先に計算してしまうのかも。

心ゆくまでさるお、もんち!

2007年12月19日

さるおのハリポタツアー Harry Potter and the Deathly Hallows Chapter 29

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、愛を込めて、さるおのハリポタツアーは、ネビルやみんなに励まされてロウェナのもとに辿り着きますが・・・。
『DH』の完全ネタバレです。コメント欄も含めて、すごーくご注意ください。
ハリポタ辞典のもくじはこちらです。

29:The Lost Diadem

トリオはびっくり。さるおもびっくり。
ハリーに挨拶したあとロンとハーを抱きしめるネビル、傷だらけで片方の瞼が腫れあがり、ゴングマークをつけたボクサーみたいです。でもそんなの気にしてない。「"ハリー・ポッターは逃げた"なんて言うやつもいる。でもぼくは、絶対戻ってくる、時間の問題だって、シェーマスと話してたんだ!」待ち望んだ再会によろこびを爆発させます。
「シェーマスはもっとひどい怪我してるよ。すぐ会える。行こう!」そしてアバフォースに「ねぇアブ、あと何人か来るから、よろしく」
そっか、アバフォースじいさんとはもうすっかり打ち解けてるんすね。そうだよな、戦友だもんなぁ。
「あと何人か来る?村中に外出禁止令が出てんだぞ!」
「わかってるってば。だからみんな直接このバーに来るんだ。仲間が来たらこの通路で城まで通してやって。たのんだよ」
ネビルはさっそくハーが暖炉によじ登るのをたすけ、トリオをトンネルに招き入れます。
最後にハリーは振り返り「アバフォースさん、あなたはぼくらの命を2度も救ってくれた。ありがとう」とお礼を言います。アバフォースは「せいぜい気をつけろ。3度目は救ってやれないかもしれないんだから」と、ぶっきらぼうに返事をします。ハートがこもってますねぇ。

