2009年03月09日

さるお的BBツアー 『The Fountain of Fair Fortune』DDノート

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、『The Tales of Beedle the Bard』を"さるお訳"で一緒に旅しましょう。

『The Fountain of Fair Fortune』についてのダンブルドアさんの解説

この物語は、ホグワーツ魔法学校のクリスマスのお祝いでパントマイム劇にもなってます。人気のある物語ですね。
アマチュア演劇の熱心な愛好家でありホグワーツで薬草学の教師だったハーバート・ビアリー(Herbert Beery)が、クリスマスのために選んだ題材がこれでした。当時私は変身術の教師で、ハーバートに頼まれ、"大道具さん"をやったものです。舞台に、ちゃんと水が流れる"幸運の泉"と草に覆われた丘を造ったわけです。
私の泉と丘はうまくいったと思う。でも、大変なことになってしまいました。
監督をつとめたビアリー先生は、彼の目の前にある感情のもつれに気づかなかった。アマタ役の学生とラクレス卿役の学生は、ステージに上がる1時間前までは恋人同士だったのです。ところが本番直前に電撃破局。劇がはじまるころには、ラクレス卿が恋していたのは"アーシャ"だったのです。
さらに、魔法生物学のシルヴァヌス・ケトルバーン(Silvanus Kettleburn)先生が提供した"巨大なイモ虫"です。まさに幕が開いたとき巨大イモ虫は、- "巨大イモ虫"だと思ったのはつまり、Engorgement Charmのかかったアシュワインダー(Ashwinder)*だったわけですが - 火花と埃のなかでぼっかーんと大爆発。大広間には煙がたちこめ、粉々に破壊されたセットの破片が降りました。私が造った丘に残った"巨大イモ虫"の灼熱の卵からは炎が床に燃え移り、アマタとアーシャはたがいに振り向くと、なんと舞台で決闘をはじめましたよ。すっさまじい集中砲火のちょうど真ん中で動けなくなっているのはビアリー先生。ほかのスタッフたちは大急ぎで生徒たちを大広間から避難させました。大広間のステージは、吹き上げるような炎に包まれてしまいましたよ。
涙出ますね。かなしいかな、幸運の泉を求めるホグワーツの魔女たちと騎士は、目的地に辿り着くことはありませんでした。
楽しいはずの夕時の催し物は、保健室の大混雑で幕を閉じることになったのです。校長(Armando Dippet)はパントマイム演劇を禁止し、それは現在まで続いています。

私たちのこの劇的ともいえる大失態にもかかわらず、『The Fountain of Fair Fortune』の人気は衰えていません。でもこの物語を悪く言う人もいるのです、『The Wizard and the Hopping Pot』のときとまったく同じように。この物語をホグワーツの図書館から排除すべきだと書面を送りつけてきた父兄が少なくとも1人いましたよ、奇しくも、あのブルータス・マルフォイ(Brutus Malfoy)の子孫、かつてはホグワーツの理事をつとめた人物、ルシウス・マルフォイ(Lucius Malfoy)です。

創作であろうとフィクションであろうと、魔法族とマグルを交配させる描写のある物語は、ホグワーツの本棚から排除すべきであーる。マグル婚を啓蒙する本なんか読んで、うちの子にヘンな影響があったらやだもん。純血なのに。
まるほいより

私はこの要求を拒否しました。その考えは多くの理事にも支持されました。

純血なんて言ってる家はさ、マグルやマグル生まれをごまかしたり家系図から追放したり、ほんとはやってんじゃん。そんで真実のほうを隠せとか言って、認めたくないだけじゃん、偽善じゃん。純血なんてほんとはもういないもん。『The Fountain of Fair Fortune』を本棚から排除するなんて非論理的で非道徳的だから、あの本は捨てませーん。
だんぶるどあより

ルシウス・マルフォイとのこのやりとりは、私をホグワーツの校長の座から引きずり下ろそうという、後々まで続く彼の活動のはじまりでした。私にとっては、彼をヴォルデモート卿のお気に入りのデス・イーターの座から引きずり下ろそうという活動のはじまりになるのですが。

