※ネタばれ記事です。ネタばれコメントも大歓迎です。これからご覧になる方は気をつけてねー。
『SAW 3D』を観て、さるおのSAW体験を書いておこうという気持ちになりました。閉店商法はまぁそれはそれでいいとして、いつも以上に最後最後と言ってるわけだしな。
このシリーズは最初から観ています。ただ、残念なことに(よりによって!)オリジナル『SAW』だけが、お茶の間観賞なのです。今思えば、1つ目だけが劇場、あとはお茶の間、ということになっていないのはなぜなのだ、と我が身を呪ったりしているわけですが(笑)。
2004年(さるおの場合は2005年3月)の『SAW』は衝撃でした。巧すぎて泣いてしまいました。それ以来、毎年欠かさず劇場に足をはこんできました。
いちばん好きなのはオリジナル『SAW』、いちばんすごいのはオリジナル『SAW』、たとえ他のあらゆる映画作品と比較したとしても、いちばんと言えそうだと思うのはオリジナル『SAW』です。群を抜いている。もちろんシリーズ内でオリジナルに匹敵する作品も存在しません。
静かに息をしないと負けてしまいそうな閉塞感、想像の追いつかない"ひねり"、最小限の登場人物、聞き逃したり見逃したりしたら終わりだという緊張感、そしてパズルが仕上がる爽快感と絶望。そこには必要なものすべてが揃っていました。足りないものも、過剰なものも、一切存在しませんでした。
さるおはたぶん、知恵比べが好きなのです。そして、さるおにとってオリジナル『SAW』は、とても特別な映画なのです、きっとずっと。
次点は3作目、続くのは2作目だろうと思います。
ジェームズとリーが大きく関わっているのは、結局ここまでなんすよね。
2作目はダーレンとリーの脚本で、ジェームズは制作側にまわった。そしたらやや危うい感じになっちゃったので、3作目では再びオリジナルの最強コンビが物語を書いた。
で、4作目以降、コンビは制作にクレジットされているだけ。つまり、フランチャイズ化したわけです。
そしたらとたんに、それまで忠実に貫いてきたメインテーマを失ってしまった。
雑に扱われ、浪費され、目的を失った、感謝されることのない多くの命。それがどれほど儚く、どれほど価値ある大切なものか、人々に気づかせる。
A vital piece of the human puzzle. The survival instinct.
人間パズルの最後の1ピースを、生きるという本能を、残された短い時間のすべてを使ってジョンは探していたんすよね。
Congratulations. You are still alive. Most people are so ungrateful to be alive. But not you. Not anymore.
おめでとう。キミはまだ生きている。ほとんどの人間が生きていることに感謝しないが、それはもはやキミのことではない。
これが、ジョンにテストされるすべての人のゴールだったはずなんです。
そのゴールに辿り着くために、人々は、己の血を流す。それが『SAW』のはずだった。
ところが、4作目以降のテーマはこんな感じ。
もしもし、そこの反省すべき点のあるあなた、あなたがたすけることができなければ、あなたの周りの人を皆殺しにしますよ。
ジョンが泣いています。ファンも泣いています。
もしも願いが叶うなら、2007年の正月あたりに時間を戻し、『SAW IV』を最終章として作り直していただきたい。ジョンは4という数が好きだったから、ちょうどいいだろう。
3作目の時点で残っている謎の答えを、4作目でおしえてくれれば、完璧だった。フランチャイズ化なんて欲張らずに、美しく恐ろしい伝説になれる引き際を知っていればよかった。
欲張りすぎと言えば、最終章は事前にぜーんぶネタバレしてしまいました。こんなに情報出すなんてオカシイぞ、さては目くらましだなー、そうとうすごいいちばん大事な究極のネタが隠れてるぞー、と思ったのですが、ぜーんぶ出てた(爆)。ゴードンせんせが、とか、恐ろしいヒミツが、とか、新たな恐怖の波が、とか、言えば客が入ると思っている。やはり回を重ねるごとに、浅ましくなってしまいました。
これはとても悲しい。ジョン・クレイマーが掲げたテーマは深遠な思考に基づく情熱的なものだったのに。
もったいねぇ。
もちろん、4作目以降のつまらなさを差し引きしても、3作目までのおもしろさの方が断然大きい。総論として、大好きなシリーズであることに変わりはありません。
だから最後に、観たかったモノが観られて、素直に嬉しい。これも嘘ではありません。
『SAW 3D』のオープニング。バスルームを出たゴードンせんせが真っ白な顔で這いずり回る。それは6年間待ち続けた、とてつもないシーンでした。
傷口を焼いてしまうというのも、この方法があったか!という驚きと、もう1回痛い思いしなきゃなんないのかーという衝撃で、ちょうどエリックが足を潰したときとよく似た心拍数になりましたよ。1作目と違い、這いずっているシーンも含めて切断された足は"マンガ"になってしまい少し残念でしたが、それでもやっぱりコーフンしました。
Hello, Mr. Hindle... or, as they called you around the hospital, Zep.
ジョンの声が聞こえる。
これも、なんというオープニング。話がはじまる前から涙が出てしまいましたよ。
アマンダ用のヘッドギア。再生の象徴。あのマシンだけは再生専用であってほしかったんですが、処刑に使われてしまって残念っす。でも、2つ並べてあってホフマンがそっちを選ぶというのは、マニアに気を遣ってくださってるわけで、やっぱりこれも嬉しかったです。
ゴードンせんせがブタマスクをとるエンディングでは、Hello, Dr. Gordon. とさるおも思いました。
どうせゴードンせんせが仲間だっちゅー話なんだろー、とわかっていようがいまいが、このジョンの声が特別であることに変わりはなく、さぁ思い出のバスルームにまいりましょう、という気持ちになる。バスルームに"帰ってきた"という感動は、2作目のラストや3作目のオープニングが強烈だった。けど、バスルームというのはゴードンせんせが帰ってくるべき場所なわけで、オリジナル『SAW』のときと同じように蛍光灯がぱちぱちと点くと、4作目以降ずっと待ってたよーなんて、また感動するわけです。
I showed you a lot of places, but there will be one perhaps the most meaningful for you.
多くの場所を見せたが、あなたには、おそらく最も意味のある重要な場所があるだろう。
ええ、ありますとも!ただいま!おかあさーん!
バスルームは、閉じこめる側からすると、足枷をして置き去りにする、そのためだけの場所です。でも逃げる側からすると、切ったり潰したり、いろいろやってる。で、『SAW 7』ではどうだったかというと、ゴードンせんせはホフマンからのこぎりを取りあげてしまいました。
I don't think so.
そうかいくか、と。
すばらしい!ゴードンせんせはホフマンから、チャンスを奪ったわけです。このセリフにはときめいてしまいましたよ。
バスルームではじまり、バスルームで終わる。
とりあえず、終わったな、と思う。閉店商法かどうかは時間が経たないとわからないけれど(笑)。
Hello, Dr. Gordon. You are perhaps my greatest asset.
ハロー、ゴードンせんせ。あなたはおそらく、私の最高の宝だ。
ゴードンせんせは立派な後継者です。気が向いたら、あとはよろしくお願いします。
心ゆくまでさるお、もんち!