トンネルは古くないようです。せいぜいここ1年のうちにできたもののよう。なめらかな石段のあとは踏み固められた地面です。真鍮のランプが壁に並び、歩くと影が扇形にゆらゆらと揺れます。
「この通路、Marauder's Mapにはなかったよ。たしか通路は7本なのに」と質問するロンに答えながら、ネビルはホグワーツの近況を話してくれます。
「新学期が始まる前にすべての通路が塞がれた。DEとディメンターに遭遇せずに城を抜け出す方法は残ってない。この1本だけなんだ。ところで、グリンゴッツに侵入したってほんと?ドラゴンに乗って脱出したの?すげぇじゃん!まじすげぇじゃん!みんなその話に夢中でさ、テリー・ブート(Terry Boot)は夕飯んときにそのことを叫んでさ、カロウにひどい目に遭ってたよ」
強盗話を笑って褒めるネビル、反抗してみせるテリー、みんな戦ってます。
「ホグワーツは変わっちゃったよ」ネビルは笑うのを止めます。「カロウって兄妹のDE、懲罰はすべてあいつらが担当してる。アンブリッジのほうがぜんぜん可愛いよ。他の先生はみんな反カロウ派で、必死で生徒を守ろうとしてるけど。アミカス(Amycus Carrow)が生徒におしえてるのはDADAじゃなくてDA(Dark Artsそのもの)でさ、生徒はみんな授業で拷問の練習なんかやらされてる、懲罰を受けることになった子を実験台にするんだ」
「なんですとーっ!」思わずハモるトリオです。
「そのせいでこうなった」ネビルは頬の深い切り傷を指差します。「友達を拷問する練習なんてイヤだって断ったんだんだよ。おもしろがってるやつもいるけど、クラッブとゴイルとかね、あいつらは授業に夢中」
ひどい状況っすねー。
「アミカスの妹のアレクト(Alecto Carrow)はマグル学。マグルがどんだけ知能が低くて動物的で汚らわしいか、そんなのを聞かされるんだ。で、今度はこうなった」今度は顔面のムチの跡を見せます。「『あなたとあなたのお兄さんにはどれくらいマグルの血が流れてるんですか?』って聞いてやったんだよ」
「すげーじゃん、ネビル!」ネビルに惚れ惚れっすね。
「立ち上がって戦うのって、意味があるんだ、みんなの希望になるんだよ。ぼく、それに気づいたんだよ、ハリーはそれをやってたんだって」
ネビル、おまえって、おまえって。
「外にいる友達とか親戚が狙われてる子のほうがあぶない。ゼノがいろいろ書いてたからって、やつらはルナをホグワーツ特急から引きずり降ろして行ったんだから。そうだ、ルナから連絡があったよ、無事だって。ねぇねぇ、これってすごいよ、ハーちん」
ネビルはハーがDA用に創った偽ガリオンを取り出して見せます。ハーの大傑作を、ずっと使い続けていたんだなぁ。
「ぼくら、夜中に抜け出してさ、"Dumbledore's Army, Still Recruting"(DAメンバー募集中)って壁に落書きしたもんさ。でも、クリスマスにルナが消え、イースターにジニーが去った。ぼくら3人がリーダー役でがんばってたのに。カロウのやつら、いろいろ騒ぎを起こす犯人はぼくだって考えて、すんげーいじめてきたんだ。マイケル・コーナーもやつらに鎖で繋がれた1年生を逃がしたら、捕まってひどい拷問にかけられたんだよ。今じゃみんな怖がってる。マイケル・コーナーと同じ目に遭えなんて、ぼくには言えない。だから騒ぎを起こすのはやめた。でも、あきらめてない。今でも戦ってるよ。こっそり動き続けてる。だから、ぼくを止める方法はもうこれしかないって、やつら、ぼくのおばぁちゃんを襲撃したんだ」
「なにぃーっ!ほんでばーちゃんどした?」またハモるトリオです。ちっくしょう、卑怯者めー、さるおも激怒です。
「コドモを誘拐して痛めつければ親は言うことを聞く。その反対もありだと思ったのさ。だけど」
悲劇を聞かされるのかと思ったハリーさん、ネビルがにやりと笑ってこちらを見てますよ。
「小柄なヨボヨボのばーさんだ、ちょろいもんさ、そう思って、うちのおばぁちゃんをなめてたね(笑)。おばぁちゃん、DEを返り討ちにしたよ!ダウリッシュは病院送りで今も入院したまま。うちのおばぁちゃんは逞しく逃亡生活に入った。あとで手紙くれたよ、『おまえはフランクとアリスの子だ。誇りに思う。その調子でふんばり続けろ』って」
「かっけー!」ロンも感動。さるおも感動しすぎて号泣。
「やつらにはもうぼくを止める方法がないとわかった。そしたら次は、ぼくを殺すか、アズカバン送りだ。だから、姿を隠すことにしたんだ」

トンネルの終わりが見えてきました。アリアナの肖像画に描いてあったようなドアがあります。ネビルはドアを開けました。
「ハリー!」「ポッターだ、ポッターが戻ってきた!」「ロンちーん!」「ハーちーん!」
沸き上がる歓声。なんとそこには大勢がいます。
ログハウスのような、船室のような、窓のない巨大な部屋です。色とりどりのハンモックが吊るされ、グリフィンドールとハッフルパフとレイヴンクロウのバナーで飾られています。本棚があり、ほうきが壁に立て掛けられ、部屋の隅にはなんと木箱に入ったワイヤレス(ラジオのことです)。
「ここ、RoRだよ。カロウに追いかけられてさ、隠れる場所はひとつしかないってわかってた。始めはもっと小さい部屋だったんだ。ハンモック1つとグリフィンドールのバナーだけ。だけどDAが増えるたびに、こんなに大きくなったんだ」
ごはん以外はなんでも出てくるRoRで、みんな2週間近くも生活してたんですね。(ごはんが出てこないのは"Gamp's Law of Elemental Transfiguration"のためですね)
「カロウはここに入れない」と言ったのはシェーマス・フィニガン。かわいそうに、痣だらけで顔を腫らせてます。「ネビルのおかげさ。"カロウ派には入ることができない隠れ場所"をみつけたんだ。ぼくらはここに逃げ込んで、ループホールを閉じることができる。ネビルってすげーだろ!」
ネビルはRoRに立てこもった。そして、空腹に耐えられなくなったとき、ホッグズヘッドへ続くトンネルのドアが現れて開いた。それ以来、ごはんはアバフォースがたすけてくれているわけです。
「女子が加わったらバスルームもできたしね」これはラベンダー・ブラウン。見れば、パティル・ツインズ、テリー・ブート、アーニー・マクミラン、アンソニー・ゴールドシュタイン、そしてマイケル・コーナーもいます。
「計画は?これからどーする?」アーニー、早くも戦う気まんまん。嬉しいっすね。「噂がたくさん流れてる、キミたちの動きをラジオで追ってたけど。まさか、グリンゴッツに押し入ったって、嘘だよね?」
「ほんとなんだよ!ドラゴンのことも、ほんとなんだ!」トリオに代わってネビルが答えると、RoRは大歓声に包まれます。
「何を探してるの?」シェーマスもやる気まんまん。嬉しいっす。
ところがそのとき、また額の傷跡が痛みだすハリーさん。