* アシュワインダー(Ashwinder):魔法でおこした火を放っておくと出てきてしまう生物。赤く光る目を持った、うすい灰色の細いヘビ。火の燃えかすから現れ、ひとすじの灰を残しながら暗闇を求めてにょろにょろ這い回る。1時間しか生きないが、隔離された暗い場所を探し、そこに真っ赤な卵を産む。産卵後、親は消えて埃となる。アシュワインダーの卵は相当の熱を帯びているため、ただちに発見し凍結できなかった場合は、周囲の可燃性物を発火させる。凍結した卵は"Love Potions"に使われるか、あるいは全体を食してマラリアの治療薬に利用する。
危険度:XXX (スキルのある有能な者が対処すべき)
(出典『Fantastic Beasts & Where to Find Them』


心ゆくまでさるお、もんち!

2009年01月26日

さるお的BBツアー The Fountain of Fair Fortune

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、『The Tales of Beedle the Bard』を"さるお訳"で一緒に旅しましょう。

The Fountain of Fair Fortune(幸運の泉)

強力な魔力で封印され高い塀にかこまれたその広大な庭園には丘があり、丘を登るとそこには幸運の泉があるといいます。その水を浴した者には幸運がおとずれるのです。
1年に1度、日の出から日の入りまでが最も長い夏至の日、不幸な者がただひとりだけ、その泉に辿り着くチャンスを与えられるのです。

その日の夜明け前、王国のあちこちから数えきれないほどの人々が丘をめざしはるばる旅してきました。老若男女、富める者も貧しい者も、選ばれる1人が自分であることを期待して、暗がりの中に寄り集まって夜明けを待ちながら立っていました。
群衆の中には3人の魔女もいました。
1人目のアーシャ(Asha)は、どのヒーラーにも治すことのできない病にかかっていました。アーシャは思っていました、泉の水が病を追い払ってくれるかもしれない。
2人目のアルチダ(Altheda)は、杖とすべての財産を盗まれてしまいました。アルチダは思っていました、泉の水が無力と欠乏から解放してくれるかもしれない。
3人目のアマタ(Amata)は、恋人に捨てられもう立ち直ることはできないと思っていました。アマタは思っていました、泉の水が心の傷を癒してくれるかもしれない。
3人の魔女は互いの不幸に心を痛めました。私たちはともにあの塀の中に入りましょう、ともに泉をめざしましょう。
地平線から、太陽の最初の輝きが差し込み、塀に裂け目が開きました。群衆は泉の祝福を求めてその裂け目に押しかけました。
這う者がくねくねと群衆をすり抜け、1人目の魔女アーシャに巻き付きました。アーシャは2人目の魔女アルチダの手をとりました。アルチダは3人目の魔女アマタの手をとりました。アマタは、痩せこけた馬に乗りみじめな顔をした騎士の鎧にひっかかってしまいました。
這う者が3人の魔女を塀の裂け目から中にひっぱると、騎士は馬から引きずり下ろされ一緒に中に入りました。
塀の外から人々の叫びが聞こえ、塀の裂け目が閉じるとあたりは静まり返りました。
「ひとりしか水浴びできんのにまぁ、よけいなん連れてきてー。何やっとるの、あんたはー!」
アーシャとアルチダはアマタを怒りました。
ラクレス卿(ミスター不運)は自分と一緒にいる3人が魔女だと気づきました。塀の外なら騎士で通るけれど、今は魔法の使い手が相手です。泉を奪いあったところで、どー考えても分が悪い。やめとこう。「ぼくかえる」
ところが今度はアマタが怒りはじめましたよ。
「弱虫やわぁ、あにさんは!それでもお侍か!さぁ刀を抜いて、手伝うてよねっ!」