石の廃虚。床板が剥がされ、金の小箱が開いています。中身は空。ヘビ男が怒りまくってます。

倒れそうなハリーをロンが支えます。ネビルはハリーが疲れているんだろうと椅子をすすめます。
時間がない。
ハリーは無言でロンとハーを見つめます。
「行かなきゃ」
ロンとハーにはわかりました。
「何を手伝えばいい?計画は?」シェーマス、おまえ、一緒に戦ってくれるんだな。
ハリーは痛みに耐えながら言います。「ぼくとロンとハーでやらなきゃいけないことがあるんだ。行かなきゃ。もうここには戻らない。理由は言えないんだ」
もう誰も笑っていません。「おしえてよ。ヘビ男と戦うんだろ」「手伝うよ」
「ダンブルドアがぼくら3人にシゴトを遺した。話しちゃいけないことになってるんだ。3人だけでやらなきゃいけないんだ」
「彼の部隊だぞ。ダンブルドアの軍団なんだ。ぼくらは1つなんだ。3人がいない間だって、ぼくらはDAをやめなかった。どうしてここにいるみんなを信用できないんだよ。ここにいる全員が戦い続けてる。みんなカロウに狩られてここに来た。全員が、ダンブルドアへの忠誠を証明してる、きみへの忠誠を証明してるんだぞ」手伝わせろとせまるネビル、あんたは正しい。
そこへ、ドアが開いて、合流したのはルナとディーン。ディーンはシェーマスと抱き合ってます。
「ぼく、ルナとジニーに約束したんだ。ハリーが戻ってきたら偽ガリオンで知らせるって。きみが戻ってきたときが反撃の合図だって」
「そうよね、ハリー。スネイプとカロウを追い出すのよ」と明るいルナ。「戦うんだろ。"ハリーが戻った、戦うぞ!"ってメッセージが来たんだ。ぼくはまず杖を手に入れないと」ディーンも戦う気迫が漲ってます。「ぼくらを置いて行くのかよ」マイケル・コーナーも詰め寄ります。「手伝わせろって!役に立ちたいんだ!」ネビルはほとんど怒ってます。
続いて現れるF&Gとリー・ジョーダン、愛しのジニーと元カノのチョウ・チャン。ハリーは忘れていたことに気づきます、ジニーのなんと美しいことか、でも、彼女とここで会うわけにはいかなかったのに。チョウはハリーに微笑みかけてます(汗)。
「アバフォースが、不機嫌だよ。休みたいのに、ここは駅か!って」と、フレッド。
「プランはどーなってる、ハリー?」とジョージ。
ハリーは困ってネビルに言います。「とめてよ。なんでこんなおおごとにしちゃったんだよ」
そのときロンがこっそり言いました。「手伝ってもらおうよ。ぼくら、それがどんなモノでどこにあるかも知らないんだ。みんなにはホークラックスだって言わなきゃいい」
ハーも言います。「ロンが正しいと思う。あたしら、何を探しているのかもわかってないんだもん。あなたひとりで背負い込むことない」
そうだね、ふたりの言うとおりだ。
「えっと、探してるモノがあるんだ。ヘビ男をやっつけるのに必要で、それはホグワーツのどこかにある。レイヴンクロウに関係あるモノなんだけど、何か知ってる人いませんか?鷲の紋章がついたモノを見たことあるとか」 
「失われた王冠がある。あなたに話したことあるよ、ハリー。パパが復刻させようってがんばってるやつ」答えたのはルナです。
「いつ失われたの?」
「数百年前。レイヴンクロウの談話室のロウェナの像がその王冠をかぶってるから、見せてあげられるけど」この提案はチョウからです。

肩にナギニちゃんを乗せ、空を飛んでいます。次は湖か、ホグワーツか。時間がない。
「ヘビ男が動いた」ハリーは小声でロンとハーに知らせます。

「ルナがハリーを連れて行く。そうよね、ルナ?」これはハリー&チョウの復活を阻止するジニーの意地のセリフです。チョウはがっくし。
ネビルがふたりをカップボードの出口へと連れて行きます。「出入口は毎日変わる。だからやつらにはみつからない。ぼくらもいったん出ると戻るのが大変だけどね。ハリー、気をつけろ、あいつらパトロールしてるから」
ハリーとルナは透明マントをかぶりRoRを出ました。「ここ、5階だ」Marauder's Mapを見ながら暗い廊下を進み、レイヴンクロウ・タワーを目指します。絶対に会いたくないのはピーヴスっすね。「こっちよ」ルナはハリーを連れて狭い螺旋階段をどこまでも上がります。そして談話室へ通じるドアの前に立ちました。
取っ手も鍵穴もない、古い木のドアです。ただひとつ、鷲のかたちをしたブロンズのノッカーだけがついています。
ルナがノッカーを1回鳴らしました。
ブロンズの鷲はくちばしを開き、こう問いかけました。
「不死鳥と炎、どちらが先か?」
さすがは知性のレイヴンクロウ。パスワードじゃなく謎かけで、頭の中を試されるわけですね。
ルナは少し考えてから「始まりのない円だわ」
ドアは開きました。ルナちん、さっすがー!
そこは、風のような軽快さを持った幻想的な真円の広間。優美なアーチ型の窓が壁を美しく切り取り、青とブロンズ色に織られたシルクのカーテンがかかっています。昼間なら、城を囲む山々を見渡せるはずです。ドーム型の円天井には星がきらめき、カーペットはミッドナイトブルーです。
ありましたよ、白い大理石のロウェナの像。ルナんちでも見たからすぐにわかります。
ふたりは像に近づきます。美しいけどちょっと怖いロウェナは謎めいた微笑みを浮かべてこちらを見ているようです。
繊細な冠が、頭の上に乗ってます。フラーがかぶったティアラとはずいぶん違います。
ハリーは透明マントから出ると、よく見ようと台座に上りました。

Wit beyond measure is man's greatest treasure.

「なんと無防備で愚かなこと」
後ろから、はしゃいだようなまさかの声が!ハリーは振り向き、台座から落ちてしまいます。顔を上げたハリーの目の前にいるのは、アレクト・カロウ。ハリーが杖をかまえるより先に、彼女のずいんぐりした人差し指は、腕のヘビマークに触れていました。

【メモ】

スゴ腕のオーガスタばーちゃん、最高で最強!
やっぱロングボトム家はただもんじゃないっすね。

Diadem
1 王冠(crown);(東邦諸国の王・女王が頭に巻いた)小環;花冠、(月桂樹の)葉の冠
2 王位、王権
もともとは、王様が権威を表すために頭に巻いた白いリボンのことですが、転じて、今では王冠を指します。
ということは、"The Lost Diadem"というのは"失われた王冠"ということになります。あるいは"失われた王位"で、こっちの意味がかけてあるとおもしろいなぁと思いますが、ま、今のところ"王冠"ですね。
で、どんな冠かというと、本には"a delicate-looking circlet"だと書いてあります。優美な、上品な、あるいは精巧な、あるいは壊れやすい、そーゆー冠で、アーチやキャップになっていない、つまり頭のてっぺんを覆うようにはなっていない、"環状"のやつですね。とても古いスタイルです。
さるおはレイヴンクロウの宝は杖じゃないかと言ってましたが、それはハロウズの1つで、予想ははずれちゃいました。"ロウェナ"と言ったら伝説の"Rowena, Queen of Britain"ですから、彼女の"持ち物"が冠なのは今にして思えばけっこういい感じっすねー。

心ゆくまでさるお、もんち!

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