3人の魔女と騎士は幸運の泉めざして歩き出しました。
その庭園は見たこともないような薬草や果物であふれていました。4人は日に照らされた小道を進み、丘のふもとまでやってきました。
すると、巨大で真っ白で、まるまる太って盲目のイモ虫が、丘の周囲に巻きついていました。4人が近づくとイモ虫は頭をもたげてこちらを向き、こう言いました。
「その痛みを証明せよ」
ラクレス卿は剣を振りおろし、アルチダは石を投げ、アーシャとアマタは知っているすべての呪文を使ってイモ虫をやっつけようとしましたが、びくともしません。太陽はもうすっかり高くのぼり、アーシャが泣き出しました。
イモ虫は、頬を伝って流れるアーシャの涙を飲みました。イモ虫は渇きが癒され、大地にあいた穴の中に消えて行きました。
3人の魔女と騎士は丘を登りはじめました。お昼には泉に辿り着けるかもしれません。
半分ほど登ると、足元の地面に言葉が現れました。
「労働の成果を捧げよ」
ラクレス卿は、たった1枚しかない全財産のコインを地面に置きましたが、それは転がり見えなくなってしまいました。
4人は丘を登り続けました。ところが、歩いても歩いても丘の頂上は近づきません。見ると足元の地面にはまたあの言葉が。
太陽が頭上をこえ西に傾きはじめると、もうだめかもと思えてきます。それでもアルチダは歩きました。他の誰よりも、もっと速く、もっとがんばって歩き続けました。丘の頂上はぜんぜん近づいて来ないけれど。
「ふんばりなはれ!」
アルチダの汗が地面に落ちました。すると地面に刻まれた言葉は消え去り、ついに丘の頂上に近づいてきました。
4人はよろこんで進みました。花々や木々の木かげに、水晶のように輝く幸運の泉が見えます。
するとそこには泉を囲むように小川がありました。澄んだ水の底の石には言葉がありました。
「過去の宝を捧げよ」
ラクレス卿は、楯を踏んで川を渡ろうとしましたが、楯は沈んでしまいました。魔女たちは騎士を川から引き上げると、川を飛び越えようとしましたが、渡ることはできませんでした。太陽は地平線に近づいています。
4人はかがみこみ、水の底の言葉の意味を考えました。するとアマタが最初にそれを理解しました。アマタは杖を出すと、去ってしまった恋人との幸せな思い出を取り出し、水に落としました。川は記憶を流しました。すると飛び石が現れ、3人の魔女と騎士はついに川を渡ることができました。

それまでの道にあったものより一層めずらしく美しい薬草や花々に囲まれ、幸運の泉はキラキラと輝いていました。空は赤く灼けていました。いったい誰が泉に入るのか決めるときがきたのです。
ところがかわいそうな病気のアーシャは今にも死にそうに倒れてしまいました。3人の友人はアーシャを泉の近くまで運ぼうとしましたが、アーシャは苦痛のあまり、触らないでほしいと言いました。アルチダは、効きそうだと思えるあらゆる薬草を摘み、水の入ったラクレス卿の水筒に入れて混ぜるとアーシャの口に垂らしました。
するとすぐにアーシャは立ち上がりました。それどころか、今までアーシャを苦しめていた痛みがすっかり消えてしまったのです。
「治ったでー!わたしもう、泉なんか必要あらへんわ。アルチダねーさんに譲ったるわぁ!」
ところがアルチダはエプロンによりたくさんの薬草を集めるのに忙しく、こう言いました。
「その病気が治せたんや。もう心配いらん、これで商売したる。アマタねーさんに泉は譲るわぁ!」
ラクレス卿はアマタにどうぞと道を譲りましたが、アマタは首を振りました。川の流れがアマタの哀しい気持ちをすべて消し去ってしまったからです。アマタには、ラクレス卿こそかわいそうに見えました。
「あにさん、風呂入りー。お世話んなったんやしな、せめてものお礼やー」
そこでラクレス卿は、あの数えきれない群衆の中から自分が選ばれたということに驚きながら、前へ進み出ると泉の水を浴びました。太陽は今まさに地平線に沈もうとしていました。
日が沈むと、ひとっ風呂浴びたラクレス卿は栄光に満ちていました。そして、それまで出会った誰よりも心優しく美しいアマタの手をとりました。アマタも、その騎士が自分にふさわしい人だと気づきました。

3人の魔女と騎士は、肩を組み仲良く丘を下りました。4人とも、長く幸せな一生をおくりました。そして4人のうちの誰もが、あの泉の水には魔力などはじめからなかったのだということに、気づきもしないのです。

心ゆくまでさるお、もんち!

2009年01月23日

さるお的BBツアー 『The Wizard and the Hopping Pot』DDノート

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、『The Tales of Beedle the Bard』を"さるお訳"で一緒に旅しましょう。

『The Wizard and the Hopping Pot』についてのダンブルドアさんの解説

この物語は、父から息子への教訓の物語です。地元の非魔法族の痛みを知ることを通して、息子はマグルの隣人のために自分の能力を使う人間へと成長するのです。

さて、15世紀初頭のヨーロッパ。魔女狩りが勢いを増していた暗黒の時代です。隣のマグルが飼っているブタの病気を魔法で治してやろうだなんて、自分を火炙りにするための薪を自ら集めるようなもんです。魔法界の存在を隠すという国際魔法機密保持法(1689年)が制定され、「マグルには関わるな!」をスローガンとして、魔法族のコミュニティはマグルから隠れて暮らすようになりました。
となるとこの物語は大問題です。でももうコドモたちの間にグロテスクなおなべのお話は浸透してしまっている。"イボだらけのおなべ"を残し、物語から"マグル擁護のモラル"を排除しなければなりません。
これを受けて、16世紀中ごろになると物語の別バージョンが登場しました。罪のない魔法使いを捕まえようとやって来たマグルたちをおなべが家から追い出し、ついにはおなべがマグルを丸飲みしてやっつける。ほとんどの村人をおなべが飲み込んでしまったとき、わずかに生き残ったマグルが降伏。魔法使いは独自の静かな生活を勝ち取り、引き換えにズタボロになってしまったマグルをおなべから出してあげる、という物語になっています。
アンチマグルな家庭のコドモたちはこのバージョンしか知らないですから、オリジナルを読むとびっくりするわけですね。
もちろん、この物語が迫害された理由は"マグル擁護のモラル"に対する"マグルの脅威"だけではありません。魔女狩りが熾烈を極め、魔法族は身を守るために魔法を使い、二重生活を余儀なくされた17世紀になると、マグルからの攻撃だけにとどまらず、マグルと話をしただけで、自分が属するはずの魔法界のコミュニティからも"Mudwallower"、"Dunglicker"、"Scumsucker"なんつっていじめられたわけです。
ビードルさんという人は、当時の時代背景を考えれば、とんでもなく非常識な人物でした。自分を親マグル家だと公言してはばからないキケン分子です。
1675年、当時影響力のあった『Warlock at War』の編集者ブルータス・マルフォイ(Brutus Malfoy)はこう書いています。- マグル社会と懇意にする魔法使いは知能が低く、憐れむべき弱い魔力しか持っておらず、マグルのブタ飼いに囲まれてでもいなければ自己の優位を確認できない -
この根拠のない偏見は、特筆すべき能力を持った、"マグル好き"と称される魔法使いたちの存在により次第に消えていきます。

この物語に関する議論はもうひとつあります。
悪名高い著書『Toadstool Tales』で知られるベアトリクス・ブロクサム(Beatrix Bloxam)(1794-1910)による問題提起です。"死、病、流血、不正な魔法、おぞましい登場人物や気味の悪い体液と伝染病、これらの不健康な先入観"は少年少女に有害であるというものです。ベアトリクス・ブロクサムは彼女が有害だと判断する多くの物語の集め、"私たちの小さな天使ちゃんたちが無垢なままでいられるように、こわい夢をみないように、健康的で楽しい思いができるように"と好き勝手に書き換えました。ベアトリクス・ブロクサム版『The Wizard and the Hopping Pot』の最後にはこう書かれています。- その小さな金色のおなべちゃんはバラ色の可愛いつま先で楽しそうに踊りました。hoppitty hoppitty pot! ウィー・ウィリキンズちゃんのお人形のぽんぽんも治りました。おなべちゃんにはお菓子がいっぱい。おなべちゃんもとっても幸せ。「ハミガキを忘れちゃダメだぉ♪」とおなべちゃんは言いました。ウィー・ウィリキンズちゃんはおなべちゃんを抱きしめキスして、お人形を大事にすると約束しました。めでたしめでたし -
ベアトリクス・ブロクサムの本は魔法界のコドモたちに受け入れられず、元のパルプになってしまったのです。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年12月17日

さるお的BBツアー The Wizard and the Hopping Pot

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、『The Tales of Beedle the Bard』を"さるお訳"で一緒に旅しましょう。

The Wizard and the Hopping Pot(魔法使いと飛び跳ねる鍋)

ある村に、とても親切なおじーさんがいました。これは魔法だぞなんて威張るかわりに、"幸運のおなべ"で作ったおクスリだよ、なんつって、魔法薬を村人たちに分けてあげてました。困ったことがあると、人々は遠くからでもやってくる。するとおじーさんは喜んで魔法薬を作ってあげる。いい人っす。
おじーさんもついにヨボヨボんなって、一人息子に"幸運のおなべ"を遺し、天に召されました。ところがこいつが、パパさんとはぜんぜん似ても似つかないバカ息子なわけです。「うちのおとんはマグルなんかたすけて、どーゆーつもりや。マグルなんて何の価値もないわ、けっ!」かなんか思ってる。
バカ息子はおなべの中に小さな包みがあるのに気づきます。「さては金やなー」なんて浮かれて中を見るとがっかり。小さすぎて履けない、しかも片方しかないスリッパ(上履き)が入ってるー。何じゃこりゃ。スリッパと一緒に入っていたメモには「息子はん、使わんですむとええけど」という遺言が書かれています。
「なんやおとんは、あほんだら。んなもん、クズカゴにしたるわ!」

その夜、村の農家のおばぁちゃんが、トントントンと扉を叩きました。
「うちの孫娘が大変なんや。おかしなイボができてしもーた。あんたとこのおとん、古いなべで湿布薬つくってくれたやろ、な、あれでたすけてくれんか・・・」
「やかましいわ!ガキのイボなんかしらん!」
バカ息子はバタンと扉を閉めました。
するとすぐにキッチンで大きな音がします。
ぼかん!ガラガラ!
バカ息子が杖に明かりを灯して見ると、なんと、"幸運のおなべ"から1本の真鍮の足がにょっきりと生え、やかましい音を立てながら床でぴょんぴょん跳ねている。近づいてよーく見たらびっくりです、だっておなべの表面がイボだらけなんだもん。
「なんやねん!気味わるっ!」
しかもおなべはバカ息子が行くところどこへでも、ガチャンガチャンと彼を追ってついてくる。バカ息子はそのおなべを元通りにしようとしましたが、だめ。消そうとしても、だめ。せめて家から放り出そうとしても、だめ。どの魔法も効きませーん。あきらめて寝ようにも、おなべはベッドの脇まで追ってきて跳ね続けるわけです。ガチャンガチャンガチャン。
眠れないまま朝がきて、また誰かがトントントンと扉を叩きました。
「うちの老いたロバがいなくなってしもうた。あの子がおらんと荷物を市場に運べんのです。そしたら今夜の飯が食えんのです。どうかたすけてもらえんじゃろうか。」とおじーちゃんが言います。
「腹へっとるんはわしじゃ、ぼけぇ!」
バカ息子はバタンと扉を閉めました。
ガチャンガチャンガチャン。足元で跳ねているイボだらけのおなべの底から、ロバの鳴き声と、人が空腹を訴えるうめき声も聞こえてきました。
ガチャンガチャン。ヒーホー、ヒーホー。ぐーぐー腹減ったー。1日中おなべに追われてぐったりのバカ息子。
夜になるとまた誰かがトントントンと扉を叩きました。今度は号泣する若いママさん。
「私のあかちゃんが病気なんです。死にそうなんです。お願いですからたすけてください。あなたのおとうさんが、困ったらおいでって・・・」
でも、バカ息子はバタンと扉を閉めてしまいました。
跳ねるおなべが、みるみる塩水でいっぱいになります。そしてその涙を、跳ねるたびに家中に撒き散らしながら、ガチャンガチャン、ヒーホー、ヒーホー、ぐーぐー腹減ったー。

もう訪ねてくる村人はいませんでした。
バカ息子は耐えていますよ(笑)。
ガチャンガチャン、ヒーホー、ヒーホー、ぐーぐー腹減ったー、ゴホゴホ、おぇー、おぎゃーおぎゃー。そしてやがて、涙のほかに、腐ったチーズと腐ったミルクとおなかをすかせたナメクジも撒き散らすようになりました。"幸運のおなべ"は村人たちの病気を知らせてくれてるんすね。
ある夜、疲れきったバカ息子は、ついにこう言いました。
「もうええわ!やればええんやろ!」
そして村へ歩いていきます。ガチャンガチャン、ヒーホー、ヒーホー、ぐーぐー腹減ったー、ゴホゴホ、おぇー、おぎゃーおぎゃー。おなべのお供を連れて。「治しに来たでー!おとんのなべもあるー!治しに来たでー!」大きな声でこう叫びながら村に入って行きました。
バカ息子は、あっちの家にもこっちの家にも魔法をぶん投げながら通りを歩いて行きます。
ある家では眠っている少女のイボが消え、べつの家には遠いところにいたロバが戻り、またべつの家ではあかちゃんの病気が治りました。
バカ息子はできるかぎりのことをして、やがておなべは、泣くのをやめ、咳もとまって、ピカピカのキレイなおなべに戻りました。
「これでええわ。な?」
バカ息子がおなべに話しかけるころには白々と夜が明けはじめました。

おなべは"げっぷ"をしてスリッパを中からポンと放り出し、真鍮の1本足に履かせてもらいました。ふたりで家に帰ります。もう、ガチャンガチャンという足音はしません。
バカ息子は、かつておとんがそうしたように、村人をたすけるようになりました。でないとまた、"幸運のおなべ"がスリッパを脱ぐかもしれません。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年12月07日

さるお的 The Tales of Beedle the Bard

さるおです。
スーパーポッタリアンなので、『The Tales of Beedle the Bard』を"さるお訳"で一緒に旅しましょう。

イントロがあります。"はじめに"というやつっすね。著者は"J K Rowling"です。
とても大事でおもしろいまえがきなのでここからいきましょう。

【はじめに】

『The Tales of Beedle the Bard』は魔法界における『シンデレラ』や『眠れる森の美女』のようなもの。誰でも知ってる物語です。
マグル界の童話と『The Tales of Beedle the Bard』がとても違うところは2つ。
ひとつは魔法です。マグルの童話だと、魔法はたいてい主人公にとってトラブルの元。悪い魔女が出てきてリンゴに毒を入れてみたり、お姫さまを100年も眠らせてみたり、王子さまをビーストにしたり、魔法=呪いっちゅー感じです。『The Tales of Beedle the Bard』だと違う。魔法を使うのは主人公のほうです。そしてその主人公は魔法使いなのに、ぜんぜんスーパーマンじゃなくて、やっぱり試練に出会うわけですね。コドモを持つ親たちは『The Tales of Beedle the Bard』を通して、魔法は癒しであることと同じくらいにキケンであること、そして生きるということは苦しい試練であることを、コドモたちにおしえ語り継いできたわけです。
もうひとつの大きな相違点は、『The Tales of Beedle the Bard』に登場する魔女たちは、マグル童話に出てくる女の子たちと違い、幸せをつかむために"行動する"という点です。Ashaも、Althedaも、Amataも、Babbitty Rabbittyも(この4人は後で登場する魔女さんたちの名前っすね)自らの決断で運命を切り開くんです。けっして、失くした靴を誰かが届けてくれるのをただ待っていたりはしない。唯一の例外は『The Warlock's Hairy Heart』に出てくる乙女(名前はありません)で、彼女はマグル童話的な"お姫さまタイプ"でおっとりしてるわけですが、彼女はハッピーエンディングになってないわけですね。

ビードルさんというのは、ヨークシャー生まれだということと、現存する唯一の木版画からわかる立派なヒゲのおっちゃんだということ以外は謎に包まれた、15世紀を生きた人物です。これらの物語がビードルさんの"人となり"を表しているとすれば、このおっさんはマグル好き。調子んのって魔法を使いまくるとか、魔法使い特有の残酷さや無関心さが大嫌いな人なんすね。物語で勝利するヒーローやヒロインたちは皆、すごい魔法が使えるわけじゃなくで、善良さや良識や創意工夫で活躍するわけですよ。
近代を生きた、ビードルさんによく似た人物がいます。アルバス・ダンブルドアさんです。しかも驚くべきことに、ホグワーツのアーカイブに遺された、遺書を含む多くの遺品の中から、『The Tales of Beedle the Bard』に関するノートが見つかりましたよー。楽しみのために書き記したものなのか出版を視野に入れていたか、そのへんのことはもうわからないっすけど、ありがたいことに現ホグワーツ校長であるミネルバ・マクゴナガルさんから、出版にあたりノートを使ってよーし、という許可がもらえました。しかも、5つの物語はすべて、今回新たにハーマイオニー・グレンジャーさんが原書である古代ルーン語から翻訳したものです。ダンブルドアさんもよろこんでいるはず。大切なことをおしえてくれる『The Tales of Beedle the Bard』が、魔法使いもマグルも、この本を読むすべての人の役に立つはずだもん。ダンブルドアを知っている人ならわかる、CHLG(*)の役に立つならダンブルドアはよろこんで尽力しただろうって。
ダンブルドアさんがノートを書き終えたのは、死の18ヶ月前のこと。彼に死をもたらした、あの魔法界の戦争による悲劇を知っているあなたなら気づくでしょう。ダンブルドアは最後(5つ目)の物語について、ほんとはもっと知っていたはずだと。ダンブルドアは真実についてこう言いました。昔のある日、とても有名なお気に入りの生徒に。

It is a beautiful and terrible thing, and should therefore be treated with great caution.
(それは美しくて、同時に酷いものだから、充分な注意のもとで扱われるべきだ)

私たちはダンブルドアさんに同意できるでしょーか。でも今なら、ダンブルドアさんを許すことはできる。彼自身の過ちと彼が払った大きすぎる代償の原因となったその衝動から、未来の読者を守ろうとしたのだと、今になってわかりますね。

【はじめに】はここまでです。
* CHLGというのは、JoがBaroness Nicholsonさんと一緒に立ち上げた、救いの手を必要としているコドモたちを支援(食料や教育など)する"Children's High Level Group"のことです。
このあと、同じくJoの名前でこう書いてあります。
「ダンブルドアさんはやっぱり魔法界のよい子向けにノートを書いてたみたいです。だからたまに、マグルのよい子にもわかりやすいように注釈をつけます」

もくじはこうです。

1. The Wizard and the Hopping Pot(魔法使いと飛び跳ねる鍋)
2. 『The Wizard and the Hopping Pot』についてのダンブルドアさんの解説
3. The Fountain of Fair Fortune(幸運の泉)
4. 『The Fountain of Fair Fortune』についてのダンブルドアさんの解説
5. The Warlock's Hairy Heart(魔術師の毛むくじゃらの心臓)
6. 『The Warlock's Hairy Heart』についてのダンブルドアさんの解説
7. Babbitty Rabbitty and her Cackling Stump(バビティ・ラビティとおしゃべりな切り株)
8. 『Babbitty Rabbitty and her Cackling Stump』についてのダンブルドアさんの解説
9. The Tale of the Three Brothers(だんご三兄弟の物語)
10. 『The Tale of the Three Brothers』についてのダンブルドアさんの解説

この順番に出かけましょう。

心ゆくまでさるお、もんち!

2008年12月04日

The Tales of Beedle the Bard Tour へようこそ

さるおです。
待っていた本が届いたYO!
魔法界の童話集"The Tales of Beedle the Bard"です。ふんがー。

beedleharryahistory.jpg

右のはついでに手が出てしまった"Harry, A History: The True Story of a Boy Wizard, His Fans, and Life Inside the Harry Potter Phenomenon"です。

beedle.jpg

むっはっはー。楽しみっす。
BBツアーは3日後にはじまります。待ち合わせはこのブログ。また一緒に歩いてくださるよい子のみなさん、どうぞよろしくお願いします。

心ゆくまでさるお、もんち!

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